作品解説
士郎正宗原作のSFアクションコミック『攻殻機動隊』のTVアニメ化作品『攻殻機動隊STAND_ALONE_COMPLEX』シリーズの三作目となる長編OVA。
『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』の直接の続編であり、前作の最終話から約2年後の物語となっている。
略称は「攻殻機動隊 S.A.C. SSS」「SSS」等。監督・脚本は引き続き神山健治。
シリーズの中でも原作コミックや押井守の劇場版に対するオマージュが特に強く込められた作品となっており、本作の終盤のやり取りとその結末は原作及び劇場版とその続編である『イノセンス』と対となる別の回答であると言っても過言ではない。
2006年9月1日にスカパーのパーフェクト・チョイスで放送された後、同年11月にDVD化。
2011年3月26日には本作を3D立体視アニメーション化した『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』が劇場公開された。
物語
西暦2034年。日本を揺るがした「個別の11人」事件の終息後、草薙素子が任務中に失踪して既に2年が経とうしていた。
草薙がいなくなった穴を埋めるために公安9課は大々的な組織の変革を実施、課員を大幅に増やして「10の力で1つの事件を解決する組織」から「8の力で3つの事件を解決する組織」へと方針を転換し、新リーダーとなったトグサの下で犯罪の抑止にあたっていた。
一方、新リーダーの任を辞退したバトーは新体制に馴染めず、新入隊員の訓練教官を務める傍らで「個人的推論に則った捜査」と称して単独捜査を取っていた。
そんな中、梵字の刺青を入れた男たちが相次いで不審な自殺を遂げるという事件が発生。彼らはシアク共和国のカ・ルマ元将軍に忠誠を誓い、マイクロマシンを使った生物化学兵器テロを画策していた工作員であることが判明する。それについてカ・ルマの嫡子であるカ・ゲル大佐が取り調べに応じたが、突如として国外逃亡を図り、人質を取って新浜国際空港に立てこもるという騒動を引き起こす。トグサ率いる9課はカ・ゲルを追い詰めるも、彼は突然「傀儡廻(くぐつまわし)が来る!」と叫び、トグサの目の前で拳銃自殺してしまった。
立てこもり事件から数日後、大阪で表向きサイボーグ総合病院の院長を務めるシアク共和国の特殊工作員マ・シャバに対して単独で捜査を行っていたバトーの前に、突如として失踪していた草薙素子が姿を現し、バトーに「Solid Stateには近づくな」という謎の警告を発する。
果たして「Solid State」とは何か、そして事件の背後で暗躍する「傀儡廻」とは何者なのか…。
作中用語
- シアク共和国
革命で国を追われた軍事政権の指導者カ・ルマ将軍が日本に亡命している。ちなみに本作と世界観を同じくする『東のエデン』で、セレソンNo.10の結城亮が手渡された偽造パスポートの国籍もシアク共和国であった。
- 宗井塾
総務大臣・厚生労働大臣・外務大臣を歴任した衆議院議員・宗井仁を慕う、総務省・厚生労働省の憂国の志のキャリア官僚が集う研究会や勉強会の名称。聖庶民救済センターの設立にも関与した。
- 財団法人聖庶民救済センター
難民に対して、老人介護と職業訓練を施すことを謳った福祉施設。
- 貴腐老人
家族も身寄りも無く、全自動介護システムに繋がれ、寝たきりとなって貴腐ブドウのように独り生きたまま朽ちて果てていく老人のこと。
現実の日本社会と同じように作中世界でも少子高齢化が深刻になっており、家族を持たずに老年を迎える人口の増加によって、介護の問題が大きくなっている。その解決のために在宅で医療ネットにアクセスし、全自動介護システムによる介護を国が誰にでも最低限保証し、貧困層・富裕層を問わず機械による介護が一般的になっている。だが、このシステムは老人の寝たきりを助長する結果となり、「国による体のいい遺産回収システム」と揶揄されている。
関連タグ
攻殻機動隊S.A.C. - 攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG - 攻殻機動隊S.A.C.SolidStateSociety