概要
TVアニメ『新機動戦記ガンダムW』は、1995年4月7日から1996年3月29日まで全49話が放送された。略称は「ガンダムW」など。前作『機動武闘伝Gガンダム』と次回作『機動新世紀ガンダムX』をあわせて、「ガンダム平成三部作」と呼ばれている。正確には『∀ガンダム』も平成作品として数えられる。
従来のガンダムシリーズ同様に戦争を主軸とする物語が展開されるが、本作はより強く「そもそも戦争とは何か?平和とはどういう状態なのか?」というテーマ性に切り込み、「戦争と平和」の定義やそれにまつわる思想について向き合った内容となっている。
池田成監督の指揮のもと、「カッコいいガンダム」を目指して作られた作品でワンマンアーミーのガンダムパイロット達による、まるでアクション洋画のようなスリル溢れる活躍が魅力だが、たまに前作とは違った意味で、おかしな方向に暴走することもある。
具体的に言うと、「番組開始早々主役機がAパートで撃墜される」「ヒロインが主人公の怪我治療のために呼んだ救急車を主人公が乗員を蹴落とし強奪する」「機密保持のために敵勢力に強奪される前に機体を破壊出来る係数を持つ魚雷探しと自身の顔を見たヒロイン殺害のためにヒロインの学校に転校する」「そのまま主人公がヒロインに殺害予告をする」「次の話では主人公自ら自分の機体を破壊しようとし、その結果どざえもん状態でその話が終了する」という展開が、僅か開始2話の間に繰り広げられている。
初期以降もぶっ飛んだ展開やシュールなシーンは多く、「自らを仮死状態にする五飛」「自爆して死のうとしたトロワをグーパンチで咎めるキャサリン」「周りが超人過ぎてやたら苦労を背負わされるデュオ」など、突っ込みどころ満載な見所に事欠かない。
ノベライズを担当した神代創氏は、これらの作風を「ジェットコースターのような展開」と評している。後述するようなビジュアル系のキャラクターが、まるで木曜洋画劇場のようなテンションで暴れ回る画面のインパクトは半端ではなく、近年ではシリアスな笑いの定義に最も忠実な作品の一つとしても取り上げられる事が多い。
この作風は池田氏のセンスによるところが大きかったようであり、中盤で降板し、高松信司氏が監督職を引き継いで(クレジットは池田成名義から変更されていない)以降は、比較的オーソドックスなストーリーが展開されている。
バンク多用を余儀なくされる劣悪な制作環境や、「登板した時点で『前の監督はいなくなったから』と言われた」という高松氏の証言などから、こうした不自然な監督交代は池田氏の逃亡が原因だったのではないか、という噂も立つほどだった。(実際のところ、高橋良輔氏に交代後の文芸支援を依頼していたり、スタッフインタビューでも好意的な言及がされているなど、本当に池田氏が突如行方をくらましたのかという点には疑問符が残る)
TV版の時系列はアフターコロニー195年4月7日(「オペレーション・メテオ」開始)~12月24日(最終決戦「EVE WAR」)、続編のEndlessWaltzは「EVE WAR」からちょうど一年後のアフターコロニー196年12月24日という事になっている。
ガンダムとそのパイロット
まず『機動武闘伝Gガンダム』からの流れを引き継いだ多数のガンダムが登場するという事である。5機のガンダム+それぞれの新ガンダム5機+ライバル用のガンダム1機と、合計11機のガンダムが登場している。『機動武闘伝Gガンダム』では主人公以外の味方キャラクターの機体の乗り換えはなかったが、今作では5人全員が改修、または新しい機体に乗り換えている。ただし多く変化したのは3機だけである。
ガンダムの搭乗者が頻繁に変わるのも他のガンダム作品にはない特徴である。ゼクス・マーキスの機体であるガンダムエピオンも最初のパイロットは主人公ヒイロ・ユイであり、ウイングゼロも暫くはゼクス・マーキスが搭乗しており、最終的にはガンダムパイロットの5人全員が搭乗している。
ガンダムの扱いも目立つ兵器として捉えられているためかやや雑であり、爆破させられたり、邪魔になるからという理由で地球に置いてきぼりにされたり、ヒイロ・ユイにいたっては自爆もさせている。だがこれはガンダムパイロットそのものが兵器になりうるほど知能や身体能力が高い事の証明でもある。
さらには主人公がワンオフ機よりも量産機に乗る機会が多い。というか五飛以外は本編で全員が量産機に乗る場面があり、ヒイロに至ってはウイングと同じかそれ以上にリーオーによく乗っていた。
ガンダムそのものの扱いも他のシリーズに比べて良いとは言えず、舞台が宇宙に移った中盤においてはメインガンダムが5機も用意されているにも関わらずまともに活躍(というか稼働)している機体が皆無といった異例の展開を見せている(一応ストーリー自体はそれでもまともに進んでいる)。しかし自身の相棒を破壊されて絶叫するデュオ、サンドロックを半ば擬人化視して扱うカトル、妻の名前を名づける五飛など、ガンダムに対して個人的な思い入れを抱くキャラが意外に多いのもこの作品の特徴である。
この作品におけるガンダムの定義は主役機5機のフレームや装甲に使われていた素材「Genetic on Uni-versal Neutraly Different Alloy(電気的に中性的な異種構造の宇宙製合金)」に由来する。名目上は合金だが宇宙でしか生成出来ないという特徴から地球生成の合金との区別のために語尾に「-num」が付けられ、ガンダニュウムと呼ばれるようになった。
複雑に入り乱れる戦況
本作の特徴の一つは組織対組織・国家対国家といった敵対構図が複雑で解りにくく(劇中序盤で敵側のOZと地球連合が内紛を起こし、その後OZ内でも内紛が起こる等、主人公側とは関係ない部分での紛争が次々と起こり主導者が変わる)、主演キャラクターの所属も目まぐるしく変わる事である。ガンダムパイロット達も元々コロニー側の代表としての立場が確立されているわけではなく、劇中ではコロニー側の政治的判断によって見捨てられ、フリー状態で戦うことになってしまう。最大の敵組織OZもストーリー中盤でリーダーが交代してしまう。
また、ガンダムやマグアナック隊のような特例以外はどの陣営も同種のMSを運用している為、画面上での陣営の判別もつきにくくなっている。ガンダムパイロット達も共同の敵に対しては協力することはあるものの、基本的に仲間意識は無く、対立することや工作活動のために敵組織側で登場することも多い。ストーリー終盤でゼロシステムの導きによってようやく団結することとなる。
女性ファン獲得の道を開いたガンダム
忘れてはいけない特徴として、主人公ヒイロ・ユイをはじめとする美男子キャラクターが登場する事である。これまでも女性ファンがガンダムシリーズの各作品に思い入れを抱くパターンはいくらかあった。しかし、ここまで露骨とも言えるパイロットのアイドル視を推し進めたのは本作が初である。
当時は女性向けのメディアへも数多く発信され、これが予想外のヒットを飛ばした。
が、実はメインスタッフは特に意識しておらず、これらの反応に大きく驚いたという。よってガンダムパイロットのアイドル化はどちらかと言えば周囲の盛り上がりによって生まれたことである。
またもう一人の主人公であるリリーナ・ドーリアンがストーリーの中核を担う存在としても大きく、女性キャラが単にビジュアル的な役割だけではなくストーリーに介入していくという意味でも、女性ファンを惹きつけたと思われる。
続編および外伝
- OVA:『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』が、OVAならびに劇場版として製作された。
- 小説:『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』では、『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』の未来と『新機動戦記ガンダムW』の過去の出来事を描いている。
- 漫画:『新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST』は、『新機動戦記ガンダムW』と『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』の間を描いている。
- 他:ガンプラ主体の外伝冊子『新機動戦記ガンダムW DUAL STORY G-UNIT』『新機動戦記ガンダムW ~ティエルの衝動~』など。
平成三部作の中では特に派生作品が多く、立体化においてはEndless Waltz版のガンダムばかりが優先されていたが、最近はTV版の方も徐々に立体化されつつあり事態はそれなりに改善されつつある。
ストーリー
A.C.195年、地球圏統一連合の支配に反目する一部のスペースコロニー居住者による地下組織が「オペレーション・メテオ」を発動させる。それは流星に偽装した5機のモビルスーツ「ガンダム」を地球に降下させ、秘密組織OZに対して破壊活動を行うことが目的であった。この工作員の1人であるヒイロ・ユイの乗機は、地球への降下中にゼクス・マーキス搭乗のOZの攻撃輸送機に墜落させられ、その後リリーナ・ドーリアンと出会うこととなる。そして、互いを知らぬまま地球に降下した他の工作員たちデュオ・マックスウェル、トロワ・バートン、カトル・ラバーバ・ウィナー、張五飛とともに時代を動かしていくことになる。
登場人物
主要キャラクター
ヒイロ・ユイ | デュオ・マックスウェル | トロワ・バートン |
---|---|---|
CV:緑川光 | CV:関俊彦 | CV:中原茂 |
カトル・ラバーバ・ウィナー | 張五飛 | リリーナ・ピースクラフト |
CV:折笠愛 | CV:石野竜三 | CV:矢島晶子 |
- ゼクス・マーキス / ミリアルド・ピースクラフト(CV:子安武人)
- トレーズ・クシュリナーダ(CV:置鮎龍太郎)
- ルクレツィア・ノイン(CV:横山智佐)
- ドロシー・カタロニア(CV:松井菜桜子)
- レディ・アン(CV:紗ゆり)
- サリィ・ポォ(CV:冬馬由美)
- キャスリン・ブルーム(CV:鈴木砂織)
- ヒルデ・シュバイカー(CV:荒木香恵)
ガンダム開発者
マグアナック隊
OZ
- オットー(CV:森川智之)
- ワーカー / オズワルド・ワーカー(CV:中村大樹)
- アレックス(CV:難波圭一)
- ミュラー(CV:草尾毅)
- メーザー(CV:関智一)
- ニコル(CV:森川智之)
- ツバロフ・ビルモン(CV:幹本雄之)
- トラント・クラーク(CV:中博史)
- クライスト(CV:目黒裕一)
ロームフェラ財団
- デルマイユ / デルマイユ・カタロニア(CV:加藤治)
- ウェリッジ(CV:有本欽隆)
- アハト(CV:島香裕)
- タウンゼント(CV:有本欽隆)
- トレーズの祖父 / サンカント・クシュリナーダ
- カタロニア将軍 / キーリア・カタロニア
地球圏統一連合
- ノベンタ(CV:藤原啓治)
- セプテム(CV:千葉一伸)
- ベンティ(CV:石田弘志)
- ボナーパ(CV:河合義雄)
- ダイゴ・オネゲル(CV:中村大樹)
- ブント(CV:中博史)
- ナナキ(CV:千葉一伸)
- ギンター(CV:難波圭一)
- クラレンス(CV:渡部猛)
ホワイトファング
その他
- 指導者ヒイロ・ユイ
- ピースクラフト王/マルティクス・レクス
- カテリーナ・ピースクラフト
- ドーリアン(CV:大塚明夫)
- ドーリアン夫人(CV:冬馬由美)
- パーガン(CV:中博史)
- 団長(CV:石田弘志)
- シルビア・ノベンタ(CV:西原久美子)
- ノベンタ夫人(CV:滝沢ロコ)
- テッド・ナリタ(CV:藤原啓治)※
- ザイード・ウィナー(CV:有本欽隆)
- イリア・ウィナー(CV:浦和めぐみ)
- 竜紫鈴(CV:堀絢子)
※小説版で名付けられた名前である
新機動戦記ガンダムW EPISODE ZERO
新機動戦記ガンダムW BLIND TARGET
新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST
新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
- マリーメイア・クシュリナーダ(CV:佐久間レイ)
- デキム・バートン(CV:依田英助)
- 真のトロワ・バートン(CV:中村秀利)
新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop
登場したモビルスーツ(モビルドール)
オペレーション・メテオサイド
ウイングガンダム | ウイングガンダムゼロ | ウイングガンダムゼロカスタム |
---|---|---|
ガンダムデスサイズ | ガンダムデスサイズヘル | ガンダムデスサイズヘルカスタム |
ガンダムヘビーアームズ | ガンダムヘビーアームズ改 | ガンダムヘビーアームズカスタム |
ガンダムサンドロック | ガンダムサンドロック改 | ガンダムサンドロックカスタム |
シェンロンガンダム | アルトロンガンダム | ガンダムナタク |
OZサイド
トールギス | トールギスⅡ | トールギスⅢ |
---|---|---|
ガンダムエピオン | マグアナック | トラゴス |
メリクリウス | ヴァイエイト | オリファント |
エアリーズ | トーラス | キャンサー |
---|---|---|
リーオー | ビルゴ | ビルゴⅡ |
パイシーズ | ||
新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
サーペント |
---|
新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST
アフターコロニーの世界において、全てのモビルスーツの始まりの機体がトールギスである。
この機体を扱いやすさ・コストパフォーマンスを高めたのがリーオーであり、究極の性能を求めたトールギスの設計コンセプトを引き継いだのがウイングゼロである。ウイングゼロは最初のガンダムタイプで、本機を元にゼロシステム撤去・性能を分割して5機のガンダムが開発された。
その他
主題歌
オープニングテーマ
「JUST_COMMUNICATION」(第1話 - 第40話)
作詞・作曲・編曲・歌 - TWO-MIX
「RHYTHM_EMOTION」(第41話 - 第49話)
作詞・作曲・編曲・歌 - TWO-MIX
エンディングテーマ
「It's Just Love」(第1話 - 第49話)
作詞 - 松本花奈 / 作曲 - 小泉誠司 / 編曲 - 多田光裕 / 歌 - 大石ルミ
関連イラスト
関連動画
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ガンダム アナザーガンダム ガンダム平成三部作 EndlessWaltz
モビルスーツ モビルドール オペレーション・メテオ
ガンダムW100users入り ガンダムW500users入り ガンダムW1000users入り
鎧伝サムライトルーパー:監督:池田成氏(途中交代も同じ)・高松信司氏(トルーパーでは絵コンテ)、キャラデザイナー:村瀬修功氏(トルーパーではOVA版のキャラデザ)とスタッフが同じで、トルーパーメンバーの特徴がWキャラ達に反映されていたり、女性人気を博したり、OVAが制作されたりと幾つか共通する部分がある。
ZOIDS:シリーズ構成を務めた隅沢克之氏が後に脚本家として手掛けた作品。作中ガンダムWを彷彿させるネタも存在する。
シリーズ
機動武闘伝Gガンダム ← 新機動戦記ガンダムW → 機動新世紀ガンダムX