概要
『ギリシャ神話』に登場する争いの女神。数々の不幸や災いの母とも言われる。
ニュクスから生まれた古いタイプの女神だが、軍神アレスの妹と言う(つまりゼウスとヘラの娘)説もあり、アレスの戦車に乗って共に戦場を巡ったとされる。
姿には諸説あるが、翼があったり、蛇の髪を持ち、血まみれの鎧と槍で武装した姿であるという。また、火炎放射も使える上に争いを養分にして巨大化していくという恐ろしい女神様である。
アレスと同じく争いを好むが、アレスと違い彼女は相手が自滅する様に策略を巡らせる。
例えばペレウスとテティスの結婚式に呼ばれなかった事に腹を立て、「καλλίστῃ(最も美しい女神に)」と刻まれた黄金の林檎を宴の中に投げ入れて女神たちを争わせた。これがトロイア戦争の遠因となる。
トロイア戦争では、アレスはトロイア側として、ヘラはギリシャ側として参加したが、彼女は誰の味方にもつかず、一人で見境なく兵士達を殺して回ったという。
ここまで聞くと邪神以外の何者でもないが、ヘシオドスの『仕事と日々』によれば競争心を駆り立てる良き側面もあるという。
またかのアキレウスを始め、ヘクトール、アイアス、パリス等が英雄として語られる様になったのはエリスの功績である。
ある意味、「『戦争で活躍した英雄』を生み出す神」というのが本質とも言える。
前述の兵士を殺して回ったのも「英雄足る資格が無い者を間引いていた」という事かもしれない。
ちなみに華々しい活躍を約束はさせるが戦争後の事や生死に関してはほぼ無関与であり彼女が導いた英雄の1人であるオデュッセウスはトロイア戦争後は波瀾万丈の旅に出る事となった。
『ローマ神話』ではディスコルディアという女神に対応している。
ちなみにローマ帝国が建国出来たのもエリスの功績であり、「アレスの妹」という記述もアレス自身が「都市、ひいては国を産み出す神」であったから似た性質を持った神同士として統合されたと思われる(エリスがローマを後に建国する英雄を逃がし、アレスの手でその英雄はローマを建国した)。
しかし、当のディスコルディアに建国の逸話は無い。
同名のキャラクターは女神としてのエリスをモチーフとした者と、単に名前が同じ者が混在している。
天体
2005年に発見された準惑星。冥王星と同じ位の大きさと考えられている。
この天体の発見は、惑星や冥王星に関する様々な論争を呼んだため争いの女神から名前を取った。