概要
もともとは特撮作品やキャラクターショーなどの着ぐるみを着用するスーツアクターに対し、この場で動いているのはキャラクターそのもので、「着ぐるみの中の人=キャラクターを操縦し演じる人」は本来不可視(いわゆる黒子同様)の存在である、と主張する目的で「中の人などいない」と茶化すような表現として用いられていたネットスラングである。
「○○の中の人も大変だな」という、○○という外形を持つ存在(架空のキャラクターや仮想人格)には実は「中の人」(それを演じる人)がいる、という発想から来たと考えられる。
現在では意味が拡大し、声優や組織の(裏方)スタッフ、サービスの運営者(特に広報担当者)など、幅広い意味で「コンテンツとして表層に現れているモノの内側で仕事をしている人」を指す言葉として「中の人」が使われている。インターネットゲームなど、アバターを利用するサービスにおいても、アバター=架空のキャラクターに対してそれを操作するプレイヤーの自称としても使われる。
また、実在する人物であっても、メディアに登場する人格(キャラクター)としての「コンテンツ」と、その人格を演出しイメージを構築する担当者としての「中の人」を分けて表現する場合もある。言うなれば「素の自分」のことである。例えば、SNSアカウントなどである人がした主張に対し、「その主張はそのアカウントの役割として演じて発信したものであり、アカウントの運用者(中の人)として発したものとは異なる」という、「主張と中の人との距離感」を設定することで揶揄的表現としても使われることもある。
コンテンツによっては「宿主」や「魂(の担当)」などと表現することもある。
詳しい用例は後述する。
中の人に対し、表層に出ているキャラクターのことは「外の人」と呼ぶ。この「外の人」も単純に(中の人=俳優が演じる)架空のキャラクターのことを指す場合もあれば、コンテンツの運営者に対する発表者を指す場合もある。
漫画『伝染るんです。』に登場するかわうその台詞 、「下の人などいない!」に由来する(※かわうそが長身の人物に肩車してもらって背が高い人物を装う、という描写があり、これを指摘された際の返事である)という説がインターネット上では有名である。この場合「着ぐるみの中の人」というニュアンスに近い。
しかし、実際にはそれ以前の『はまり道』→『ゴッドボンボン』(作者は同じく吉田戦車)という作品で既に「中の人」という言葉が多用されており、吉田作品における定番の言い回しであるといえる。漫画内では、ゲーム『フロントミッション』に登場する兵器ヴァンツァーのパイロットのことを「中の人」と呼ぶ、といった用法が確認できる。
用例
キャラクターなどの声優、スーツアクターのこと
キャラクターなどに声や動きを与えている人のこと。「中の人」といった時最も一般的にインターネット上で用いられるもの。
主にアニメ、ゲーム、ショーやバラエティ番組に出演する着ぐるみなどで、キャラクターの声を演じている声優のことを指す。また、VOCALOIDやUTAU、VOICEROIDなどの音声合成ソフトの声データ提供者のことも含む。
「○○の声を担当している人」という意味で使われるが、時に「声優という存在」を総称する目的で使われることもある。「CV」(キャラクターボイス)が一番近い表現であるといえる。
pixiv百科事典では、「中の人」という言葉にリンクを設定する場合「[[中の人>(役者、声優)名]]」と表現することが多い。
特撮作品などにおけるスーツアクターの場合、「実際に着ぐるみの中に入って演じている人」を指すが、声と動きが分離していることがほとんどであるため、声優を「声の人」と区別している場合もある。
生身のまま演じる俳優のこと
上記を拡大解釈して、特殊メイクや着ぐるみ等を用いていなくても、あるキャラクターを演じる俳優を指す言葉として使われる場合もある(例:杉下右京の中の人→水谷豊、半沢直樹の中の人→堺雅人)。
アニメなどで演じたキャラクターを生身のままでも演じる声優のこと
上記を拡大解釈して、顔出しの状態で、アニメで演じたキャラクターの衣装を着用して(いわゆるコスプレ)舞台上で演技・歌唱する声優・俳優のこと。メディアミックスの一環ともいえる。
アイドルものや演劇もののように「キャラクターが舞台に立って表現活動を行うこと」がコンテンツの特徴となっている作品(例:サクラ大戦→帝国華撃団・巴里華撃団・紐育華撃団等、アイドルマスターシリーズ、ラブライブ!シリーズ→μ's・Aqours・虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会・Liella!等)ではよく見られる。
「キャラクターやそのユニット」としてのライブ・イベントを、元コンテンツで担当する声優本人が出演する形で行うものに対して、従来における「外の人」まで含めた表現であるといえる。
pixivなど各種創作系サイトにおける投稿者のこと
一般投稿にも見られるが、特にオリジナルキャラクター交流企画参加時に、投稿者が自らを指して使う。
投稿したキャラクターが、一種のアバターの役割を持つためであると見られる。
他にも掲示板やSNSなどでなりきりをしている人の、キャラを演じていない素の状態のことを指す場合もある。
企業や団体の従業員、構成員のこと
ある特定の企業や組織の関係者や、ある特定の作品のスタッフなどを指す。「関係者は語る」の「関係者」のこと。
映画やアニメなどの制作会社の「共同名義」や「ハウスネーム(擬人名称)」における構成員を指す場合が知られる。(例:東堂いづみ→関弘美や鷲尾天、にしかけみもじ→水野良や山本弘、シナリオ工房月光→重馬敬や赤松中学など)
また、最初は後述する個人のペンネームや作品による限定的な変名であったものが、のちに複数の人物の共同名義に変化した場合や、逆に複数が参加するユニット名であったのが、実態としては一人が手がけるものに変化していった場合もある(例:八手三郎(初期)→平山亨)
団体やマスコットキャラクター、製品の広報担当者、特に広報のために設置された公式SNSの担当者を指して使われたりもする。(例:タニタ・SHARP・ナイセンなど。ナイセン=アイティオールは子会社「ナイセン・エンターテインメント株式会社」を設立し、社のイメージキャラクターである藍手いおりの「中の人」で各種イラスト事業を担当していた人物を社長としてエンタメ部門を分社化している)
しかし、この「広報担当者、広報アカウント運営者」としての「中の人」の暴走が問題になることもある。→タカラトミーの公式Twitterにおける不適切な投稿など
複数のペンネームで活動している作家や複数の芸名を持つキャストのこと
作品ごとに名義を使い分けている人物について、特に「メインで使っている」「一般によく知られている」名義を指す。片方が覆面作家で、さまざまな事情により普段使っている「表の名義」が出せない場合などもある。いわゆるゴーストライターなどもこれに含まれる。
名義を分ける目的としては、読者や視聴者の混乱を避けるため、競合他社からの移籍や同時期での活動で板挟みになるのを防ぐため、異業種ですでに知られている人物の転向(例:歌手の三重野瞳=脚本家の赤尾でこ、元女流棋士の林葉直子=漫画原作者のかとりまさる)、勤め先や契約上の都合(※特に芸名の場合、名前が事務所によって商標登録されていることがあるため、他社レーベルへの参加や事務所移籍で元々の芸名が使えないトラブルが度々報じられている)、家族や周囲に知られないようにするためなどが挙げられる。
これに加え、先入観を捨てさせるためという目的もある。特に、普段は一般向け(場合によっては子供向け)作品を手掛けている人物がアダルトなどセンシティブな作品を手掛ける際、元のイメージを壊さないために名義を分けることもある。(例:稲葉真弓=倉田悠子。一般向けの純文学や詩を執筆していた稲葉が、アダルトアニメである『くりいむレモン』シリーズののノベライズでは倉田悠子の変名を利用していた)
複数の名義を使い分け、多数の作品を発表している人物としてはリチャード・バックマン(バトルランナー、死のロングウォーク)=スティーブン・キング、天樹征丸(金田一少年の事件簿)・安童夕馬(サイコメトラーEIJI、クニミツの政)=樹林伸などが挙げられ、この場合「バトルランナーの作者の中の人はスティーブン・キング」のように用いられる。
(物理的に)中に入っている人のこと
複数の用法が存在するため、リストで紹介する。
- 箱などの入れ物に入っている人。
- 屋外からみて建物の中にいる人や、廊下・玄関などから見て部屋の中にいる人のこと。
- 乗り物の操縦者。
- 宇宙服のような、外から見て顔と体型が分かりづらい服を着こんでいる人。
- フィクションのロボットや戦闘機のパイロット。
- 胎児。→中に誰もいませんよ
- 墓に埋葬されている人。『古墳ギャルのコフィー』では、古墳たちの中に埋葬されている人のことを指す言葉として登場した。
- 赤ずきんちゃん、狼と七匹の子ヤギのように、食べられた、飲み込まれた人のこと。基本的には体内で生存している状態のこと。
- アリジゴクのような巣に隠れている生き物、またその擬人化。
- かくれんぼの鬼さん以外の人。
- 寝具で寝ている人。寝袋やカプセルホテルだと説得力がある。
- 布団カバーの四隅を羽毛布団と結び付けようとして布団カバーの中に入って格闘している人や、寒くてコタツムリになっている人や着る毛布に包まっている人が、家の人に発見された時に中の人扱いされる。
登場人物と同化している作者のこと
往々にして、ラッキースケベでいい目に遭いまくる主人公、問題行動を起こしても主人公補正で批判されない主人公、脇役よりも魅力がなくても優遇されまくる主人公など、作者の願望が出過ぎているように見受けられるキャラへの揶揄として使われる表現。あまり良い表現ではない。
肉体に入っている魂のこと
詳細は魂などを参照のこと。
また、バーチャルYouTuberなどのキャストに対し、「声優担当者=キャスト」と「コンテンツ提供者(「話す内容そのもの」の語り手)」が同一であるとして、「視聴者が受け止めるバーチャルYouTuberの人格を操る人」という意味で、単純に声優やモーションアクターを指す「中の人」と区別して「魂の人」という表現が用いられることがある。
その他
人型に見える部分があるキャラクターの、人型に見える(あるいは、実際に何者かが入っている)部分のこと。(例:ポケモンのランクルスの、中にある人型の部分の通称。→ 中の人単体)
関連項目
中の人繋がりor中の人つながり 中の人ネタ 声優ネタ 声優繋がり / 声優つながり 役名錯乱病
関連人物
岡本美登 日下秀昭 チョー 佐藤貴史…スーツアクターとボイスアクターを兼任している人物の例。岡本は多数の戦隊悪役、日下は鳥人戦隊ジェットマンのグレイ、チョー(長島雄一)はいないいないばぁっ!のワンワン、佐藤はみいつけた!のサボさんを演じている。