概要
横山光輝が執筆した漫画で単行本は全60巻(文庫版では30巻)の長編歴史漫画。
桃園の誓いから始まり、最後は蜀の滅亡で終わる。長期にわたる休養や掲載誌の変更などを挟んだとはいえ、黄巾の乱から赤壁の戦い、三国鼎立、曹操・劉備の死、諸葛亮の死、蜀の滅亡まで描ききっている。
劉備・劉禅陣営を主役に据えながらも曹操・曹丕・曹叡、孫堅・孫策・孫権、董卓、呂布といった他の勢力を主体としたエピソードにも多くのページ数や章が割かれており、張任のように劉備陣営側にとっては敵でしかない武将達もそれぞれの所属する陣営での忠臣ぶりや活躍が描かれているなど、群像劇的な側面を持っている。そのため三国志入門としてはうってつけの作品であり、この漫画から三国志を知った人も多い。連載終了から30年近く経とうとしている現在でも創作ものの三国志としては圧倒的な知名度を誇っており、日本における三国志ファンにとっては一種の必須書籍とも化している。
ただし序盤のハイライトである官渡の戦いが数ページの経過説明のみという不自然な構成になっていて、この点は三国志ファンからはよく批判される。これはその頃の連載がちょうど掲載誌移籍と被ってしまい、官渡の戦いそのものにも主人公の劉備たちはほとんど登場しないことから、新しい読者も入ってくることが想定される状況では相応しくないとされたためとの事。
また全60巻のうち孔明の死(五丈原)を描いたのは59巻目途中で、そこから蜀滅亡までの30年は1巻足らずの、駆け足描写となっており魏延と楊儀の死、公孫淵の反乱、司馬懿・司馬師・司馬昭VS曹爽、郭淮VS夏侯覇、費禕の暗殺、姜維の北伐、鄧艾の成都攻略を経て劉禅の降伏後のエピソードで締められているが鍾会の乱などは省略されている。また呉については59巻の合肥新城攻めを最後に全く描かれていない。
三国志演義は史実とはかなり異なる内容であることは良く知られているが、横山三国志はその三国志演義からも逸脱した内容が多く含まれる(序盤の劉備の活躍や、黄巾の乱で劉備が張宝を討ち取る等)。これは底本にしているのが原典の三国志演義を大幅にアレンジした吉川英治の小説版であるため。しかもそれをさらに横山氏独自の解釈で膨らませ、オリジナルストーリーまでも少しばかり含んでいる。ちなみに「吉川三国志」も文庫本8巻にわたる大作であるが、8巻を半ば過ぎた孔明の死から蜀滅亡までかなり端折られて書かれているだけでなく、関羽と交友関係にあった老僧が関羽の死を夢で知った話まで付け加えられている。また、吉川は蜀滅亡後について『篇外余録』で言及しているが、これを横山は一切取り上げていない。
また、登場人物の容姿が三国志演義のそれとかけ離れていたり、連載初期の登場人物の服装や建築様式などは三国時代から見て後世(宋~明代)のものとなっている。これは連載開始当時、中華人民共和国との国交がなく当時の資料が満足に手に入らなかったためと横山は説明している。また、資料不足により当初は演義で使用されていた武器が反映されていないことが多かった(関羽と張飛が青龍偃月刀と蛇矛ではなく剣と薙刀を持っていたり、呂布は方天画戟ではなく槍を持っていたりなど。関羽と張飛の武器などは官渡の戦い前後に演義に準拠したものとなっている。もっとも、両者の武器も宋~明代に作られた武器で当時はないなど、演義も作成当初の風俗で描かれているとみられるが)。
また、キャラクター名に関しても「姓+名+字」という誤った表記がされている者が多い。
例えば劉備は「劉備(姓+名)」か「劉玄徳(姓+字)」と呼称されるのが正しいが、本作では「劉備玄徳」となっている。
一方で夏侯惇(字は元譲)や孫策(字は伯符)など姓名表記されている者もおり、統一されていない。このあたりも、「字」という文化がまだ知られていない時代の作品だから、というのが大きいだろう。
国交回復後は資料が手に入りやすくなったことで中盤以降は研究があまり進んでいなかった鎧などを除き史実準拠のものとなり、可能な範囲での修正も行われた。なお、横山は取材のために中国現地にも訪れており、たびたび通訳を絶句させるほどの質問を浴びせていたという。
以上のことから、本作品は「三国志演義」の漫画化というより「吉川三国志」の漫画化、ひいては三国時代をモデルにしたオリジナルの漫画作品でもあるとして楽しむべき作品だろう。
アニメ
テレビ東京系で「横山光輝 三国志」として1991年10月18日から1992年9月25日までテレビ東京系列で放送された。全47話。ストーリーは原作とほぼ同じだが漫画では省略された官渡の戦いが描かれていたりアニメオリジナル要素(アニメオリジナルキャラ、劉備達と孫策の親交、呂布の最期、孔明の若い頃のエピソード等)も多々見受けられるが、中には簡略化された部分やナレーションや登場人物の台詞で終らせているエピソード(孫堅の戦死、袁術の滅亡等)も存在する。そして物語は赤壁の戦いで終了している事もあり未消化の箇所が多い。
ちなみに董卓は相国に就任し、後に献帝を擁護した曹操が丞相に改めているが、アニメでは初めから丞相に統一されている。
スタッフではキャラクターデザインに荒木伸吾・姫野美智、音響監督に本田保則が参加している。
実は1985年から1986にかけて、日本テレビでロードショー枠で放映された通称「日テレ版三国志」も横山三国志を原作としているのだが、イケメンになっている劉備はともかく、金髪ケツアゴ曹操や美少女戦士于禁といった具合に横山版はおろか原点からもかけ離れた改変を行っているので、「横山三国志」とはみなされていない。ただし、浪川大輔氏が子役として出ている作品でもあり、後半で劉備が横山兜を被っているあたりは横山三国志らしい。
主な登場人物
メインキャラ
サブキャラ
- 曹洪(CV:野島汎平)
- 曹仁(CV:中嶋聡彦)
- 荀彧(CV:小林通孝)
- 孫堅(CV:島田敏)
- 孫権(CV:飛田展男)
- 甘寧(CV:掛川裕彦)
- 関平(CV:辻谷耕史)
- 孫乾(CV:岡和男)
- 董卓(CV:大友龍三郎)
- 公孫瓚(CV:福田信昭)
- 貂蝉(CV:折笠愛)
他多数
主題歌
オープニングテーマ
- 「時の河」(第1話 - 第32話)
作詞・編曲:FENCE OF DEFENSE / 作曲:西村麻聡 / 歌:FENCE OF DEFENSE
- 「DON'T LOOK BACK」(第33話 - 第47話)
作詞:RYO / 作曲:西村麻聡 / 編曲:FENCE OF DEFENSE / 歌:FENCE OF DEFENSE
エンディングテーマ
- 「空」(第1話 - 第32話)
作詞:工藤順子 / 作曲:遊佐未森 / 編曲:中原信雄 / 歌:遊佐未森
- 「STANDING ALONE」(第33話 - 第47話)
作詞:大塚純子 / 作曲:西村麻聡 / 編曲:FENCE OF DEFENSE / 歌:FENCE OF DEFENSE
ネット上では
登場人物のセリフが結構個性的であるため、よくネタとして使われている。
一例
- 「ジャーン!ジャーン!」(銅鑼。これが流れると伏兵が出てくる)
- 「げえっ!関羽!」(曹操。↑と組み合わせてどうぞ)
- 「待てあわてるな、これは孔明の罠だ」(司馬懿。もう全部孔明のせいでいいんじゃないかな)
- 「むむむ→なにがむむむだ!」(馬超→李恢。三国志的ぬるぽ→ガッみたいなもの)
- 「おおっ、邢道栄を捕らえたか。斬れっ!」(劉備。仁君だってたまにははっちゃけます)
- 「わしを殺せるものがあるか!」→「ここにいるぞ!」(魏延→馬岱。ノリツッコミの極致、三国志的死亡標記)
- 「そんなものはない」(関羽)
- 「だまらっしゃい」(よく出てくる反論)
- 「温州蜜柑でございます」
- 「甘寧一番乗り!」(三国志大戦でも落城勝利した際のセリフでも使用されている)
近年ではLINEのスタンプにもなっていたり三国志大戦でも初代シリーズの三国志大戦2においてレジェンドカードとして登場し(三国志大戦3稼働時に全員排出停止)、ver2.1にてストーリーモードで横山三国志のキャラクターを使ったストーリーも存在していた。また二代目三国志大戦においても再びレジェンドカードとして登場した。
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表記ゆれ:横山光輝三国志