宇宙世紀0153年――
これはおれがうさぎを抱いたアリスと
“蛇の足”に出会ったことからはじまる
“銀色の幽霊”にまつわる記録だ…
そしてその幽霊の名は――
概要
2012年から2016年にかけて、株式会社KADOKAWA発刊の「ガンダムエース」で連載された漫画作品である。設定、時系列共に『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』から続く世界観となっている。
作者は前作を以てクロスボーン・ガンダムシリーズを完結させたつもりであり、読者もそう思っていたが、この発表には読者諸氏も驚いたと同時に角川の編集部から続編執筆の懇願があったという逸話もある。当初長谷川氏は「完結させた作品の続編を作らされるのは先人も経験してきたこと」と皮肉交じりにコメントしていたが、途中で筆が乗ったことで物語が弾み、前シリーズを越える全12巻の長編となった。
物語はTVアニメ『機動戦士Vガンダム』と同時代である宇宙世紀0153年を舞台としており、「その時代には存在しないはずのクロスボーン・ガンダム」が主人公の前に現れるところから物語は始まっており、『Vガンダム』の裏話という形を取っている。
第1作『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の連載から15年近くが経過しており、劇中でも宇宙世紀0138年から実に15年が経過している。
前作『鋼鉄の7人』から引き続き、富野由悠季監督は制作に関与しておらず、長谷川裕一氏単独での作品である。(第一作である『機動戦士クロスボーン・ガンダム』は、富野監督が制作(監修)として参加していた。)
陰鬱で救いの無い内容であった『Vガンダム』に対する別視点の解答例ともとれるストーリー展開となっている一方で、『Vガンダム』同様の理不尽で凄惨な殺戮劇が繰り広げられており、クロスボーン・ガンダムシリーズの中でも特に殺伐とした雰囲気が漂っている。
正に、『Vガンダム』と『ゴースト』は二対の表裏一体の存在と言える。
あらすじ
サイド2のザンスカール帝国が戦争を起こした宇宙世紀0153年。
サイド3、ズムシティに住む高校生フォント・ボーはエンジェル・ハイロゥのデータ手に入れた事からザンスカールに追われる身となってしまう。
そして、彼の窮地を救ったのは、兎のぬいぐるみを持つ謎の少女と、存在しないはずのクロスボーン・ガンダムであった。
やがてフォントはザンスカール戦争の裏で繰り広げられる”天使の呼び声(エンジェル・コール)”を巡る戦いに身を投じてゆくことになる・・・!
主な登場人物
クロスボーン・バンガード/木星共和国
本作の主人公。
サイド3(旧ジオン共和国)に住むごく一般的なオタク少年だったが、エンジェル・ハイロゥのデータを手に入れた事が切っ掛けとなり、宇宙細菌「エンジェル・コール」を巡る戦いに巻き込まれる。
とっさの機転に長ける知性派としての一面を見せる一方、感情に突き動かされて動く事も少なくはない。
プログラマーやハッカーとしての素質にも恵まれており、その素質をカーティスに買われている。
木星共和国「蛇の足」部隊のエージェント。同部隊のリーダーを務め、存在しないはずのクロスボーン・ガンダムに乗る。
盲目というハンデを持つが、機体に特殊な設定を施した音響センサーを採用する事でそれを補っている。
木星の人間であるがクロスボーン・ガンダムのコンソール配置を熟知しており、テテニスとの間にも信頼関係以上のものを築いているなど、謎の多い人物。
フォントがゼミで作り上げたAI。
データ解析やモビルスーツの操縦補佐など、様々な面でフォントをサポートする。
カーティスと共にフォントの前に現れた少女。ユピテル財団総裁テテニスの娘。
同年代の子供が居ない外宇宙探査船で生まれ育った為、子供らしく振る舞いながらも大人のような理知的な一面を覗かせる。
密航が得意で、カーティスが自分の父親ではないかと疑い彼の乗る「林檎の花」に密航し、共に地球圏にやって来た。
強力なサイキッカーであり、他人と視界を共有する能力を持つ。
ベルの母。ユピテル財団の総裁。かつてのベルナデット・ブリエットその人。
- エリン・シュナイダー
カーティスの友人。かつて死んだ筈のカーティスが生還した事を最初は喜んでいたが、徐々にそれが彼に対する不信感に代わり、カーティスが発見した宇宙細菌「エンジェル・コール」を持ちだして地球へ逃走。今回の事件の発端を引き起こした。
リガ・ミリティア
- トレス・マレス
シュラク隊の分隊であるリア・シュラク隊のリーダー。色黒。黒いVガンダムヘキサに乗る。
キゾの策略によってカーティスら「蛇の足」と戦闘を演じる事になるが、その後彼らと共闘関係を結ぶ。
- ドゥー・ナウガ・フルス
黒髪が特徴のリア・シュラク隊のメンバー。
あまり好戦的な性格ではなく、他のメンバーと比べて影が薄い面も見られる。宇宙生まれ、宇宙育ちの生粋のスペースノイド。
黒いVガンダムに乗る。
- イー・ライチ
リア・シュラク隊メンバー。メンバーの中で一番小柄であり、性格もそれ相応に子供っぽいが、生身での格闘能力に長ける。
ドゥーと同じく黒いVガンダムに乗る。
サーカス
サーカス部隊の団長。燕尾服とシルクハットを纏った小柄な男。
かつてカラスの下で戦闘能力を学んだ生徒の1人であり、カラスの説いた「強さ」を「金」と解釈し、金集めに執着する。
曲者揃いのサーカスを束ねるリーダーシップに加え、高い身体能力をも併せ持ち、普段は飄々とした態度を崩さないが、その本質は計算高い冷血漢である。
MSパイロットとしても優秀で、サーカスの機能統合機・グレゴを自らの手足のように扱う。
サーカスの一騎当千機デスフィズのパイロット。
パイロットは何人殺しても構わないと考える戦闘狂だが、子供だけは殺さないルールを課している。その考えが元で親友であったゴードンを手に掛けてしまい、フォント達に拾われ彼らと共に戦うようになる。
- ゴードン・ヌブラード
ガラハドのパイロット。残虐な性格の大柄の男。マーメイドの兄でジャックとは昔なじみ。
暴力沙汰が絶えないが、妹を大事にする良き兄としての一面も持ち合わせ、マーメイドが好意を寄せるジャックにも気をかけていた。
- コーシャ
サーカスの紅一点にしてバイラリナのパイロット。遠距離戦を得意とするバイラリナで近接戦闘もこなすなど、パイロットとして優秀。戦闘中であっても爪の手入れをする余裕を見せる女性。
戦いに美を求めるタイプの人間であり、裏切りや無差別攻撃を美しくないと吐き捨てる。
- ロナルド
サーカス機ラロに乗るパイロット。卑しく好色な性格の持ち主だが、ポジショニング能力が問われるラロを使いこなすだけの技量を持つ。
- ラーザブ
サーカス機バンゾを駆る禿頭の巨漢。
丁寧な言動に反して不気味な笑みを絶やさず、行動不能になった敵機にも容赦なく攻撃を加える冷酷さも持ち合わせている。
- アニマーレ・ベルヴァ
地上侵攻用MSキルジャルグのパイロット。「神の雷」計画を生き残った元木星帝国少尉であり、クロスボーン・ガンダムX1との交戦経験を持つ。
- マーメイド・ヌブラード
地上侵攻用MSカルメロのパイロット。ゴードンの妹。ジャックとはかつて恋人同士だった仲。
- ディーヴァ・ダッダ
地上侵攻用MSエスピラルのパイロット。ファントムの本来のパイロットであり、それを強奪したフォントに憎しみを抱く。
ザンスカール帝国
ザンスカール帝国ゴールデン・エッグス隊の指揮官(Vガンダム外伝でも同部隊が登場している)。40歳を越える壮年だが、心身共に精強な高級士官。
ザンスカール帝国主流派とは異なる思惑で行動しており、トモエをザンスカールの真の女王に擁立し、帝国を内部から食い破る事を目的としている。
過剰なまでの成果・実力主義社であり、役に立たない人間はたとえ部下であっても斬り捨てる冷血漢。唯々人を殺す事を楽しんでいる節があり、子供達をギロチンにかけようとしたり、自軍の兵士を必要も無く捨て駒にするなど、破綻した人格の持ち主である。
- マリア・エル・トモエ
キゾが擁立する真の女王マリア。キゾの妻でもあり、お互いに深く愛し合う仲。キゾの為ならばどのような残虐非道な行為を行うのも厭わない。
フォンセ・カガチがマリア・ピア・アーモニアを見出す際に振るい落とされたサイキッカーの1人であり、その経緯からカガチとマリアに対して深い憎しみを抱く。
登場メカニック
「蛇の足(セルピエンテ・タコーン)」
林檎の花「マンサーナ・フロール」
ノッセラ
リガ・ミリティア
地球連邦軍
ザンスカール帝国
ビルケナウ - 『Vガンダム』とは対照的に大暴れし、汚名返上する
ジョング(作中オリジナル) - 『Vガンダム外伝』の時は活躍したのだが…
ビブロンズ(作中オリジナル)
カオスレル(作中オリジナル)
ミダス(作中オリジナル)
アマルテア級宇宙戦艦
サーカス
デスフィズ・モール
ラロ
バイラリナ
ファントム ガンダムシリーズ初のグリーンカラー基調のガンダム
キルジャルグ
カルメロ
エスピラル
サーカス母艦
用語解説
- 「蛇の足(セルピエンテ・タコーン)」
カーティス・ロスコ率いる木星共和国の特殊部隊。厳密に言えば木星共和国の長であるテテニス・ドゥガチの所有する「ユピテル財団」お抱えの秘密部隊であり、「蛇の足」とはこの部隊が公式には存在しない事を意味する。穿った見方をすれば、ゴーストという物語が蛇足であるという皮肉でもあろうか。
- サーカス
木星共和国のタカ派に属する傭兵部隊。旧木星帝国時代の軍人が中核を成しており、地球圏への侵攻よりも治政と平和を選んだテテニス・ドゥガチに反発している。修羅場をくぐり抜けたエースパイロットと、技術の粋を込めて製作された特注のモビルスーツ:サウザンドカスタムを有しており、これら一騎当千の強者を最大のセールスポイントにしている。
- ゴールデン・エッグス
キゾ中将が率いるザンスカール帝国の精鋭部隊。長谷川氏が過去に手がけた「Vガンダム外伝」にも登場する部隊だが、こちらでは設定で語られただけである。数多のニュータイプを抱えた実験部隊だが、ザンスカール帝国の軍団というよりキゾ中将の私兵集団に近い。途中からキゾ中将の唱える「エル・ザンスカール帝国」の建国と、それに伴う武装決起に奔走することになった。
- エンジェル・コール
本作に於ける最重要ファクター。ザンスカール帝国が生み出した最終兵器エンジェル・ハイロゥとセットで運用される予定であった細菌兵器であり、エンジェル・ハイロゥで眠らせた人類を止めとして死滅させる決戦兵器となるはずであった。その正体は、かつて外宇宙探査に赴いたカーティスらが発見した宇宙細菌であり、人類が有史以来始めて遭遇した”宇宙生物”である。地球発祥の生物とはDNAを構成している塩基配列が根本的に違うため、ワクチンを作ることも免疫を作ることも不可能であり、接触すればものの一分で人間を溶解死させる極めて危険な細菌である。あまりにも毒性が強く、コントロールすることが実質不可能であるためザンスカール帝国側はこれの使用を断念した。だが、地球生命を丸ごと滅ぼすことも可能な威力を持っているため、決戦兵器として各陣営が奪い合うことになった。「蛇の足」はエンジェル・コールをこの世界から消し去るために、修羅地獄の戦いを繰り広げることになる。
関連項目
機動戦士Vガンダム ……本作はVガンダムの「裏」の物語となる。