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概要

ギリシャ神話に登場する(ピュクシス)。
ラテン語ではpyxis(「箱」)と訳されたが、最古の言及であるヘーシオドス『仕事と日』ではπίθος(ピトス)で、「」もしくは「」の意。

日本における玉手箱や壺、など類似の話は決して少なくなく、いわゆる「見るなのタブー」などもこれに近いだろうか。

人類に災いをもたらすべく、さまざまな災厄不和争いの女神エリスの女神ニュクスの子供たちにあたる)を詰めてパンドラに与えられ、興味本位で開かれたことで災いを世界に解き放つ事になった。
それにちなんで、「知ってはいけない秘密」「触れると災いを引き起こすもの」なども指す。

プロメーテウスの火盗みが神々による「女」の創造へとつながる話の流れは『神統記』『仕事と日』に共通しているが、パンドーラーと甕の逸話は『神統記』では触れられておらず、女の存在そのものが災厄であると謳われている。

θαῦμα δ᾽ ἔχ᾽ ἀθανάτους τε θεοὺς θνητούς τ᾽ ἀνθρώπους,
ὡς ἔιδον δόλον αἰπύν, ἀμήχανον ἀνθρώποισιν.
(ἐκ τῆς γὰρ γένος ἐστὶ γυναικῶν θηλυτεράων,)
τῆς γὰρ ὀλώιόν ἐστι γένος καὶ φῦλα γυναικῶν,
πῆμα μέγ᾽ αἳ θνητοῖσι μετ᾽ ἀνδράσι ναιετάουσιν
οὐλομένης πενίης οὐ σύμφοροι, ἀλλὰ κόροιο.
(すると 驚嘆の想いが不死の神々と人間どもを襲った
 人間どもにとって 手に負えぬ 徹底した陥穽を見た時に。
 というのも 彼女〔人類最初の女=パンドーラー〕から 手弱女の女の族が生まれたのだから
〔というのも彼女から 人を破滅させる女たちの種族が生まれたのだから〕
 彼女たちは死すべき身の人間どもに 大きな災いの元をなした
 男たちと一緒に暮らすにも
 忌まわしい貧乏には連れ合いとならず 裕福とだけ連れ合うのだ)
(Ἡσίοδος, Θεογονία, 588-593)
※訳文は岩波文庫の廣川洋一先生の訳。

ὣς δ᾽ αὔτως ἄνδρεσσι κακὸν θνητοῖσι γυναῖκας
Ζεὺς ὑψιβρεμέτης θῆκεν, ξυνήονας ἔργων
ἀργαλέων· ἕτερον δὲ πόρεν κακὸν ἀντ᾽ ἀγαθοῖο·
ὅς κε γάμον φεύγων καὶ μέρμερα ἔργα γυναικῶν
μὴ γῆμαι ἐθέλῃ, ὀλοὸν δ᾽ ἐπὶ γῆρας ἵκοιτο
χήτεϊ γηροκόμοιο·
(ちょうど そのように 女たちを 災いとして 死すべき身の人間どもに 配られたのだ
 痛ましい所業の共謀者たち〔女〕を、高空で轟くゼウスは。
 また 彼は 善きものの代わりに 第二の禍悪を与えられた。
 すなわち 結婚と 女たちの引き起こす厄介ごとを避けて
 結婚しようとしないものは 悲惨な老年に到るのだ
 年寄りを世話してくれるものもないままに)
(Ἡσίοδος, Θεογονία, 600-605)
※同じく。

『仕事と日』では、ヘーシオドスの女性蔑視の視点がより強調され、「女こそ諸悪の根源」という視点がより明確になっている(古代ギリシア世界は御多分に漏れず基本的に男性中心の社会で、例えば第二・第三夫人も発言権を持つペルシアなどは「妾に左右される軟弱な国」と見下していた)。

πρὶν μὲν γὰρ ζώεσκον ἐπὶ χθονὶ φῦλ᾽ ἀνθρώπων
νόσφιν ἄτερ τε κακῶν καὶ ἄτερ χαλεποῖο πόνοιο
νούσων τ᾽ ἀργαλέων, αἵ τ᾽ ἀνδράσι Κῆρας ἔδωκαν.
αἶψα γὰρ ἐν κακότητι βροτοὶ καταγηράσκουσιν.
ἀλλὰ γυνὴ χείρεσσι πίθου μέγα πῶμ᾽ ἀφελοῦσα
ἐσκέδασ᾽· ἀνθρώποισι δ᾽ ἐμήσατο κήδεα λυγρά.
(それまでは地上に住む人間の種族は、
 あらゆる煩いを免れ、苦しい労働もなく、
 人間に死をもたらす病苦も知らず暮らしておった。
[人間は苦労をすれば忽ち老い込んでしまうものであるからな]
 ところが女はその手での大蓋を開けて、
 甕の中身を撒き散らし、人間に様々な苦難を招いてしまった)
(Ἡσίοδος, Έργα και ημέραι, 90-95)
※訳文は岩波文庫版の松平千秋先生の訳より。

『仕事と日』においては、『神統記』に描かれている説話を、より女性蔑視の色合いを強めるべく手直しし、別の逸話を重ねたものであると解釈される(ヘーシオドス『仕事と日』岩波文庫、松平千秋訳、148ページ)。

ただし、それでも人間は良くならなかったので、後に「大洪水」が起こされる事になる。
この時デウカリオンとともに生き残った妻ピュラーはパンドラとエピメテウスの娘だったりする。
それらの天罰の原因が、一見正しいことである技術革新プロメテウスが与えたに由来)である点も含めて、この辺りの話は少し教訓めいた感じを受ける。
ちなみに、「災いを引き起こしうる技術」を「プロメテウスの火」とも形容することもあり、これらの出来事は一連の流れとしてとらえるべきかもしれない。

ちなみに「パンドラの箱」が開かれた後に、箱の底に「希望(エルピス)」が残されていたとされるが、これには様々な解釈がある。
一般には“災いに対抗しうる「希望(ἐλπίς)」を与えられた”、”災いは人間の意志ではどうしようもないが、「希望」だけは人間の思い通りになる”といった肯定的な解釈をされる事が多いが、そもそもこの箱は「災い」を封じた箱のはずなので、この箱に残された「希望」も人類にとっての災いであるという解釈もある。
つまり、“人に「希望」が残されたことで、すべてを諦め運命享受することができなくなって、人類は希望とともに苦しみ続ける宿命となった”という考えである。
また、エルピスは「予兆」とも訳される事から、“箱に残った最後の災いである予知の力が解放されなかったことで、人間は未来を知ることができなくなり、それゆえに無限に可能性を信じることができ、絶望をせずに済んでいる”と解釈されることもある。(この考え方の場合、箱に残されたものは「人類に残された力」ではなく、「世界に存在することを許されなかった力」であるとされる。)

μούνη δ᾽ αὐτόθι Ἐλπὶς ἐν ἀῤῥήκτοισι δόμοισιν
ἔνδον ἔμιμνε πίθου ὑπὸ χείλεσιν, οὐδὲ θύραζε
ἐξέπτη· πρόσθεν γὰρ ἐπέλλαβε πῶμα πίθοιο
αἰγιόχου βουλῇσι Διὸς νεφεληγερέταο.
(そこには一人エルピス〔希望〕のみが、堅牢無比の住居の中、
 の縁の下側に残って、外には飛び出なかった。
 雲を集めアイギスを持つゼウスのおん計らいで、
 女はそれが飛び出す前に、の蓋を閉じたからじゃ)
(Ἡσίοδος, Έργα και ημέραι, 96-99)
※訳文は岩波文庫版の松平千秋先生の訳より。

「善」と「悪」の両方を収めた甕については、ホメーロス『イーリアス』24巻、527行以下にも書かれ、ゼウスの館には善と悪を入れた甕が二つあった、としている。

δοιοὶ γάρ τε πίθοι κατακείαται ἐν Διὸς οὔδει
δώρων οἷα δίδωσι κακῶν, ἕτερος δὲ ἑάων·
ᾧ μέν κ' ἀμμίξας δώῃ Ζεὺς τερπικέραυνος,
ἄλλοτε μέν τε κακῷ ὅ γε κύρεται, ἄλλοτε δ' ἐσθλῷ·
(すなわちゼウスの宮敷には人間に下しおかれる遣わし物の
 が二つ据えてある、その一つは災い、もう一つには幸いを入れた、
 して雷霆を擲つゼウスが、この〔二つを〕混ぜてお寄越しの者は、
 時にはいかさま不幸に遭おうが、他の時にはよい目も見るもの)
(Όμηρος, Ἰλιάς, Ῥαψωδία Ω, 527-530)
※訳文は岩波文庫版の呉茂一先生の訳より。

ヘーシオドスの詩の解釈としては「人間は諸悪に満ちた世界を希望のみを頼りに生きている」ということだと考えられる(ヘーシオドス『仕事と日』松平千秋訳、岩波文庫、1986年、150-151ページ)。

『ゴッドオブウォー』シリーズにおけるパンドラの箱

手乗りクレイトス!


人気アクションゲーム『ゴッドオブウォー』シリーズの1作目と3作目にて、物語の鍵を握る最重要キーアイテムとして登場する。
詳細はパンドラの箱(GOW)を参照。

関連イラスト

厄神様のクリスマスプレゼント



ウサミン星


アイドルの私生活・・・それは触れてはいけないパンドラの箱である。

関連タグ

ギリシャ神話 パンドラ  

アクシア - アニメハピネスチャージプリキュア!』に登場する箱。パンドラの箱がモチーフと思われる。
パンドラボックス(仮面ライダービルド) - 『仮面ライダービルド』に登場するアイテム。

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