トレーズ派
とれーずは
秘密結社OZの軍人でも総帥トレーズ・クシュリナーダを崇拝する層の事。
トレーズはそのカリスマ性や実力をもって部下を魅了し、多くの支持者を抱えている。彼のためなら自分の命を投げ出す事も厭わない。
ただし物語序盤の地球圏統一連合時代、オペレーション・デイブレイク発動からもしばらくはゼクス・マーキスに誠意を尽くす部下の方が色濃く描写されていた。トレーズ派とされる人物で出てくるのもレディ・アンくらいであり、この頃はまだトレーズの思想がはっきりしていなかったのもあり、単にトレーズに忠誠心を誓う信奉者という描かれ方であった。
トレーズ派という言葉及びその言葉がトレーズの思想を支持する者という意味合いが強くなってきたのはOZのモビルドール導入にトレーズが反発しスポンサーとも言うべきロームフェラ財団に背く軍人が続出するようになってからである。判別のためかトレーズ派の軍服は緑色、対するロームフェラ財団派は青色で描かれていることが多い。
どのトレーズ派かにもよるが大体はこんな感じである。
- 戦争は生身の肉体(が操縦するモビルスーツ)によって行われるべきである。モビルドールは邪道。
- よっていかに不利な状況でも命を張って戦うガンダムパイロット達は新しい時代を築き上げる可能性を秘めている戦士の鑑だ。彼らの事は全力で支援すべきである。
- 一撃で多くの敵を一掃する戦略兵器は邪道である(要するにコロニーレーザー級の破壊力を持つ大口径ビーム砲や核爆弾の事。なお、ツインバスターライフルを持つウイングガンダムゼロはコロニーや地球破壊目的ではなくむしろ守る目的の少数精鋭が所持しているため例外と思われる)。
- 自らを優位に立たせるために人質を取るのも邪道だが、戦争の悲惨さを市民に知らしめるため周囲を戦火に巻き込むのは構わない(ただし完全平和主義を広める拠点となるサンクキングダムだけは例外だった)
序盤ではノベンタ元帥の誤殺やOZとコロニーとの和平締結など巧みな手段でガンダムパイロット達を追い詰めたトレーズだったが、中盤に宇宙で敗者となりながらも生き延びた彼らに未来の可能性を感じ、総帥を降りてからは彼らを追い詰めた事は一度もない。
そのためOZ分裂後のトレーズ派は一応黒幕ポジションに仕える軍人なのにガンダムパイロット達に敵意を向けるどころか、彼らの命を幾度も救ってすらいるというガンダムW本編全体をしっかり見てなければまったくもって意味が分からない奇怪な現象も発生している。逆にガンダムパイロット達は(おそらく大半がロームフェラ財団派だろうが)基地破壊や市街地での戦闘沈静を目的に攻撃を仕掛け続けているのだが…
そうかと思えば続編では再び彼らと敵対することになるのだから、この作品がいかに勧善懲悪から程遠い作風かというのがよく表れているとも言える。
一概にトレーズ派といってもあまりに数が多すぎる事(オペレーション・ノヴァで地球と宇宙共に「トレーズ派は殆ど始末された」と言及されているにもかかわらずなお沢山の軍人が出てきている)やOZという組織が幾度も分裂を繰り返してきたのもあり、自分がトレーズの思想と真逆の事をしているのに気付かないトレーズ派、ロームフェラ財団の方針に反発したいためだけにコロニー側に寝返ったトレーズ派、同じOZ軍でありながらリーブラを強奪しトレーズのいる世界国家軍に謙譲しようとコロニーを人質に取ったトレーズ派、闘争心に植えていたところをマリーメイアに拾われたトレーズ派、さらには劇中ではあまり触れられなかった旧連合残党のトレーズ派もいるなどそのバリエーションは多岐に及びすぎている。
トレーズの思想を理解できてないトレーズ派
そもそもは理解しきれていない人間の方が多いのだが、ここではあまりにも思想が逸脱し過ぎている層について説明。
とにかく序盤に多く見られた層で、任務のためなら味方含む周りを巻き込んだり人質を取ることも厭わず、中には殺しを楽しんでるとしか思えない、むしろロームフェラ財団派が好みそうな真逆の価値観を持った強硬派が多かった。
この頃は上述通りトレーズの思想などには触れられず、とりあえず「トレーズ様が喜びそうなこと」を行動原理にしているだけの軍人といったところ。
このような齟齬が生じたのは元々はトレーズが総帥に就任してから2年と浅く長年地球とコロニーを制圧していた地球圏統一連合色が強かったことやトレーズが実際に戦場に赴くケースも滅多になく自身の思想を明確に打ち明けなかったのが起因している。
彼が全てを任せっきりにしていた腹心のレディ・アンの強硬路線も影響していると思えるが、レディに限らずルクレツィア・ノインの教え子にもアレックスとミュラーのような問題児は発生している。そもそも、トレーズが信頼を置いているそのレディすらモビルドールの本格運用が開始されるまでトレーズの真意を理解しきれていなかった。
OZ分裂以降もこのようなトレーズの意思からは程遠い強硬路線のトレーズ派は消滅したというわけではなく、物語終盤の宇宙軍壊滅後孤立無援となったトレーズ派の残党がトレーズに宇宙戦艦リーブラを献上しようとC421コロニーを人質に取るという序盤のOZのようなやり方を行っている。
当然のことながら、これはトレーズにも認められたものではなく報告をきいて、捨て置けと言われている。
ロームフェラ財団に反発するトレーズ派
劇中ではおそらく最も多く映っているであろうトレーズ派。上記通りモビルドールを巡る内乱から発生し、上記主義主張を掲げる軍人が多い。
序盤に多く見られた上述の強硬派はこの時改心したか己の価値観そのままにロームフェラ財団派になったか、または上記のリーブラを強奪しようとした残党のようになったかは不明。
ロームフェラ財団のやり方に反発した事をきっかけにガンダムパイロットに味方する行動を取ることが多いのが特徴。
ヒイロ・ユイに至っては、最初のウイングゼロ戦後に死刑囚としてカトルと共に捕獲された時とルクセンブルクでビルゴ隊からタコ殴りにあってた時の二度も命を救われており、ヒイロもまた借りを返すためとはいえサンクキングダムで傷だらけで追い込まれていたトレーズ派にビルゴ隊を迎え撃つためのトーラスを貸し与え間接的に彼らを救っている。
そもそもピースミリオンを失ったサリィ・ポォやハワードなどの第三勢力がトレーズ派を中心とする世界国家軍の宇宙拠点だった資源衛星MO-Ⅱへの受け入れを快く受け入れてもらえたのも彼らがガンダムパイロットの味方勢力であったためである。
ただし市街地などでも平気で戦闘を始めるため、ヒイロが一時期レッドワンとしてトレーズ派のレジスタンスに参加した際には避難警告も出さなかった事に関して難色を示し、後に命令を無視し独自行動を取っている。
このことからもやはり非力な地球やコロニー、その住人を巻き込ませない戦いを望むガンダムパイロット達には一概に味方とは言い難いところがある。そのため協力には応じても彼らと共闘することはなかった。
後にOZ地球軍所属だったトレーズ派は、トレーズの総帥復帰を受け世界国家軍の一部として転属となった。
宇宙軍の方は後述のホワイトファング・ロームフェラ財団派両方に命を狙われていた背景もあり、地球軍以上に過酷な状況を強いられている。結果的にホワイトファングに寝返った以外に生き残ることが出来たトレーズ派はレディを中心にごく少数しかいない。
コロニー側に寝返ったトレーズ派
俗に言うホワイトファングの一員。物語の進行上、全員元OZ宇宙軍だった。
元々OZは地球拠点にもかかわらず、ロームフェラ財団の方針が気に入らないという理由でコロニー側に身を売ったトレーズ派。トレーズ様の意思に反する行動を取るくらいなら拠点を捨てたほうがマシという考え方だが、アルテミス・レボリューション時にトレーズ派からさらにOZ宇宙軍側のトレーズ派とコロニー側のトレーズ派に分裂し、共食いが発生することになってしまった(C421コロニーを盾に取った軍人が前者にあたる)。
しかも上述通り後に地球側もトレーズ派を中心にした世界国家軍を結成しているため、皮肉にも最終決戦であるEVE WARでもトレーズ派VSトレーズ派の共食いが発生している。
しかしトレーズ自体は敵味方の概念よりも戦場の構図に重きを置いているためそこまで気にしていないと思われる。
ただし、トレーズがOZ総帥復帰したという報を聞きすぐにホワイトファングを裏切ったトレーズ派もいたようで、劇中ではトーラスに乗った5名の脱走兵が登場する。
途中アルトロンガンダムの介入により唯一生き延びた兵も、ガンダムの戦いにトレーズの理想を見出し、自身も司令塔のホワイトファングの一員が乗る輸送艇に特攻を仕掛け死亡している。
だがこれほどまでに数を抱えるトレーズ派でも、レディとゼクスを除き「犠牲者を増やしてまで自身の美学に基づいた戦争と平和路線を実現しようとした自身を『悪』と称し、その責任を取るために『己の正義に生きる理解者』に殺される事を何よりも望んでいる」というトレーズの真意を見抜いた者はいなかった。
そして、このEVE WARでトレーズが戦死したことによりこの決戦を生き残った世界国家軍・ホワイトファング双方のトレーズ派の多くが露頭に迷う事となる。
マリーメイア軍に賛同したトレーズ派
トレーズ没後、戦士としての意義を失ったトレーズ派を実娘を名乗るマリーメイア・クシュリナーダの肩書を悪用したデキム・バートンがマリーメイア軍の一部として集めたもの。
ただし「勝者になりたい」という主張や平気でコロニーを盾に取る行為などマリーメイア軍の方針自体はトレーズの理想とは程遠いもので、むしろロームフェラ財団派に近い。そもそも彼女を教育したのはデキムなので同じく真のオペレーション・メテオの根幹に関わるカーンズ派かホワイトファング派と呼んだほうが正しいか。
トレーズ派もそのような思想を支持している辺り、TV版序盤同様行動理念も「トレーズ様の娘が喜ぶことをやっているだけ」なのかもしれない。トレーズを失った喪失感やトレーズ派にはホワイトファングに寝返った者もいるので思想に破綻が生じるのは十分あり得ることだが…このようにトレーズ派の思想が先祖返りしているため五飛除くガンダムパイロットにとっては珍しくトレーズ派と明確に敵と認識し合う展開である。
しかしパイロットを殺さないガンダム達の戦いやリリーナ・ピースクラフトの奮起とドロシー・カタロニアの誘導により発生した「武器を使わず平和を望む個々の国民が立ち上がり平和を掴もうとする戦い」を目の当たりにし、トレーズ派はそれがトレーズのもう一つの理想であると気付かされ次々と武器を捨てる事を決意し、降伏している。
そして大統領府の核シェルターをヒイロに突破されたことやマリーメイアが改心したこともあり、終盤追い詰められたデキムは真意を打ち明けると、自らの野望のためにトレーズの血筋と残党を利用したことを知ったトレーズ派の怒りを買い、部下に銃殺されるという自業自得な最期を迎えている。