概要
CV:折笠富美子
『モノノ怪』の登場人物。最終エピソードである「化猫」に登場する。
とある事件によって「自殺」したとされるが、その事件での恨みから「化猫」となって彼女の「自殺事件」に関わる人々をとある電車の一車両に集めて閉じ込める。
活躍
『モノノ怪』の化猫エピソードは、彼女の死の真相を暴く事に焦点が当てられている。
生前は新聞記者であり、森谷の部下であった。電車開通に際しての汚職事件をスクープしようとしていたが、その事で壁にぶち当たり自殺した。とされる。
エピソードの序の幕・二の幕には、エリザベスカラーを着けた猫を抱く女性として僅かなカットが描かれる。
彼女の姿は小林正男にしか見えず、彼女の声は山口ハルにしか聞こえない。
彼女の自殺に関しては、とある陸橋の上から身投げし、そこを通りかかった電車に轢かれる事で死亡した。
その際、以下の人物たちが彼女の「自殺」に対して以下の行動をとっていた。
福田寿太郎:彼女が調査していた汚職事件の当該人物。
門脇栄:彼女の死を捜査し、自殺と断定した刑事。
木下文平:彼女が死亡した事件で電車運転していた運転手。陸橋から落ちた彼女を轢いてしまった。
野本チヨ:彼女が死亡した事件で証言を行った。この証言が「市川節子の自殺」を決定づけた。
山口ハル:彼女の死亡した陸橋近くで寝起きしていたが、彼女の自殺に関して何も証言しなかった。
小林正男:彼女の死亡した陸橋近くで働いていたが、彼女の自殺に関して何も証言しなかった。
森谷清:彼女の上司で市川の死に際して、仕事に悩んでいた事を証言した。
関連タグ
真実
以下書かれるのは、彼女の死の真相と、事件についての顛末である。
内容はもちろん、大きなネタバレになる為、閲覧注意。
「自殺」の真相
化猫エピソードにおける全ての元凶であり、化猫の正体。
大詰めにて、その姿と事件の真相が明かされる。
彼女の死は自殺ではなく、市長である福田寿太郎の依頼によって行われた森谷清による殺人である。それまでの森谷の証言は全て嘘(というより、自分に都合の良い情報だけ明かして、事件の真相を隠しつつ地下鉄を脱出しようとする足掻き)であり、彼の言い分は市川の身に起きた悲劇の真実とは実態が異なっていたのである。
福田市長の汚職事件について調べていた彼女は上司である森谷にその事実を相談する。
しかし、森谷はそんな彼女の特ダネを一顧だにする様子もなく、彼女は森谷への反発から市長の張り込みを続け、遂には汚職の決定的な証拠となる写真を入手する事に成功する。
これにより森谷は、今までの態度から手の平を返して彼女にこの特ダネを記事にする様に指示し、彼女はとある旅館で徹夜で記事を書き上げる。
しかし、森谷と福田市長は裏で繋がっており、森谷は市川の掴んだ記事と証拠を彼女の前でもみ消してしまう。
その事に逆上した彼女は証拠はまだ有り、その証拠をよその新聞記者に持っていく事を森谷に宣言してしまい、これにより森谷も逆上し、彼女に暴行を振るった後、陸橋から突き落としてしまう。
この際、あたかも森谷が市川節子に性的な暴行を加えているかの様な描写があるが、この点をどう捉えるかは視聴者次第と言える。揉み合いをした際に暴れて抵抗した事で市川の服が肌けて下着が見えてしまい、それっぽく見えただけにも見える(もしくは服を破かれて地面に突き飛ばされた描写にも見える)が、女性を見下している森谷の心情が描かれているのも相まって本当に性的暴行を加えていた可能性もある。その場合だと、彼女の恨みがどれほど深いものであったか窺い知れる。
そんな事の顛末を遠くから見ていたのが、小林正男であった。
この時点では、彼女は辛うじて生きていたのだが、陸橋の下を通っていた電車は居眠りをしていた運転手が運転していたため、落下して倒れた彼女に気付かずに轢いてしまい、これにより彼女は死亡する。
この際、陸橋から落ちた市川節子を轢き殺してしまった電車の運転手が木下文平であった。
また、森谷と市川節子のやり取りを電車が通るまでの間、若い愛人との逢瀬の間に聞いていたのが、山口ハルであった。
その後、彼女の死について捜査がされるが、その捜査を担当した刑事である門脇栄は、碌な証拠も証言も無く現場を一瞥しただけでテキトーに捜査をして彼女の死を自殺と決め付けつつ、彼女の自殺を裏付ける証拠や証言を集め始める。
そんな中、かねてより有名になりたいと思っていた野本チヨが、その見栄に駆られて市川節子が自殺を仄めかす独り言を呟いたと証言してしまう。
一方、小林正男は陸橋でのやり取りは自分には関係ないこととして証言せず、山口ハルは亡夫の姑に若い愛人の存在がバレるのを恐れて、証言を黙殺した。
これにより、本来ならば「殺人」であったはずの市川節子の死は「自殺」として片付けられてしまい、この恨みから彼女は自身の死体の血を舐めた猫に取り憑き、化猫となって復讐を開始したのだった。
証言を行った人間が体を掻き始めたり、彼女の姿や声が一部の人間にしか認識できないのは、つまりは事件の真相を示すメッセージだったのである。
- 小林正男→眼を掻く、市川節子の姿が見える(事件の真相を見ていたのに見ないふりをした)
- 山口ハル→耳を掻く、市川節子の声が聞こえる(事件の状況を聞いていたのに聞こえていないふりをした)
- 野本チヨ→口を掻く(事件にまつわる嘘の証言をした)
- 木下文平→脚を掻く(市川節子を轢き殺した)
- 森谷清→全身を掻く(市川節子に手を下した人間)
また、森谷の殺人に関しては、解釈はふた通りに分かれる所であり、当初の目的はあくまでも市長の汚職事件の証拠隠滅だったが、彼女がまだ証拠を握っていたので仕方なく殺したという突発的な殺人。
もう一つが、元から彼女の命ごと事件を消し去るつもりだった計画的な殺人。
彼の態度からはどちらであったともとれるが、いずれにしろこの殺人は市川節子の深い恨みを買い、化猫の祟りとして福田市長と共に地下鉄に捕らえられ、そして真実が白日の下に晒される事になった。
人物像
彼女の元ネタになったのは、『怪~ayakashi~』における化猫の正体である珠生だが、彼女とは被害者としての性質がやや異なる。
珠生は結婚式のその日に、黒幕の単なる気まぐれで誘拐され、幽閉された上に、性的に暴行されて殺されたという、一方的な被害者であった。
しかし、市川節子の場合は、市長の汚職事件の調査という、ある種の危険に自ら踏み込んだ末に、森谷と市長の裏の繋がりに気付かずに重要な証拠を渡すという致命的なミスを起こした事で付け狙われ、そのミスを挽回できる優秀さを持っていたが故に、殺されてしまった人物である。
この自分から能動的に事件と関わったと言う点は、一方的な犯罪と暴力に巻き込まれた珠生とは明確に違う点である。
また、彼女の場合は、字幕のセリフや映像描写によってのみ心情や人物像が描かれた珠生と違い、市川節子の場合はその人物像について深く掘り下げられている。
特ダネに興味を示さない森谷のことを自分をやっかんでいると思ったり、旅館の女将をしみったれた場所で働く露骨に見下すなど、自意識過剰で傲慢な所が散見される。
その一方で、上司からダメだと言われても納得できなければ決して怯まない跳ねっ返りの強さと、諦めずに証拠を掴む行動力と粘り強さ、何より森谷が手の平を返した際には、森谷が自分を認めてくれたこと喜ぶ余り泣き出す素直さを持っており、優秀な記者であり、可愛げのある人間性を持った、良くも悪くも普通の人であった。
無念と怨念の果てに
最終的に退魔の剣のよって過去の光景を見たことで、化猫(市川節子)の形・真・理の三つを知ると同時に化猫の攻撃を受け、流血しながらも退魔の剣を解き放ち、化猫を斬るのであった。
その後、森谷は再び列車の中で目を覚まし、窓の外には多くの民衆が集まり、車内には市長が他の乗客と談笑している光景を見たことで、これまでの出来事は白昼夢だったと安堵し、自らが手にかけた市川に悪びれもせずに「恨むなよ」と告げるが、その瞬間に列車内は再び無人となり…
そこには化猫と化した市川節子が居た
その傍らには森谷と裏で繋がっていた市長が息絶え、震えが上がる森谷に、化猫の瞳で見つめながら市川はあの時の言葉を告げる…
「許さない」
その後森谷がどうなったかは化猫と市川節子のみぞ知る…。
謎
- 今回の化猫騒動は、市川節子の死に深く関わっている人物達が車両に集められ、彼らの証言で真相を明かすといった話であった。しかし、山口ハルの場合は本人ではなく愛人が抽選で当てた電車の切符だった為、本来なら山口の愛人が電車に乗るはずだったのだが、私用で乗れなくなり山口が愛人の代わりに電車に乗ってこの騒動に巻き込まれたのである。果たして、山口が乗ったのは偶然だったのか?それとも市川の恨みの力で強くなった化猫が山口を電車に乗せるために仕向けた呪いだったのか?真相は闇の中である…。
後日談
化猫が薬売りに払われた後日には新聞で市川が念の為に隠していた市長の裏金の証拠や森谷の犯行による市川の殺害など、一連の諸々の真相が新聞で報じられ、今更ながらも市川の暴いた事実が大衆に知られることとなった。恐らく完全に祓われる前に市川に道連れにされる形で殺害されたと思われる市長と森谷は消息不明となっている模様。
他の乗客達は各々解放され、自らの業を自覚したこともあり、居眠り運転による不注意から市川を列車で引いた木下文平は自らの罪を認め、今度こそ刑事として責任を果たす為にやって来た門脇栄に連行されていき、小林正男、山口ハル、野本チヨの3人は己の大なり小なり己の愚かさを思い知らされたことから、どこか悟ったような表情で市川の亡くなった現場に花を供えに来たのだった。
そして、線路には化猫を祓い市川に憑依されていた猫を優しげに撫でながらも、モノノ怪の本質を改めて心中で語る薬売りの姿もあったが、チヨが人の気配を感じて線路を見つめた時には、既にそこには誰の影も形も無かった…。