解説
士郎正宗の原作コミック及び押井守の劇場版とは異なり、「もしも草薙素子が人形使いと出会うことなく公安9課に残っていたら」というパラレルワールド設定で描かれたTVアニメ『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』の続編。
スカパーのパーフェクト・チョイスでは2004年より放送された。
監督の神山健治を始め前作とスタッフはほぼ同じだが、ストーリーコンセプトに押井守が参加している。
前作同様に現実の社会問題にも通じる様々な事象を題材としており、今作では押井の発案によって「9.11同時多発テロ事件以降の『戦争』を描くこと」が作品のテーマの一つとなっている。また、草薙素子の『過去』を具体的に描くことや、さらに前作で神山がやり残していたと考えていた「赤報隊事件」の問題にちなんで右翼や在日難民問題もテーマに取り入れられている。
基本的に一話完結型だが、今作では『個別の11人事件』と呼ばれるテロ事件を発端とした招慰難民と日本国民の対立問題の裏で暗躍するゴーダ率いる内閣情報庁と公安9課、難民の救済と『革命』を目指すクゼ・ヒデオらの三つ巴の対決を描いた一連のエピソード群に、単発のエピソードを絡めた構成となっている。
2006年には「個別の11人事件」を描いたエピソードを約160分にまとめた『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Individual Eleven』が制作され、DVDでリリースされた。
物語
西暦2032年、アジア難民の受け入れ即時撤廃と国内の招慰難民居住区の完全閉鎖を求めて「個別の11人」を名乗るテロリスト集団によって、中国大使館が占拠されるという事件が発生する。笑い男事件に纏わる厚労省の行政疑獄事件を解決に導くも表向き解散に追い込まれていた公安9課は、茅葺よう子新総理と荒巻課長の政治的取引によって県警SWATに先んじてテロリストを強襲し制圧、これを足がかりに茅葺総理の下で正式な再結成へと漕ぎ着ける。しかし9課の再結成こそ成されたものの、ある意味、首輪付きとも言える現状にバトー達は不満を隠せない。
一方、これを境に新たに「個別の11人」を名乗る者達が続出し、親難民派の企業や政治家や有名人へのテロが頻発。難民嫌悪感情から「個別の11人」のテロに同調する国民との摩擦で追い詰められた招慰難民が新たにテロを引き起こすという憎悪の連鎖に至り、両者の対立は悪化の一途を辿る。
事件の鍵を握る『英雄』クゼ・ヒデオを追う公安9課はやがて、全てを裏から操る内閣情報庁との『戦争』へと突入していく。
登場人物
公安9課
内閣
自衛軍
米帝CIAスパイ
内閣情報庁
その他
作中用語
- 招慰難民
第4次非核大戦によるシアク共和国の崩壊に伴ってアジア全域に発生した難民のうち、日本政府が国内に受け入れた難民たちの通称。その数は300万人を超える。
当時、戦後復興のため安価な労働力を必要としていた日本政府は、アジア難民の受け入れを決定。招慰難民対策特別措置法を制定し、北海道・関東・神戸・新浜・長崎の5箇所に招慰難民居住区を設置し、戦後復興と国際貢献を国際社会にアピールした。
しかし拡大する招慰難民居住区の確保と、難民の生活保障のために多くの税金が投入されているということに世論が批判的に転化し、安価な労働力が失業率を押し上げているという論調もあいまって、日本社会全体に難民受け入れに対する嫌悪感が拡大、社会問題となっている。
- 個別主義者
招慰難民を解放するべきだという政治思想を持つ者を指す。一個人の人権、自由、意思の尊重を声高に要求しつつも、全体主義的な動きに乗って行動する。特に愛国精神に便乗しテロリズムに走る者たちを『インディビジュアリスト』と呼ぶ。
革命評論家パトリック・シルベストルの著作『国家と革命への省察 初期革命評論集』の幻の11篇目のタイトル。または、それを聖典としてテロ行為を行う過激派個別主義者によるテロリスト集団のこと。
最初に現れた「個別の11人」は中国大使館占拠事件を引き起こすも、公安9課によってすぐに制圧された。しかしその後、新たに「個別の11人」を名乗るテロリストが続出するという事態が発生する。
- 内閣情報庁
内閣官房長官の下、国内外問わず情報の収集、分析および操作を行う行政機関。別名「内庁」。
内閣情報調査室と安全保障会議(現・国家安全保障会議及び国家安全保障局)、外務省国際情報局(現・外務省国際情報統括官組織)などを統合して作られた「内閣報道庁」が、省庁再編を機に名称変更して誕生した日本版CIAとも言える組織。
防衛省防衛局(現・防衛政策局)からも大量の人材を受け入れており、組織力では9課を凌ぐ。また、水面下では自衛軍の国内外での活動について、非合法的な諜報活動も行っている。
- 出島
正式名称は「九州招慰難民居住区出島キャンプ」。長崎市稲佐山北西方の相川集落沖に設置された「新出島」とも称されるフロート式洋上都市で、全国5箇所に置かれている招慰難民居住区の中でも最大の規模を誇る。
設置当初は仮設住宅だけであったが、現在では香港やタイのバンコクを思わせる無国籍都市へと変貌。中央ゲートを通らずとも交易を行えるように非合法の港まで設けており、難民達の難民達による難民達のための「聖地」になりつつある。
- イモータル義体
PKFのような目的のために用意された特殊仕様の全身義体。
通常仕様の義体と異なり、十分な整備環境の無い地域でも問題無いようにメンテナンスフリーを目指して内部器官が各部でユニット化されているため、頭部(電脳)を破壊されない限り稼動することができるという特性を持つ。
- ハブ電脳
ネットワーク上で同じ方向性の思想を持つ個人達の電脳をつなぎ、自分に並列化させて知識や思想、記憶を共有して共同体を形成する電脳。本来はネットワークには存在しない概念。
一種のカリスマ的存在と言えるが、接続する電脳が多ければ多くなるほど、ハブ電脳の持ち主がそれら数多の意識を同時に自分に共感させつつ、自らのゴーストが意味消失しないよう保持し続けるのは難しくなっていく。
関連タグ
GHOST_IN_THE_SHELL/攻殻機動隊 - イノセンス(攻殻機動隊)
攻殻機動隊S.A.C. - 攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG - 攻殻機動隊S.S.S.
関連動画
OP2