絶対の服従は完全な絶望からしか生まれない
人物像
ザンスカール帝国特殊部隊「ゴールデン・エッグス」の司令官。
宇宙世紀0153年、自らの野心の為に木星のタカ派部隊である「サーカス」と結託し、宇宙細菌「エンジェルコール」を求めて新生クロスボーン・バンガードと対立する。
既に40歳の壮年であるが心身ともに精強であり、過剰なまでの成果主義・実力主義思想を貫く。このため有能であればたとえ得体のしれない者であっても重用するが、一方で無能な者は部下であっても容赦なく斬り捨てる冷血漢。
加えて、帝国の宰相フォンセ・カガチがザンスカールの女王マリア・ピァ・アーモニアを見出した際に、能力不足としてふるいに落とされたマリア(=エンジェル・ハイロゥのコア・サイキッカー)の一人、「マリア・エル・トモエ」をザンスカールの正式な女王として擁立した「エル・ザンスカール帝国」の建国を画策する野心家。
ただし、マリアとキゾとの関係は利用する側とされる側という訳ではなく、お互いに(それが歪んだ形ではあるものの)愛し合っていると言って相違ない関係を築いており、トモエが遺伝子操作の影響で子をなせない体であることをベルに語るときには、普段の傲岸さをひそめ心を痛める表情をわずかに見せた。
指揮官としては元よりパイロットとしても有能であり、ビルケナウで海賊側のモビルスーツを複数同時(その内2機は一騎当千をコンセプトとしたサウザンド・カスタムである)に相手をして手球に取るだけの操縦技術を発揮する。
一方で、彼の作戦は戦争に無関係な子供をギロチンにかけるなど非人道的な物が多いが、恐怖と絶望で人の心を縛り付けるという意味では逆に効率的であるとし、自身は「その結果逆らう者がいなくなるのであればそれは善である」としてその行動を肯定している。
彼がエンジェルコールを求めるのも、彼が理想とする世界に必要の無い人間を抹殺する手段として有用であると判断した為である。
その正体は、かつての木星帝国総統クラックス・ドゥガチが正妻を迎える以前(70歳後半)に内縁の妻との間に授かった彼の第一子。即ち、テテニス・ドゥガチの異母兄であり、ベルの伯父にあたる人物である。
ドゥガチが地球の良家との縁談を持ちかけられた際、まだ赤子であった彼は当時木星に滞在していたカガチ(当時25歳前後)に預けられ、以後カガチを育ての親として育った。
カガチがドゥガチに尊敬の念を抱いていたということもあり、その第一子である彼はカガチから地位や権力等を与えられ育ったが、母親の愛情を受け成長したテテニスとは違い、親の愛情や人の温もりを知らぬまま成長したため、結果としてキゾの胸中に反骨心と不満を抱かせ、歪んだ野心を育てる結果となった。とはいえカガチに対してはそれなりに情を感じてたらしくカガチの訃報にはやや寂しそうな表情を浮かべた。(なお公式年表ではカガチが木星船団公社を離れ、地球圏に戻ったのが宇宙世紀0145年のため、人生のほとんどをジュピトリス級輸送艦で過ごしていた事になる。その意味ではベルに近い境遇である。)
後年の漫画『F90FF』では両親の別れる原因となった縁談にカガチが一枚噛んでいることが明らかになっている。キゾがこの事実をどこまで知っていたかは不明だが、反骨心や情などが混ざった感情を抱くようになった原因である可能性は高い。また、仮にカガチとその周辺から愛情や温もりを注がれていたとしても、この件を持ち出して愛情や温もりという概念を拒絶・否定していたかもしれない。
また、公表すれば絶大な影響力を得られるであろう自身の生まれについては、実父への恨みもあってあえて表沙汰にする事はなく、自らの実力のみで野心を実らせる事を至上命題としている。
海賊、そしてサーカスとの三つ巴の戦いの最中にエンジェルコールを入手しその研究を進めるが、それまでの行動がカガチらザンスカール主流派にとって目に余るものであり、ついにはその行動がザンスカールの国益を損なうと判断された事からカガチらによって命を狙われるが、独自開発したモビルスーツ「ミダス」を持ち出しエル・ザンスカール帝国を旗揚げ。エンジェルコールを兵器に転用してエンジェル・ハイロゥを目指す。
しかし、その道中で海賊の妨害を受けて計画の大幅な修正を行う事になり、それでもなお追撃を繰り返すフォント・ボーらと死闘を繰り広げるが、機転を利かせたフォントの策によって敗北、戦死、トモエもエンジェル・コールを使い後を追い殉死した。