戦車回収車(回収戦車 装甲回収車とも)は、戦場や演習場などの野外環境で、故障したり戦闘で著しい損傷を負った戦車を牽引して移動させたり、或いは備え付けられた起重機を使ってパワーパック(エンジンと変速機を収めた動力ユニット)などの交換といった整備作業を行う車両である。
沿革
戦車は黎明期の物こそ30t弱という代物であったものの、ルノーFT-17の登場で一旦小型・軽量のものが主流となった。この頃までは、戦車の移動・収容といった作業は、操重車や巻揚機を備えた貨物自動車(或いは半装軌車)等が用いられていた。
ところが、戦車同士の戦闘を重視した車種が開発された第二次世界大戦の頃になると、戦車が体系的・大々的に用いられるようになったうえに再び戦車の車重が著しく重くなったため、能力や効率に劣る汎用的な操重車や牽引自動車ではなく、専ら牽引力に富み安定性に優れた戦車の車台を使用した車両が使用されるようになった。
この手の車両の原点は、故障や戦闘による損傷で砲塔を降ろして起重機を据えた現地改造の戦車(だった車両)で、最初に使用したのはドイツ軍との説が一般的である。
現在では、主力戦車が開発されると同時にその車台を使用した戦車回収車も作られるのが一般的である。
吊上げ力などが足りていれば何でもよいようにも思えるが、一般的に戦車部隊は(補助車両を除けば)単一車種で構成されるため、部品補給のみならず整備や運転の要領も同じように扱える車両がより好ましい為である。