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ここが、お前の現実(フィールド)だ。


作品解説編集

2001年1月20日に公開された日本のSF映画。それまで主にアニメーション作品を制作してきた押井守監督にとって四作目の実写作品である。


本作では『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『機動警察パトレイバー2theMovie』等、押井が自作の中で問い続けてきた題材の一つである「現実と虚構の境界の曖昧さ」をさらに推し進め、「たとえ幻想であったとしても、それが誰かにとって現実として機能しているならば十分に現実たりうるのではないか?」「そもそも人間は自分でも気づかないうちに、自分にとって気持ちの良い幻想を勝手に現実と思い込んでいるだけではないのか?」というテーマを扱っている。

また、同時に「幻想を打破して、現実を取り戻す」という仮想現実を扱った作品にありがちなストーリー展開に対するアンチテーゼも込められた作品でもある。


日本ヘラルド映画を始めとして、日本の会社が製作しているため日本映画に分類されているが、撮影はすべてポーランド国内で行われ、出演者も総てポーランド人の役者が起用されており、日本人の役者は一切登場しない。

作中に登場する銃火器戦車、戦闘ヘリなども一部を除いて実際にポーランド陸軍が運用している本物が用いられ、エキストラとしてポーランド陸軍兵士が多数出演している。

3DCGIで描かれた架空の兵器も登場するが、そのデザインも旧ソ連及びロシア系のラインでまとめられている。

ちなみにロケ先にポーランドを選択した理由としては、軍事マニアとして本物のハインドに触れる上に借りられるというのが決め手であったという。


「CG合成やデジタル編集技術によってアニメーションと実写の境界はいずれ無くなる」という持論を長らく展開してきた押井は、本作において「アニメーションの方法論で実写映画を製作する」という手法を試みており、撮影後にVFXやCG、デジタルエフェクトによる画面処理といった加工が映像全体を通して行われている。

作品全体の色調はセピア調にまとめられ、登場人物たちもどこか退廃的で生気の無い印象になっているが、これが物語終盤に本作のテーマを象徴する重要な仕掛けとして機能するようになっている。


本作は元々、当時押井が企画していた『G.R.M. THE RECORD OF GARM WAR(ガルム戦記)』が色々あって一時お蔵入りにされてしまった落とし前(つまり書類上の企画を「落とさない」ために)として制作された作品であり、「アニメーションの方法論で実写作品を製作する」というテーマや、「日本人にとって馴染みの薄い海外の俳優を起用することで、アニメキャラのような現実と繋がりを持たないキャラクター像を描く」という手法も、本来は『ガルム戦記』のために構想されていたアイディアを流用したものである。


銃器や軍用車両が登場するミリタリー色の強い内容だが、押井が愛好するゲームの一つである『ウィザードリィ』がメインモチーフになっており、登場人物の名前やクラス(職業)、用語もすべて『ウィザードリィ』から引用され、同時に押井のゲーム論もテーマの一つとして物語に組み込まれている。


めったに自作を褒めない押井自身が「映像や音楽に対する理想が一番実現できた作品」と述べた作品であり、ジェームズ・キャメロンからは「今まで作られたSF映画の中で、最も美しく芸術的でスタイリッシュな作品だ」と評された。


本作の後日譚として小説作品『Avalon 灰色の貴婦人』が発刊された他、2009年に本作と同じ世界観で『アヴァロン』の別のフィールドを舞台にした押井監督による実写映画『アサルトガールズ』が公開された。

なお、後に本作の元ネタとも言える『ガルム戦記』も何とか完成にまで漕ぎ着け、2016年に『ガルム・ウォーズ』として公開された。


物語編集

喪われた近未来。

若者達は専用端末を介して仮想現実空間に接続し、非合法な仮想戦闘ゲームに熱中していた。

時に脳を破壊された「未帰還者」と化す危険性を孕みながらも、見返りとして得られる興奮と現実世界でも使える報酬は人々を熱狂させ、「パーティ」と呼ばれる集団の群れと、無数のゲームフリークスを生み出していた。

人々はそのゲームを英雄の魂が眠る島、『アヴァロン』と呼んだ。


『アヴァロン』の凄腕プレイヤー・アッシュは、かつて最強と謳われた伝説のパーティ「ウィザード」の〈戦士〉だったが、ある事件でパーティが崩壊して以来、ソロプレイヤーとして『アヴァロン』に参加し続けていた。

愛犬と暮らす自室と『アヴァロン』の中の仮想空間だけが、今の彼女にとっての「現実」だった。


そんなある時、挑発的にもアッシュと同じ戦法でアッシュよりも速いクリアタイムを記録した謎の〈ビショップ〉が現れる。

その正体を掴めずにいたアッシュは、元「ウィザード」の仲間であった〈盗賊〉・スタンナと再会し、「ウィザード」のリーダーだったマーフィーが、「未帰還者」となってしまったことを知る。噂によるとマーフィーは超難関ステージ・クラスAに特定条件を満たすことで現われるという隠れキャラクター「ゴースト」を単独で追い、そのまま脳を破壊されてしまったのだという。


果たして「ゴースト」は実在するのか?ビショップは何者なのか?

そして何故、「ウィザード」は崩壊しなければならなかったのか?


答えを求めて、アッシュは『アヴァロン』に秘められた謎に挑む。


登場人物編集

  • アッシュ

演:マウゴジャタ・フォレムニャック(吹替:財前直見

本作のヒロイン。『アヴァロン』でのクラス(職業)は戦士(Fighter)。

『アヴァロン』での報酬のみで生活を成立させることができるほどの凄腕プレイヤー。

「ゴースト」と「未帰還者」の関連を調べるうちに、『アヴァロン』の隠しステージである「クラス スペシャルA」の存在を知る。

メインアームはドラグノフ、サブアームはワルサーPPK

名前の元ネタは『ウィザードリィ』におけるみんなのトラウマである「灰(Ash)」。

演ずるマウゴジャタは、本国ではホームドラマの良妻賢母役が似合うといわれる女優であったが、おかっぱ頭のウィッグを付けて見事に演じきった。


  • スタンナ

演:バルトウォミエイ・シフィデルスキ(吹替:山寺宏一

元「ウィザード」でのアッシュの仲間だった男。クラスは盗賊(Thief)。

非常に腕の立つプレイヤーだが、支援職の盗賊であるが故にソロプレイができずにいた。

アッシュに「ゴースト」に纏わる噂話を持ってくる。

メインアームはPPSh-41

名前の元ネタは『ウィザードリィ』における宝箱トラップの一つである麻痺トラップ(Stunner)。


  • マーフィー

演:イェジ・グデイコ(吹替:木下浩之

元「ウィザード」のリーダー。クラスはビショップ(Bishop)。

現在は「未帰還者」として廃人と化しており、植物状態で病院に収容されている。

名前の元ネタは『ウィザードリィ』におけるジョークモンスター「マーフィーズゴースト」。

演ずるイェジは、自らの演技プランを強烈にアピールする男優であったが、主人公アッシュが惚れるくらいなのだから無茶苦茶な男なのだろうと採用となったという。


  • 謎のビショップ

演:ダリウシュ・ビスクプスキ(吹替:大塚明夫

アッシュに接触してきた謎のビショップ。極めて高いゲームスキルを持つ。

メインアームにモーゼルC96、サブアームにRPG-7を装備する。


  • ゲームマスター

演:ヴァディスワフ・コヴァルスキ(吹替:日下武史

アッシュが出入りしているブランチ(『アヴァロン』専用端末が置かれている施設)のガイド兼管理者。

アッシュとは比較的親しいらしく、単なるゲームマスターとプレイヤーの関係を超えた会話をすることもある。


関連タグ編集

映画

押井守

Wizardry


.hack」「ソードアート・オンライン」:本作と同じく仮想現実空間内に意識を接続するゲームのプレイヤーが昏睡状態に陥る事件を扱った作品。ただし、こちらではゲームに囚われた側が現実世界へと戻る事を主目的として行動する様が描かれており、本作で描かれた主題とは異なった視点で製作されている。






















以下ネタバレ






















誰がどういう意図を持って仕組んだのかは劇中では一切明かされていないが、ある条件を満たした者だけが到達出来る仮想現実世界は作中の人物達が暮らす現実世界より活気に溢れ色彩豊かな現代の世界に近い環境であり、未帰還者の内の一部は現実を拒否しこの世界で生きる事を選んだ者たちだった。アッシュが探していたマーフィーもその1人であり、アッシュに銃を向け殺意を剥き出しにしてまで現実への帰還を拒んでいた。

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