機体諸元
1号機 ノーマル装備
頭頂高 | 14.8m |
---|---|
本体重量 | 7.5t |
全備重量 | 17.8t |
ジェネレーター出力 | 3,160kW |
装甲材質 | ガンダリウム合金セラミック複合材 |
スラスター総推力 | 74,760kg |
概要
宇宙世紀0111年9月に「海軍戦略研究所」ことサナリィが、小型・高汎用性をコンセプトに開発した、第二期モビルスーツ。
メイン・スタッフの一人として元ホワイトベースクルーのジョブ・ジョンが携わっているため、外装にはファーストガンダムに近い形状が採用されているが、当時『ガンダム・タイプ』はアナハイム社を象徴するMSであったことから、サナリィ上層部には不評であった。
地球連邦軍から要請された次期主力機コンペティションに提出されて、それまで軍の兵器受注をほぼ独占していたアナハイム・エレクトロニクス社の提出機MSA-0120を下し、次期主力機のテストベッドとして採用された。
この一件によって、大型化・機能肥大化が主流であった従来のモビルスーツ開発路線を一気に塗り替え、以後に続く15m級小型・高性能モビルスーツの先駆的存在となった。
つまるところデカくてゴツい方が強いという世紀末状態のMS開発業界へ北斗神拳のごとく殴り込んだのが本機なのである。
機体各部のハードポイントにミッションパックと呼ばれる規格換装オプションを装備することで多種多様なミッションに対応できるのが、大きな特徴となっている。
またF90本体も高性能で、革新技術が数点使われ、従来のモビルスーツとは一線を画すカタログスペックになっている。
ミッションパックは、サナリィという企業自体が、地球連邦軍の制式採用小型MSを開発していく事に対して手探りの状態であったため、今後第二期MSがどのように進化していくか(させていくべきか)を見究めるために採用された機能であり、本機をベースとした各種オプションの運用によって検証実験をしていく中で、使い勝手や生産性を検討・改善し、運用目的に合致した新機種の試作機を開発。そこから更に洗練し量産化していくという流れを採ったのである。
なお、型式番号のF90は「高性能実験機F9シリーズの0番機」を意味しており、F70(キャノンガンダム)は「長距離支援機F7シリーズの0番機」と言う様に並行した番号付けがされているため、基本的に一桁台の数字が大きくなるほど後期・高性能化する。
ただし、F71(Gキャノン)はアナハイム・エレクトロニクス社にOEM生産させる際に、様々な摩擦が生じた結果としてF70よりも性能が低下している。
1号機、2号機がロールアウトし、それぞれのF90に異なるパターンの疑似人格プログラムが搭載されている(後述)。
試験に於いて生産された2機は個別のテストを行った後、宇宙世紀0120年においてアドミラル・ティアンムで2機同時に運用されたが、2号機の強奪を皮切りにした第一次オールズモビル戦役・第二次オールズモビル戦役など各戦線へと投入される。
またサナリィ内でのデータ収集用の三機目が存在しており(後にクラスターガンダムに改修)、役割は不明であるが更なる予備機が存在していた説もある。
なお全て同型機などではなく同一の機体であるため、「F90 AtoZ PROJECT」の企画で始まった漫画「F90FF」の作中では史上最も多くのパイロットを乗せてきたガンダムと呼ばれている。
余談となるが、上記のベルフ・スクレット少尉が搭乗したF91もシーブックが運用したF91と同一機体である(ただしバイオ・コンピュータ搭載前の未完成状態で、F90 1号機のシステムを移植して代替としている)。
メタ視点で言うと「パッケージ化された装備を換装する事で、機体特性を大きく変えられるガンダム」の先駆け的存在となっており、この着想は以後のガンダムシリーズに大きな影響を与えている。F90のデザイン自体はF91の初期稿を転用したものでもあり、F91シリーズ展開のための布石であったともいえる。
なお「F90」企画時の設定上はミッションパックがA~Zまでナンバリングされ、全26種類が存在している事になっている。
ただしこの内X・Y・Zは本体構造を大きく変えたものであるとされ、F90及びF90Ⅱとの互換性の有無は不明である。
機能
マイクロハニカム技術
本機から導入された、新技術の一つ。
アナハイム・エレクトロニクス傘下のヤシマ重工が開発した装甲材精製技術。
ミノフスキー粒子に静電入力を行うと、立方格子状の力場が発生する事を利用し、超微小サイズの力場を形成。これに沿って異種結晶化結合を成長させることでマイクロサイズのハニカム構造を有する装甲板を精製させる。
これによって以降の15m級MSは、従来装甲(以上)の強度を持ちながら、圧倒的な軽量化を達成している。
小型・高出力ジェネレーター
新技術の一つ。
それまでに製造されていたジェネレーターと比較し、小型・軽量でありながら高出力を達成している。
後世代には15m級用でありながら7,000kWを越える大出力を達成したモデルも開発されている。
ただし欠点として、ビームが直撃した場合、炉心の核融合反応が停止する前に、放射線およびプラズマの隔壁の役割を果たすIフィールドの崩壊が先んじる可能性が生じる様になった。
つまり、以降世代のMSのジェネレーターにビームが直撃した場合、甚大な核爆発が起こる可能性が生まれてしまい、特に大気圏内・コロニー内戦闘で極めて大きな戦術的制約が全陣営に課される事となってしまった。
(ラフレシア戦で、F91がビギナ・ギナをビーム・ランチャーで撃って、意図的に核爆発させるシーンがある)
なお、ビームではなく通常実体弾頭などで破壊された場合は、それまでの大型ジェネレーター同様通常爆発のみが生じる(無論、それでもコロニーに穴を空けてしまう規模であるが)。
F90開発時点ではMS用の小型ジェネレーターが無く搭載できなかったため、航空機(航宙機)用に設計された小型ジェネレーターを改造したものを脚部に2基搭載する事で出力を確保していた。Vタイプを運用する頃には、MS用に開発された新型小型ジェネレーターに換装している。
(なお余談だが、旧来設定においては機体内部構造がF90と同一であるガンダムF90(火星独立ジオン軍仕様)が戦闘中に両脚部を欠損したがジェネレータは無事だった旨の記述があるのだが、このままでは設定上の齟齬が出るため、火星独立軍仕様については外装だけでなく内部構造も改造されてジェネレータが胸部に移設されていたことになった。)
ハードポイント
ショルダー×2、アーム×2、フロントスカート×2、サイドスカート×2、リアスカート×1、レッグ×2、バックパック(増設または交換式)の計12箇所が存在する。
それまでのウェポンラック(ラッチ)は、特別な場合を除いてマニピュレーター用の装備を戦場まで懸架するだけの、言わば『落とさないように引っ掛けておく機能』であり、また追加装備システムは後付けされる場合が多く本体側の調整に時間や整備コストが掛かり、通常の運用では使う事の少ない無駄の多いシステムであったのに対して、ハードポイントは装備の規格さえ対応していれば、接続部を介してエネルギー供給、FCSとの連動による照準及びトリガー指令の全てをより効率良く行う事が出来、最初からミッションパックによる換装を前提とした運用を前提としている為、後付けの追加装備システムよりも無駄が少なく機構を遊ばせる事も少なくなり、また一応物理的に干渉しなければ装備をパーツ単位で装備する「混載」や空きハードポイントへの装備増設も可能。だがVタイプ(ヴェスバー・ビームシールド)Lタイプ(ロングレンジライフル)などは装備に必要な高出力や精密照準システムと言った装備側の要求性能も有って混載に制限が生じる場合(Vタイプは基本的に混載不可となっている)もある。もちろん要求する性能を限定するのであれば運用そのものは可能である。
これと同等のAE規格ハードポイントがアナハイム製のハーディガンやGキャノンマグナなどに採用されている。
ミッションパック
F90の機体各部のハードポイントに装着可能な規格換装オプションであり、装備することで多種多様なミッションに対応できる。
基本形態では、各ハードポイントにはカバーが取り付けられている。内装面でも、この時点ではジェネレーターの小型化には成功していたが、充分な出力に届かなかったため一対二基の仕様で搭載する事で補っている。
背面のミッションパックの装着には、ノーマルバックパックのハードポイントを介して装着する場合と、バックパックごと交換する場合がある。
各ミッションパックに関してはミッションパックを参照。
基本武装
これらは各ミッションパック装備時にも併用される場合(携行武装であるサーベル・ライフル・シールドは空きスペースや余裕が有る時のみ)がある。
Eパック式。腰のハードポイントに予備を携行する事も可能。
バックパックに2基を装備。
シールド
新素材により強度と軽量性を両立。裏面にEパックを二基設置可能。手持ちグリップとハードポイントなどに接続するコネクタを有する。
頭部バルカン砲
側頭部に2門を内蔵。
制御コンピュータ
疑似人格コンピュータ
当時最新鋭だったメインコンピュータである非ノイマン型第5世代の「8000系ニューロ・コンピュータ」。作品によっては「チップ」「疑似人格プログラム」とも呼ぶ。
過去のMS戦のデータとシミュレーションで戦闘をさせることで、疑似的な人格を構築させてMSの戦闘をプログラミングさせていくことが出来る。
その脅威的な力を、F90を強奪したボッシュ・ウェラーは『悪魔の為せる業』と表現した。
プロダクション・ストーリー段階では無人MS搭載用のMI(機械知性)で、4機分存在していた。
Type-A.R
1号機に採用されている疑似人格コンピュータ。
パターンの動作とコンピュータの名称から、かつて連邦の白い悪魔と恐れられた地球連邦軍のエースパイロットがパターンのモデルにしているとされる。
コンピュータのバグかは不明だが、1号機のType-A.Rは「敵の動きに対して回避行動・防御姿勢を自動で取る」事が確認されている。
Type-C.A(Type-C.AⅢ)
2号機に採用されている疑似人格コンピュータ。
パターンの動作とコンピュータの名称から、かつてジオンの赤い彗星と恐れられたジオン公国軍のエースパイロットがパターンのモデルにしているとされる。
このType-C.Aのみはプログラムを「Type-C.AⅢ」にアップデートすることが可能で、機体性能を3倍に引き上げることも出来る。しかし、操縦はかなり難しくなるため、普段はType-C.Aに留めて運用している。
パイロットのボッシュ曰くType-A.Rよりも実戦慣れしているとのこと。
火星での戦闘の際にオールズモビルから奪還した2号機を修復する際に、メインコンピュータにバグがある事を指摘されたため、以後ニューロ・コンピュータからバイオ・コンピュータに切り替えることになる。
Type-A.Rの件を踏まえて、このType-C.Aもまた自動でMSの行動パターンを決める節がある。
Type-K.B
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』で登場。
3号機に採用されている疑似人格コンピュータ。
パターンの動作とコンピュータの名称から、グリプス戦役のガンダムパイロットカミーユ・ビダンがモデルとなっている。
第二次オールズモビル戦役では、バイオコンピュータと交換される形でF91に搭載されている。
Type-J.A
プロダクション・ストーリー段階で存在していたMIであり、今後登場すると推測されている。
名称から第一次ネオ・ジオン戦争のガンダムパイロットジュドー・アーシタがモデルとなっていると思われる。
Type-????
漫画『機動戦士ガンダムF90クラスター』で登場。
火星独立ジオン軍仕様のF90、その複製品である「OMS-90R2」に採用された疑似人格コンピュータ。
不具合が起きているのか、人格のモデルはノイズ塗れで確認不能となっている。
バイオ・コンピュータ
2号機をF90Ⅱに改修する際、交換される形で搭載された制御コンピュータ。
F91に採用されたバイオ・コンピュータの試作品に当たる。
3号機もF90ⅢYへの改修後にバイオ・コンピュータに交換されている。
F90一覧
1号機
「第13実験戦団チームA」が運用していたF90。後にラー・カイラム級機動戦艦アドミラル・ティアンムに2号機と共に配備された。
疑似人格プログラムは「Type-A.R」を搭載している。
詳細はF90の1号機を参照。
2号機
「第13実験戦団チームB」が運用していたF90。後にラー・カイラム級機動戦艦アドミラル・ティアンムに1号機と共に配備された。この配備の際にはカラーリングは大幅に変更されて、紫色をベースに白と黄色となっている。
疑似人格プログラムは「Type-C.A」を搭載している。
詳細はF90の2号機、改修機については火星独立ジオン軍仕様、F90Ⅱを参照。
3号機
サナリィの研究所でデータ収集用として運用していたF90。幻のF90とも。
疑似人格プログラムは「Type-K.B」を搭載している。
詳細はF90の3号機、改修機についてはクラスターガンダムを参照。
予備機
漫画『機動戦士ガンダムF91 フォーミュラ戦記0122』に登場する「予備のF90」と呼ばれる機体。なお予備機であるためなのか、疑似人格プログラムコンピュータは搭載されていない模様。
クロスボーン・バンガードと内通していたウェスバー大尉によって手土産として強奪されるものの、強奪を阻止するために出撃したベルフ・スクレットの乗る1号機(Vタイプ)と交戦した末に撃破される。
立体物
1号機のみオプションセットともに1/100のプラスチック模型としてラインナップ。ミッションパックはA・D・Sのセット、P、Vがラインナップ。LはF90Ⅱとのセットになっている。
またBB戦士シリーズにもラインナップ。こちらはライフル、サーベル、シールド、オプションPとオプションVが同梱されており、ライフルはスプリングによる弾丸発射ギミックが組み込まれている他にBB戦士独自の組み換えによりプレイバリューが高い製品となっている。
Gジェネ仕様では、オプションAが追加で同梱されている。
3号機はシルエットフォーミュラ91のキットとして1/100にてクラスターガンダムがラインナップ。
GUNDAM FIX FIGURATIONでは#0021aでF91ハリソン大佐機とのコンパチで1号機が、#0021b でF91とのコンパチでF90IIがラインナップ。
食玩「GUNDAM CONVARGE」シリーズにもラインナップされたが、スタッフブログ内で「機動戦士ガンダムF90」からのラインナップではなく「機動戦士ガンダム-シルエットフォーミュラー91-」からのラインナップという形になってしまっている(何が起きた?
プレミアムバンダイ限定の「MOBILE SUIT ENSEMBLE EX10」にてガンダムF90 Dタイプ&Hタイプセットが発売。
プレミアムバンダイ限定の「MOBILE SUIT ENSEMBLE EX21」にてガンダムF90 II Lタイプ&Iタイプセットが発売。EX10と組み合わせる事で鋼鉄の7人での木星決戦仕様のF90I装備を再現するパーツも付属。
プレミアムバンダイ限定の「MOBILE SUIT ENSEMBLE EX24」にてガンダムF90 Aタイプ&Pタイプセットが発売。
プレミアムバンダイ限定の「MOBILE SUIT ENSEMBLE EX25」にてガンダムF90 Vタイプ&Mタイプセットが発売。
そして2019年4月17日にプレミアムバンダイの新企画『F90 A to Z PROJECT』として
なんとMGガンダムF90の発売が決定。
完全新規のMGキットとなっている。
これだけにとどまらず、今まで一部詳細不明であったA〜Z装備を全て大河原邦男氏全面協力のもと立体化するという。バンダイの本気度が窺える。
2020年3月以降プロジェクトページがリニューアルされ、大河原氏が書き下ろしたガワラ立ちの設定画が公開されている。
第2弾 Fタイプ&Mタイプ
第3弾 Bタイプ&Kタイプ
第4弾 F90II&Iタイプ
第5弾 Uタイプ&Oタイプ
第6弾 Dタイプ&Gタイプ
第8弾 Rタイプ&Vタイプ
第9弾 Wタイプ
第10弾 ガンダムF90(火星独立ジオン軍仕様)
第11弾 Hタイプ
第12弾 Cタイプ&Tタイプ ミッションパック 専用ハンガー 2個セット
第13弾 Pタイプ
第14弾 Jタイプ&Qタイプ
第15弾 Aタイプ&Lタイプ
第17弾 F90III Y
F90 A to Z PROJECTとは別にTHE GUNDAM BASE VIRTUAL WORLD 第2回テスト運用版の公開記念商品としてクリアカラー版がガンダムベース限定で発売されている。
関連項目
機動戦士ガンダムF90 フォーミュラー戦記0122 機動戦士ガンダムF90FF
F90とガンダムAGE-1がモチーフになっている。
前者はSDガンダム外伝、後者は新SD戦国伝のキャラクター。どちらもF90及び各ミッションパックがモチーフになっている。
ストライクガンダム、インパルスガンダム、ガンダムジェミナス、ガンダムTR-6、コアガンダム…ある意味F90の子孫。TR-6は間接的とはいえミッションパックの一つに関係があり、開発系譜としては先祖でもある。
ライガーゼロ、バーサークフューラー…ゾイド世界におけるF90。こちらも「何でも良いからくっつけろ、あとは俺が何とかする」とやっている。
戦隊ロボ…類似するコンセプトを持つ機体がいくつかある。