来歴
字は仲達。『三国志演義』後半の主役の一人で諸葛亮最大のライバル。
河内郡温県孝敬里出身。司馬防の次男で、楚漢戦争期の十八王の一人である殷王・司馬卬の12世孫。
兄に司馬朗（伯達）が、弟に司馬孚（叔達）・司馬馗（季達）・司馬恂（顕達）・司馬進（恵達）・司馬通（雅達）・司馬敏（幼達）らがいる。司馬家の8人の男子は字に全て「達」が付き、聡明な者ぞろいであることから「司馬八達」と呼ばれた（ただ単に八人の達たちということでなく、「八人の達人」という意味合いにかけている）。
若年の頃から聡明で、司馬八達の中でも最も優れた人物といわれていた。
成人してからも仕官を好まず今でいうニート生活を送っていた。曹操が丞相になった頃、司馬懿を強引に文学掾に任じて「捕らえてでも連れてくるように」と命令したため、やむを得ず出仕した。
もっとも曹操は晋書によると「人に仕える男ではない」と重用しなかったという。
他にも出仕の時の逸話に関しては魏略と晋書で内容が全く異なっている。
彼亡き後、曹丕に取り立てられ出世。曹叡の時代には曹真から軍権を引き継ぎ、北伐と言う名の諸葛亮の侵略から国を守りきった。
その後政局の腐敗に陥った魏を立て直すため、クーデターを起こして政権を奪った。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」ということわざにもなったが、司馬懿本人は「生きてる人間の腹なら読めようもあるが、死んでる人間の腹など誰にも読めようか。笑いたい奴には笑わせておけ！」と豪快に許したとか。
つまり、諸葛孔明をもってしても司馬仲達の守りを完全に打ち破ることはできなかったのである。
余談だが中国のトランプでは諸葛亮と一緒に司馬懿がジョーカーの役となっている。
北伐についてのエピソード
諸葛亮の北伐に対する方策（及びそれを基にした演義の描写）から持久戦が得意というイメージが強いが、彼自身はむしろ電撃戦を得意としていたようである（これは魏という国全体の特色でもあるのだが）。
実際、第一次北伐の際には諸葛亮に呼応して反乱を起こした孟達の拠点、上庸まで通常一ヶ月はかかるところをわずか八日で進軍。敵の足並みがそろわぬうちに反乱を素早く鎮圧して諸葛亮の計算を大きく狂わせた（ただし、この当時に北伐に直接相対していたのは曹真である。司馬懿が同席しているのは演義のみ）。
どちらにしろ彼の北伐に対する方策は「兵站の弱い蜀の事情」を突いた戦法だったし、
そもそも魏の側は敵を殲滅せずとも、相手に勢力圏を築き上げさせなければそれでよかったのだった。
これらの方策は蜀（諸葛亮）を最も望まぬ展開に引きずりこんだ彼の賢明さを称えるべきであろう。
で、膠着状態に陥った五丈原で業を煮やした諸葛亮は過激な挑発に出るのであった。
司馬懿の陣営に孔明からの使者が来たのだが、そこで送られてきたのは女性の服および、「大軍を率いておきながら立てこもったままとは臆病者め。そんなに閉じこもっていたいなら女人の服を着て家事でもしていろ」と言う内容の手紙であった。
これには我慢強い司馬懿も頭に来たが、即座に思い直し「わざわざ敵陣にこんなもの命がけで持ってくるとは、あなたも大変だな」と丁重に使者をもてなして帰らせた。
司馬懿は持久戦の効果がこの挑発の形で現れたこと、諸葛亮が切羽詰まっていることを冷静に解析したわけである。その顛末を聞いた諸葛亮は途方に暮れ、そして病魔に冒され五丈原で生涯を終えることになった。
「晋書」の記述によると
栄達するようになっていくと司馬懿は側室をもつようになり、妻（正室）との仲が冷えた。ある時、妻（正室）をなじったため、抗議の意味で断食された。そして息子の司馬師と司馬昭も母に同調し断食したため謝罪した時に
「老婆の命を惜しんだのではない。息子が心配だった」と捨て台詞を言った。
もちろん本気の憎しみによる言葉であり、「老物可憎（老いぼれ婆）何煩出也（なぜ出て来て煩わせるのか）」と、この事件の原因となった妻を罵倒する言葉も書かれているので愛情の裏返しではない。
忘れられがちであるが、側室の柏夫人を寵愛していたと記述されている（ちなみにこの柏夫人との間に産まれた末子で九男の司馬倫は文盲で無能の上に権力欲の権化という救い難い人物で、西晋を滅ぼす事に大いに「貢献」している）。
そのため断食の逸話を事実とするならば、正室とは少なくとも後年は険悪な関係だったという意味の記述である。
詳しくは張春華の記事を参照のこと。
一部では恐妻家と信じる人もいるが、晋書にすらそのような記述は無く、完全なる誤解。
「重んじる」という意味の記述を質の悪い三国志本が誤訳し、
そこから三国志大戦といった後作の創作設定やインターネットなどで間違いが広まったのが原因のようだ。
ちなみに父の司馬防は質実剛健で、寛いでいるときも威厳を崩さず、他人に対して極めて厳格であった。さすがの司馬懿も兄弟達同様に成人した後であっても、言いつけがなければ部屋に入ることも、座したり発言することも許されなかったほどだったという。
また司馬防は尚書右丞であった時に、曹操を洛陽北部都尉に起用した人物で恩人に当たる。のち曹操が魏王になった時、鄴へ故郷で隠居していた司馬防を呼び寄せともに飲食を楽しんだとされる。長男の司馬朗が没した2年後の219年に没した。
晋書によると彼は首が180度後ろに回せるという特異体質の持ち主であった。
それをおもしろがった曹操がある時司馬懿を後ろからいきなり呼びつけた所、確かにぐるりと首が後ろに回ったのだが、改めて彼の顔を見た曹操は「こいつは見た目は従順そうだが根っこに野心を抱えているな」という印象を抱いたと言われている。
ただし以上の「晋書」は胡散臭い逸話を大量に採用している史書として評判が悪いのでこれらの逸話のほとんどは眉唾ものである。
その後の活躍
諸葛亮が死んだ後の司馬懿の活躍はあまり知られていないが、死ぬまでその辣腕ぶりが衰えることはなかった。
そんな中で面白いエピソードとして、遼東の地で反乱を起こした公孫淵の討伐がある。
反乱鎮圧を命じられた司馬懿は時の皇帝・曹叡（曹丕の息子）に「反乱鎮圧はどのくらいかかるかね？それと公孫淵はどんな手を打ってくると思う？」と訊かれたところ、
「そうですね…行きに100日、帰りに100日、戦闘に100日、兵士の休養に60日、…まぁ、一年もあれば片が付くでしょう。
公孫淵めがとる手段と言えば、城を捨てて逃げるのが一番良し、遼水の地で戦うのが二番目。襄平に篭もろうものなら生け捕りにされること請け合いですが、奴は城を捨てられるような男ではなく、さりとて二番手を取れるほどの頭もありません」と答えた。
他に部下にも「こちらの兵力が多く兵站の確保が難しいときには、ある程度犠牲が出ようとも速戦で片付けるべきだ。逆に兵力が少なく兵站が安定している場合は持久戦に持ち込むまでよ」とも語っている。(漫画三国志完結編では孟達の反乱の時を部下が引き合いに出したが、今回はそれとは逆の立場であると説得させている)
果たして結果はまさしく司馬懿の言った通りになり、公孫淵はボロ負けからの兵糧攻めを食らった挙げ句、降伏も許されず殺された。（なお電撃戦を得意とした司馬懿なのでフルボッコにした時点で勝ち確だったかもしれないが、中央の政争に巻き込まれるのを避けて敢えて引き伸ばしたという見方もあったりする）
で、この時の口上がまた凄い。和睦の使者をその場で斬って一言、
「貴様らは楚と鄭の故事を知らんのか？私も魏帝から列侯に封ぜられた身、王建（和睦の使者）ごときに『囲みを解け』『軍を退け』と指図されるいわれはない。王建は耄碌して主命を伝え損なったのだろう。次は若く頭の良い者を寄越すがいい」
「戦には五つの方法がある。戦うか、守るか、出来なければ逃げるか、降る…そして貴様は降ろうともしなかったな。ならば死ね、人質など要らんわ！」（人質を送って恭順を示すという文書に対し）
……見栄を張って降伏でなく和睦という手段を選んだ公孫淵がアレとは言え怖すぎる。絶対に敵に回したくない男である。
その後、仮病を使ったりボケ老人のふりをしたりと権謀術数をもって政敵の曹爽を打倒。魏の実権を掌握し、王凌(王允の甥)の乱では王凌と曹彪(曹操の子)を自殺に追い込み、曹一族をことごとく軟禁するなど権謀を奮った。
臨終の際の息子たちへの言葉は「魏の臣としての節度を忘れず、仕えること（意訳）」であったという。
建前上なのか本音なのかまでは判然としないが、少なくとも彼自身はクーデターを起こし実権を握ったとは言え、形式的立場上ではまだ魏の臣、そして事実上においても最期まで魏の臣として生きていたことだけは紛れもない事実である。
蜀呉がまだ残ってるうちは反乱を匂わせる遺言は出来なかったとも言えるが。これは彼を取り立てた曹操の立場と類似しており、死後に皇帝の座を禅譲させたのも同様（ただし曹操は子、司馬懿は孫が帝位に立った）である。皮肉な事に、その帝位に立った子孫の王朝も同様に長続きしなかった（庶子である四男・司馬伷の子孫による東晋が一応、続いてはいるが、かつての呉の地にまで逃れて成立した亡命政権である）。
ちなみに、変わった話として、諸葛亮の死後ではあるが、諸葛一族の一人諸葛誕の娘と、司馬懿の四男である司馬伷は結婚している。つまり、諸葛亮が生きていたなら、司馬懿とは、遠い縁戚関係になっていた事になる。
各種メディアでの司馬懿
横山三国志
「孔明の罠」という名文句を生み出したことで有名。
真・三國無双
司馬懿(真・三國無双)を参照
蒼天航路
作品が曹操の死で終了すること。表に出たがらない性格もありさほど活躍はしていない。曹丕と共に登場することが多いが曹操から二人まとめてダメ出しを食らったりしている。上述の首を180度後ろに回転させられるシーンは何度か描かれている。
SDガンダム三国伝
なお、彼の弟子として郭嘉こと郭嘉ヴァサーゴがいるが、史実的には真逆である。と言うか、司馬懿が曹操に仕える頃には郭嘉は既に没している。
英傑大戦
「我が眼に燃ゆる猛りを見た者よ。
貴様の恐れが我が道を盤石とする」
メイン画像の姿で実装、声優は東地宏樹氏。
緋勢力所属レアリティSR2コスト武力6知力11の伏兵持ちの騎兵。
素武力の低さで足を引っ張ってしまうこともあるが、高知力の伏兵を上手いこと敵部隊に当てれば序盤の試合を有利に進められるのが強み。
計略は使用士気5の妨害計略「狼顧の謀略」。
敵の武力知力を-3し、対象の武将の計略の必要士気を+2上げる。
相手の消費士気を上げることで、対抗する為に計略を使えば士気差が生まれ、逆になにもしなければ自軍が打ち負かされるかもという、二択のプレッシャーをかけられるのが最大の強み。
ただし、武力知力の低下値は必要士気の割にはさほど大きくない為、計略の内容上計略を打たれる前にこちらが計略を打つ必要がある。
三国創傑伝
演者はデスティニーガンダム。司馬懿デスティニーガンダムを参照。
妖怪三国志
司馬懿ではなく字の「仲達」として登場、USAピョンが担当する。プレイヤーが選択する3人の主人公のうちの1人。
ドラマ三国志 2010年版
演：倪大宏
吹替：佐々木勝彦
上記のように、本国中国でも諸葛亮の引き立て役としての活躍ばかりだった司馬懿だが、
こちらのドラマでは主役クラスの活躍を見ることができる。
『魏』の勢力では、曹操の次にキャスティングされていることが公式ページでも分かる。
登場も『三国志』の話としては非常に早く、『赤壁の戦い』直後から登場。
曹操には危険視され、重宝されなかったが、曹丕には信頼され、彼の支えとなっていく。
そして曹叡の時代には彼は全幅の信頼を置かれる。
もちろん、諸葛亮の北伐におけるライバル格としての登場であり、主人公側ではないのだが、彼の最大のライバルであったことがよく描かれており、
また、最終話にして後日談的に描かれる正始の変のエピソードは、彼が主人公として『魏』の全権を握ったところで物語は完結していく。
司馬昭にいたっては、司馬懿の参謀並みの活躍を見せ、無双シリーズなどで司馬昭のファンとなった人には嬉しいところである。
歴史的な意味もあってか、次男の司馬昭の登場のほうが遥かに多い。
反三国志
「魏・呉の王や文官は逆賊としてこき下ろされるが、武将は滅びを覚悟で忠義を通したとして称えられる」という文脈の下、魏の武将をリードする者という扱いで魏の中ではかなり優遇されている。
「負け続けた自分に大将の資格はない、一兵卒として戦死する事にした」と発言して部下に「いいえ、責任を感じるならなおさら今後も大将でいて下さい」と諌められ思い直すなど、相当に骨があり信頼される武人。
しかしその最期は孔明の罠の地雷で黒焦げになる（演義で雨に阻まれた事が実現）という悲惨なものであった。
尤も諸葛亮はこの後「主君が逆賊とは言え、忠節を貫いた立派な人をこんなにしてしまった」と悔やみ心身を病み、蜀漢軍の行った殺傷全部の責任を取るかのように病死している。
Fate/Grandorder
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿とのコラボイベント『レディ・ライネスの事件簿』にて登場。
疑似サーヴァントと呼ばれる他者に憑依する形で召喚されていて、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテを憑依先としている事から、サーヴァント名は「司馬懿〔ライネス〕」として表記されている。
詳細は司馬懿(Fate)の記事へ。
天地を喰らう（ファミコンのRPG版）
１作目２作目ともにラスボス。曹操配下として力を蓄えたのち、曹丕への代替わりに際してこれを出し抜きのし上がっている。
殊に１作目では４万台という全キャラ最大のHP（上限65535のギリギリ寸前か）と、特に危険とされる３つの魔法「撃免の計（物理で殴るを封じる）」「暗殺の計（一撃死。蘇生手段が乏しいので大変）」「完復の計（ベホマ）」が全部使えることからその強さは脅威的。
SWEET三国志
彼が張春華に求愛するところで物語が終わっており、これは冒頭で劉備が芙蓉姫に求愛したののリフレイン。
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個別
司馬炎(孫)
諸葛亮(ライバル)
