作品の方は→『鉄人28号』
どんな攻撃にも耐えうる鉄の鎧に身を固め、計り知れぬ力で居並ぶ敵を叩いて砕く!
決して倒れる事もなく死ぬ事もなく、ただひたすら操縦者の意のままに闘い続ける不死身の兵士!
海であろうが!空であろうが!闘う場所を選ばない!
それが…それが…!勝利する事のみを目的とした完全なる兵器!
鉄人…鉄人28号!! (2004年版 敷島博士の演説より)
鉄人28号(原作漫画版)
太平洋戦争の最中、鉄人計画のもと敷島博士は長野県乗鞍岳の地下施設でロボット兵器の開発を行っていた。しかし起動実験は失敗し、研究チームは南方の孤島での特攻機開発へと回され計画は凍結された。そして終戦後の復興が進む日本において、謎の覆面男が国際的犯罪組織を背景に鉄人を完成させた。日本警察や某国スパイなどとのリモコン争奪戦の後、正太郎がリモコンを所有するに至り鉄人本体は正太郎邸の庭に置かれることとなった。
武器は何一つ持っていないが、格闘性能は非常に高く、小型ダム程度ならパンチ一発で撃ち崩し、自分より巨大なロボットでも軽々と振り回す。その名が示す通り鋼鉄の身体は銃弾や戦車の攻撃を物ともしない。偽鉄人との正面衝突などにみられるように、並みのロボットとは一線を画する頑丈さを誇る。ファイア3世との戦いでは熱戦の直撃に耐えており、これを見たビッグファイア博士は「特殊鉄鋼を使っているな」と分析していた。
作中で鉄人は頻繁に手足をもがれるが、それが原因で機能停止に陥ることはない。片腕を失った程度であれば何の問題もなく戦闘を続行できる。また、リモコンが無事ならば本体とは別に外れた四肢を遠隔操作することも可能。これらは独立連動装置によるもので、可動部それぞれに動力源を配し機構を独立させ、各部を上手く連動させることで常にパワーを維持することができる。また体格以上のパワーは、これらを一度に発揮することで得ているとされる。奪った鉄人を修理する際に独立連動装置を分析したロビーは、「コウイウ造リ方ダトコレ以上造ルノハ無理ナノカナ」と、装置の完成度を示す発言をしている。
当初ロケットは装備されておらず、S国スパイ団によって奪われた際に増設されている。後付けのパーツであるためか、ロケットの故障頻度は高く、堅牢性も鉄人本体に比べ低めである。胸を覆う緑色のリングはロケットを本体に固定するパーツである。
空の他にも海底、灼熱の砂漠、吹雪く高山地帯においても問題無く機能しており、高い地形適応性も兼ね備えている。
明確な必殺技は存在しないものの、堅牢な装甲とロケットのスピードを活かした体当たり攻撃で怪ロボットを薙ぎ倒す場面が多い。これに重力のエネルギーを加えた鉄人の急降下攻撃をギルバートが受け止めた際は、大塚署長ばかりか正太郎さえもが驚愕していた。
より強力なロボットが登場する中でも、鉄人の通信機能は特に高性能であるとされており、その技術を狙って鉄人を奪おうとした組織も現れた。ただし、ブラックオックスやアカエイの発する磁気に電波を乱されるという弱点もある。初期の描写では腕のリングは電波受信機として機能していた。
上述の通り、その機体の頑丈さ、パワー、および通信機能は非常に優れている。しかし光線などの武装を有しておらず、攻撃方法も格闘戦のみである事から、初戦では苦汁をなめ敗退する事も少なくない。しかし操縦者である正太郎や敷島博士の立案した作戦により、再戦時には勝利している。
また、原作漫画当初では、鉄人自体が価値のあるロボットとして狙われており、操縦機および本体は争奪戦の対象になっていた。しかし後半になると、敵方が自前のロボットを有しているため、狙われる事は無くなった。
作中では鉄人の操縦方法については明確には描写されていない。「直接操縦」とも「自動操縦に対して適宜命令する」システム(もしくはそれらの混合)ともとれる場面が混在している。ホワイトバッファロー山でのファイア2世との戦いでは独自の判断で動いているように見える。また、「暴れまわれ」といった命令を受けて、攻撃目標を指定しない戦闘を行うことも可能で、そのことから簡単な行動なら自己判断できるのでは、と考えられている。
後の作品のような明確なスペックは設定されておらず、連載初期のエピソードでは、民家の屋根や普通に屋内で戦う等、巨大ロボという概念が確立した現在から見ると、巨大ロボと言えるぎりぎりの大きさだったが、すぐに人間を片手で掴むほどまで巨大化した。連載初期のころに制作されたとされる実写版の鉄人28号でも人間より一回り大きいほどであった。
(2009年に神戸に建設された実物大の立像では直立時18mの設定で製作されている)
鉄人28号(松崎プロ特撮版)
旧日本軍の軍部命令を受け、敷島博士を中心とする技術陣が法師が岳の研究所で数か月の不眠不休の努力の末に建造していたロボット兵器、その28番目の設計機。身長はわずか2メートル程度で樽型の胴体、太めの頭部、あまり動かせない両手、アンテナの付いた両耳、フランケンシュタインのごとく両手を上げながらのろく歩行する。目から繰り出す怪光線が武器。第7話からは胴体が伸び、両腕が大きく長くなり、頭部も原作に近いデザインに変更、怪光線も胸から出すようになる。第13話で仮面団のロケットを取り付け、飛行可能になる。
その奇抜なデザインとテンポを欠いたアクションは後年懐かしのテレビ番組を懐古する番組で幾度となくネタにされた。
太陽の使者鉄人28号
全長:20.0m
重量:25.8t
飛行速度:マッハ4.02
金田博士が開発していた新世代ロボットで、鉄人のテクノロジーを狙ったロボットマフィアの首領ブランチによって金田博士が殺害された後は、友人の敷島博士が引き継ぎ完成させた。
初代同様武器や武装などは一切無く、太陽エネルギー変換システムと独立連動システムが生み出す強大なパワーから繰り出す「ハンマーパンチ」や「フライングキック」などの必殺技で敵を倒す。各部に独立運動システムを内蔵する点も初代を踏襲している。目は探索用センサーライトで深海や宇宙での探索に使用される。背部の飛行用ブースターは設計当初からあるもので、宇宙用ブースターなどへの換装も想定していた。
リモコンは「ヴィジョンコントローラー」(通称「Vコン」)を使用する。Vコンはトランクサイズのコントローラーで、操縦する際は中を開きアンテナを出す。中には操縦用のグリップが左右にあり、それを動かしつつ音声入力を併用して操縦する。レインボーチャンネルと言う7種の波長を持つ電波を発信できるため、電波妨害を起こすことはめったにない。電波の出力範囲は広く、日本から裏側のブラジルまで届くほど。
欠点はトランクレベルの大きさと移動中は乗り物を用いないと操縦できないこと。その大きさ故に持ち運びながらの操縦は困難で、敵に簡単に奪われたり操縦中に狙われたりすることがしばしばあった。
現時点で唯一スーパーロボット大戦シリーズに参戦している鉄人。
超電動ロボ鉄人28号FX
全長:18.0m
全幅:9.5m
重量:24.8t
最大起重:8.2t
最大速度:130km/h
1971年に初代・鉄人28号を元にした新鉄人計画、1991年に国際ロボットプロジェクトの規格や原則を経て製作された、28番目のロボット。1998年に着手し、完成までに五年の歳月を掛けている。FXは「Future X(未知なる未来)」と言う意味であり、未来への水先案内人と呼べる存在である。
特殊機能として半径10m以内の危険を探知する電波発信源防衛システムと戦闘能力を倍加させるダイレクト・ドライブ・システムを装備する。また、超電動システムを搭載する他の鉄人とのリンクも可能で、「鉄人17号フェニックス」との合体で飛行を可能としたり、鉄人10号Xレイとの合体で水中戦を繰り広げたりと拡張性が高い。さらには鉄人29号OXとの連携で「ダブルパワー・ジェノサイドバスター」と言う強化技も披露している。
リモコンは「グリッドランサー」と呼ばれる銃型のコントローラー。銃底にあるテンキーで命令内容を入力し、トリガーを引くことでFXやフェニックスを操縦する。波長の調整も可能で、それを合わせることで他の鉄人の操縦も可能となる。
それとは別に前述した初代鉄人28号も現役で活躍している。本作では単に「鉄人」と呼ばれる機体はおもにFXを指すため、こちらは「旧鉄人」「父さんの鉄人(正人からの呼称)」などとも呼ばれる。アップデートはされてはいるものの、流石に型落ちどころの話ではない古さなのでスペック的には新世代鉄人シリーズには見劣りするが、初代鉄人が活躍するエピソードもあるなど活躍の場が無いわけではない。主な操縦者は第1作同様金田正太郎だが、正人や三郎も操縦したことがある。
余談だがスタッフは初代鉄人を活躍させたがっていたらしく、それを反映して前半はFXを差し置いて活躍するというケースが多かった。しかしスポンサーから注意されたのか正太郎がインターポール局長になった後半は活躍の場が減少している。
鉄人28号(2004年版)
第二次大戦中、南方の日本軍の秘密研究所で金田博士が、日本を勝利に導く「鉄人計画」に基づいて建造した兵器である。
公式名とは別に、金田博士が当時まだ見ぬ自分の息子の名前「正太郎」を愛称として授けていた。
「太陽爆弾」と称される金田博士の開発した非常に危険な動力源を内蔵しており、その能力を最大限に発揮する事で驚異的な性能を見せるが、最終的にはその力に機体が耐えられず自壊してしまう。
この他にも金田博士の開発した「廃墟弾」という兵器を満載した超巨大な「大鉄人」という機体が劇場版で登場している。
この作品での鉄人は、正太郎との関係を「兄弟」や「もう一人の自分」にしてより関係性を濃密にしたり、「兵器」としての負の一面を色濃くしている。
鉄人28号ガオ!
可愛らしくデフォルメされているが、基本的に敵を一撃で破壊する最強なロボットになっている。
普段は金田家の庭に体育座りで野ざらしに待機している。
敷島博士に魔改造レベルの改造をことあるごとにされそうになったりされているが、無事に元のままである。
よくリモコンを奪われては悪魔の手先になっている。
鉄人28号(実写映画版)
元々は金田正太郎の祖父が第2次大戦中、極秘裏に開発を進めていた「鉄人1号」を、戦後になって正太郎の父である金田博士によって平和産業を目的に再開発されたもの。
2号から27号まではすべて失敗に終わり、28号でようやく完成したものの博士が実験中の事故によって死亡した為製造は打ち止めとなり、研究所のある孤島に放置されていた。
当初は色が塗られていないホワイトカラーだったものの、ブラックオックスに敗北後は最新の科学技術と旧鉄人開発スタッフによる合同作業によって大幅にアップデートされ、色も青を基調としたものに、さらには金田博士の悲願であったロケットエンジンによる飛行も実現させた。
操縦者が特殊なヘッドマウントディスプレイを装着することで鉄人と同じ目線で操縦することができるが、反面鉄人が受けたダメージがフィードバックしてしまう。
CM
企業のCMにも、起用され登場している。
2009年に、NTTドコモのデータ通信端末のCMにて登場。鉄人はCGで描かれ、「登場編」および「鉄人vs.ブラックオックス編」の二種が放送された。
当時の東京・銀座の街中に鉄人が登場し、鉄人はデータ通信端末「L-05A」をノートPCに接続する事で起動・操縦されている。
ブラックオックス編ではブラックオックスも登場。鉄人はオックスと東京都内で戦闘を繰り広げ、データ通信量や端末の性能差によりオックスを下している。
また、このCM内のオックスは、実写映画版同様に飛行能力を有している。
:いいなCM NTT docomo for PC 鉄人28号
鉄人およびオックスのデザインは、多少のアレンジが施されている。また、色彩も上記実写版よりもやや暗め。
この他にも、2008年にニッパツ・日本発条株式会社のCMに登場。
他に、LIXIL住宅研究所・ブライトホーム、まんだらけなどのCMにも起用され登場している。
リモコン
鉄人28号シリーズでは、リモコン(『太陽の使者』はVコン、『FX』はグリッドランサー)を奪われて、敵に鉄人が操られて「悪魔の手先」になってしまうエピソードがある。
主題歌にもあるように、まさに「いいも わるいも リモコンしだい」である。
ちなみに鉄人自体も前述の通り人工AIらしきものを持っているものの、所詮は単なる無人兵器として開発されたため暴れることしかできない。というのも、当時掲載誌「少年」(光文社)の看板だった『鉄腕アトム』が優れたAIで勝手に善悪を判断し勝手に動き回って戦うという「善」の体現者であったことのアンチテーゼとして、最初は鉄人は「悪」の化身として描かれたから、という理由がある。
そして、それは、鉄人28号シリーズだけではなく、全てのロボットアニメ、いや、全ての事柄にも言える事でもある、「力を得た者」が「その力」を「どう使うのか」という、我々に問い続ける命題なのかもしれない。
なお、各作品のメカとしてのリモコンの詳細は下記を参照。
- 原作漫画・白黒アニメ版、及び2004年度版リモコン
リモコンは小箱程度の大きさで、側面に取手が付いている。上部からは二本のアンテナらしき突起が伸び、前部表面に三つのボタン型スイッチが併設されている。
原作漫画で、ニコポンスキーがスリル・サスペンスに脅迫された際。断片的ではあるが操縦方法を教えていた。
三つのスイッチには、
「(ボタンを押すと)鉄人が動き出す」
「(別のスイッチで)方向を変える」
「(さらに別のスイッチで)手足を動かす」
これらの他に、スイッチの一部を「まわす」事で、「鉄人をこちらに来させる」動作を取らせる事が可能。
2004年版では、三連スイッチの一つをダイヤルのように細かく回す事で、鉄人に細かい動きを命じていたシーンがあった。
これらから、「前面の三つのスイッチ」を用いて操縦するらしい。スイッチはボタンの様に「押す」のみならず、「ひねる」「回す」という構造にもなっており、これらを組み合わせる事で動かしている様子。
扱いはそう難しくは無いらしく、劇中でリモコンを持つ人間は大きな問題も無く、鉄人を操縦していた。
また、リモコンの複製を作り同時に起動させた場合。鉄人の本体は混乱し暴走してしまう描写が見られた。
白黒版アニメでは、リモコンの上部のアンテナをジョイスティックまたはレバーとして解釈しており、正太郎はこれを握って動かす事で鉄人を操縦していた。
FXに登場した旧鉄人の操縦機のボタンは、設定画の記述によると「(ファミコンなどの)十字ボタンに似た構造」と解釈されていたらしい。
- 太陽の使者版「Vコン(ビジョン・コントローラー)」
小型のアタッシュケース型で、開く事でコントローラーに変形。その際には上部に二本のアンテナが伸び、中心部にモニター、下部に操縦用ジョイスティックが伸び、それを握って操縦する。
モニターには鉄人自体の視点が映し出され、スティックを用い精密な動作をさせる事も可能。
こちらも劇中で、悪人(紅トカゲ団)にVコンの設計図が盗まれ、新たなVコンを作られて鉄人を勝手に動かされる事件が起こっている。
- FX版「グリッドランサー」
腕に装着する、ガントレットと銃を合わせたような形状。銃のようにトリガーを握って、折り畳まれていたトリガースコープを展開させ、スイッチを押して起動。三連ボタンを押す事で指令を下し操縦する。
こちらもまた、劇中で盗まれ、鉄人を悪人の手先にされたエピソードがある。
玩具では、FXおよび17号フェニックス、オックスに対応しており、それぞれの操縦モードが内蔵されていた。
なお、没デザインは、劇中の他の鉄人の操縦機に流用されている。新鉄人の一体、18号アイアンイーグル用のグリッドランサーは、没デザインの流用である。こちらはガントレットタイプで、腕に装着し、表面のボタンを用いて操縦している。
名称
細かいことだが、語意的に1機しかないからこそ「28号」である。
漫画版の鉄人1~26号は量産型だが、26機を区別するために「号」で数えられる。
したがって型番28号そのものが量産された場合、鉄人28型と呼ばれるだろう。
なぜ28号なのかというと、先の大戦で日本各地を焼け野原にしたB-29の存在がある。
戦後、疎開先から帰ってきた横山光輝氏が見たものは、一面瓦礫の山になった神戸の街であった。
高射砲も届かない上空を飛び、「空の要塞」と呼ばれたB-29の強大なイメージが、鉄人28号の兵器としての側面に通じているのである。
そのため連載前の煽り文では「正義のアトム、悪の鉄人!」などと書かれ、正太郎に操られる前は理性を持たない怪物として暴れ回ることとなった。
ただし、鉄人28号は戦時中に起動に失敗して一度爆発四散したことが描かれているため、実は2機あった可能性もある(どちらにしろ現存するのは1機しかないが)
ちなみにその外見は鉄人27号と同じものであり、現存する28号は修復或いは新造する際にかなりの改装が行われたようである。
(余談だが28号出現の報せを聞いて駆けつけてきた敷島博士は27号を見て違和感を覚えているが、27号であるとは断言できなかったので、27号の方も「戦時中の28号」と同型に改装されている可能性がある)
余談
幼い日の永井豪は漫画少年であり、アトムとともに鉄人の読者でもあった。
その際、27号と異なる28号の異形かつ恐ろし気な外観に、当初違和感を覚えていた。しかし、鉄人28号がリモコンにより正太郎の味方になって活躍するのを見て、恐ろし気な異形の外観が頼もしく感じるように。そこから「怖そうな奴を味方にすると、これほど頼もしい事は無い」という事を、子供心に学んだとの事。
後に『マジンガーZ』を連載する際。マジンガーZの「強面な外観」や、「操縦者自体で善悪どちらにもなる」という点は、鉄人からの影響からとコメントしている。