ミノフスキー・ドライブ
みのふすきーどらいぶ
次世代の反動推進機関。
ユニット内にミノフスキー粒子の力場を発生させ、その反発力を任意方向に開放することで推進力を得る。
理論上ではすべてのエネルギーを推進力に変換するシステムであるが、宇宙世紀0153年の技術をもってしても完成には至っておらず、封じ込めきれない余剰エネルギーを外部に放出する光の翼が発生してしまう。この光の翼は、本来の仕様にはない欠陥ではあるのだが、ビーム出力が極めて大きいことを除けばビームサーベルと同等の性質を持っており、パイロットのセンス次第で攻撃や防御に転用することができる。
また、光の翼の間には不可視のメガ粒子が飛び交っており、このメガ粒子は電磁的干渉に強く設計されているMSの電磁的プロテクトを突破してしまう。結果として、光の翼の間に進入したMSは機能障害に陥り行動不能となる。
接触したMSが両断される程のエネルギーを余剰分としてドライブユニットから放出しなければならないということは、「生成したエネルギーを推進力に変換しきれていない」ということであるため、「翼が発生しない=エネルギーを推進力に変換できている」状態であれば、より機動力が向上すると考えられる。
宇宙世紀において、これまでに存在した如何なる推進装置とも異なる力場(フィールド)を用いた原理であり、劇中では機動時に他のMSとは異なる、弦を低く鳴らしたような独特の駆動音が発生する。
なお、「ミノフスキー・ドライブ」という呼称は、『機動戦士Vガンダム』よりも先行して富野由悠季により執筆された小説作品『ガイア・ギア』で登場していたが、こちらの設定はペーネロペーやΞガンダムのミノフスキー・フライトによる大気圏内での高速飛行システムをマンマシーン用の外付けユニットとして発展させた「ミノフスキー・フライトによる高速ドライブユニット」という意味合いであり、V2ガンダムに搭載したシステムとは厳密には異なっている。
この『ガイア・ギア』に登場した「ミノフスキー・ドライブ」の語感を気に入ったカトキハジメが、『機動戦士Vガンダム』の後半主人公機となるV2ガンダム用の新システムの名前として取り入れたのが真相である。
ミノフスキー・ドライブの大きなメリットは下記の三点。
大推力
スペックノートにおいて測定不能とされるほどの推力を発揮できる。
これは機構上ジェネレーター出力に依存するが、V2ガンダムは宇宙世紀0153年において15m級MSで最大の出力を誇る最新型ジェネレーターを搭載しているため問題はない。
また、非映像化作品ではあるが『機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト』において、事実上の下位機種であるファントムガンダムが単機による大気圏離脱を敢行しており、より完成度の高い本機も同様に単独大気圏離脱が可能と思われる。
事実、ザンネックとの初遭遇戦では、SFSによって大気圏を離脱していく敵機を単機で追う挙動を示しており(味方機との連携を優先して追撃を中断している)、エンジェル・ハイロゥ攻防戦中盤では、大気圏を下降中のエンジェル・ハイロゥから自力で地球の重力を振り切って母艦へと帰還している。
推進剤不要
ヘリウム3を反応させて半永久的に稼動する、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉で発生させた電力と粒子を、直接推進力へと転用するため、既存のMSで使用されていた推進剤(熱核ロケットエンジン用燃焼剤)を必要としない。
よって、MSの積載バイタル(酸素など)が続く限り戦闘続行が可能となり、上記の大推力とあわせてMSの航続距離が飛躍的に拡大することを意味する。
バイタル維持機能が最小で済む大気圏中層までであれば、パイロットの体力が続く限り無期限で戦闘を継続できる。
ウッソ・エヴィンの機体は最終決戦においてジャンヌ・ダルクから出撃したのは早朝時刻であったが、エンジェル・ハイロゥが分解、昇天した後には翌朝の陽光が差し始めていたため、ほぼ24時間の連続戦闘行動を達成したことになる。
なお、逆に空気抵抗を無視できる大気圏外であれば、無人・ジェネレーターの永久稼動を仮定しての長期間連続加速を行うことで理論上は亜光速に達する。
これまで推進剤の搭載に占められていた機体容積を他の機能に割り振る、あるいは軽量化に繋げられるメリットもある。
さらに、スラスターが電力→熱→推進剤燃焼→推進力と段階を経る過程で失われていたエネルギー、および時間的ロスをゼロ化できるため、ジェネレーターへの負荷が小さく、機体の反応速度向上にも寄与する。
慣性緩和機能
詳細な機構は明かされていないが、V2ガンダムに搭載された完成度のミノフスキー・ドライブは、ミノフスキー・エフェクトによりパイロットにかかる慣性(G)を緩和させるため、最大20Gの瞬間的負荷を許容できるようになる。
なお、本機能については、機構としての完成度が低いためか最初期のF90搭載の試製版や、ファントムガンダム(およびその改修機であるゴーストガンダム)では稼動していない。
劇中では高速機動のまま、ほぼ直角に軌道変更する、予備動作無しで瞬時に静止するといった、従来の機動兵器では達成し得ない超変則機動を見せていた。
MSに搭載するにはオーバースペックな機動力と、パイロットの高度な技量を併せ、V2ガンダムは敵対した強化人間に度々「Vの字の残像を残して消えた!?」と言わしめる超高速機動を戦術に組み込んでいる。
現状、ミノフスキー・ドライブ搭載MSで完成度がもっとも高いと言われているのはV2ガンダムである。
後年にはミノフスキー・ドライブをオプションユニットとして換装できる様になっており、量産機に搭載することも可能にはなってはいるものの、技術力低下等も相まってそのどれもがファントムと同等か少し上程度の範疇。
ミノフスキー・ドライブの再現を最優先した量産機ノエル・レイスであってもV2の85%に留まっており、当のV2も光の翼が生じている以上、完成されたミノフスキー・ドライブは夢の産物なのかもしれない。
漫画作品『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』にてガンダム試作3号機ステイメンの腰部側面に搭載された大型のバインダーであるテール・バインダーに搭載された推進器は、ミノフスキー粒子を触媒としたイオン・ロケットと設定されており後のミノフスキー・ドライブを思わせる技術だった。