カタログスペック
頭頂高 | 19.4m |
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本体重量 | 16.7t |
全備重量 | 38.3t |
ジェネレーター出力 | 11,140kW(5,570kW×2) |
装甲材質 | ハイチタン合金ネオセラミック複合材 |
スラスター総推力 | 164,220kg |
概要
ザンスカール帝国特殊機関、スーパーサイコ研究所が開発したサイコミュ搭載型試作モビルスーツ。形式番号ZMT-S29S。
本編での初登場は第40話「超高空攻撃の下で」(1994年1月7日放送)で、パイロットは宇宙漂流刑を生き延びたファラ・グリフォンがつとめる(小説版ではパイロットも同研究所によって強化人間施術を受けた事になっている)。
小説版Vガンダムにおいては、監督の富野由悠季氏をして(カテジナの台詞により)最強のMSと言わしめている。
全高19.4mと、宇宙世紀0150年代の標準サイズ(15m)より大型で、かつ専用の大型サブ・フライト・システム「ザンネック・ベース」と高縮退加速ビーム砲「ザンネック・キャノン」との同時運用が前提の機体であり、それらを含めると更に巨大となるため、実質的にはMAであるとも言える(実際に搭載艦シュバッテンのMSカタパルトは使えず、MA用ランチから直接離発着していた)。
ザンスカール帝国の宇宙要塞カイラスギリーの超大型メガ粒子加速器の建造で得られたノウハウを用いた、三日月状の開放型粒子加速器を両肩に搭載し、それによって大量のミノフスキー粒子を圧縮・縮退・加速させて生み出される超高エネルギーメガ粒子をザンネック・キャノンのロングバレルによって収束して撃ち出すことで、通常の戦闘空域外からの超長距離射撃を行う戦略級機動兵器である。
当該加速器の最大稼動時には、メガ粒子が円を描いて二つの光の輪(三日月状から円環状へ)を発生するが、敵対MSパイロット、または艦艇の観測員がそれを目にしてなお生き延びていられる可能性は極めて低い。
本機は「ミニ・カイラスギリー」の異名を持つが、使用されている技術や運用法などから、正しく小型カイラスギリーとして開発された機体であると考えられる。
機動力においても、本体から切り離しての遠隔操作にも対応しているザンネック・ベースが高速移動を実現させており、単独で大気圏突入・離脱さえも可能である。
長距離狙撃機という設計上、接近戦は不得手としているが、大型ゆえに装甲も厚い。
しかしながら、本機が「最強のMS」たる所以は専属パイロットに合わせて調整されたサイコミュ・センサーによる、超長距離・高精度の敵機捕捉能力にある。
本機能により、ザンネックは一年戦争以前からのあらゆる兵器の課題となっていた、ミノフスキー粒子下における超長距離狙撃を実現可能とし、戦闘機動を行いながら成層圏から地表の軍事施設、あるいは自陣後方から敵母艦を一方的に撃破するという、文字通り戦略兵器としての有効射程距離を獲得している。
この異次元の有効射程故、敵機はザンネックから攻撃を受けたとしても事実上反撃する術を持たない(無重力圏下かつ直線軌道ならば理論上到達は可能だが、当然接近する過程でザンネックも迎撃や後退機動を行うため、実際は推進剤切れになるか撃墜されるのが関の山だろう)。
よしんば自機が回避できたとしても、母艦を撃沈されれば積載バイタル枯渇による宇宙空間での窒息死か凍死を待つだけである(宇宙世紀における最重要戦術は、如何にして多数の敵艦を撃沈するかであり、MSはそのために有効な手段の一つでしかない)。
よって、ザンネックはこのサイコミュ・センサーを稼働させるためのシステムと、専用強化人間の調整までを一パッケージとして評価するべき兵器と言える。
漫画作品ではあるが、「機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト」においては、センサー未対応のテストパイロットが運用したため、「静止状態での狙撃」しか行えず、バイラリナの反撃で撃破されている。
もっとも、これも大気圏内から衛星軌道上(低軌道内、300km付近)にいたザンネックを正確に捉え何度も狙撃を命中させられる特異なパイロットと、ザンネックからの反撃よりも素早い狙撃を連射できる機体という、特別な戦力がその場に居合わせたために発生した特例中の事態であり、本来ならザンネックが静止状態であろうとも反撃不可能な状況だったはずである(実際、主人公はザンネックの射撃性能を「たまたま偶然」「威嚇目的」と見誤り、ピンチに陥っていた)。
武装
ザンネック・キャノン
ジェネレーター直結・粒子加速型ビームキャノン。両肩の加速器で大量の粒子を限界まで縮退・蓄積し、20mを越えるロングバレルで収束射出する血の色のメガ粒子砲の威力は、既存のあらゆるMS装備・艦載兵器を超える威力と射程を有しており、艦載ビームシールドですら防御する事は不可能である。
更に、この時代のビーム兵器の一般的な機能として、出力・収束率を調整する機能も標準搭載しており、大きく拡散させてリング状のビームを発する事も可能な柔軟性をも有している。
銃身そのものも打撃武器として使えるほどの強度があり、接近してきたガンブラスターの頭部を一撃で殴り飛ばした事もある。
非使用時は、中央部から折りたたむ機構も有しているが、本機の特性上、使用する機会はほぼ無い。
粒子加速器内蔵ビーム砲
両肩それぞれの粒子加速器の始点と終点(上下端)を利用した小型ビーム砲。機体左右に固定されているが、射角が広く連射性も高いため、迎撃・けん制以上の戦果も上げられる。
また、この肩部粒子加速器がアクティブ状態にあると、周辺のメガ粒子をキャノンの加速ビームとして取り込むため、Iフィールド・ビームバリアのような防御兵装としても機能させることができる(ただし防御範囲が左右面を中心に限られ、常時展開できるわけではない)。
胸部ミサイルランチャー
近接防御用。敵機の接近を許した場合に一斉に射出し、再び距離を取る。
ビームサーベル
劇中未使用。
近接兵装。運用思想から使用頻度は低いが、自衛用に装備されている。
ビームシールド
運用時代における一般的な防御兵装。サーベル同様、本体サイズに合わせて通常より大型。
ザンネック・ベース
パイロットの脳波によってコントロール可能な、専用のサブフライトシステム。
単独での大気圏突入だけでなく、大気圏離脱さえ可能とする超高性能を誇る。更に超高空からの狙撃を前提として、下面に高出力のビームシールドを装備しており、地上からの攻撃を完全に防ぐ。劇中ではその風貌から「お皿に乗ったモビルスーツ」と呼ばれていた。
天地の概念の無い宇宙空間戦闘では、ベース底面を敵部隊側に向けておき、キャノンのチャージ・タイムを稼ぐ使用法も見せた。
サイコミュ・センサー
本機最大の特徴となるシステム。サイコミュを敵機捕捉機能に特化させている。
専属パイロット(強化人間)であるファラは、代々ギロチンを司る家系であるグリフォン家のトレードマークである鈴の形をしたサイコミュ補助具を装着し、機体外界に強化・増幅された脳波(サイコ・ウェーブ)を放出する。このサイコ・ウェーブが、通常センサーを遥かに越える距離の情報を拾うアクティブ・センサーの役目を果たし、彼女の脳裏に直接敵機の位置を伝えるのである。
なお、この『情報』は敵パイロット(敵兵)の敵意や殺意といった“負の意識”であるため、全く敵意を抱いていない存在は認知する事ができない。
小説版においては、オリファーがカルル(赤子)をコクピット内に連れ、彼の無邪気な行動だけに集中する――穏やかな想いで心を満たす事で、ザンネックのサイコミュ・センサーから逃れられるという事実を発見している。
ただし、発振されたサイコ・ウェーブは特殊な素養を持つパイロット達には「頭に直接響く鈴の音」として感知されるため、ザンネックの存在、あるいは狙撃のロックオン状況を認知されてしまう可能性があるが、艦艇クラスの運動性では感知後に回避行動を行っても既に遅く、MSの場合は規格外の航続距離を有しているのでなければ、反撃を受けるレンジに入る事は無い。
関連動画
立体物
ガシャポンガン消しシリーズにてラインナップ。ザンネックベースは付属しないが、劇中で使用した装備が同梱する。※現在は、入手困難
2分で作る!ガンダム名鑑ガム3にてラインナップ。一色成形だがザンネックキャノンとザンネックベースも付属し、粒子加速状態での再現が可能となっている。※現在は、入手困難。
MOBILE SUIT ENSEMBLE EX05にラインナップ。こちらは、プレミアムバンダイにて販売された。
ザンネックキャノン、ザンネックベースが同梱し粒子加速エフェクトパーツが付属する。
特典として鈴も付属する。
小話
- ザンコック
本機の生みの親、石垣純哉氏によると『当初は雷神をモチーフにしたもので名前も「ザンコック」というものでした』とのことだった。(が、『名前があまりにもアレだった』のと『【ザンネック】という名称のMSを出したい』ということを聴いたためザンコックは登場することは叶わなかった)
ザンコックのコクピットの配置は、リックディアスのように頭部に配置されており、ビッグキャノンは右肩、粒子加速器を左肩のクローユニットに装備されているものだったという。
ザンネックをデザインする際に【三日月のイメージ】をベースに、ザンコックに採用されていた小型ビッグキャノン、三日月状の開放型粒子加速器や爪先と踵が組み込まれていった。
このデザインが観た監督は『【三日月イメージのMS】とは言ったが、爪先や踵まで三日月のイメージを組み込まなくて大丈夫だよ。』と伝えて現在のようになったという。
余談
- 超射程
設定資料や公式サイトにおいて、「静止軌道衛星から狙撃」と書かれている事が多い。仮に「静止軌道」の距離である場合、地表から35,786kmも離れた地点の地球の大きささえも越える超射程となってしまい、地上からセンサーで確認するのは不可能となる。
実際には「成層圏」で確認されたので、成層圏から狙撃していた事になっている。ちなみに、この成層圏は対流圏と合わせて「大気圏」と呼ばれる。
漫画「機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト」では衛星軌道上(地表から約300km)での狙撃とされる。少なくとも高度2,000km以下の「低軌道」の範囲内と思われる。
- ビームサーベル
自衛用に装備されていたものの、アニメ本編では出番がなかったがいくつかのゲーム作品では使用可能。
関連タグ
機動戦士Vガンダム ザンスカール帝国 サイコミュ 狙撃 斬首
諏訪…もといソア・キャノン:ゲームWar for Earthに登場したジオンのビーム兵器。占領した北米に設置され、ザンネックとは逆に、バイラリナの攻撃と同様、地上から大気圏外の標的を攻撃する。その為、ホワイトベースは北米に不時着を余儀なくされた。(更にガンダムBパーツも破損し、ガンタンクのBパーツを付けたガンダムタンクでスワ・キャノン破壊作戦を実行した。)
メリクリウス:同じくガンダムシリーズで雷神をモチーフにしたモビルスーツだが、こちらは防御と接近戦での運用がメインと役割はまるで真逆(むしろ大型キャノンとそれと直結する大型ジェネレーターを持つ相方の方がコンセプトに近い)。しかもあろうことかこれまた戦略兵器級のモビルスーツに搭乗していたファラと似た声をした奴にボコボコにされてしまった。そして後に本人も搭乗した。
ガンダムTR-6:AOZRe-bootにおいて、火星の衛星軌道上の対地監視衛星「エレノア」に搭載されたビグウィグキャノンⅡにより、衛星軌道上からの精密砲撃が地表の艦隊、及び火星へ降下しつつあった艦隊に対し行われている。エレノアは生体ユニットとして搭載された強化人間エレノアにより管制されており、サイコミュ通信システムだけでなくエレノア自身の能力による観測により補足が行われる。ビグウィグキャノンⅡはビームサーベルで薙ぎ払うような砲撃となっている。エレノアの高度は不明であるが、静止衛星軌道であれば1万7,000km、低軌道であれば300km程度となる。ビグウィグキャノンⅡは本来は[ファイバーⅡ]ユニットに搭載されており、ファイバーⅡ形態及びインレ形態で運用される。
V2ガンダム:U.C.ENGAGEオリジナル装備としてV2アサルトバスターキャノンガンダムがザンネックキャノンのような開放型粒子加速器を装備する。