概要
奈良の東大寺正倉院の中倉薬物棚に納められている香木である。東南アジアで産出される沈香と呼ばれる高級香木で、成分からは伽羅に分類される。
大きさは全長156cm・重量11.6kg。
正倉院の目録上の名前は「黄熟香(おうじゅくこう)」であり、「蘭奢待」という名は、その文字の中に東・大・寺の名を隠した雅名である。
聖武天皇の代に中国から渡来したと伝わるが、出自・伝来について詳しいことは分かっておらず、中国の呉からの献上品であるという説、弘法大師空海が中国から持ち帰ったものという説など、様々な説がある。
これまで足利義満、足利義教、足利義政、土岐頼武、織田信長、明治天皇らが切り取っている。
なかでも織田信長による切り取りは有名で、天正2年(1574)3月28日に多聞山城に運ばせて、「1寸4分(約5.5cm)」の大きさで2片を切り取らせ、1片は正親町天皇に贈り、もう1片は信長が所持したという。
近年の調査の結果、切り取られた跡は38ヵ所あり、同じ箇所を切り取られている可能性があることを考慮すると50回以上は何者かに切り取られていると考えられる。