概要
ビームサーベルと同様のメガ粒子ビームを盾状に展開した防御兵器。
実体盾と比較して多数のメリットを有していたため、宇宙世紀0120年代以降、急速に広まっている。
宇宙世紀122年の第二次オールズモビル戦役において、クロスボーン・バンガード所属のモビルスーツによって本格的に戦場に投入された。
当時の地球連邦軍の主力機種であったジェガン(J型)に対して、防御力の面で圧倒的な性能差を見せつけ、瞬く間にサイド4のフロンティアⅣコロニーを制圧している。この時点での連邦側のビームシールドは、サナリィの実験機であるF91やF90の一部ミッションパックなど高コストな試験装備にしか存在しなかった。
また、ビームシールドはIフィールド・ビームバリアと比較しても多数のアドバンテージを有していたことから、以降急速に普及し、MSの標準装備に至っている。
その後、木星戦役の時代において、それまでは理論上は可能とされていた大気圏突入時の大気摩擦の減衰を、キンケドゥ・ナウの駆るコクピット部が破損したクロスボーンガンダムX1で敢行し、成功している。
宇宙世紀0150年代には航宙艦の艦首に、艦砲射撃に対する防御と大気圏突入の用途を目的として設置されている。新造艦はもちろん、ラー・カイラム級、サラミス改級の旧型艦にも近代化改修として増設しており、民間用のスペースシャトルにすらデブリからの機体保護用に装備されるほど、一般的な装備となった。
原理
前述の通り、基本的原理はビームサーベルと全く同じである。
『面』形状に展開したIフィールドに沿わせる形で、メガ粒子(縮退させたミノフスキー粒子)を発振する。
サーベルと決定的に異なるのは、その展開面積の広さであり、『盾の型枠』となるだけのIフィールドの形成エネルギーと、大量のメガ粒子を発振させ続けなければならない。事前にE-CAPへと縮退・蓄積させた程度のメガ粒子ではまるで足りないため、MS本体がメガ粒子の縮退を行うだけの余剰ジェネレーター出力が必要とされる。サナリィのF91は、独自技術である『大容量メガコンデンサ』を発生器ユニットに用いてメガ粒子の大量貯蓄を行い、出力負担が低くなる仕様を採用している。
15m級MS(第二期MS)は、小型化による本体稼働エネルギーの大幅な削減、小型・高出力のミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の採用により、ビームシールドの搭載が可能となった。
実体盾と比較した場合のメリットとデメリット
メリット
- モビルスーツの主兵装であるビーム兵器をほぼ無効化できる。
- 非使用時にデッドウェイトとなる実体盾を携行する必要がないため、機体重量軽減と機動力向上が見込める。
- 事実上半永久的に稼働するミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉からエネルギー供給を受けるため、攻撃を何度受けても破損しない(シールドビームを吹き飛ばされただけなら再度ビームを張り直すのみで済む)。
- 発生機の出力を調節し、シールドの形状を変化させたり(銃眼スリット状の隙間を形成など)、耐久力を変化させることができる。
- シールドのビームは、サーベルのメガ粒子と同等の性質を持つため、接近戦における武装としても使用可能。ゾロアットなどの機種は、大型のビームソードとしても使用できる形状となっている。
- 同機種(Iフィールドの波長が同質)であれば、複数機のビームシールドを重ねるように展開することで、ゴトラタンのメガビームキャノンなどの大火力兵装の砲撃を防ぐことができる。
デメリット
- エネルギー浪費が激しく、機体に一定以上の余剰出力が必要(専用の動力源を用意する場合は別)。
- シールドの発生機が破壊されると機能が消失する。ただし、ビームシールドと比較して発生機の面積は小さく、被弾の可能性は低い。
- シールドそのものが常に発光するため、隠密性に欠ける。特に宇宙空間では顕著であり、迂闊に展開すると集中攻撃の的になってしまう。
- 基本的にはコンピューターによるオートディフェンスが推奨されているが、コンピューターの虚を衝いた攻撃(アウトレンジ狙撃など)をされるとビームシールドが展開されない。
- 理論上、耐ビームコーティングされた実体兵器は防ぎ切れないケースが有る。
- ビーム放出量が多いため、電磁波の障害を起こし、長時間使用すればセンサーなどへダメージを与える。このため偵察用MSであるダギ・イルスやエビル・Sでは不採用となっている。
- 一部の大型実体盾の様に、ウェポンラックやサブフライトシステムへの転用ができない。
- ビームサーベルを防御した場合、互いを形成しているIフィールドが反発消失して周辺にメガ粒子が撒き散らされるため、双方の装甲が少なくないダメージを受ける。これはビームサーベル同士の切り結びなどでも同じことが生じる。
Iフィールド・ビームバリアと比較した場合のメリットとデメリット
メリット
- 必要となる機体の余剰出力が小さく済むため(というよりも、Iフィールドに必要な出力が莫大すぎる)、他の武装にジェネレーター出力を振り分け、継戦能力を向上できる。
- ビーム以外の実体弾や大気摩擦熱などを防ぐことができる。特に、宇宙世紀120年代以降の小型・高出力ミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉は、ビームの直撃を受けた場合に甚大な核爆発を起こすため、近接戦闘で敵機を撃破した際の機体保護の面で重要となる(ラフレシアは、防御をIフィールドのみに頼っていたため、ビギナ・ギナのジェネレーターの誘爆により花弁を失っている)。
- MS本体に密着して展開できないIフィールド・バリアと異なり、ビームサーベルなどによる至近距離からの攻撃も防御可能である。
デメリット
- 防御範囲や方向が限られ、基本的にシールドビーム面に正対する攻撃以外には対応できない。
- 展開時に発光するため隠密性に欠ける(Iフィールド・バリアは被弾時に斥力が発生し、わずかに発光する程度)。
- 戦艦の主砲やメガキャノン、ヴェスバーなど、高出力のメガ粒子砲が直撃した場合、ビームシールドを形成しているIフィールドが崩されてしまうことがある(大抵の場合本体の撃墜と同義)。
メタ的な意味でのデメリット
- 実はMSが大きな盾を持つ最大の理由は複雑なデザインであるMSを盾の陰に隠す事で作画を楽にするため。しかし、ビームシールドは作画が面倒な上に最悪透過演出までしなければならないという、制作スタッフの作業工程が増加する問題点を抱えていた。
- 現在はCG作画の採用により透過処理が施し易くなっているので問題は少ない。逆に言えば無理にMSに実体盾を持たせる必要もなくなっているのだが、(シャイニングガンダムやゴッドガンダム、ガンダムバルバトスなどの例外を除き)ガンダムの記号(様式美)として主役機は盾を装備し続けている。
アナザーガンダムにおけるビームシールド
新機動戦記ガンダムW
設定画の段階ではメリクリウスのクラッシュシールドにビームシールドが存在する。
ただし、作中未使用であり、作中設定でも実装されているかは不透明。
ちなみに、メリクリウスが主に使っているプラネイトディフェンサーに関しては、電磁場フィールドと明言されている。
機動戦士ガンダムSEEDシリーズ
こちらでは軍事要塞アルテミスの光波防御帯(アルテミスの傘)こと「モノフェーズ光波シールド」から発展した装備として描かれる(C.E.ではビームサーベルよりビームシールドの方が先に実用化された)。
同装備を基にハイペリオン用のアルミューレ・リュミエールが開発され、シールドの表裏で単位相の特性があったことから、外(表)からの攻撃は遮断する一方で位相のない内側(裏)からは攻撃を行えるメリットがある。これを改良し、発生器が小型化・少数化されたものが「ビームシールド」と呼ばれている。
また、モノフェーズ光波シールドからの派生技術として陽電子リフレクターも存在し、C.E.的には同じモノフェーズ光波シールドを親に持つビームシールドの兄弟技術である。『SEED』シリーズのビームシールドは、「アルミューレ・リュミエール」「陽電子リフレクター」「ビームシールド」の3種類が存在する。
ビームシールドは、力場と粒子を並行して展開することでビーム・実弾を問わず高い防御力を発揮する。特に、陽電子リフレクターは陽電子砲さえ防ぎきることができる(代わりに発生器が大型化した他、単位相の特性を失っている)。さらに、発振器が同型であればシールドを結合して、1枚のシールドとして巨大化させることもできる。また、ビーム全般に対して干渉および反発し合うためシールド同士で押し合うことができる一方、強力なビームを受けた際にはその反動により吹き飛ばされることもある。
剥き出しの発生器を破壊されると止まるお約束は宇宙世紀から引き継いでいる。しかし、発振器にはフェイズシフト装甲や対ビームコーティングが施されていることが多く、最低限の耐久力は確保されている。
ビーム兵器であることには変わりないため、対ビームコーティングを施した実体の通過を許してしまう。さらに、対艦刀やドラグーンのビームスパイクのような実体部分を持つビーム兵器の場合、ビームによりシールドが相殺され、そこを実体部分に通過されてしまう(双方の出力次第な部分もあり、シールド側の出力が高ければ相殺されず通過を許さない)。
C.E.のモビルスーツ・モビルアーマーはバッテリー駆動が大半であることから、ビームシールドの膨大なエネルギー消費を賄うことが難しく、搭載機種は核駆動機、あるいは大容量バッテリーを持つ大型モビルアーマーが多い(つまり量産機には基本採用されない・採用できない)。
なお、他のビーム兵器と同様に展開される粒子が何であるかは明かされていない(陽電子リフレクターのみ陽電子であることが明言されている他、原理的に何らかの荷電粒子なのは確定している)。
機動戦士ガンダム00シリーズ
こちらではGNフィールド(GN粒子の対流を発生させる効果)に攻撃力を持たせた装備として扱われる。アリオスガンダムがハサミ攻撃をするために用いられ、設定上存在する防御機能は使われていない。
関連項目
機動戦士ガンダムF91 機動戦士クロスボーン・ガンダム 機動戦士Vガンダム