人の生み出した人の奇跡
人型の至上である”ガンダム”を超えるもの
それ故に”龍(ドライグ)”
概要
MSA-0120とは、劇場用アニメ『機動戦士ガンダムF91』に関連して設定されたメカの一つ。
本機を解説する上で避けては通れないのがその外観。デザイナーは藤田一己氏。
この見た目に反して、公開されてから30年以上も機体名が定められていなかったため、その型番からフリーダイヤルという通称が一部ファンの間で定着していた。
機体デザイン
毒々しいカラーリングのどこか有機的なデザインラインで、およそ人間的とは言い難い体型が特徴。
『F91』が発表された1991年となると、『逆襲のシャア』が準新作の時代。それまでのガンダムのメカと比較して、連邦系ともジオン系とも違う極めて異質な姿は出す作品を間違えてるんじゃないのかと言いたくなる個性を放っている。例えば『超時空要塞マクロス』のゼントラーディの没メカ……と言ってしまえば疑いを持てる人は少ないだろう。
……と、2000年代以降のデザインに慣れた目で見るとそうなのだが、実は『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』小説挿絵に描かれている、オリジナル版グスタフ・カールやメッサーの延長線として見ると、“在り得なくもない”レベルのため、決して藤田氏は「制約が少ないから好き勝手にやろう」とデザインしたわけではない(と思われる)。
まぁ、大きめのモノアイや小脇に抱えた大型ブラスターなど、ガザシリーズに見えないこともないのだが、その異形から『ガンダムAGE』の敵勢力であるヴェイガンのMSだとネタにされることも。
後述するプラモ作例でも、実際にヴェイガン製MSのパーツが使われている。
F90FFの8巻収録の第33話ではツインアイタイプの1号機が登場。ツインアイといってもガンダムといった連邦系のデザインというよりはどこかベスパのMSを思わせる顔となっている
ツインアイとなっているのは1号機のみの様で、2号機以降の現状登場している機体はすべてモノアイタイプとなっている。
詳細設定
カタログスペック
ノーマル/メガブースト
頭頂高 | 15.0m |
---|---|
本体重量 | 17.5t |
全備重量 | 54.1t(ミノフスキー・クラフト用プロペラント最大積載時) |
ジェネレーター出力 | 3,040kW/6,800kW |
スラスター総推力 | 180,000kg/230,000kg |
開発経緯・設計思想
アナハイム・エレクトロニクス(以下、AE社)が宇宙世紀0111年に地球連邦軍の要求した『小型・高性能モビルスーツ開発計画』に従い、RX-110を技術素体にして完成させたモビルスーツ。
開発主任の独断ではあるが、開発時のコードネームとして「ドライグ」と言う名が与えられた。
連邦軍の次期主力機という目標に従い、開発はAE社においてRGM系量産機など主力MSのほとんどを手掛けたグラナダ工場のジオニック事業部が担当した。
しかし、AE社はこの勧告に積極的に対応する姿勢を見せておらず、フレームはヘビーガンを流用するなど、機体本体は従来の技術の延長上にあり、機体の小型化とコストダウンの面で、連邦軍が要求するレベルには及ばなかったとされる。
つまり、この一面においてはサナリィが提唱する小型MSとしての先進性は高くはなかった。
一方で、性能面では第五世代MSの15mサイズ化をコンセプトとし、ミノフスキー・クラフトを内蔵化することに成功しており、オプションに依存しない全領域対応機としての堅実な設計を評価されている。スペックノート上の全備重量は54.1tと大型機並みだが、これは長距離侵攻用の約30t及ぶ推進材を最大まで積載した場合のものである。通常戦闘を想定した場合推進材積載量は4t程度に収まるため、その場合の全備重量は20t台後半となる(競合相手のF90も長距離侵攻装備のAタイプは推進材を大量に搭載するため総重量80tを越えるが、通常の戦闘装備は20t前後に収まる)。また特異な装甲形状は長距離飛行時の空力特性を考慮したものである。これらの装備により機体シルエットは対抗機であるF90と比べて大型となっている。
フレーム自体はヘビーガンの系統だが、搭載機構であるメガブーストやアップリケアーマー等に最新技術が惜しみなく投入され、機体性能そのものは当時としては非常に高い水準にあったとされ、新時代のリック・ディアスとも言われるはずであった。
このコンペティションは様々な政治的思惑が絡むものであり、結果として本機はサナリィが開発したF90の後塵を拝することとなった。しかし、これには(本来あるまじきことではあるが)模擬戦闘における両機のパイロット間の技術差がかなりの要因を占めていた。
後に本機が武装集団によって運用され、パイロット技術のディスアドバンテージが逆転した状態でキャノンガンダムやF90と交戦した際には、これらを圧倒するほどの能力を発揮している。
コンペティション
宇宙世紀0102年にサナリィから提言されたモビルスーツの運用改善プロジェクト『モビルスーツ小型化計画』は、当初はAE社による一種の寡占状態を改善するために発足したもので、当時の閣議によって決定された「軍備拡張」と「軍事費の削減」という相反する目標を達成しなければならなくなった地球連邦軍による苦肉の策であり、元々AE社の関与を受けずに進める予定となっていた。
ところが、平時が長く続く軍の機密管理のずさんさからその情報の一部がAE社側に漏洩してしまっため、急遽(建前上は)オープン・コンペティションのATMS計画(次世代主力MS開発計画)という形で、次期主力MSの選考が行われる事となった。
計画にはサナリィ、アナハイムに加え、ランデッガー重工が参加。ランデッガーの機体はジェネレータ出力が要求出力に満たないとして廃案となり、2社の対決となった。
1次審査
「最大出力」「耐弾性」「運用コスト」「機動戦闘力」の4つの評価項目をコンピューター・シミュレーションにおいて比較。
「最大出力」と「耐弾性」はMSA-0120に、「運用コスト」と「戦闘機動力」はF90に軍配が上がった。
2次審査
宇宙空間での模擬戦闘を実施。
F90がMSA-0120に対して撃墜判定をあげた。
この時のF90の圧倒的な勝利には、居並ぶ審査官が感銘さえも覚えたとされる。
ただしこの結果は、両機のパイロットの技術差に依る部分が大きいと考えられる(機動戦士ガンダムF90FFの項目にて後述)。
このコンペは連邦の他に木星船団の介入など、様々な政治的思惑の絡むものであったことが後年明らかになっているが、この時点では当初の連邦軍の思惑通り、次期主力機のテストベッドにはサナリィのF90が選抜される事となった。
これによりMS小型化の有用性を認めることとなったアナハイムは主力開発メーカーの座に返り咲くため、非合法活動を含むシルエットフォーミュラ計画を発動、サナリィの極秘データ奪取に成功する。
このデータをMSA-0120と同じくヘビーガンをベースとするシルエットガンダムに導入し、F91と同等の性能を実現し、さらにはそれを昇華させた次世代機ネオガンダムを開発する。
この計画の成果をもってアナハイムは、一度はサナリィに傾きかけた主力MS開発のメーカーとしての地位奪回に成功するに至る。
機能
メガブースト
エネルギーCAPの技術を応用したコンデンサによって、瞬間的に機体出力及び推力を2倍にまで増大させる、本機最大の特徴となるシステム。
ジェネレーターへの負荷は増大するものの、戦闘機動能力はF90を圧倒するレベルまで大きく高められる。
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて、初めてその一端がお披露目される。キャノンガンダムが弾幕を展開していたにもかかわらず全てメガブーストで切り抜け、距離を取ろうと後退したキャノンガンダムの懐に一瞬で加速している。元テストパイロット曰く「メガブーストからは逃げられない」と絶望的な顔で一部始終を見ている。
蒸発式アップリケアーマー
機体表面に施される特殊装甲。耐ビームコーティングのように被弾時に装甲を蒸発させることで本体へのダメージを最小限に抑え、この装甲を破壊するにはヴェスバー並みの火力が必要となる。
一方で重装甲な見た目の割に実弾兵器への耐性はあまり高くない模様。
サイコハック
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて使用。
ジオン残党のレガシィに強奪されたサイコフレームを塔載した機体に搭載されていた機能と思われていたが、ニュータイプのユーリー・ミノフスキーが使用していたパイロット由来の能力だという事が明らかになった。
F90Nタイプのパイロットとの類似性もあってサイコミュを欺瞞するという形でのハックであり、サブパイロットとして別の人物がサイコミュウを担当したことで無効化されている。
コンペテイションそのものにおいては後塵を喫したMSA-0120だったが、これらの搭載機能は連邦側に大きく評価されてもいた。
その結果、連邦はサナリィ側にこれらの性能導入を促している。
また一説によれば、C・V紛争終結後にサナリィとアナハイムの間に技術的交流が行われたともいわれており、A.B.C.マントという、ビームを蒸発させて無効化する耐ビーム装備がサナリィで開発されている。
ただし、MSA-0120のアップリケアーマーと技術的な繋がりがあるかは不明である。
武装
ハイパーメガランチャー
詳細不明。
後述の1号機の武装から、ビームスマートガン(メガビームライフル)ではないかとも考察されている。
ハイインパクトガン
ミノフスキー・クラフトを利用した、疑似重力(質量)を敵機へ激突させる新機軸の武装、とされるも長らくの間詳細は不明だったが、F90FFでミノフスキー・ドライブ技術を応用した疑似反重力レールガンとして設定が整理された。
ビームサーベル
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて使用。
八つ手ビームサーベル
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて1号機が使用。
ファンネルミサイル
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にてジオン残党のレガシィに強奪されたサイコフレームを搭載した機体が使用。
ヒートロッド
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて使用。
グフカスタムと同じワイヤータイプにしている。
『F90FF』への登場
『機動戦士ガンダムF90FF』にて、コンペの2次審査中の場面で本機が1コマのみ映った。22話ではこの機体の技術を転用したプロトハーディガンのGカスタムが登場。
続く24話にて、2機あるGカスタムのパイロットの1人であるヴェロニカ・ヴァーノンがMSA-0120の元パイロットである事を明かすものの、具体的な内容は上司であるリベラ・アマルガムに口止めされた上で「過去の汚点」「MSの性能を引き出しきれない愚図」とまで罵倒されている。一体、どんな負け方したんですか…。
《グポン…》
あれは…
F90にコンペで負けたはずの
なんでここに居るんだ
闇に消えたはずじゃないのか
MSA-0120は!!
『噂をすれば影がさす』
同話では、ファステストフォーミュラを襲う武装集団『エグム』(エゥーゴ過激派残党)が所有するMSの1機として登場。
キャノンガンダムが弾幕射撃にて応戦するものの、メガブーストで躱し照準に捉えきれない連続メガブーストで一瞬にて急接近、キャノンガンダムの懐まで辿り着いてビームサーベルでコクピットを貫いた。
後に2機製造されていたことが判明し、1号機は主任テストパイロットのウィリアム・C・オーランドが担当していたが事故で死亡し機体は失われ、2号機のヴェロニカ・ヴァーノンがコンペで惨敗を喫した事が判明する。そして、ヴェロニカ・ヴァーノンは武装集団のMSA-0120のパイロット「サイファー」(その正体はある計画で生み出された人口ニュータイプであるユーリー・ミノフスキー)がコンペのF90のパイロットである事に気づくことになる。
更にMSA-0120は当初は2機製造、その後シルエットフォーミュラープロジェクトの為に6機追加製造され、合計8機製造されたことが判明している。
1号機は事故で喪失。
2号機はコンペティションで使用されその後はグラナダで機体開発に使用。
3号機から6号機まではフォン・ブラウンと地球に各2機納入されて所在こそ不明なもののアナハイムの管理下にある模様。
7号機と8号機は、UC0114年にてルナツーへと移送中にジオン残党のレガシィの攻撃を受けて所在不明となっている(これは表向きはデブリによる事故と言われており、この移送中の事件でシルエットフォーミュラープロジェクトに反対していたラウ副社長も死亡している)。
この時アナハイム(恐らくラウ副社長派だと思われる)から依頼を受けたディル・ライダー(リヴ・アンゲリカ)が所属する傭兵組織GBGが奪還しに来たがレガシィのティグリスⅡの奇襲攻撃でGBGは、ディルとニュータイプの少女マトリカ・ヴィカラ以外は全滅したがディルはロナ家の艦隊に救助され、マトリカはレガシィに回収されバイオコンピューターとネオサイコミュシステムを搭載したRFグロムリンⅡのコアとなってしまった。
また救助に来たロナ家の艦隊にも疑惑があり、レガシィの協力者は、カロッゾ・ロナとなっており2体のMSA-0120を奪還しに来たGBGのマトリカがレガシィに回収された後にロナ家の艦隊が動きだした事を見たらロナ家の艦隊は、GBGを監視していたと思われる。
そして事故で失われたはずの1号機(MSA-0120-1)がUC0116年ラウ副社長派のアナハイムにより運用されて登場した。
ビームスマートガンと八つ手ビームサーベルと思われる装備を有している。
この1号機は「ドライグ・アクティブ」と呼ばれている。
また一時的に1号機のパイロットは、アナハイムの女性エージェントのアルゲントゥムとなっており後にヴェロニカに託された。
余談だがアナハイムのエージェントのアルゲントゥムは、以前は、ベテランのMSパイロットだったが今は、扱えなくなっており彼女は、ディル・ライダー(リヴ・アンゲリカ)の事をよく知っておりUC0112年の連邦のあるMSに乗った女性テストパイロットとの関連性がある。
立体物
2018年10月発売のホビージャパンムックにおいて、1/100スケールの作例が掲載された。この手の独特すぎる外観のメカは部位の一つ一つを手作りしているのが通例で、他のプラモのパーツを使って(流用)いても、手を加えすぎて原型をとどめないことも多い。だが今回はなるべく流用で済ませているのがポイント。
ガブスレイをベースとして、パラス・アテネ、メッサーラ、シナンジュ・スタイン、バイアラン・カスタム、ジェガン(エコーズ仕様)、そしてダナジンとファルシアのパーツが使用された。
1体を作るのにプラモデルの種類が多すぎるため、いくら流用がメインでも読者モデラーに再現できる範疇にはなかった。『機動模型超級指南』のコーナータイトルにある通り、一流のプロモデラーでなくては不可能なレベルで、「いっそプラバンとパテで全部手作りの方が早いわ!」と突っ込みを入れたくなる作例であった。
とは言え、頭部にはジェガン(エコーズ仕様)に多少手を入れたモノを使用。外観に見えている有機的な頭部および肩や背中のアーマーは『蒸発式アップリケアーマー(パージ前提)』として、アーマー部を全て外した“素体”は充分にヘビーガン系列機と見なせるように製作されるという、非常に興味深い解釈・アレンジが成され、実に見ごたえのある作品となっている。
もしもモデラーとしての腕に自信があるのならば、試してみる……のは、絶対にお勧めできない。
現在はプレミアムバンダイにてMG版F90の装備が拡充されており、MG化、もしくは同スケールで連動して関連機体が出るRE/100での発売が期待されているが、残念ながら現在に至っても立体化の動きは無い。
余談
- 『シルエットフォーミュラ91』の小説版にもウィリアム・C・オーランド(シルエットフォーミュラ91のアイリス・オーランドの父親)の機体として「MSA-120」の名が登場していたが、こちらはあまり知られていなかった。また、漫画版ではジェガン系のファイアボールと呼ばれるMSが登場している。
- 後に『F90FF』にて小説版の設定と統合された際に、1号機の主任テストパイロットとしてウィリアム・C・オーランドが登場している。漫画版でのファイアボールのテスト事故はU.C.0112で、当時のF90とMSA-0120のロールアウトがU.C.0120で設定されていたが、この二つを統廃合して整理した形となる。
- サイファーのサイコハックでF90のファンネルをジャックした際のモーションが、多くの読者の腹筋にハイインパクトガンをぶち込んだ。
関連タグ
??? MSA-0120の技術素体となった機体。