概要
- 名手、技能を極めた人に対する称号。将棋、囲碁ではタイトルになっている。
- 織田信長が本因坊算砂を「そちこそまことの名人なり」と称揚したことが由来とされるが、根拠は全くない。増川宏一によると、鎌倉時代の『二中歴』には、既に囲碁と双六の名人の記述があるという。
- しかし、本因坊算砂は豊臣秀吉、徳川家康(および以降の江戸幕府)から扶持を受け、囲碁(および初期は将棋も)の最高実力者として認められる存在になったことから、一世名人として名を残している。将棋については大橋宗桂(初代)にその地位を譲ったことから、宗桂が将棋の一世名人となっている。
- 元々は世襲制だったが、複数の家からの選出であることに加え、積極的な養子縁組により、ある程度の実力を保っていた。ただし、幕府など対外的な政治力も求められたため、純粋な実力では劣る者が名人に就くこともあった(名人が今日の日本棋院理事長・日本将棋連盟会長を兼務したと考えると判りやすい)。後に明治時代の初期に一門に属する実力ある弟子が襲位・継承する制度に改められる。ただし終身制であることは更に後の実力制移行まで変わらなかった。
- 囲碁家元は「碁所」、将棋家元は「将棋所」と称し、江戸幕府の役職であるかのように伝えられていた。しかし、実際はいずれも私的な組織で、幕府には「碁の者」「将棋の者」と呼ばれていた。
- 囲碁、将棋とも、「実力名人戦」を企画した東京日日新聞の阿部眞之助の運動により実力制のタイトルに移行した。
囲碁の名人位
- 江戸時代は家元制。本因坊家、井上家、安井家、林家の4家から選ばれた。1938年(昭和13年)、最後の家元制名人・本因坊秀哉の引退後、いったん空位となる。この時、タイトル戦化したのは本因坊の名跡で(本因坊戦)、名人は1962年(昭和37年)に名人戦を創設してタイトル戦の一つとなった。
- 実力制で名人を5連覇、または通算10期以上獲得した棋士は、「名誉名人」を名乗る資格を持つ。「名誉名人」は原則60歳以上または引退後の称号。家元制時代の代数とは通算しない(代わって、本因坊戦の永世称号を有した者は本因坊家世襲からの通算で代数を計上する)。
歴代名人
(家元制時代)
代数 | 棋士 |
---|---|
一世名人 | 本因坊算砂 |
二世名人 | 中村道碩 |
三世名人 | 安井算知 |
四世名人 | 本因坊道策 |
五世名人 | 井上道節因碩 |
六世名人 | 本因坊道知 |
七世名人 | 本因坊察元 |
八世名人 | 本因坊丈和 |
九世名人 | 本因坊秀栄 |
十世名人 | 本因坊秀哉 |
(実力制移行後)
※太字は現在の在位者
旧制/新制 | 代数 | 棋士 | 通算獲得数 | 連続獲得数 |
---|---|---|---|---|
旧 | 1 | 藤沢秀行 | 2期 | - |
旧 | 2 | 坂田栄男 | 2期 | 2連覇 |
旧 | 3 | 林海峰 | 8期 | 3連覇 |
旧 | 4 | 高川格 | 1期 | - |
旧 | 5 | 石田芳夫 | 1期 | - |
旧 | 6 | 大竹英雄 | 4期 | 2連覇 |
新 | 7 | 趙治勲 | 9期 | 5連覇 |
新 | 8 | 小林光一 | 8期 | 7連覇 |
新 | 9 | 加藤正夫 | 2期 | 2連覇 |
新 | 10 | 武宮正樹 | 1期 | - |
新 | 11 | 依田紀基 | 4期 | 4連覇 |
新 | 12 | 張栩 | 5期 | 2連覇 |
新 | 13 | 高尾紳路 | 2期 | - |
新 | 14 | 井山裕太 | 8期 | 3連覇 |
新 | 15 | 山下敬吾 | 2期 | 2連覇 |
新 | 16 | 芝野虎丸 | 2期 | - |
名誉名人
将棋の名人位について
- 将棋における名人は、棋士の称号の一つである。1612年から1897までは、「将棋所」の大橋家本家・大橋家分家・伊藤家の最強者から、1898年から1937年までは将棋界の最高権威者に与えられた終身位であり、棋界の近代化にあたって短期実力制へ移行した1937年以降は名人戦におけるタイトル称号となっている。
- 実力制で名人を通算5期以上獲得した棋士は、「永世名人」を名乗る資格を持つ。永世名人の代数は、家元制・推挙制名人からの通算になる。「永世名人」は原則として引退後の襲位だが、大山康晴・中原誠・谷川浩司は現役時代に襲位した。
家元制(世襲制)および推挙制による名人
代数 | 棋士 | 備考 |
---|---|---|
一世名人 | 初代大橋宗桂 | 1612年、江戸幕府より俸禄を与えられた。 |
二世名人 | 二代目大橋宗古 | 1634年に襲位。初代大橋宗桂の子。 |
三世名人 | 初代伊藤宗看 | 1654年に襲位。二代目大橋宗古の娘婿で分家「伊藤家」の初代。 |
四世名人 | 五代目大橋宗桂 | 1691年に襲位。初代伊藤宗看の子、二代目大橋宗古の外孫。 |
五世名人 | 二代目伊藤宗印 | 1713年に襲位。初代伊藤宗看の養子。 |
六世名人 | 三代目大橋宗与 | 1723年に襲位。初代大橋宗桂の曾孫。 |
七世名人 | 三代目伊藤宗看 | 1728年に襲位。二代目伊藤宗印の子。 |
八世名人 | 九代目大橋宗桂 | 1789年に襲位。二代目伊藤宗印の孫。三代目伊藤宗看の甥。 |
九世名人 | 六代目大橋宗英 | 1799年に襲位。三代目大橋宗与の曾孫。 |
十世名人 | 六代目伊藤宗看 | 1825年に襲位。五代伊藤宗印の養子。 |
十一世名人 | 八代目伊藤宗印 | (1879年)に襲位。七代伊藤宗寿の養子。 |
十二世名人 | 小野五平 | 1898年に襲位。初の推挙制名人。 |
十三世名人 | 関根金次郎 | 1921年に襲位。近代将棋界の祖。 |
永世名人(実力制)
※は現役。
代数 | 棋士 | 備考 |
---|---|---|
十四世名人 | 木村義雄 | 実力制初代名人。引退後の1952年に襲位。 |
十五世名人 | 大山康晴 | 実力制三代名人。現役のまま1976年に襲位。 |
十六世名人 | 中原誠 | 実力制五代名人。現役のまま2007年に襲位。 |
十七世名人 | 谷川浩司※ | 実力制七代名人。現役のまま2022年に襲位。 |
十八世名人 | 森内俊之※ | 実力制十二代名人。2036年までに引退、襲位予定。 |
十九世名人 | 羽生善治※ | 実力制九代名人。引退後に襲位予定。 |
実力制名人
※は現役、太字は現名人。
代数 | 棋士 |
---|---|
初代実力制名人 | 木村義雄 |
二代実力制名人 | 塚田正夫 |
三代実力制名人 | 大山康晴 |
四代実力制名人 | 升田幸三 |
五代実力制名人 | 中原誠 |
六代実力制名人 | 加藤一二三 |
七代実力制名人 | 谷川浩司※ |
八代実力制名人 | 米長邦雄 |
九代実力制名人 | 羽生善治※ |
十代実力制名人 | 佐藤康光※ |
十一代実力制名人 | 丸山忠久※ |
十二代実力制名人 | 森内俊之※ |
十三代実力制名人 | 佐藤天彦※ |
十四代実力制名人 | 豊島将之※ |
十五代実力制名人 | 渡辺明※ |
十六代実力制名人 | 藤井聡太※ |
その他の名人
高橋名人
ハドソンのファミコン名人。株式会社ドキドキグルーヴワークス代表取締役「名人」。
川口名人
バンダイのガンプラ名人。ガンダムビルドファイターズの初代メイジン・カワグチのモデル。
中村名人
ヨーヨーの名人。
江口名人
ロックマンエグゼの名人。
解説名人
プロ棋士木村一基の愛称。
神技
名人によるスーパープレイ
等がある。
関連タグ
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