生涯
1103年に生まれた。豪農出身だが、幼い頃に父親を亡くし、母親に育てられた。21歳の時に、義勇軍に参加した。彼は武勇に誉れ高く、金との戦いなどに大いに活躍し、次第に頭角を現していった。しかも、農民の出身ということもあり、民衆からの人気も高かった。
主戦派筆頭である岳飛の存在は、南宋の時の宰相である秦檜(しんかい)率いる対金和平派にとっては厄介なものであった。
そして、あろうことか秦檜は金の梁王・完顔宗弼と密約を結んで、冤罪によって岳飛とその子で同じく武将であった岳雲(がくうん)共々を投獄してしまったのである。
親子二人には嘘の証言をさせようと度重なる拷問が行われたが、それでも口を割る事はなかった。
岳飛の側近・韓世忠は秦檜へ抗議したが、秦檜は｢莫須有/(罪は)あったかもしれない｣と曖昧な返事をする。
そして、1141年に処刑され、晒し首にされたと云われている。享年39。
秦檜への恨みはすさまじく、｢油条｣というねじり揚げパンが作られ、｢粗末なねじりパンを秦檜夫婦に見立てた料理を作ったら一気にバズった｣というのだから驚きである。睚眦の恨みという故事成語があるが、ここまで恨まれるのも考えものである。
人物評
農民出身ではあるが上り龍の如く早々と出世し、その上で金軍相手に連戦連勝するほど武勇に優れていた。おまけに書の達人であったとされる。
また、軍規に厳しい真面目な人物であった。当時略奪が当たり前であったが、自分の軍では部下や兵士に略奪を許さなかったという。
その完璧超人またはリアルチートぷりから中国国内では"英雄の中の英雄"として尊敬され、三国時代の蜀の関羽と並ぶ絶大な人気を得ている。ちなみに関羽とは文武両道かつ政治的な大局的見地に欠けていた点も似ている。その人気がどれほどのモノかと言うと、杭州は西湖のほとりにその名も「岳王廟」が建立され、「御本尊」とも言うべき岳飛・岳雲父子の墓の前に後手に縛られて跪いた姿勢で建造された政敵である秦檜夫妻の石像に唾を吐きかける風習があったほどである。なお、現在では秦檜もある程度再評価されており『秦夫妻の石像に唾を吐きかける行為』は現在では禁止されているのでくれぐれもやらないように。
…のだが、如何せん日本では近年までマイナーと云わざるを得ない人物であった（というか日本人の中国史理解が三国志に偏りすぎなのだが）。田中芳樹の布教や、コーエーテクモのゲーム、北方謙三の『北方水滸伝』や『岳飛伝』により、今では三国志以外の中国史上の武将の中でもよく知られた人物の一人になってきている。
関連作品
⋯毎回隠し武将扱いで登場。全然時代が違うのに…。おまけに強キャラ扱いという優遇ぶり。
⋯共に水滸伝をアレンジした作品。前者では宋軍の若き将軍として登場。当然梁山泊から見れば敵役、後者では方臘討伐戦から登場したが史実通りの最期を遂げる。
- ドラマ岳飛伝_THE_LAST_HERO
⋯構想7年、総製作費32億円という大作。2013年公開で全67話。
関連タグ
- 楊家将演義⋯岳飛伝と同じく、中国のサブカルチャーへの影響が強く、京劇の定番である悲劇。
