概要
化猫とは、化け猫の表記揺れ。もしくは、モノノ怪シリーズに出てくる妖怪。
本記事では、主にモノノ怪のテレビシリーズ最終エピソードと、その前日譚である怪〜ayakashi〜に登場する妖怪について記述する。
2作品ともそれぞれ別の猫ではあるが、いずれも人間の因果によって妖怪になった経緯がある。また、両者共に人間に対して復讐を行う為に現れたという共通点があるが、復讐の目的や手法、復讐相手の人数など、微妙な違いがある。
妖怪としての化猫は、→「化け猫」の記事を参照。
怪〜ayakashi〜に登場する化猫
TVアニメ『怪~ayakashi~』の第三幕『坂井の化猫』に登場する。
坂井家のお屋敷に現れた化猫と、坂井家に隠された秘密を暴くミステリー調のホラー作品となっている。
坂井家の屋敷の一角に閉じ込められたという点では密室的だが、薬売りの協力があればある程度は自由に外と中を行き来できる事と、坂井家の屋敷に仕掛けが施されている点が、地下鉄の化猫エピソードとは大きな相違点。
プロットの大きな違いとして、化猫の正体に関わる珠生について、坂井家の人間の多くが知っており、坂井家の人間に如何に真相を話させるか?にエピソードの焦点が当てられている。
あらすじ
坂井のお屋敷では次男の伊顕が当主となり、その娘の真央が婚礼を迎える事になった。その輿入れの為の支度で、坂井の屋敷中が大騒ぎであった。そんな中、一人の薬売りが坂井のお屋敷に現れる。
すると、嫁入りするはずだった真央が突如として死亡し、一度は事件の犯人として薬売りが疑われるが、薬売り自身はこの事件が化猫によるものと看破する。
化猫の起こした怪異から身を守るべく薬売りは結界を張り、坂井家の人間たちと共には籠ることになるが、そこで化猫はタマキという名前を口にした。
タマキの名前を聞いた坂井家の人間は、一斉に狼狽え動揺し始めた。薬売りは化猫を斬る為に坂井家の人間が恐れ、隠しているタマキという女性の真実を探ることになる。
主要キャラクター
- 加世(CV:ゆかな)…今作における薬売りの相棒の一人。坂井家の下女だが雇われて日が浅い。地下鉄の化猫の野本チヨにあたる。なお「モノノ怪」シリーズに本人も登場している。
- 小田島(CV:稲田徹)…今作における薬売りの相棒の一人。坂井家に仕える若衆(武家奉公人)。地下鉄の化猫には登場せず、役割の一部が門脇栄に取り入れられる。
- 坂井真央(CV:鎌田梢)…坂井家当主の娘。輿入れの日に化猫による変死する。珠生とは容姿が似通い、声も同じである。
- 坂井伊顕(CV:佐々木誠二)…坂井家の当主で伊行の次男。どことなく頼りなさげで、実際に伊顕の代で家は傾きつつある。有力な武家である塩野家に娘の真央が嫁入りする事になるが、輿入れの矢先にその娘が変死する。地下鉄の化猫では、木下文平にあたる人物。
- 坂井水江(CV:沢海陽子)…伊顕の妻。義兄である伊國には極めて辛辣で、「お前のせいで」などと恨み言も吐くなど険悪。嫁入りのその日に娘が死んだ事に動揺して床に臥せるが、死んだはずの娘がタマキの名前を口にした事で、事態が大きく動く。地下鉄の化猫では、山口ハルにあたる人物。
- 笹岡(CV:竹本英史)…坂井家の用人(描写から同家は旗本と考えられるので、勝山と共に家臣の筆頭と思われる)で、伊國の側近。冷静ながらもどこか斜に構えた態度と、鼻につく言動が特徴の男。地下鉄の化猫では、森谷清にあたる人物。
- 勝山(CV:島香裕)…坂井家の用人で、伊顕を当主に推挙した。笹岡よりも年配で、実直な男。地下鉄の化猫では、小林正男にあたる人物。
- 弥平(CV:鈴木清信)…坂井家の下男。外部の人間に上から目線で当たる一方、女性には下心が見え隠れする言動で近付く様な男。地下鉄の化猫では、門脇栄にあたる人物。
- さと(CV:日野由里加)…坂井家の下女。下女の役割を真面目に果たす一方、加世には辛く当たっている。地下鉄の化猫には登場せず、役割の一部が山口ハルと野本チヨに取り入れられている。
- 坂井伊國(CV:龍田直樹)…伊行の長男。酒好きで、行状の悪さから当主の座を弟に取られた。事件発生後は我が物顔で家中を仕切る。地下鉄の化猫には登場せず、役割の一部が森谷清と福田寿太郎に取り入れられる。
- 坂井伊行(CV:大塚周夫)…伊國と伊顕の父であり、現在は隠居している。地下鉄の化猫では、福田寿太郎にあたる人物。
- 珠生(CV:鎌田梢)…地下鉄の化猫の市川節子にあたる人物。市原節子と違い、彼女の性格や人物描写は殆ど掘り下げられていない為、心境などには不明な点が多い。ただし、理不尽に不遇で不憫な目に遭わされており、それに対して心から苦しんでいた事だけはしっかりと描写されている。
坂井の化猫
今作における化猫は、明確に坂井家の人間を殺す事が目的である。
飼い主である珠生の仇を討つ事が最大の目的である為、坂井家の血筋に連なる人間、坂井家に仕える人間も殺すという、虐殺者としての側面もある。その為、善悪や真相に関わらず、多数の人間を明確に殺害している。ただし、最終的に完全に珠生と坂井家の事情に無関係であった加世と小田島は無事であった為、珠生を苦しめた人間、助けなかった人間を標的にしていたと見ることもできる。また描写からみる考察では、初期に亡くなった人物(=関わりの薄い人物)ほど苦しまずに逝き、珠生を苦しめた人物ほどより苦悶に喘ぐような形で始末されていることから、珠生に対する行いによって扱いの差はあったとも見られる。
なお作中で最も珠生を苦しめた存在(=薬売りから「真」とされた人物)は生き残ったが、彼がもっとも大切にしていたものを喪失する形で物語は幕を閉じる為、生き地獄という形で罰を与えたとも取れる。
能力的な点では、地下鉄の化猫の様な空間を切り離すタイプの大きな力は使えず、結界を破る。死体に乗り移る。人間を襲い殺す。といった、物理的な暴力が目立つのが特徴。また、薬売りとの立ち回りにおいても、薬売りの結界を破り、直接襲い掛かるなどの力技が目立つ。
モノノ怪に登場する化猫
怪〜ayakashi〜の化猫が江戸時代の坂井のお屋敷に現れたものであるのに対して、今作の化猫は大正後期から昭和初期の時代の地下鉄に現れる。地下鉄の先頭車両を隔離し、七名の男女を閉じ込めて密室を作り、「市川節子の自殺事件」の真相を暴くことを目的としている。
大筋の物語としては、坂井の化猫のエピソードを再構成しているが、登場人物が幾人か減り、坂井家の屋敷の様な仕掛けや出入りの無い中に閉じ込められるという、より密室の要素が高くなった状態で物語が進む。また、坂井家の化猫と違い、関係者の多くは市川節子の自殺事件以外での接点が無く、それ故に手探りで真相を探るという、ミステリー度の高いストーリーになっている。
この他にも、事件の原因である市川節子の人格や心境をかなりしっかりと掘り下げられており、事件の原因である市川節子は、単なる被害者というよりも、良くも悪くも威勢が良く、それ故に突っ走りすぎて悲劇に巻き込まれた人物。として描写されている。
あらすじ
とある市に新たに地下鉄の駅が開通することになった。電車の開通を祝うイベントが開催される中、突然電車には原因不明のトラブルが発生し、市長を含む7人の男女が先頭車両に取り残されることになる。
何の接点も無いはずなのに、何故か閉じ込められた7人の前に「薬売り」が現れ、徐々に7人の共通点である「市川節子」の「自殺事件」の真相について浮かび上がっていく。
主要キャラクター
- 門脇栄(CV:稲葉実)…刑事。市川節子の事件を調べ、自殺と結論付けた。事件の真相を暴く事なく途中下車を試みた為、化猫の怒りを買う。
- 森谷清(CV:竹本英史)…新聞記者。市川節子の上司だった。事件の真相に近づくにつれ、全身を掻くようになる。
- 木下文平(CV:佐々木誠二)…電車の運転手。市川節子が身を投げ出した電車の運転を行い、線路に投げ出された彼女を轢いてしまった。事件の真相に近づくにつれ、脚を掻くようになる。
- 野本チヨ(CV:ゆかな)…カフェの女中。市川節子の死について証言を行った一人。真相に近づくにつれ、口を掻くようになる。
- 山口ハル(CV:沢海陽子)…未亡人。市川節子の死について証言を行った一人。事件の真相に近づくにつれ、耳を掻く様になる。
- 小林正男(CV:日比愛子)…牛乳配達の少年。市川節子の死亡現場の近所で働いていた。事件の真相に近付くにつれ、目を掻くようになる。
地下鉄の化猫
今作における化猫は、坂井の化猫と違い市川節子の死の真相を暴くという目的がある。また、最大の違いとして、化猫が殺すのは二名のみという違いがある。
モノノ怪の力で隔離された地下鉄の中で、真相を暴く為に必要な情報を明かした者から消えていくが、これは一種の脅かしを兼ねた解放であり、最終的には復讐相手以外の全員の無事が確認できる。
また、坂井の化猫が飼い主の復讐を果たす為にモノノ怪となったものであるのに対し、今作のモノノ怪は市川節子の怨念が通りかかった猫に取り憑いたものである。
能力的には、物理的な恐怖を与える事が多かった坂井の化猫と違い、特定の乗客にだけ姿を見せる・声を聞かせる。一人ずつ乗客を消していく。など、心理的な恐怖を与えてくる描写が多い。