概要
2007年7月から9月(または10月)にかけ、ノイタミナの枠で放送されたオリジナルテレビアニメ。フジテレビ、関西テレビ、東海テレビ、新潟総合テレビ、テレビ西日本の他、北海道文化放送では約1ヶ月遅れで放送された。
前年にノイタミナ枠で放映された『怪~ayakashi~』の三話目「化猫」を前身とし、主人公である「薬売り」のキャラクターと世界観・設定を継承した続編的作品。
全12話。「座敷童子」「海坊主」「のっぺらぼう」「鵺」「化猫(近現代)」の5エピソードが、それぞれ2〜3話で構成されている。
浮世絵を思わせる華やかな色使いや、和紙風のテクスチャを全編にあしらったユニークで派手、かつ不気味さを感じさせる画面作りと、謎めいたヒーロー「薬売り」が視聴者に強烈な印象を残し、放送終了後も根強い人気を誇る。
2020年に開催されたノイタミナ歴代70作品の投票企画「あなたが選ぶ思い出の3作品」(2005~09年度制作部門)では、堂々の第1位を獲得した。
劇場版モノノ怪
劇場版新作
2022年、15周年記念プロジェクトとして、大奥を舞台とする劇場用新作アニメの製作が発表され、応援クラウドファンディングで目標の約6倍に及ぶ額を集める。
公式X(旧Twitter)アカウントにて、全三部作での制作決定が明かされた。
劇場版第二弾は、2025年3月14日の公開、タイトルは火鼠となっている。
公開の延期とキャストの変更
劇場版の公開は2023年中を予定していたが、主役の「薬売り」を演じる櫻井孝宏の不倫スキャンダルが発覚。大奥に生きる女性たちの苦しみとその救済を描く、という作品テーマとの兼ね合いが問題となる。
2023年2月末、制作会社のツインエンジンは、公開の延期とキャストの変更、希望者に対するクラウドファンディングの返金対応を告知。
同年8月に「薬売り」の新キャストとして神谷浩史の就任と、2024年夏の公開が決定、発表された。
舞台版
2024年には、東京・大阪の二カ所にて舞台版のモノノ怪が公開された。
2023年2月4日から15日にかけて、東京・上野の飛行船シアターにて舞台演劇版が上演された。第一弾公式HP 公式HP
あらすじ
彼が呼ぶのか、剣が呼ぶのか、薬売りの前には次々と妖異が現れる。
モノノ怪を成すのは、人の因果と縁(えにし)。
人の情念や怨念があやかしに取り憑いた時、それはモノノ怪となる。
彼はそんなモノノ怪の形と真と理を明らかにし、退魔の剣でモノノ怪を斬って行く。
作風
物語の主な舞台を江戸時代末期の日本とし、浮世絵や日本画をモデルにした背景テクスチャや、物語の大筋を握るモノノ怪たちの独特なビジュアルや、エフェクト表現が最大の特徴であり、高い人気を誇る。
作品のジャンルとしてはホラーとなるが、モノノ怪の起こす怪異の根本を探ることに重点が置かれており、ミステリー的な要素の方が強い。
ストーリーの最大の特徴として、各エピソードの中心人物・重要人物として、何らかの問題を抱えた女性が登場する事が挙げられる。
また、必ずしもスッキリとした終わり方をする訳ではなく、事件の全ての詳細が明かされる訳ではないことも特徴。事件の真相については必要最小限のみが描写され、直接的なストーリー描写は避けられる傾向にある。
怪~ayakashi~との繋がり
概要でも解説されている通り、怪~ayakashi~の3話目である化猫の続編的作品であり、ほぼ時系列も連続している。
特に、2エピソード目に当たる「海坊主」は時系列的に怪~ayakashi~の3話目の直後であることが作中で直接語られており、この話に登場したゲストキャラクターが出演するなど、明確な続編描写がされている。
また、モノノ怪版の「化猫」にも共通のキャラクターが出演しており、怪~ayakashi~は作品そのものにかなり大きな影響を与えている。
ここでは怪〜ayakashi〜の化猫も事実上のエピソード0として取り上げる。
作中用語
作中では、この世に怪異をなす存在として、アヤカシとモノノ怪の二種類が存在するとされる。
その中でも、本作では主にモノノ怪が現れるが、「海坊主」の回では明言はされていないものの、アヤカシらしき「海座頭」が現れている。
アヤカシとモノノ怪の違いとして、アヤカシとはこの世の道理とは別の世界に存在する物の総称であるとされる。
アヤカシは、その行動原理などを人が理解することは困難であり、その成り立ちは千差万別であって、人の霊から成るモノや付喪神のように物が古くなって魂が宿ったモノなどがある。
モノノ怪については、まずモノノ怪の"モノ"とは荒ぶる神のことを指し、"怪(ケ)"とは病のことを指す。人を病のように祟るのがモノノ怪で、激しい情念や怨念がアヤカシと結びつくことによって生まれるモノとする。
そのため、モノノ怪には「事の有様」である真(マコト)と、「心の有様」である理(コトワリ)があるとされる。本作の主人公である薬売りは、「モノノ怪の姿」である「形」と、事の有様である「真」と心の有様である「理」の三つを知る事で、モノノ怪を斬る事ができる。
アヤカシであればまだ封印の呪符などが効く余地があるが、モノノ怪を退治できるのは退魔の剣となる。
登場キャラクター
主人公。詳細は当該項目を参照。テレビアニメシリーズにおいて唯一全てのエピソードに登場する人物。また、劇場版とテレビアニメシリーズの薬売りは、顔や見た目こそ似ているものの、別人である。
怪〜ayakashi〜の化猫
坂井家の当主、伊顕とその妻の水江との間に生まれた娘の真央が、結婚する事となった。その準備の為に坂井家の人間は慌ただしく働いていた。
そんな中、当の真央が謎の急死を遂げる。当初は、前触れもなく坂井家に現れた薬売りが怪しまれたが、薬売りの言葉通りに化猫が現れた事で、化猫の真と理を探す為に坂井家の隠された謎を暴く事になる。
モノノ怪の最終エピソードでリメイクされた際には、一部の人間の登場人物と大まかなプロットは共通した上で、エピソードが再構成されている。
- 加世(CV:ゆかな)
- 小田島(CV:稲田徹)
- 坂井伊顕(CV:佐々木誠二)
- 坂井水江(CV:沢海陽子)
- 笹岡(CV:竹本英史)
- 勝山(CV:島香裕)
- 弥平(CV:鈴木清信)
- さと(CV:日野由里加)
- 坂井伊国(CV:龍田直樹)
- 坂井伊行(CV:大塚周夫)
- 珠生(CV:鎌田梢)
第1エピソード「座敷童子」
ある宿屋に引き寄せられた「薬売り」は、宿屋の女将の「久代」の厚意によって宿屋に泊まることになる。
そこに身寄りも金もない上に、出産間近の女性である「志乃」が訪れる。何者かに追われているという彼女を、「久代」は番頭の「徳次」に命じて最上階の部屋に泊めさせる。
しかし、その部屋には「座敷童子」が取り憑いている曰く付きの部屋だった。
第2エピソード「海坊主」
江戸に向かう船「そらりす丸」に乗り込んだ「薬売り」は、かつて「坂井家化猫騒動」に巻き込まれた「加世」と再会する。一方で、「そらりす丸」は何者かによって船の羅針盤に細工を施され、「龍の三角」と呼ばれる魔の海域に入り込むことになる。
- 加世(CV:ゆかな)
- 源慧(CV:中尾隆聖)
- 菖源(CV:浪川大輔)
- 佐々木兵衛(CV:阪口大助)
- 柳幻殃斉(CV:関智一)
- 三國屋多門(CV:高戸靖広)
- 五浪丸(CV:竹本英史)
- 海座頭(CV:若本規夫)
- お庸(CV:池澤春菜)
- 海坊主(CV:福原耕平)
第3エピソード「のっぺらぼう」
ある裁判にて、とある藩士に嫁いだ女「お蝶」は、大量殺人の咎で市中引き回しの末に獄門打首の判決を受けることとなる。
そうして、彼女は牢獄に囚われることになるが、そこには「薬売り」がいた。
第4エピソード「鵺」
香道を極めた家である「笛小路家」の娘である「瑠璃姫」が婿取りをすると言い、婿となった者には東大寺の別名を持つ香木、「欄奈待」が手に入れることができると言う。
世にも貴重なその香木を狙って婿候補となった四人は「組香」によって婿を選ぼうとする。しかし、その内の一人である「実尊寺惟勢」は時間になっても現れず、代わりにそこに「薬売り」が現れる。
第5エピソード「化猫(近現代)」
とある市に新た地下鉄の駅が開通することになった。電車の開通を祝うイベントが開催される中、突然電車には原因不明のトラブルが発生し、市長を含む7人の男女が先頭車両に取り残されることになる。
何の接点も無いはずなのに、何故か閉じ込められた7人の前に「薬売り」が現れ、徐々に7人の共通点である「市川節子」の「自殺事件」の真相について浮かび上がっていく。
- 森谷清(CV:竹本英史)
- 福田寿太郎(CV:岩崎ひろし)
- 門脇栄(CV:稲葉実)
- 木下文平(CV:佐々木誠二)
- 野本チヨ(CV:ゆかな)
- 山口ハル(CV:沢海陽子)
- 小林正男(CV:日比愛子)
- 市川節子(CV:折笠富美子)
劇場版モノノ怪
登場人物は従来のエピソードに輪をかけて多い為、劇場版モノノ怪唐傘を参照。
劇場版エピソードでは、テレビアニメ版とは別人の薬売りが登場する。
エピソード1「唐傘」
日本の頂点に立つ存在である天子。その子供を産む事を目的に組織された「大奥」
一般の社会とは隔離された女の園であるそこでは、様々な女の情念が渦巻いていた。
エピソード2「火鼠」
主題歌
オープニングテーマ
「下弦の月」
作詞 - 香和文 / 作曲・編曲 - 小松亮太 / 歌 - 小松亮太×チャーリー・コーセイ
エンディングテーマ
「ナツノハナ」
作詞 - はしもとみゆき / 作曲 - 谷口尚久 / 編曲 - CHOKKAKU / 歌 - JUJU
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
第1話 | 座敷童子前編 |
第2話 | 座敷童子後編 |
第3話 | 海坊主序の幕 |
第4話 | 海坊主二の幕 |
第5話 | 海坊主大詰め |
第6話 | のっぺらぼう前編 |
第7話 | のっぺらぼう後編 |
第8話 | 鵺前編 |
第9話 | 鵺後編 |
第10話 | 化猫序の幕 |
第11話 | 化猫二の幕 |
第12話 | 化猫大詰め |
劇場版 | 唐傘 |