概要
中国明代の「四大奇書」の一つ。作者は施耐庵とされているが、今日までその真偽は不明確のまま。
北宋時代を舞台に、朝廷を牛耳る高俅ら姦臣達の専横で民衆が苦しみ世が乱れる中、難攻不落の水塞、梁山泊に拠って天下に暴れまわる「百八星」こと百八人の無法者、英雄好漢の活躍を描いたもので作品自体はフィクションである。
日本でも古くから人気を集めた小説(後述)であるが、いわゆるピカレスクロマンであり、時代・文化的背景が著しく異なるため、現代日本人の一般的なモラルからすると受け入れがたい描写も少なからずある(食人・幼児殺しなど)。これは時代背景だけではなく、『三国志演義』が君主と国に対する忠勇を全面的に強調し、歴代の権力者が奨励したのに対し、こちらは"山賊が佞臣を含む悪党をブチのめす"というかなり危ない内容であったために何度か発行停止処分を受けてアングラ化し、その都度どんどんエグイ内容となったことも起因しており、幾つかのバージョン違いが存在する。
- 100回本:一番古い。中国では最も一般的
- 71回本:100回本ベースだが108星が集結したところで切られ、以降の対禁軍戦や征遼・征方臘の話がなく盧俊義の夢の話で締め括られる。
- 120回本:71回とは逆に征遼と征方臘の間に田虎・王慶討伐戦が入る。日本ではこちらが一般的。
スピンオフ作品があり、外伝や続編のストーリーが存在する。
- 金瓶梅:俗に言う「武十回」から分岐した小説。当該項目参照。
- 水滸後伝:李俊が主人公。生き残った好漢以外に王進・扈成・聞煥章・費保らや花篷春ら好漢の二世たち、さらに何故か生存していた欒廷玉が新たに仲間になる。100回本の続編ゆえに田虎・王慶編に登場した人物(瓊英・喬道清など)は登場しない。
日本での受容
江戸時代から広く知られ、古代日本に翻案した建部綾足『本朝水滸伝』、女体化パロディである曲亭馬琴『傾城水滸伝』などの派生創作も多く作られた。馬琴の『南総里見八犬伝』や講談などで語られた国定忠治の武勇伝も水滸伝の影響を大いに受けているという。以降、現代に至るまで翻案・派生作品が生み出され続けている。
なお、ピクシブ百科事典の「横山光輝」の記事には「水滸伝や三国志といった日本人にはなじみ薄い中国文学」などと書かれているが、もちろんそんなことはなく、横山が描く前から日本人によく知られていた作品なので誤りである。ただし、横山自身が「最近の子どもたちを中国古典の名作に目を向けさせた」と自負している通り、横山水滸伝が日本における『水滸伝』の知名度に貢献しているのは確かである。
水滸伝をモチーフにした作品
漫画・アニメ
- ジャイアントロボ 地球が静止する日
- 108星をモチーフにした同名キャラクターが複数登場する(というか横山光輝版「水滸伝」からの客演である)。
- 銀河神風ジンライガー
- 本作をモチーフとしたロボットアニメ。
- 横山水滸伝
- 車田水滸伝
- AKABOSHI-異聞水滸伝-
- 天野洋一の漫画作品。
小説
- 新・水滸伝
- 吉川英治の遺作となった小説。原典を現代小説の形に改めた作品と言える。吉川の死去に伴い裁判官李逵の話で絶筆した。
- 北方水滸伝
- SF水滸伝
- 石川英輔氏が書いたパロディ小説。
- 魔界水滸伝
- 栗本薫の長編伝奇SF小説。
ゲーム
- 幻想水滸伝シリーズ
- コナミから発売した本作をモチーフとしたRPG。
- 水滸伝 天命の誓い・水滸伝 天導一〇八星
- 水滸演武
ノベル
創作
- 梁山侠女異伝(ドキッ!女の子だらけの水滸伝)
- 豪傑女体化したオリジナル企画。
その他
- 乙女絵巻 水滸伝
- 2010年にハーヴェスト出版から発売されたカラーイラスト集。簡単な人物紹介と物語の出来事が書かれているほか、水滸伝の主だった登場人物達全員が女体化(元から女性だった者も含む)しているイラストが掲載されている。pixivにもごくわずかに本誌に掲載されたイラストが投稿されている。