概要
劇団木山事務所、賢プロダクション所属を経て、死去するまではAIRAGENCY代表取締役を務めていた。
1964年10月5日生まれ。東京都生まれ、岩手県育ち。血液型はA型。
七色の声を持つというタイプの声優ではなく、気さくというか独特のフリーダムな雰囲気を放つ特徴的な声色とテンションを自在に操る演技力が持ち味のタイプの声優で、聞けば誰もがそうと分かるタイプの声優だった。
その演技力に物を言わせて演じた役柄は幅広く、さっくりしたオッサンや、頭の切れる伊達男、マッドネスな悪党を好演する演技派であった。
生涯にわたって、ジャンプ系列の漫画作品の登場人物も数多く担当しており、『ジョジョの奇妙な冒険』のエシディシを演じた時は「怪演(焔)王の流法」の異名をとった。
デビュー作は本人も覚えていないという。が、ほぼ同期デビューとなる森川智之曰く、あるアニメで藤原が初めてアニメの現場に入った際(森川曰くこれがほぼデビュー)、映像の口パクと台詞がほとんどが合っていなかったらしい。しかし本人は気にせず飄々とやっていたため、森川は「すごい人だな」と驚いたという。ただ藤原曰く何故か声優としての初仕事で「彼は経験者だから」と紹介されて現場に入ったらしく、新人なのにも関わらず手慣れた人材として振る舞わないといけなかったという裏話がある。だとしてもすごい度胸だが。
以降森川は藤原と端役で多くの共演を経て、名実ともに盟友となる。
こうしてキャリアを積み重ねる中で、活動2年目にして得た『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし役のイメージが強かった。このためネット上では通称“ひろし”と呼ばれた。ただし後述する降板以降、役柄への復帰が叶うことは無かった。
なお、今となっては嘘のような話だが、先の通り国民的長寿番組のレギュラーを務めていながら、藤原啓治という声優個人の知名度が目立ってくるようになるのは、2000年以降のことで、ブレイクという意味では遅咲きであった。
それまではガンダムシリーズで名前のない脇役として出演していたり、洋画の吹き替えにおいては後に二代目野原ひろし役を務める森川智之が同期なのに主演を務める一方で、名もない端役や小悪党を務めるケースが多かったり(『コン・エアー』(テレビ朝日版)、『ルーニー・テューンズ:バックインアクション』など)レギュラーを演じる方が少なかった。その後は「家庭を持つサラリーマンの一般像」というイメージを脱却し、幅広い役柄を得るようになっている。
上述のひろしをはじめ主要人物の父親役を演じることも多く、自身が代表取締役を務めるAIR AGENCYのブログにおいても「ベストファザー賞間近」と賞賛されたほどであった。
因みに、藤原当人は生涯独身であり、生前はそのことを同じく声優で友人である子安武人にネタにされたこともある。
一方、シリアスな作品においては、自身の演じる者が物語途中で死亡退場してしまう事が多いという変なジンクスがある(例:『機動戦士ガンダム00』、『鋼の錬金術師』、『青の祓魔師』、『ぬらりひょんの孫 千年魔京』、『進撃の巨人』など)。
『カッコカワイイ宣言!』や『マジでオタクなイングリッシュ!りぼんちゃん』、『プピポー!』などのアニメ作品では音響監督としても参加することもあり、自身の担当作でも(比較的オイシイ役柄で)出演していた。
また、死去した鈴置洋孝や青野武、仲村秀生、辻谷耕史から持ち役の一部を引き継いでいた。青野とは『うしおととら』の蒼月紫暮役、『バットマン』シリーズのジョーカー役を演じているなど、共通点も多い。
インタビューで映像出演する際は大半においてボケや冗談を挟むなど気さくな一面を視聴者の前に見せていたが、マイクを離れると一転して非常にシャイで恥ずかしがり屋な性格だったとされる。ただし櫻井孝宏は「馴れ合わないだけで内気な人ではない」と評している。
ただ実際、ラジオで小見川千明が「好きなタイプは藤原啓治さんと答えるようになった」と話すのを聞いて藤原が「本当かよ?」と尋ねると、その小見川から面と向かって「私、啓治さんが思っている以上に、啓治さんのこと好きなんですよ」と言われ、収録中なのにも関わらず酷く狼狽。顔から文字通り汗が吹き出ていたなど、照れ屋な面は垣間見える。
晩年
晩年は癌を患っていることが判明し、2016年8月8日、「AIR AGENCY」公式サイトにて、癌という病名を伏せた上で療養のため休業に入ることが発表された。休養期間などの詳細は一切公表されず、癌であることがわかったのは逝去後である。
藤原の療養を受けて、下記の通り代役・後任が立てられることとなった。
- 野原ひろし(クレヨンしんちゃん)、ホランド・ノヴァク(交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション)、服部全蔵(銀魂)→森川智之
- ハンネス(進撃の巨人)、榎本勇(宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち)、林藤匠(ワールドトリガー)→津田健次郎
- 藤本獅郎(青の祓魔師 京都不浄王篇)、ナレーション(激録・警察密着24時!!)、山城洋介(VRカレシ)→平田広明
- ベルガー・ストーン(マクロスΔ)→小形満
- Mr.Robot(MR.ROBOT/ミスター・ロボット)→松本保典
- 樋口師匠(四畳半神話大系シリーズ)→中井和哉
- ハンサム(ポケモンジェネレーションズ)→堀内賢雄
- ジョーカー(レゴバットマン ザ・ムービー)→子安武人
- Mr. K(閃乱カグラ PEACH BEACH SPLASH)→山本兼平
- ヴァシリー・フェット(ストレイン 沈黙のエクリプス)→山野井仁
- オイゲン(GRANBLUE FANTASY The Animation)→山路和弘
- ウェス・ガードナー(スクリーム・クイーンズ)、マルタン(夢王国と眠れる100人の王子様)→井上和彦
- フィオーレ国王(劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-)→高木渉
- 曇大湖(曇天に笑う〈外伝〉 ~決別、犲の誓い~)→大川透※1
- アル(アルデバラン)(Re:ゼロから始める異世界生活 -DEATH OR KISS-)→関智一
- トラヴィス・カークランド(ガンダムバーサス)→小松史法
- ネスタ(Dance with Devils -Fortuna-)、不動ZEN(アクエリオンEVOL※2)→小山力也
- リ=ガン(ログ・ホライズン)、魔術士ゴウセル(七つの大罪 憤怒の審判)→多田野曜平
- 石神百夜(Dr.STONE)→三上哲
※1 復帰作『スパイダーマン:ホームカミング』にて共演。
※2 2022年7月ホール稼働予定のパチスロ アクエリオンALLSTARSより
2017年2月15日には、バレンタインのチョコレートなどのプレゼントを感謝するコメントをTwitter公式アカウントにて発表している。
持ち役の多くは森川智之、津田健次郎、平田広明等の同業者達に委ねられた。
同年6月16日には、事務所ホームページより、療養生活から体調を考慮した上での活動再開を表明し、映画『スパイダーマン:ホームカミング』のアイアンマン/トニー・スタークの吹き替えを機に徐々に新規の仕事を受け始めるも、復帰後も『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしや『進撃の巨人』のハンネス等の役には再登板することはなく、一部の作品については復帰前に最終回を迎えたために事実上の降板となった。
その後は癌闘病のためか、復帰直後はやや声がハイトーンとなったが、徐々にペースを取り戻していった。ただし公の場に出る機会はなくなり、朗読会などごくごく一部(その朗読会でも指を負傷し、やややせ細った身体に加えて頭にはニット帽というスタイルであった)のみとなり、インタビュー時も写真は掲載しなかった。が、言葉上ではあくまで不調を表に見せなかった。
それでも仕事数は徐々に回復していき、従来のペースに戻りつつあった。これでも同業者曰く自分のペースで仕事を受けていたようだが、傍目から見ればほとんど病気は快復に向かっているのだろうと思っていた。
が、再び病状が悪化し、2020年4月12日、55歳で突然他界した。先のこともありほぼ完全復帰間近と安堵していた関係者やファンは強いショックを受けた。
同年4月16日に、事務所公式サイトより、その訃報と正式な病名が発表され、日本中にも強い衝撃を与えた。
長年声優として数多くの人気作品で活躍していたため、幅広い年代に親しまれており、ネット上ではファンや同業者、有名人からTwitterを中心に逝去を惜しむ投稿が多数寄せられた。因みに亡くなった翌日である4月13日は『クレヨンしんちゃん』が放送されてから28年でもあった。最期までひろし役に復帰しなかったのは、この闘病のことがあってのことと思われる。ただ余命を察して復帰しなかったというわけでもないようで、逝去した年も新たなレギュラーを受けるなど将来を悲観していた風ではないようである。
『しんちゃん』の番組内では追悼メッセージが作成され、一部の声優変更をせず野原ひろしピック回の放送や、ライブラリ音声で「しんのすけー!」と呼びかける声が流された。矢島の降板と藤原の死去により『しんちゃん』初期から現在まで出演している野原家の担当声優は野原みさえ役のならはしみきと野原ひまわり役のこおろぎさとみのみ、番組当初からいる人物としてはならはしのみとなった。
専属で務めていた『激録・警察密着24時!!』のナレーションは平田や杉田智和、諏訪部順一などが代役を務めた後、数多くの作品で共演した玄田が引き継ぐこととなった。
『グランブルーファンタジー』のオイゲン役は休業時に代役を務めた山路和弘が再び正式に2代目として登板することとなった。
なお、同年7月3日に発売されたゲーム『マーベルアイアンマン VR』の日本語吹き替え版では、トニー・スタークの声で収録に参加していたものの、病気入院のため一部シーンのみ中野泰佑が代役を務めている。
山城洋介役で参加予定と発表済であった『VRカレシ』は平田が代わって演じることとなった。
ドラマCD『スカーレット・ウィザード』のケリー・クーア役は生前より親交の深かった櫻井孝宏が引き継いでいる。
なお、没後に出演作として発表されたテレビアニメ『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』(大統領役、ミラの叔父役)と『無能なナナ』(鶴岡タツミ役)は生前に収録が完了しておりライブラリ出演を含むゲーム作品を除けば最後の出演作となっている。
『うたわれるもの』シリーズで藤原はハクを演じており、ゲーム版『偽りの仮面』『二人の白皇』およびアニメ版『偽りの仮面』にてキャスティングされていたが、藤原の死によりアニメ版『二人の白皇』のハクや『ロストフラグ』の(藤原の音を再利用していない)新規収録のハクは利根健太朗が役を引き継いでいる。『うたわれるもの』ゲーム内では、元来利根が演じていたキャラクターのオシュトル死後、藤原の演じるハクがオシュトルになりすますという展開になっているのだが、声優においてはその逆のことが起こることとなった。利根はハク役を引き継ぐというオファーを受けたとき「最初断ろうかと思った」「いつも啓治さんのハクの声を聞いてから収録に臨んでいる」などと、藤原に対する強い敬意とリスペクトを語っている。
『ONE PIECE』の緑牛は諏訪部順一が後任を担当。藤原は僅か1話のみの担当だったが、諏訪部はあくまで二代目であることを意識し、藤原の癖を再現したような演技で同役に臨んでいる。
人物
木山事務所時代の同期だったかないみかいわく、若い頃は人嫌いなところもあった。しかし声の仕事をやりたいという思いを聞いたかないが、賢プロダクションとの縁を繋いだことで、声優としての仕事にシフトしていったという。その後は後輩に気さくに声をかけ、時にはアドバイスするエピソードなどが多く語られており、対人関係に対する億劫さは恐らく薄れたのだと思われる。
声の質が似ているところから「郷田ほづみ」と間違われる事が多い。
ちなみに藤原は『アイアンマン』以降、死去するまでロバート・ダウニー・Jrの吹き替えをほぼ専属で担当していたが、かつて「アイアンマン」以前は郷田ほづみが前任者とも言える頻度でロバートの吹き替えを多く担当していた(シュワちゃんの吹き替え声優に例えると藤原が玄田哲章で郷田が屋良有作といったところか)。また両者は共に『HUNTER×HUNTER』の新旧レオリオ役であるという共通点もある。
洋画の吹き替えでは大塚芳忠とよく役が重なる(『エルム街の悪夢』、『シャーロック・ホームズ』、『ダークナイト』など)。また、平田広明や江原正士、安原義人、山寺宏一、小山力也、堀内賢雄、宮本充、高橋広樹とも同一の作品の別バージョンで同じ役を担当する機会が少なくなかった。
また定番の役どころであるオッサン役に留まらず、キャリア初期から好青年役や繊細で中性的な役柄も数多く演じており、ギャップを感じるファンも多い。
過去には深見東州監修のミラクルサイキッカーSEIZANでは未来人間と地獄の住人を担当でこの時大塚芳忠、石井康嗣、井上和彦、篠原恵美、納谷六朗、塚田正昭、加藤精三、池田昌子と共演してたが未来人間と地獄の住人のシーンを見るとまるでスーパー戦隊シリーズやプリキュアシリーズで映画ハートキャッチプリキュア!のサラマンダー男爵、東映アニメーション等のモブキャラのような雰囲気である。
交友関係
先の通り森川智之とはほぼ同期であり、藤原がヒヤヒヤしたというデビュー時のエピソードすら覚えている程の仲。その付き合いは30年以上にも登り、あるテレビ番組では盟友とすら語られた。後に多くの役を森川が引き継いだ(彼と同様に藤原と交流の多かった津田健次郎も森川と並んで数多く役を引き継いでいる)が、それはこれらの信頼関係があってのことと思われる。
また、ひろしを引き継ぐ際は、スタッフを通じて代役を任せるにあたって手紙を渡しており、「森川しかいないから、頼むぞ」といった趣旨の内容が書かれていたという。この手紙を森川は仕事場の机にいつも入れている。
主な出演作
アニメ
イラスト未確認
センパイ、他多数@カッコカワイイ宣言! | 緋ノ塚那智@八犬伝-東方八犬異聞- | エレドア・マシス@機動戦士ガンダム第08MS小隊 |
ジュウザ@北斗の拳ラオウ外伝天の覇王 | ポール森山、ナレーター@ケロロ軍曹 | ジェレディ博士@獣旋バトルモンスーノ |
田神景世@屍姫 | 相沢周市@DEATHNOTE | ヘイムダル大佐@獣王星 |
鶴岡タツミ@無能なナナ | 東城迅@新妹魔王の契約者 |
トランスフォーマーシリーズ
劇場アニメ
サラマンダー男爵@映画ハートキャッチプリキュア! | イカサマ@GAMBA ガンバと仲間たち | シェン大老@カンフーパンダ2 |
ブロッケン伯爵@マジンガーZ/INFINITY | デューイ・ノヴァク@交響詩篇エウレカセブンハイエボリューション | |
ゲーム
※FarCry6のDLCでは別人が担当。誰か分かる方は追記お願いします。
ファイナルファンタジーシリーズ
特撮
ジャックポットストライカー@快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film
吹替
ロバート・ダウニーJr | ウィリー・ウォンカ@チャーリーとチョコレート工場(劇場版) | ジョーカー@ダークナイト |
ケン・マスターズ@ストリートファイター(1994年実写版)(テレビ朝日版) | エド・エクスリー@L.A.コンフィデンシャル(フジテレビ版) | ブライアン・オコナー@ワイルド・スピード MAX(テレビ朝日版) |
イラスト無し
その他
あかのやま@Let's天才てれびくん | ウルトラマンベリアル(+ナレーター)@ウルトラ怪女子 |
未来人間、地獄の住人@ミラクルサイキッカーSEIZAN
関連イラスト
関連動画
関連タグ
外部リンク
- プロフィール
- Twitter アカウント『AIR AGENCY@ほし×こえ【冬】(@AIR_AGENCY)』
- Wikipedia
- ニコニコ大百科