概要
横山光輝の代表作であり、日本漫画において「巨大ロボットもの」と呼ばれるジャンルを築き上げた作品。
1956〜1966年の漫画連載と同時代の昭和30年代の日本を舞台に、リモコン次第で善にも悪にもなるロボットを巡り、少年探偵と悪人たちの攻防を描く物語。リメイクを繰り返し、何度も映像化された。本来は少年探偵ものであったが、鉄人編が好評を博したため、ロボットものへと方針が変更されたとされている。
名前の語源は日本を焼け野原にしたB-29爆撃機であり「アメリカの憎きB-29」から着想しただけあって初期の鉄人は正に悪役そのものであった。
しかし読者の人気に押される形で「真の鉄人28号」が28号と思われていた鉄人27号を倒し「正義の味方」となるストーリーに変更された。
但しあくまで「鉄人28号というロボット」は「道具」そのものでしかなく、悪人に操縦機を奪われた際は「悪魔の手先」へと変貌してしまう(実際、いくつかエピソードでは悪人の手先として大暴れしている)。
このアニメ版の主題歌にも織り込まれている「良いも悪いもリモコン(操縦者)次第」というテーマは、欧米(及び原義として)のロボット像とはまた異なる”日本独自のロボットもの”の定義の確立に大きな影響を与えたといわれる。
- 実写版テレビドラマは、1960年2月1日から同年4月25日まで放送された。全13話。
- テレビアニメ第1作『鉄人28号』は、1963年10月20日から1966年5月25日まで放送された。全84+13話。
- テレビアニメ第2作『太陽の使者 鉄人28号』は、1980年10月から日本テレビ系で放送された。全51話。
- テレビアニメ第3作『超電動ロボ 鉄人28号FX』は、1992年4月から日本テレビ系で放送された。全47話。
- 長谷川裕一作の漫画『鉄人28号 皇帝の紋章』は『月刊マガジンZ』にて2004年1月号から2005年1月号まで連載された。全3巻。
- テレビアニメ第4作『鉄人28号』は、2004年4月からテレビ東京系で放送された。全26話。
- 「原作完全版」は、2005年11月から2007年9月まで「巨匠・横山光輝『鉄人28号』執筆50周年記念」プロジェクトとして発刊された。全24巻。
- さとうふみや作の漫画『鉄人奪還作戦』は『マガジンSPECIAL』にて2006年No.5から連載を開始した(現在、連載休止中)。全3巻。
- 2009年1月、香港とハリウッドに拠点を持つアニメーション製作会社イマージ(IMAGI)と日本の光プロダクションは、『鉄人28号』のフル3DCG版『T28』のプロモーション動画を公開。3DCGの28号、ブラックスオックス、モンスターなどが派手なアクションを繰り広げる予定だったが、企画自体が消滅した(フル3DCGアニメ作品はデジタルセルアニメ作品の『一桁違う高額の予算と手間と時間が掛かる』ため構想初期段階で中止となった)。
【『鉄人28号』フル3DCGアニメ版『T28』プロモーション動画】
- 実写劇場版は2005年に公開された。正太郎役の池松壮亮初主演作品。
- 押井守脚本・演出で作家性が強い『舞台鉄人28号』が2009年1月から公演され、2010年3月にNHKでTV放映された。
- 舞台のモキュメンタリー映画『28 1/2 妄想の巨人』が2010年7月に公開された。
- テレビアニメ第5作『鉄人28号ガオ!』が2013年4月からフジテレビ系で放送された。全151話。
横山作品のキャラクターがスターシステムで登場するOVA版ジャイアントロボでは、本編に「鉄人28号」からキャラやロボットが複数登場するほか、外伝には鉄人をモチーフにした「JINTETSU」が登場する。
テレビアニメ第2作の「太陽の使者 鉄人28号」がスパロボシリーズの「第2次スーパーロボット大戦Z再世編」に参戦している。
2009年には神戸市のJR新長田駅前に、震災復興のシンボルとして鉄人28号の実物大モニュメントが建造された。
ストーリー(原作漫画に準じたもの)
太平洋戦争末期に日本軍が起死回生のために開発を始めた巨大ロボット兵器「鉄人計画」は乗鞍岳の地下研究所で極秘に開発されていたが、開発は難航し「鉄人28号」は戦後になって現れることになった。鉄人28号を自由に操る小型操縦器を巡って悪漢、犯罪組織にスパイ団までもが入り乱れる争奪戦に、少年探偵金田正太郎も巻き込まれていく。
主な登場人物(キャストは2004年版のもの)
本作の主人公で鉄人28号を操縦する少年探偵。未成年ではあるが車の運転や銃の腕前に優れ、推理力も抜群で機転が効き、周囲の大人達からも一目置かれる存在である。学校には行っていないようで、豪邸で一人暮らしをしている。幼い主人公にありがちなくよくよ悩んだりするようなことが一切なく、常に冷静沈着で悪人には容赦しない。そして、どんな脅威に面しても怖気付くことが無く、危険な現場にも自ら進んで乗り込む勇敢さも持ち合わせている。そのプロフェッショナルぶりは、たまに子供らしい一面を見せると逆に違和感を感じるほどである。また、鉄人が手脚をもがれて倒された際には、「手も足も出ないとはこのことですね」と非常事態にもかかわらずジョークをかます余裕を見せていた。
名前の由来はプロ野球の国鉄スワローズで当時エースとして活躍していた金田正一投手から。
ちなみに、少年愛を意味するショタコン(正太郎コンプレックス)の語源でもある。
正太郎とコンビを組んで行動する警察署長。正太郎をホームズとするとワトソンのポジション。感情豊かでおっちょこちょいなところがあり、ほとんど女性が登場しない本作においてヒロイン的な存在。しかし正太郎ほどではないが頭が切れ、警察官らしく推理の場面でも活躍する。それなりに権力はあるようで、多くの部下を引き連れて自ら現場に繰り出す。
正太郎との仲は非常に良く、正太郎が命を狙われた際には、彼の身を案じて正太郎邸に寝泊まりしたほどである(いびきがうるさく正太郎は閉口していたが...)。サターン編では、正太郎がさらわれてしまい生死不明の状況で「わしゃ 正太郎くんを自分の子供のように思っとった...」と口にし、ひどく悲しみに暮れていた。
本作が連載されていた当時、連載誌の発行元であった光文社の隣に大塚警察署が立地しており、そこから命名されたといわれる。(現在は交差点を挟んだ斜め向かいに移転している)
正太郎の協力者で鉄人の修理を担当する科学者。
下の名前はアニメ第2作では大次郎、他のアニメと原作では隆、実写版では俊夫。
既婚者で子持ち。科学者として優れた人物であり、彼の脳を不乱拳博士が手に入れようとしたほどである。また行動的でもあり自ら現場に赴くことも多い。
戦時中は鉄人の開発に関わっていたが、戦局の悪化に伴い南方の小島の研究施設に派遣され、そこで米軍の爆撃を受け戦死したと思われていた。しかし、実は爆撃の中一人生き残り、終戦を知らずに島で9年を過ごした後にインドに渡り、そこで終戦と鉄人事件を知り日本へと舞い戻った。
劇中では父親を鉄人26号に殺害されたり、何度も家を焼かれたりとなかなか酷い目にあっている。
正太郎や大塚署長との関係は単なる協力者以上のものである。VL2号編で正太郎が行方不明になった際には、夜が更けても独り頑なに正太郎を探す大塚署長に対して「私にとっても正太郎くんはかわいいですよ」と言い残し、2人分の徹夜の用意を取りに帰って行った。これに対し署長は「まったく 敷島博士も変わっているわい」と言いつつも涙を流して感激していた。
2004年版アニメではマッドサイエンティストじみた言動が目立つが、原作ではいたって良識のある博士キャラのお手本のような存在である。
後の改変によって加えられたキャラクター。正太郎の父親であり鉄人28号の開発者。父親を鉄人の開発者とすることで、鉄人の所有者としての正太郎の正当性が付加された。
ギャング団村雨一家の一人。鉄人事件で兄の竜作や仲間の辰が死んだ後もギャング稼業を続けているが、度々正太郎に協力するようになる。
村雨健次の兄で村雨一家の首領。鉄人争奪戦のさなか、操縦器を手に入れるも致命傷を負い、死期を悟り車で鉄人に体当たりをして果てた。
フランスの名探偵でPX団日本支部の壊滅を目的に来日した。当初子供だからと正太郎を侮っていたが、共に行動する中で互いに尊敬し合う仲になった。しかし、ニコポンスキー率いるS国スパイ団との戦いで負傷し、フランスへ帰国することとなった。
敷島博士の息子で正太郎の親友。正太郎や父親の危機の際、恐れず敵に立ち向かう勇敢な少年である。
謎の老科学者で生物学や機械工学などあらゆる分野の科学に精通している。まだら岩を拠点に死者の復活という研究を行っていたが、脱獄したスリルサスペンスに脅されてバッカスを建造する。サスペンスの逮捕後はバッカスを使って警察の追跡から逃れようとしたが、バッカスの暴走に巻き込まれ死亡した。
その後、博士自らが残した研究をもとに某国スパイ団の手で蘇り、彼らの要請によって「モノを考えるロボット」の開発に乗り出す。しかし、新元素バギウムの採掘現場を正太郎達に発見され、スパイ団の存在が明らかになり急遽ブラックオックスの開発へとシフトした。オックスは完成後大きな活躍を見せたが、結局スパイ団は追い詰められ、逃走する際に海上自衛隊の砲撃によって致命傷を負い、モノを考えるロボットの研究への未練を残しながら死亡した。
研究のためなら犯罪に手を染めることも厭わないマッドサイエンティストではあるが、その一貫性と天才科学者としてのカリスマ性ゆえに、「鉄人28号」の中でも人気のあるキャラクターである。
アメリカの大物ギャングで鉄人を奪おうと部下を引き連れ日本へとやって来た。
一度は逮捕されたものの人造人間モンスターに便乗して脱獄し、不乱拳博士を利用してバッカスを作らせ鉄人に挑んだ。
ニコポンスキー(CV:牛山茂)
S国スパイ団の首領で変装の名人。クロロホルムの影武者としての身を利用して鉄人強奪を試みる。度重なる失敗にもめげない不屈の精神を持つ。命の恩人をも使命のために捨て駒にする冷酷さも持ち合わせている。
国際的な密輸組織で、鉄人を狙って乗鞍岳の秘密研究所を襲った。
かなり大規模な組織で、ヘリコプターや戦闘機、さらには潜水艦までも運用している。それにもかかわらず、世間一般にはその存在が認知されていない。これは、秘密を守るためならば、例え団員であっても容赦無く抹殺するという鉄の掟によるものである。
フランスの怪盗で、鉄人を自身のロボットコレクションに加えようと日本へやって来た。
「奇巖城」と呼ばれる孤島を拠点に、正太郎ら日本警察、S国スパイ団、サスペンス一味との鉄人争奪戦に加わり、一旦は鉄人をその手中に収めた。
しかし彼自身は鉄人を奪うことよりも、正太郎たちとの知恵比べを楽しむことの方が第一の目的であった模様。また紳士的であり、殺傷を嫌う独自の美学を持つ。多くの部下も抱えており、その美学も徹底されている。
最終的に正太郎に追い詰められた際には素直に負けを認め、「悔しい気持ちもするが また 楽しい気持ちもするね」と言い残し、鉄人から手を引いて、夜の闇へとその姿を消した。
人工知能の研究をしていた科学者で、ロビーの開発者。ロビーを普通の子供のように育てようとしていたが、助手の助川がロビーを騙して悪用したことでそれは叶わず、ロビーの反乱後は罪悪感から研究を全てやめてしまった。
ロビー(CV:くまいもとこ)
牧村博士が作った人工知能を持つロボット。人間への不信感からロボットの王国を作ろうとロボット軍団で街を襲うようになる。
自分が作るロボットが鉄人やオックスに劣ることから、構造を調べようと強奪を試みるも苦戦し、自身の人口頭脳を見せる代わりに、鉄人を超えるロボットを開発してもらうというドラグネット博士との取り引きに応じる。正太郎を脅威であるとして数々の刺客を差し向けるものの、そこから足がついて隠れ家を発見され、ついには鉄人に押しつぶされて完全に破壊された。
義足の天才科学者で、人工知能の開発を目的に牧村博士やロビーに会うために来日した。非常に高性能な専用車や、短期間で鉄人をも凌ぐロボット、ギルバートを開発したことから、かなり有能な科学者である。
かつてドラグネット博士の助手として、ロボット人間の開発に携わっていたが、実験中にミスを犯してしまい研究を台無しにしてしまう。これに憤慨したドラッグネット博士によってロボット人間の実験台にさせられる。しかし実験は失敗し、結果的にケリーは死亡してしまう。その後、その変わり果てた身体を弟のジョンソンによって埋葬された。
それから一週間後、墓地に落ちた雷の影響でケリーは蘇り、ドラグネット博士への復讐を誓いジョンソンと共に日本へと博士を追ってやって来た。
機械となってしまった自分の姿を隠すために、顔を包帯でグルグル巻きにしている。また雷が激しい時や、電波が乱れる時は強暴性が増して暴れ出し、ジョンソン以外では手がつけられなくなってしまう。
『鉄人28号』の中でも哀しい宿命を負ったキャラクターであり、アニメなどの二次作品でも悲劇的な結末を迎えることが多い。
鉄人を密かに偽物と入れ替え、そのまま国外へ持ち去ろうとした工作部隊の指揮官。ニコポンスキーへの言及から、彼と同じくS国の軍人である様子。本国ではハバロフ閣下と呼ばれていた。
任務中は部下を含め、とんがり帽子のような覆面で頭をすっぽり覆っている。
穏便に任務を遂行しようとしていたが、山中のアジトで行っていた偽鉄人の試験飛行を、通りがかりの子供に見られてしまう。殺すのは可哀想だとして子供を監禁することになったのだが、行方不明の手配が回ったことで、そこから足がつき正太郎ら警察の追求を受けることとなった。
ロボット「モンスター」の開発者。
十字結社に奪われたモンスターを破壊してもらうために、鉄人の力を借りに日本まで正太郎を訪ねてきた。しかし、正太郎に事の次第を伝えた直後、十字結社の襲撃を受ける。正太郎の活躍で一度は難を逃れたものの、警視庁へと向かった正太郎の不在中に再び襲撃を受け殺害されてしまった。
とある王国において、王政の打破を目的とする秘密結社。しかしその実態は、平気で人を殺す殺人結社である。構成員は赤地に白十字の覆面で顔を隠している。
ゴロギル博士を追って日本へやって来たと思われていたが、真の目的は本国での戦いに向けた武器を入手するための取引にあった。
正太郎が取引を察知したことで、警察が事前に武器を押収したものの、武器移送中のトラックを地下からモンスターで襲撃した。
スペルン国の科学者でパガオニアのロボット展覧会に自作のファイア2世を出展した。ロボット売り込みのコンペで競争相手のロボットを破壊するという暴挙に出たが、鉄人によってファイア2世が破壊されたことで鉄人と正太郎への復讐を誓う。本作の他の科学者とは違い、商売としてロボットを開発・販売しているロボット工場の企業経営者としての顔も持つ。
国王の圧政に端を発する内戦に揺れる砂漠の国の司令官。彼が率いる国王軍は、革命軍が使用するカブトガニのようなロボット「ギド」の大群に苦戦し、ギドに対抗するためのロボット「サターン」を海外に発注する。
サターンが届くまでの時間稼ぎのため、強引に正太郎と大塚署長を誘拐し、鉄人をギドと戦わせた。国王軍の評判の悪さを自覚しており、正太郎らには自らを革命軍と偽って協力を求めていた。
アニメ第4作では、ベラネード財団の総帥として登場した。
国王軍に対抗する革命軍のリーダー。自らの名を冠したロボット「ギド」を使って戦いを有利に進めていた。
しかし、突如現れた鉄人によって多くのギドが破壊されてしまった。そのため正太郎を誘拐し、戦いの邪魔をしないように軟禁した。しかしその後、革命軍の隠れ家を襲った国王軍のサターンを正太郎が鉄人で撃破したことで、正太郎と和解して彼を解放した。
謎めいた風貌ではあるが、紳士的であり物分かりのいい人物。国王軍側に残した大塚署長を救いたいという正太郎の願いを聞き入れ、国王軍の追撃を一時中断し、部下2名を正太郎に同行させた。
国王軍との戦いに勝利した後は、正太郎と大塚署長に感謝の言葉を述べ、国の英雄として留まるよう申し出た。
構成員全員が覆面姿の悪の秘密組織。スパイや犯罪組織が多い本作の悪役の中では珍しい、世界征服を狙う秘密結社である。
部隊は各国に散らばっており、日本の部隊は政府を脅迫して思い通りに操ろうと、海底にミサイル基地の建造を計画していた。
しかし、構成員の一人が組織を裏切ったことで重要書類が警察に渡ってしまい、それを奪い返すための人質として大塚署長と加代子夫人を誘拐した。
アニメ第4作では「PX団」、PS2版では「X団」として登場した。
またOVA版ジャイアントロボではBF団C級エージェントとして大勢で登場した。
主な登場ロボ
主題歌(2004年版)
オープニングテーマ
「鉄人28号」
作詞・作曲 - 三木鶏郎 / 編曲 - 千住明 / 歌 - 六本木男声合唱団
ちなみに、イントロ部分とアウトロ部分のは1963版を製作した時、江崎グリコの単独スポンサー番組だったため、この部分は「♪グリコ グリコ グーリコー」というスポンサーコールの部分であった。2004版はテレビ放送ではカットされているが、フルコーラスではこの部分も存在している。
エンディングテーマ
「進め正太郎」
作詞 - 伊藤アキラ / 作曲 - 越部信義 / 編曲 - 千住明 / 歌 - 六本木男声合唱団
「なのにあなたは京都へゆくの」
作詞 - 脇田なおみ / 作曲 - 藤田哲朗 / 編曲 - 馬飼野俊一 / 歌 - チェリッシュ
挿入歌
「Space Oddity」
歌 - デヴィッド・ボウイ
「私のお父さん」
作曲 - ジャコモ・プッチーニ
関連イラスト
関連動画
関連タグ
太陽の使者鉄人28号 超電動ロボ鉄人28号FX 鉄人28号ガオ!
ラピート:南海電鉄の空港連絡特急列車。鉄道車両ではあるものの、見た目がとてもよく似ている。