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ガルム・ウォーズ

がるむうぉーず

ガルム・ウォーズ(Garm Wars: The Last Druid)とは2015年に北米で、2016年に日本で公開された押井守監督の長編実写映画。
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この国が棄てた幻想を、再び。

作品解説編集

2015年10月2日に北米で、2016年5月20日に日本で公開された押井守監督作品であるケルト神話をモチーフとしたSFハイファンタジー映画。


元々はバンダイビジュアルから1997年10月にデジタルエンジンプロジェクトの一つとして大友克洋監督の『スチームボーイ』とともに発表された、総製作費は24億円といわれ2000年に公開予定であったが凍結となってしまった『G.R.M(ガルム戦記)』を、再始動し完成させた作品である。


『ガルム戦記』は実写・特撮・アニメ・CGを融合させて新しい映像表現を行うという高い志を持った作品であったが(1990年代の時点でこの作品のプロデュースを買って出ていたジェームズ・キャメロンの『アバター』(2009年)のような作品が、日本発で出来上がるはずだった)、当時の機材のスペックの問題、技術開発や制作管理の整備に莫大な予算がかかることなどを理由として企画が縮小していった。

そのため脚本・設定担当の伊藤和典によって、考古学者がガルムの痕跡が残った遺跡を巡って真実を知るという予算がかからない内容への修正も考えられていたが1999年に正式に凍結が発表された。(2001年にスタッフや技術開発されたものを活かして制作されたのが『アヴァロン(映画)』である このとき実写版『機動警察パトレイバー』もプレゼンされていたがそちらは却下され、奇しくも『ガルム』と同時期の2014~2015年に制作・上映された)


その後も押井は自身のコラムや書籍で、いつかは製作したいという願いを述べていたが、動きがみられたのは2010年の夏に八王子市夢美術館で開催された『押井守と映像の魔術師たち』展からである。

そこでは『ガルム戦記』関連の資料が数多く展示され、それを見た押井ファンの間ではもしかして企画が動いているのではないのかと話題になっていた。(権利問題がクリアになっていなかったのか撮影禁止で図録等にも掲載されていなかった)


また2011年に連載されていた押井原作、西尾鉄也作画の漫画『わんわん明治維新』の最終話にもそれを匂わせる台詞があった。


そして2012年になりプロダクションI.Gの協力により、日本人にはファンタジーは似合わない(『ガルム戦記』では舞踏家に顔が見えない甲冑を着せて撮影予定だった)という考えからカナダにおいて『アヴァロン』のときと同じように現地スタッフを使い外国人キャスト、外国語で撮影されることになった。

カナダで撮影された理由としては、映画製作における税制優遇措置があったためでもある。

日本側のスタッフとしては監督の押井を筆頭に監督補・VFXは佐藤敦紀が、音楽は川井憲次が、衣装は竹田団吾が担当した。


CGが一般映画でも使用されるほど普及し、上記の美術展に展示された末弥純によるキャラクター、前田真宏や竹内敦志によるメカニックは竹谷隆之や鬼頭栄作によって造形物として立体化されており、それをCGスキャンすることができたことと、樋口真嗣による絵コンテを元にしたパイロットフィルムも制作されていたことから、実現化できる見通しがたったことも大きい。


しかし、カナダの映画産業はハリウッドスタイルであるために製作資金が尽きたことによってスタッフがストライキを起こし、予算不足によりロケの中止を進言され、エンタメ要素がもう少しあったシナリオをカットすることにもなり、現地のラインプロデューサーは3人も辞めていった。

最終的にI.Gの石川社長の英断による資金援助によって、その苦難を乗り越え完成した。


日本では2014年に「第27回東京国際映画祭」で、2015年には「さぬき映画祭」において英題でプレミア上映され、本編とは異なる時間軸を描いた小説『白銀の審問艦』が出版された。

そして2016年1月に日本語版のプロデュースを鈴木敏夫が、キャッチコピーを虚淵玄が担当することが発表され劇場公開までこぎつけた。

物語編集

母なる蒼きガイアをまわる、戦いの星アンヌン

かつてこの星をガルムの8つの部族が支配していた。

ブリガ、ウルム、バセ、セタ、ボルゾイ、ゼネン、クムタク、そしてコルンバである。

部族はそれぞれの役割によって異なる姿と言語を持ち、彼らを創りし神に仕えていた。

しかし、創造主ダナンはある日アンヌンを去り、あとに残された八部族は、覇権をめぐる争いをはじめた。

長きにわたる戦いによって、アンヌンの大気は汚れ、大地は荒れ果ててしまった。

八部族のうち、今も残るのはブリガ、コルンバ、クムタクの三部族のみとなり、神の言葉を伝えたとされる「ドルイド」すら死に絶えた。

ブリガは強大な武力をもって地上を制覇し、コルンバは圧倒的な機動力で空を支配した。

クムタクはその優れた情報技術をもってブリガに仕えることで、かろうじて生きながらえていた。


陸のブリガと、空のコルンバ

アンヌンの覇権を賭けて、二大部族による決戦が始まろうとしていた。

登場人物編集

ガルム編集

装甲を身に纏い、群れを成して戦い続ける義体たちの総称で、マナという物質をエネルギー源に活動している。

かつて創造主ダナンの元、全てのものを名づけてアンヌンを統べていた。

個体ごとに男女の性差はあるものの生殖は行わず、クローニングによって成熟した姿に肉体を形成、脳殻への記憶の転写で世代交代をする。

名に続く数字は世代交代した回数の証であり、同一個体であっても前世代の経験を加えバージョンアップされる。

各部族ごとに兵器を製造することはできるものの、技術革新をすることはできない存在で、今ある装備の運用法を修正しながら戦い続けている。

※メイン画像

演:メラニー・サンピエール(吹替:朴璐美

女性型の外殻を持つコルンバのガルム。コルム級空母の艦載機搭乗員でグラの「恩寵」を受け、ウィドたちとの旅に同行することになる。カラとは「小舟」という意味。


メラニーは押井作品のファンで『攻殻機動隊』の素子のような黒髪おかっぱ姿でオーディションに望み、見事この役を射止めた。

演:ランス・ヘンリクセン(吹替:壌晴彦

老人型の外殻を持つクムタクのガルム。ドルイドの生き残りであるナシャンを連れ、この世界の誕生の謎を探ろうとする異端者。ウィドは「知識」という意味。


ランスは『エイリアン2』のビショップ役で有名な役者で人格者でもあるため現場では尊敬されていた。しかし撮影時にはすでに高齢であり、ハードな撮影で気弱になることもあり、押井は現場でハグをして共に頑張った。

演:ケヴィン・デュランド(吹替:星野貴紀

男性型の外殻を持つガルムで、ブリガの戦車を駆る機甲部隊兵。敵対部族であったカラと行動を共にすることにより、今まで戦うことしか知らないガルムとして生きてきた考え方に変化が現れてくる。


スケリグは「岩」という意味で押井は粗暴な男をイメージしていたが、ケヴィンにこの役に決まったことでセンシティブな印象のキャラクターに変わった。なお彼の乗っている戦車は『天使のたまご』に登場したものに酷似している。

  • ナシャン666

演:サマー・ハウエル

死に絶えたと伝わっていたドルイドの生き残り。少女のような外殻を持つ。ナシャンとは「再生・誕生」という意味。


演じたサマーは撮影外では駐車場を走り回っていたという小学生

存在感のある目の演技により採用されたが、動きに統一感を出すためヘルメットをかぶっているシーンでは大人の役者が演じている。

グラ編集

この世界でのの総称で、名の意味は「~の母」。

ガルムには出来ない生殖を行えるために神聖視される。

亜人間であるガルムには基本的に懐かないが、まれに「恩寵」を受ける者がおりその者は周囲より特別視される。


犬種は押井作品では定番のバセットハウンド


なおアンヌンの空にはが飛んでおり、水域にはが棲んでいるようである。


マラーク編集

かつては翼のような装置が背中から生えた巨人型機動兵器の軍勢で、『白銀の審問艦』の時代にはセルを率いて降臨を繰り返す謎の存在。

ガルムを殲滅しようとしているようだがその目的は不明である。

  • セル

ガルムの科学力では解明できない脅威で、一定周期で成層圏の彼方から襲来し、異次元から物理的な存在へ実体化することで破壊の限りを尽くす。

汚染された地域は森林のような地形が形成される。

ガルムは各部族どうしが連携することでなんとか対抗できているが...


パイロット版ではケルト文様のある「トゥーパ」という柱状物体として描写されている。

関連タグ編集

映画

押井守

ケルト神話

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