- 中国の三国時代の将軍。本稿で解説。
- 『真・三國無双』シリーズの登場人物。→夏侯惇(真・三國無双)
- 『恋姫†無双』シリーズの登場人物。→春蘭
概要
夏侯惇(かこうとん)は、三国時代の曹操軍の将軍である。
かこうじゅんと呼ばれることも。
中国語ではシアホウ・トェン(Xiahou Dun)と呼ぶ。
曹操、夏侯淵は従兄弟。
呂布との戦いの中で左眼に矢を受け失ったことから隻眼の将として知られている。
曹操が最も信頼した重臣であり、晩年には大将軍にまで昇った。
略歴
曹操が挙兵すると、その副将として付き従った。
190年、曹操が董卓配下の徐栄に敗れると、軍兵不足を補うため、夏侯惇は曹操や曹洪と共に揚州に赴き、兵士を集めたが、反乱により多くを失っている。
曹操が兗州を本拠とすると、夏侯惇は白馬に駐屯して別軍の指揮を執った。折衝校尉・東郡太守に任じられた。この際、夏侯惇は韓浩や典韋など優れた人物を見出し、部下に迎えた。
張邈らが反乱を起こすと、曹操の家族を守るべく夏侯惇は十分な準備をしないまま出撃。その際に呂布と遭遇し交戦するも捕らえられてしまう。しかし部下の韓浩の果敢な対応が功を奏し、夏侯惇は救出された。
夏侯惇は鄄城に到着すると、ただちに敵の内通者を捕らえ、曹操軍は安定を取り戻した。
その後、夏侯惇は徐州から帰還した曹操の下で呂布討伐に従軍したが、流れ矢で左眼を失う。
198年、劉備を攻撃するために呂布配下の高順・張遼と戦うも敗北した。
199年、洛陽の長官である河南尹に就任。曹操が袁紹と敵対し河北を攻めると、夏侯惇は背後の守りと外交を務めた。
曹操と袂を分けた劉備が攻めてくると、夏侯惇は于禁・李典を率いこれを迎撃した。李典の警告を聞かず、撤退する劉備軍を追撃すると伏兵に遭ってしまったが、李典の救援により事なきを得た。
206年、反乱を起こした高幹・張晟を撃破し、衛固・范先を捕らえて処刑した。
217年、曹操は濡須口から撤退し、夏侯惇を揚州方面26軍の総指揮官に任命して孫権と対峙させた。
220年正月、曹丕の代になると大将軍に就くも、先に死去した曹操の後を追うかのように病に倒れ、わずか一月後にこの世を去った。
人物
演義における描写から武官としての印象が強い夏侯惇だが、史実では寡兵の劉備軍に苦戦したり、李傕軍や高順軍に敗走したりと軍事能力については疑問符が付く。むしろ夏侯淵のほうが多くの軍功を上げているくらいである。
一方で軍費が足りない時には自分のポケットマネーから兵士の給料を出したり、宮殿の造営において駆り出された人夫たちと一緒に働いたりと、政治面ではその清廉な人柄によって曹操の名補佐役を務め上げ続けた。
また曹操が外征中に城の留守を預かって国政を監督し、曹操に代わって諸将を束ねたりと、軍政において重要な働きをしているほか、韓浩や典韋といった有能な人材を推挙したり、曹操と仲の悪い人物とも取次ぎをしたり、都のある河南の知事を務めたりと文官として資質もあった。
曹操からも絶大な信頼を置かれ、臣下の礼を取らないでよい特別待遇不臣の礼まで許して(魏ではなく漢の官位を与えられていた)遇しようとしたが、夏侯惇はそれを固辞し君臣の節度を守り続けた。
近年発見された彼の陵墓から見つかった副葬品は、彼の清廉さを示すかのようにただ剣一本のみであったという。
なお、彼のトレードマークともいえる“隻眼”であるが、片目を失ったことは本人には相当のコンプレックスであったようで、「盲夏侯」とあだ名される事を大変に嫌ったり、鏡を見るごとに地面に叩きつけていたという。
ちなみに、曹操が皇帝になることについては資料によって発言がまちまちで、今一つはっきりしていない。
三国志演義
徐栄や高順といった勇将を難なくあしらったり、関羽とも激しい一騎打ちを演じるも決着がつくことは無かった。左眼は呂布軍の武将・曹性に射られたことになっている。
一方で、軽率な面も目立ち、曹操の「鶏肋(鶏のあばら骨)」発言を命令と勘違いし、兵士たちに「皆の者、鶏肋(鶏のあばら骨)だ!」と号令をかけて兵士たちに疑問符を浮かせ、楊脩が「今こそ撤退の時」と読み取って撤退の準備をして曹操が激怒し、楊脩が処刑されてしまうなど、間接的に楊脩を死に追いやってしまった原因を作ってしまったことも。
病床の曹操を見舞うと関羽の亡霊を見て昏倒。史実とほぼ同時期に世を去っている。
創作
『真・三國無双』を始めコーエーシリーズも演義の夏侯惇のイメージを重視し、曹操の片腕と呼ぶにふさわしい活躍を見せるのみならず、臣下として彼を立てつつ終生字で呼び合うほど対等に接することができる戦友としての絆に重点が置かれている。
詳しくは夏侯惇(真・三國無双)を参照。
中国の歴史ドラマ「三国志 Three Kingdoms」では曹仁や荀彧に側近としての立ち位置を譲る形になったが、気性が荒く、やや悪役じみた雰囲気を持つが関羽と一騎打ちで渡り合うなど武芸に優れた将軍として登場する。
園田光慶の描いた漫画「三国志」に登場する夏侯惇は、最後の登場まで両眼で曹操に“経済の鬼”と評される人物になっている。
その他の二次創作等で曹操がはっちゃけた役柄になっている場合、概ね彼がツッコミ・ブレーキ役を引き受けることになることが多い。
反三国志では、演義以上に酷い扱いを受けている。馬休に右目まで潰され、生涯戦闘不能に陥る。つまり戦死さえ許されなかった(曹操の帝位簒奪の際、曹操から爵位を与えられているので生きているが、その後死んだという描写も無い)。
横山光輝版の漫画では読み仮名が「かこうじゅん」とされている。同作を元にしたエンジェル社のSFC版SLGでは「カコウトン(カタカナ表記)」である。
『天地を喰らうⅡ赤壁の戦い』ではステージ2のボスとして登場。2面のボスとは思えない強さを持ち多くのプレイヤーの心をへし折った。ファイナルファイトのソドムから受け継ぐカプコンベルトスクロールアクション名物2面にして「初心者殺し」ボスの系譜の継承者。
十三支演義
声:鈴木達央
関連タグ
作品タグ