概要
『西武新宿戦線異状なし(DRAGON RETRIEVER)』とは押井守監督が原作を担当した漫画作品で、当初は1987年に『B-CLUB』(バンダイ)で近藤和久氏作画で連載されていたが諸事情で中断し、おおのやすゆき(大野安之)氏作画で再スタートしたものである。
1992年から1993年にかけて『ネオファンタジー』(大陸書房)から『コンバットコミック』(日本出版社)へと掲載誌を変えながら連載され1994年に日本出版社から単行本が出版された。全1巻。
その後2002年には『月刊少年エース』(角川書店)に番外編が掲載され、同じく押井原作の『犬狼伝説』とともに、この回を加えた完全版として判型が改められた単行本が出版されている。
序盤こそは東京でクーデターが起きるという『機動警察パトレイバー』初期OVA「二課の一番長い日」や『機動警察パトレイバー2theMovie』の原典とでもいうべき作品であるが、原作が冷戦時代に書かれた作品のために、共産主義革命が目的など時代的に古い描写がなされている。
また本作に登場する女性キャラクター・ケイは、押井作品における年上のファム・ファタール(アムリタやアッシュ、素子、小夜など)の原型であると思われる。
あらすじ
静岡県の某高校に通うMMシリーズのAFV模型作りを嗜む男子高校生・丸輪零は、首都圏各地で自衛隊が武装蜂起し都心部が制圧されるという内戦が起こったことから、日常が大きく変わることを期待していた。
しかし、あろうことか政府軍も叛乱軍も一週間ほどで弾薬が底をついてしまったことから戦線は膠着状態に陥り、日本政府は大阪に亡命、国道16号線内を軍事境界線とした臨時革命政府が東京に樹立され解放区とされるようになったこと以外、日常の変化は何も起こらなかった。
そんなある日、オルグに革命防衛隊にならないかと勧誘されたことで、即断即決で解放区へ向かった零こと越境志願兵第2038号は、バタ屋どころかヤミ屋を兼ねる怪しげな3人組と、形式不明の戦車回収車が全兵力である「独立第3戦闘工作連隊第58戦車回収小隊」に配属されることになり・・・
登場人物
独立第3戦闘工作連隊第58戦車回収小隊
カントク曰くスクラップを回収しているうちに、連隊そのものがスクラップになっちまったものであるらしい。
- セイガク(丸輪零)
丸輪零(17) 身長170センチ 体重58キロ!! 血液型O型!! 獅子座! 心身共にきわめて健康!
なおこの名は押井のペンネームの一つでもある。
- カントク
戦車長、小隊長兼連隊長代理。かつては映画監督であったとも現場監督であったともいわれている、ブルーマウンテン好きな謎の中年男。
モデルは押井の師匠であるアニメ監督・鳥海永行氏。
- トメ
作業クルー。溶接、けん引、エンジン修理など全てをこなせる溶接眼鏡をかけた無口な巨漢だが、インテリでありヴァイオリンを演奏し読書を好む。
- トッつぁん
操縦士。上海事変の頃から戦車を転がしてきたと噂される甘味好きな年齢不詳の怪しい老人。
- M32B1改
独立第3戦闘工作連隊第58戦車回収小隊装備車輛。M4シャーマンの車体を流用した戦車回収車M32B1に、小隊の面々が破砕砲を搭載するなど勝手に改造を施したものであるらしい。
軍事評議会
- ケイ
所属も階級も不明な軍事評議会の幹部と思わしき女性。闇商売の現場を押さえられ逮捕された零たちに特殊任務として「ある物の回収」を命じてくるのだが...
未完の近藤版では男性キャラクターだった。