解説
押井守監督の日本のアニメーション映画で、2004年3月6日に全国東宝洋画系で公開された。
1995年公開の映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編にあたり、前作で草薙素子が『人形使い』と融合して公安9課を去った後の世界を舞台としており、バトーが主人公を務めている。
長年、芸術家ハンス・ベルメールの人形を愛好していた押井独自の身体論や「人は何故、古来より人形を作り続けてきたのか」という問いへの根源的な解答をテーマとして、士郎正宗の原作漫画『攻殻機動隊』の一篇『ROBOT RONDO』をベースに、いつも以上に多数の引用による長台詞回しや銃撃戦、犬、鳥、魚、少女、鏡写しの自分、人形、ジジイ、メシ、見えない敵、ダレ場等など、押井守お馴染みの要素をとにかくこれでもかとぶち込んで作られた作品。
タイトルは本作のプロデューサーである鈴木敏夫によるもので、海外では『Ghost in the Shell 2: Innocence』と続編であることを強調したタイトルとなっている。
本作の大きな映像的特徴として、カメラを大きく動かすシーンの背景美術の殆どを3DCGで制作している点が挙げられる(手描きの背景が全く存在しないわけではない)。
デジタル技術によって実写とアニメの境界は曖昧になるというのが年来の持論である押井は、アニメの方法論で実写作品を作るというテーマで『アヴァロン』を制作していたが、今作においては逆に「実写映画の方法論でアニメーションを制作する」というテーマを発案し、当初は3DCGでモデリングした背景空間にカメラを持ち込んで「撮影」を行う手法を試みようとしていた。
しかし、テストのためにコンビニエンスストアのシーンを制作したところ、データ量が予想以上の莫大なものになってしまい、当時の技術的限界と予算・時間的限界から諦めざるを得ず、分割合成やカメラマップ等を利用したものとなった。
また、商業アニメーション映画としては初めて全編に渡ってQUANTEL社の統合型映像処理システム『Domino』(映像のデジタル処理を、フィルム並みの高解像度でほぼリアルタイムに行い、フィルムとして出力できるシステム)を使用してのデジタル加工が施された作品でもある。
2004年、第25回日本SF大賞受賞。
第57回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にて上映された。
あらすじ
草薙素子が公安9課から失踪して数年。
ロクス・ソルス社製少女型愛玩用アンドロイド『 Type2052 “ハダリ(HADALY)”』が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺するという事件が発生。
しかし被害者とメーカーの間で示談が不審なほど速やかに成立し、被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから、公安9課で捜査を担当することになる。
主な登場人物
CV:大塚明夫
元レンジャー出身の9課所属のサイボーグ。ほぼ全身を義体化している。
前作から引き続きハードボイルドなキャラクターだが、素子の失踪が原因か、何処か虚無のようなものを抱えており、喪った身体と現実を埋めるように、セーフハウスにバセットハウンドのガブリエル(原作でもバトー自前の第五世代コンピュータ「ガブリエラ」だった)を飼っている。
今回の事件に素子の影を予感する。
CV:山寺宏一
元刑事の9課のメンバーで、チーフ。今作ではバトーの相棒を務める。
前作から引き続き、脳の一部を電脳化してる以外に殆ど生身のまま。独自の哲学に生きる達観した登場人物ばかりの今作において、ほぼ唯一と言ってもいいほどのまともな感覚の持ち主。
行く先々で常軌を逸した人々の言動とバトーの横着な捜査に振り回される。
CV:大木民夫
9課部長。優れた政治的手腕と知略を持つが、素子の失踪が原因で前作ほどの覇気は無く、枯れた印象の人物へと変化してしまっている。
CV:仲野裕
9課の古参メンバー。情報収集や情報戦を担当する電脳戦のエキスパート。バトーの身を案じている。
わんこ好き。
- 検死官ハラウェイ
CV:榊原良子
ハダリ暴走事件の担当検死官。ロボットと人間の関係について、独自の哲学を持つ。
- ワカバヤシ
老舗の暴力団『紅塵会』の若頭。先代組長をハダリに殺害されたため、現在は臨時に組長代理を務めている。原作では関西人であったが、関東のヤクザ。自前の愛銃はスチェッキン。
- キム
CV:竹中直人
ハッカー。元・軍属の電脳のスペシャリストで、バトーとは旧知の仲。いろいろあって「なんちゃって返還ていうか」をされて主権がグダグダになっている択捉島(「択捉経済特区」という呼称で、住人が主に中国人なので思いっきり中華)に居を構え、独自の美学と厭世観から、人形型の全身義体に入って巨大な機械仕掛の洋館に引きこもって死体を模した日々を送っている。