概要
1965年9月16日生まれ。秋田県出身。慶應義塾大学法学部卒業後、就職浪人を経験したのち、商社や三省堂(出版社の方)、秋田朝日放送などを経て、1998年に東映アニメーション入社。
2004年に自身が企画を立ち上げた『ふたりはプリキュア』が大ヒット。20年以上続く『プリキュアシリーズ』となり、名プロデューサーの1人に数えられるようになる。
2015年6月より企画営業本部テレビ企画部長(映画室長・シナリオ室長兼務)に就き、現在は営業企画本部企画部の「エグゼクティブ・プロデューサー」(2020年2月28日以降)。
来歴
元々は地元の秋田朝日放送で報道記者をやったり、ドキュメンタリーを制作したりしていたが、映像制作の面白さを感じて、より多くの人に見てもらうものを東京で作ろうと、東映アニメーションの中途採用に応募。正直なところアニメについて別段強い興味はなかったということだが、業界の外にいる人の考えを採り入れようとする当時の東映アニメーションの部長の考えで採用となったということ。
1998年、OVA『ビー・バップ・ハイスクール』の制作進行として、アニメ制作業界でのキャリアをスタートさせる。
1999年、映画『金田一少年の事件簿2・殺戮のディープブルー』でプロデューサー補となり、2002年のTVアニメ『キン肉マンⅡ世』でプロデューサーに昇格。
『釣りバカ日誌』のプロデューサーを経て、2004年、関弘美から朝日放送制作日曜朝8時30分枠を引き継ぎ『ふたりはプリキュア』を成功させた。
その後『MaxHeart』『Splash☆Star』『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』のプロデューサーと、同作の劇場版映画の企画、『金田一少年の事件簿スペシャル』のプロデューサーを担当。
2009年にプリキュアTVシリーズのプロデューサーを梅澤淳稔に引き継いだ後は、TVシリーズでは『怪談レストラン』『空中ブランコ』『トリコ』『マジンボーン』のプロデューサーを務める一方、プリキュアシリーズには『映画プリキュアオールスターズ』の『DX3部作(2009年〜2011年)』の企画として引き続き携わった。
2015年6月1日付で清水慎治の後任としてテレビ企画部長に就任。作品プロデューサーからは一旦退き、東映アニメーション制作のTV作品全般に「最高責任者」として関わることになった(なお清水の前任である関は、2012年にテレビ企画部長を退任後『京騒戯画』等を手がけているため、鷲尾氏も退任後に再び作品をプロデュースをする可能性はある)。
その後の役職の変遷は以下の通り(いずれも企業リリースより。月表記のみのものは全て1日付)。
- 2016年6月28日:役員待遇へ昇進(翌2017年6月28日には執行役員へ着任)。
- 2018年4月:組織再編で、企画製作本部の第一映像企画部長兼 映像企画管理室長に就任。
- 2020年2月28日:組織再編で、営業企画本部企画部の「エグゼクティブ・プロデューサー」就任(執行役員も続投)。
- 2021年4月:製作本部製作部のスーパーバイザーを兼務。
- 2024年4月:製作本部の副本部長及び製作部長を兼務(上記スーパーバイザー職からは外れる)。
「プリキュアの父」
鷲尾は「プリキュアの父」と呼ばれている。前年の『明日のナージャ』が商業的失敗に終わった後の日曜朝8時30分枠を任されるに当たって、「女の子だって暴れたい」をテーマに、『ドラゴンボール』等を担当してきた西尾大介をシリーズディレクターに迎え、今までの女児向けアニメにないコンセプトを盛り込んだ野心的企画を立ち上げた。これが『ふたりはプリキュア』である。
『ドラゴンボール』や『美少女戦士セーラームーン』という範はあるものの、自社オリジナル作品としては全くの白紙の状態から始まった『ふたりはプリキュア』は急速に人気を得、続編『MH』を経て東アニの定番シリーズとなっていった。
鷲尾が『ふたりはプリキュア』を立ち上げるに当って、女児とその親が見るアニメであることを意識して、作画演出やセリフに関してかなり細かいルールを現場に徹底させたことで知られる(例:「女の子の顔・腹への直接攻撃はしない。(ガードする)」「食べ物を残さない・粗末にしない。」etc.)。ただし、明文化したルールを守るならばそれ以外の部分で従来の女児アニメの常識など一切無視していいというスタンスも示したため、保守的な部分と挑戦的な部分が同居する稀有な作品としてプリキュアは成立したのである。
ちなみにプリキュアシリーズで鷲尾がプロデューサーをしていた時代にはかなり厳格な「演出上のルール」が決められていて、それは鷲尾がプリキュアシリーズを離れても守旧的に継承されていた。しかし、鷲尾が企画担当として戻ったと同時に「ルール」の多くが「現場側で形成された固定概念」だと分かり、「時代に合わせて見直す」流れが加速している。
それに伴い時代に合わせた変更や撤廃がされている部分も多いが、保守的かつ挑戦的という理念自体は「『プリキュアらしさ』を保ちながらの『チャレンジの継続』」として、鷲尾のもと現場プロデューサー・クリエイターらにより、今でも伝統的に継承・実行されている。
なお、上述のように2015年にテレビ企画部長(当時)へ着任したことでプリキュアシリーズの「企画担当」となることになり、4年ぶりにプリキュアシリーズにより上の立場から関わるようになった。現場に対してはアドバイス等の求めに応じることはあれど過度に干渉することはしていないようで、20周年記念シリーズで久しぶりにプロデューサー名義(※)となった『ひろがるスカイ!プリキュア』においても、主担当で当シリーズが初プロデュース作の髙橋麻樹プロデューサーのサポートに務めた。その中で、髙橋Pや小川SDら主要スタッフに対する鷲尾からのオーダーで変わらなかったのは「男子が変身するプリキュアの投入」程度で、他は企画会議を経て変更が加えられていったという。
(※OPクレジット上は、変わらず「企画」名義。)
また、鷲尾が「企画担当」になって以降のプリキュアシリーズでは、OPで鷲尾を含めた「参画各社の企画担当」が一番初めにクレジットするようになった。企画担当はあくまで裏方なので、冒頭にクレジットされることはそれまで無かったのだが、このあたりはプリキュアシリーズにおける鷲尾天という存在の大きさゆえなのだろう。
人物像
年齢のわりには白髪が目立つ飾らない風貌が特徴。なお、40代当時でも既にグレーカラーとなっているほどだった。プリキュアのガッツリとしたファンであれば、イベントの関係者席を見て鷲尾の存在を一目で見分けることができるほど。
見た目通りに柔らかな人物であるが、作品作りへの思い入れの熱さがすごいとのこと。それ故にアフレコ前には校長先生の朝礼の長いスピーチのような前説をする癖があるらしく、これは担当作品における名物となっている。
しかしプリキュア5のときは姉御肌な竹内順子が居たため、程よく話が進むと竹内がスパッと話を切って収録に入ろうとするため、鷲尾Pは少ししょんぼりとしてしまっていたとかなんとか。
イベントでは温かい口調で作品への思いをとても熱く語ってくれる。
自分が旗振り役を務めた3シリーズのプリキュア達を娘のように思っており、『5』でキャラクターの入れ替えが検討された際は頑なに「こまち」と「かれん」の二名の離脱に反対し続けた。
自分の関わった3シリーズはどれも思い入れをもって取り込んでいるが、『S☆S』は様々なこだわりと挑戦心を持って乗り出した作品であったため、とりわけ思い入れが強いようである。
このため、結果的に商業的失敗を喫した『S☆S』の資産を何とか生かすべく、『5』『5GoGo!!』では『S☆S』のED曲『ガンバランスdeダンス』のアレンジ曲を2度に渡り投入している。
また、関係者が個人的に開催しているライブイベントには、観客としてよく顔を出しているのが目撃されている。
2019年3月には国際女性会議に出席している。
余談
- 名アニメシリーズの生みの親として、特に企画統括職としてプリキュアシリーズに復帰して以降、TV・WEBインタビューなど様々なメディアに出演(単独またはプリキュア関係者と共演)することが多くなっている。
- プリキュア20周年の集大成ともいえる『全プリキュア 20th Anniversary LIVE』では、関係者席で観覧。「横浜アリーナを1万人で埋めることが出来るだろうか」と少し疑っていたが、関係者席から観た1万人による圧倒的盛り上がりに思わず涙してしまったと、後日開催の「『映画プリキュアオールスターズF』復活祭上映」のトークイベントで語っている。
- 「ふたりはプリキュア」3シリーズ(無印・MH・S☆S)のBD BOX『20th LEGENDARY BOX』の発売記念イベントでは、会場のホールに花道が設けられていたために(他のイベント出演者に押し込められる形で)渋々花道の上で締めの挨拶をした。
- 『MH』のウラガノス役や『5』『5GoGo』のブンビー役などプリキュアシリーズに縁の深い声優・高木渉によると、高木氏の甥は東映アニメーションに入社し、鷲尾氏の下で働いているらしい。
関連タグ
鷲雄浩太:『プリキュア5』に登場した、春日野うらら(キュアレモネード)の芸能マネージャーを務めるキャラクターで、名字が鷲尾氏に由来する。「そのままの名前じゃ恥ずかしいから」と一文字だけ変えられている。(インタビュー本『プリキュアシンドローム』(P559記載)など、複数のインタビューにて言及。)
鷲尾町長:『わんだふるぷりきゅあ!』に登場した、舞台となる「アニマルタウン」の町長を務めるキャラクター。名字が共通し容姿や口調が似ていることから、こちらも「鷲尾氏がモデルでは」と予想されているが、放送時点でわんぷり関係者からの明言は無く関係性は不明。なお、(先述でも触れた)高木渉が声を務めた。高木氏は、アフレコやインタビュー収録などで鷲尾氏とよく顔を合わせており、その人柄を良く知る人物の1人でもあるため、本キャラクターを演じる際に口調を似せた可能性がある。