概要
第二次大戦において日本がドイツに敗北し、占領された戦後を舞台とした作品群(一部例外有)。
ドイツに負けた日本、という設定はプロテクトギアのドイツ軍燃え萌え的デザインに関して犬狼伝説から後付けされた設定だが、ケルベロス・サーガは頻繁に設定が変更されており、シリーズの特徴となっている。シリーズの顔であるプロテクトギアのデザインも作品ごとに異なる。
押井守のライフワークのひとつ。
世界設定
第二次世界大戦が日本・イギリス連合軍(日英同盟)とドイツ・イタリアの枢軸国によって戦われた世界。
1941年7月20日、クーデターによって独裁者を排除し、その名称をヴェアマハトからライヒスヴェア(ナチス政権以前の名称)へと翻したドイツ軍はソ連、日本、イギリスと停戦。第二次世界大戦は幕を閉じた。
戦後、在日ドイツ軍統治後の混迷期から抜け出すべく強行された経済政策は治安の急速な悪化、失業者と凶悪犯罪の増加、また武装難民による『セクト』と呼ばれる反体制過激派戦闘集団の形成を促し、そして本来それらに対応するはずの自治体警察の能力を超えた武装闘争が、深刻な社会問題へと発展していた。
政府は、国家警察への昇格を目論む自治警を牽制し、同時に自衛隊の治安出動を回避するため、第三の選択を取る。即ち、首都圏にその活動範囲を限定しながら高い戦闘力を持つ警察機関「首都圏治安警察機構」通称「首都警」の組織である。
強力な権限と戦闘能力を有する首都警は治安の番人としての栄誉を独占し、第三の武装集団として急速に勢力を拡大していったが、首都警の中核を成す実働部隊「特機隊」と「セクト」の衝突は時に市街戦の様相を呈し、実を結び始めた経済政策が人々に「戦後」からの脱却を期待させる中、「特機隊」と「セクト」は世論の指弾を受け、やがてその孤立を深めつつあった。
強化服と重火器で武装し<ケルベロス>の俗称で犯罪者に畏れられた特機隊の精鋭たち。
時代は彼らに新たな、そして最終的な役割を与えようとしていた。
作品一覧
1987年公開の実写映画。監督・押井守。主演・千葉繁。
千葉繁のPVとして出発したが、最終的に映画作品として劇場公開された。全身黒一色のプロテクトギアが初めて登場した作品。この作品のみ特機隊の所属が警視庁であり、正式名称も警視庁対凶悪犯罪特殊武装機動特捜班となっている。
失敗に終わった武装蜂起の後、唯一国外逃亡に成功した特機隊員・都々目紅一。三年後、紅一は帰国を果たす。
1988年発表の漫画。原作・押井守。作画・藤原カムイ。
「ドイツに敗北した日本」や首都圏治安警察機構などの設定が行われ、その後のシリーズの基幹となる。自治警察との確執や孤立していく特機隊が描かれており、1999年に発表された完結篇では「ケルベロス騒乱」に至るまでの経緯と顛末までが語られた。
1991年公開の実写映画。監督・押井守。
ケルベロス実写作品その二。紅い眼鏡から予算が大幅に向上し、二千万円の予算をかけて総勢五十体ものギアが製作された。
ケルベロス騒乱から三年後。仮出所した元隊員・乾。隊の中で唯一国外へ逃亡した都々目紅一を追い、乾は台湾の地を彷徨い始める。
- 人狼 JIN-ROH
2000年公開のアニメ映画。原作、脚本・押井守。監督・沖浦啓之。
ProductionI.Gの長編作品では最後のセルアニメーションとなった。作中時系列では犬狼伝説と同時期の物語であり、犬狼伝説から多くの引用が行われている。
「赤ずきん」をモチーフにドラマに重点を置いた作品。
- 犬狼伝説 紅い足痕
2003年発表の漫画。原作・押井守。作画・杉浦守。
ケルベロス騒乱直前に当局に情報を漏らし国外へと逃亡した特機隊員・黒崎を追い、紅一は中国へ渡る。
- ケルベロス 鋼鉄の猟犬
2006年発表のラジオドラマ。
独裁者暗殺後の独ソ戦中盤を舞台とし、特機隊に替わり第101装甲猟兵大隊が登場する。「装甲猟兵」が典礼部隊として出発したという設定に基づき、プロテクトギアのデザインも「甲冑」となっている。2010年には小説版が発表された。
旧政権の亡霊として最前線で使い潰されようとしている装甲猟兵を追い、宣伝中隊の女性将校マキ・シュタウフェンベルクはスターリングラードへと向かう。スターリングラード撤退作戦の発動と共に変化していく独ソ戦の中、孤立無援となった装甲猟兵が戦い続ける理由とは……
- ケルベロス×立喰師 腹腹時計の少女
2006年発表の漫画。原作・押井守。作画・杉浦守。
同じく押井守原作である立喰師列伝とのクロスオーバー作品。
- ケルベロス 東京市街戦 首都警特機隊全記録
2009年発表のムック。
プロテクトギアの設定から日英同盟継続の経緯など多くの情報が記載されているが、例によって他作品と共通の設定ではない。
- 人狼
上記のアニメ映画の韓国実写化映画。
これまでのシリーズと比較して世界観が大きく異なっており、シリーズに一切繋がらないパラレルワールドとなっている。舞台は2029年の近未来の朝鮮半島でストーリーはアニメ版を踏襲しているが、キャラクターの設定ともに大きくアレンジされている箇所が多い。作中に登場する銃器の殆どは現代のものだが、特機隊の主武装であるMG42はそのまま続投している。
しかし舞台設定や背景を韓国及び朝鮮半島に移したものの、基本的な状況や関係性、あらすじはJIN-ROHと変わりない。むしろ反共の砦として最前線でいることを押しつけられ、長らく軍事政権による高圧的な治世や弊害を目の当たりにしてきた彼の国だからこそ描ける独得の緊張感がある。また、あの決定的なシーンにたびたび使われた例のBGMやヘリコプターの代わりに飛ぶドローン、かけそばの代わりに冷麺を食べるなど、アレンジを加えつつもリスペクトが絶えない作品となった。