概要
ジンチョウゲ科ジンコウ属の樹高の高い常緑樹の樹皮が傷ついたり菌に感染した際に、それを治すために分泌される樹液が固まって樹脂となり、長い時間をかけバクテリアなどによって成分が変質し、特有の芳香を放つようになったもの。「沈香」とは「沈水香木」の略で、樹脂が多く含まれることで比重が水より重くなっていることが由来となっている。
東南アジアでのみ産出され、梵語で「アグル(अगुरु:aguru)」と呼ばれ、「阿伽嚧」と音写される。
香りや産地によって分類され、その中でも特に質の良いものは「伽羅」と呼ばれる。
シャム沈香とタニ沈香
沈香は産地によって、「シャム沈香」・「タニ沈香」とに分類されることがある。シャム沈香は、インドシナ半島(タイ、カンボジア、ベトナムなど)で産出されるもので、香りの特徴は「甘」。タニ沈香は、インドネシアの島々で産出されるもので、香りの特徴は「苦」。
六国五味
沈香は香りと産地で6種に分類されることが多い。産地は木所と呼ばれる。また、香りを表現するのに「五味」(甘・酸・辛・苦・鹹(しおからい))が使われる。
- 伽羅(きゃら):ベトナム産。五味に通ずる。
- 羅国(らこく):タイ産。甘味。
- 真那賀(まなか):マラッカ産。無味。
- 真南蛮(まなばん):インド東海岸のマラバル産。酸味、苦味。
- 寸聞多羅(すもたら):インドネシアのスマトラ産。苦味、鹹味。
- 佐曾羅(さそら):インドのサッソール産。鹹味。
ただ、同じ香木でも位置によって樹脂などの配合が異なるために香りも異なる。これらは大まかな基準であることに注意しなければならない。沈香の中で上等のものが羅国、真那賀、真南蛮、寸聞多羅、佐曾羅に分類され、その中で特に上等のものを伽羅にするという香り本位な分類をすることもある。また、香道で消費されるなどで上等なものが少なくなり、以前は羅国だったものが伽羅に格上げされるなども起きている。