概要
キゾ中将が来るべきザンスカール帝国への反逆に備え、自らの専用の機体として南米のマリア・シティで極秘裏に開発を進めていたモビルスーツ。型式番号EZM-S01。
全身を金色の対ビーム・コーティングで塗装しており、機体名はギリシャ神話に登場する、神より授かった触れるもの全てを黄金に変える力に振り回され、その後にも神々の演奏対決に立ち会った際に不正審判をはたらき耳をロバのものに変えられてしまった伝説を持つ王「ミダス」に由来する。
絶対的なカリスマ性と高い操縦技術を持つキゾの搭乗を前提とした高性能機として設計されており、機体に用いられている技術は、技術的交流のあった木星系とザンスカール系の双方が用いられている。その為、両者の技術の折衷案とも形容できる設計を持つミダスは二つの異なる技術の融合によって誕生した機体であるとも言える。
また、ジェネレーターの出力は7,480kwと、ザンネック等大型MSの例外を除けばザンスカール帝国のモビルスーツの中では最大であり(ゲームオリジナル機体であるザンスパインを除く)、同世代の通常サイズ(15m級)MSで本機を超えるのは、『最高性能機』であるV2ガンダム(7,510kw)のみである。
スラスターに関してもミノフスキー・ドライブを搭載したファントムに匹敵するだけの推力を備えているなど、一騎当千を唱うサウザンド・カスタムにも劣らない機体性能を持つ。
武装に関しても、携行武装を含めたその全てがミダスのスペックを前提に設計された専用の物であり、膨大なジェネレーター出力を以って初めて使用する事が可能となる。V2ガンダムが、ミノフスキー・ドライブのアドバンテージがあるとはいえ、アサルト・バスターの強力かつ多彩なオプションに割り振っていた出力を、射撃ビーム・ビームサーベル・ビームシールドのみに絞っている点から、これらの出力は推して知るべしである。
しかし武装の構造上、ビームシールドを無力化しつつの近接距離からの攻撃には比較的弱く、これを機体特性でピンポイントに突けるゴーストガンダムとは相性が悪い。それでなくとも高圧のビーム兵器を主力とする本機は対ビーム兵器特化機能であるファントム・ライトの特効対象であり、最終的には自らの高圧ビームを逆用される形で敗北を喫した。
また前哨戦であったグレゴ戦からもわかるように一度でも大型Iフィールド・ハンドで拘束されると、後はミダス・タッチ・フラッシュしか逆転の目が無いのも弱点といえば弱点である。
パイロットであるキゾ中将はビルケナウの時点で驚異的な操縦技術で見せたこともあって、ミダス・タッチ・フラッシュや大出力ビームシールドの存在を除いた場合、ラスボス機にしては妙に地味な活躍しかしていなかったりもする。
(前哨戦だったグレゴ戦では、散々油断してたせいでチェックメイト寸前にまで追い詰められている。またカーティスのX0フルクロスを撃墜できたのも弱体化させたうえに不意打ちで仕留めたためで、尚更そのような印象が強い)
武装
帝王の錫杖(カイザー・スタッフ)
可変によって射撃・近接戦双方に対応可能な複合武装。
クァバーゼのビームソーやガラハドのチェーンソー・ガン等と同じくビーム発生基部を高速回転させる事で射撃戦では高い連射性を、接近戦では断続的な斬撃を実現している。
稼働に必要なエネルギーは、第二期MSとしては一般的な、ジェネレーター直接供給方式のため、稼働出力の足りない他の機体では使用する事すらままならない。
ただ、錫杖の頂点部へビーム発生基部を集中させている構造上、接近武器として構えた際発生基部とミダス本体の間にできる懐の近接距離に隙が生じてしまっている。これを補う為に後述のビームシールドを装備しているのだが、シールドを形成するIフィールドを引きずる事で無力化するフレイムソードを有するゴーストガンダムにはそのまま弱点である懐へ飛び込まれてしまう危険性があった。
可変ギミックつきで細身な形状のくせに不自然なほど頑丈であり、ビーム刃なしでゴーストガンダムを殴りつけても折れ曲がったりはしなかった。
最終的にはバスターモードのクジャクと打ち合った際、頂点部の根元(ビーム刃の無い死角)を攻撃された事でそこから真っ二つに破損、使用不能となった。
ビームクロー
両腕のマニピュレータに備えられたビームの爪。
帝王の錫杖の予備兵装的な意味合いが強いが、マニピュレータの剛性と稼働出力の高さもあり、敵のビームシールドを貫く事も可能。キゾは更にそのままコクピットを握りつぶすといった芸当も見せている。
三本指のため武器としての強度は充分なようだが、その反面複雑な作業には向かないと思われる。
ビームシールド
両肩部に内蔵されたマント状のビームシールド。
ミダスの高いジェネレーター出力によって全身を覆うように展開する事が可能となっており、多目的攻撃兵装「クジャク」のスマッシャーモードの至近距離射撃を(かろうじてではあるが)無力化する程の防御力を誇る。
「広範囲&高出力なのにマント状になびく、っておかしくね?」という疑問は考えないように。
ベスパ機であるためlフィールドの形成、調節機能も高く、両腕のデバイスを使用してシールドの効果範囲を任意に変更する事も出来る。
帝王の錫杖を失ってもこのシールドでゴーストガンダムの全方位ビームを防ぎつつ迫ったが、相手は全方位ビームの発射構造を応用して至近距離よりミダスのシールドを炸裂。その結果自らが生成した高圧ビームを攻撃に逆用されて直撃、機能停止寸前の大ダメージを受けてしまった。
ミダス・タッチ・フラッシュ
本機を象徴する特殊装備。
頭頂部外装が左右に割れると現れる対モビルスーツ用コンピュータ・ウィルスを送り込む投光器。ゴールデンエッグスが過去のモビルスーツ研究を進める中で、モビルスーツの基礎OSに存在したバグを応用した物であり、複雑に明滅する光信号をモビルスーツの視覚センサーから読み取らせ、効果範囲内のモビルスーツの運動プログラムに干渉する。
この光信号を「見た」モビルスーツの運動プログラムは光信号を停止命令と誤認し、その機能を停止させる。ただし、この光信号の効果は複雑な駆動制御プログラムを持つモビルスーツに限定される為、戦艦や戦闘機等には効果は無く、また特殊なセンサー設定を行っている機体に対しても効果が薄くなるといった欠点を持つ。他にも二系統のセンサーを高速切り替えする装備を持つ機体に対してもこの装備は無効化されてしまう。
また、効果範囲内の全てのモビルスーツに効果を発揮する上に有効なワクチン・ソフトの開発が間に合わなかった為、ミダスはこの光信号の影響を受けないよう、頭部に木星帝国系のモノアイとザンスカール帝国系のデュアルアイの二系統のセンサーを装備し、光信号の明滅に併せてこれを切り替える事でウィルスの感染を防いでいる。
この二系統のセンサーの高速切り替えによってのみウイルス感染を防いでいるのでセンサーを一つでも破損してしまうと自機も感染してしまうので使用不能となってしまう。
キゾがザンスカールに反旗を翻す引き金としたのも、あらゆるモビルスーツを無力化するこの装備の存在が大きい。
本装備の一番厄介な面は完全な対抗策が存在しない事だが、裏返せば運用時の安全策も無いと言う事でもある。その為、仕組みさえ解かれば敵側にも模倣されてしまう予防策レベルの運用法しか取れないと言う最大の欠点が生まれてしまっている(同じ事がカオスレルの宇宙細菌弾にも言える)。
本機とグレゴの戦闘を観察していたフォント・ボーはミダス・タッチ・フラッシュを受けてもハロロのサポートを受けながら大まかな仕組みを看破。彼が仲間達と戦場から辛くも脱出、サーカス部隊と合流した事で稼働可能なMSへ対抗策を施されてしまった。
次作『DUST』では各種センサーを一切持たないMS「バロック」が登場しており、五感を排除する事で完全な対抗策が成立している。更に、パイロットの”首切り王”エバンス・ジルベスターは宇宙征服を達成すべく、この機体にミダス・タッチ・フラッシュを搭載して完璧なMSにする恐ろしい計画を立てるが、技術情報を所持していたレオ・オーフォムが自ら破壊した為、この計画は頓挫した。
レオの父親もゴールデンエッグスに所属していた技術者で、技術情報は生前彼女に秘かに預けていた。
カオスレル
ミダスと共に秘密裏に開発されていた、マリア・エル・トモエ専用の大型モビルアーマー。
機体の分類はモビルアーマーではあるが、大型戦艦とも形容できるボディに稼働肢を備えたその機体特性は木星帝国の開発した「モビルシップ」に近い。
ザンスカールから離脱したエル・ザンスカール帝国の旗艦でもあり、ミダスの母艦としての機能も備えている。
また、宇宙細菌「エンジェル・コール」を内包する「ギムレット・ビット」を多数装備しており、これを敵のコックピットに突き刺し、パイロットのみを排除、その後ビットを介して感応波を送る事で無人モビルスーツとして運用する事ができ、理論上は120機ものモビルスーツを操作可能とされている。
支配下に置かれたモビルスーツはさながら「死者の軍団」とも形容でき、ミダスのミダス・タッチ・フラッシュを併用する事で「死者の軍団」の数を効率的かつ爆発的に増やす事が可能。支配下に置かれたモビルスーツのコクピットには宇宙細菌が充満している為、それ自体が殺人ウィルスを満載した「細菌爆弾」として使用する事も出来る。
機体本体や死者の軍団のコントロールには強力なサイキッカーであるトモエの能力が用いられるが、更に12人のサイキッカーがこれを増幅・分担する事によって、運用の効率化を図られた。これにはエンジェル・ハイロゥの技術が転用されているようで、サブパイロットであるサイキッカーたちは常に多大な負荷を強いられる。
なお、全長200メートルにも及ぶ巨体を持ち、多数のビーム砲と大型のフレキシブル・アームによって武装しているが、その総容積の四割は機体制御やモビルスーツの遠隔操作に必要なサイコミュで締められているうえに、ミダス用の母艦機能までも有している。
しかしそれでも、巨大なクローは戦艦すら破壊しフレキシブル・アームの各節と頭部に装備されたビーム砲で敵を寄せ付けない。
なおミダスにも言える事だが、「組織に属してる一将校風情が、こんな汎用性が低いキワモノをどうやって秘密裏に設計・建造したんだ?」という疑問への公式回答はいまだに無い。
(前作までのラスボスは「組織のトップ」だったので、まだ納得できる範囲だったのだが)
一応、『キゾはその出自の為、カガチから越権行為を許されていた』という考察がある。
機構的弱点
ギムレット・ビットはその性質上直線方向への貫通力こそ高いが、横からの衝撃には極めて弱く、軸線にわずかなブレが生じただけでもたやすく分解してしまう繊細な武装でもあり、本格的なオールレンジ攻撃には向かない。
また、この機体もミダス・タッチ・フラッシュを防ぐ為ザンスカールと木星の二系統のセンサーを持つが、本機の本分は敵MSの制圧及び無人制御であり、それに機体容量の約半分(細菌兵器搭載ビットに加えて敵MSの制御コンピュータが容積の4割を占めている)を費やしている分、単純なモビルシップとしての性能は抑え気味となっている。
その為、ミダス・タッチ・フラッシュ対策の二系統のセンサーと宇宙細菌焼却用装備(遅燃性高熱弾)を搭載した同サイズのMA(モビルシップ)と、ミダスを押さえ込む少数精鋭のMS(センサー改修済み)で対峙するのが特殊装備を事実上無力化する手段である。
作中ではサーカス部隊が回収・保管していたディビニダドを対カオスレル用MAに用いる事で対抗策を実践。旧型化していたとは言え単純なモビルシップとしては圧倒的な攻撃力を持つディビニダドに対し、特殊装備の一切を封じられてモビルシップとしての性能の低さを露呈したカオスレルは泥沼の接近戦にもつれ込む。
最後はお互い消耗した末、隙を突いたディビニダドに抱え込まれた上で頭から林檎の花(マンサーナ・フロール)の機首に叩き付けられ串刺しとなり、大破した。
(ただし本機のコクピットはMS形態でいうところの脚部にあたるため、誘爆しなかったこともあり戦闘不能に陥っただけでパイロットたちは無事だった)