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立喰師

たちぐいし

立喰師とは、押井守が関わる作品に時折登場する架空の職業。また、それを生業とする人物達の事。
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解説編集

飲食店で話術や奇行など様々な手段で店員を煙に撒き、その隙に飲食代金を支払わずに店を出る者のこと。

要するに無銭飲食なのだが、その手段には恫喝や暴力、力づくの逃走は使わず、説教・詭弁・啖呵といった話術や泣き落とし、居座り、店の嫌がる追加注文の連発、店の供給能力を超えた大食、奇怪な見た目や雰囲気による圧倒など、それぞれに独自の技術を持ち、一種の芸の領域に達しているのが特徴。一部には無銭飲食という実利から離れ、ある種の思想的営為(よりざっくり言い換えると「ロマン」のために)として立喰いを行っている者もいる。


江戸時代、立ち食いソバ屋で釣銭をごまかした「時蕎麦屋せいえもん」が元祖とされ、それが落語で『時そば』として語られるといったように、各メディアで語られるといわれる。


もともとは押井守の「仕事を引退したらやりたい職業」という妄想から始まった架空の職業で、タツノコプロで演出家をしていた頃にタイムボカンシリーズで『立ち食いのプロ』を登場させたことが始まり。ヤットデタマン12話「ジュジャクの曲芸」逆転イッパツマン14話「太平洋無着陸気球横断」で初めて見る事が出来た。

その後、押井守が関わった作品群(『うる星やつら』で登場するなど)にスターシステム的に登場し、『ケルベロス・サーガ』と並び押井守のライフワークの一つとされている。


その後、押井は角川書店のライトノベル雑誌『ザ・スニーカー』にて立喰師についての連作小説『立喰師列伝』を連載。

民俗学における詐欺師やそのほかのアウトローに関する研究(柳田國男も、ブリウチ ジリョウジ アガリ セブリと呼ばれる詐欺師の研究をしていた)に則って、「犬飼喜一」という架空の民俗学者によるフィールドワークという体裁で語られる。


代表的な立喰師編集

月見の銀二 (演:紅い眼鏡天本英世/吉祥寺怪人)

10月絵オヤジ・・・月見そば。

専門は月見そば。第二次世界大戦後に闇市の仕舞い時の立喰い蕎麦屋に現れては月見そばを注文し、薀蓄と説教を弁舌巧みに使ってタダ食いを成した伝説的立喰師。「紅い眼鏡」では立喰師でありながら情報屋である事と、立喰い蕎麦屋が非合法化してしまった上に彼の代名詞である月見そばすら無い世界となっており「街も人も変わっちまった…月見の銀二も、お品書きから月見が消えちまえばただの名無しの銀二だ」と嘆いている。


ちなみに「逆転イッパツマン」ではコスイネンが「月見のコスイネンと呼ばれた事がございましてね」と名乗った事がある。


ケツネコロッケのお銀 (演:逆転イッパツマン版小原乃梨子/うる星やつら版榊原良子/舞台鉄人28号南果歩/兵藤まこ

野犬と立喰師映画の感想『舞台 鉄人28号』

専門はケツネコロッケ。60年安保の最中に出現。きつねそばコロッケを別々に注文するのが特徴の美貌の女立喰師。アニメ版うる星やつらでは準レギュラーキャラだった他、押井の作品になんとなく登場し、『女立喰師列伝』番外編「パレスチナ残党編」では主人公を務めている。


どうやらモチーフはかの新左翼活動家の重信房子であるらしい。


哭きの犬丸 (演:御先祖様万々歳!古川登志夫/石川光久

専門のネタを持たない異色の立喰師。現れたのは東京オリンピック開催前後。基本的に都落ち中の青年を装って泣き落としを使うが、大体露見して店主達から袋叩きに遭う。しかし結果的に無銭飲食自体は完遂するという巧妙さを持つ。そのため「ただの無能な阿呆」説と「悲劇を意図的に行う芸人」説に分かれるという設定。日本全国津々浦々で「つまんで話せばこういうわけだ」と詐欺を行っていた伝承が分布するため、「サンカのようなもの(の中に「アガリ」と呼ばれる泣き落としの詐欺師がいる、と田中勝也『サンカ研究』に書いてある。こっちの単行本で引用されてる田中先生の文章は柳田國男の「イタカおよびサンカ」の引用だけど)では」ともいわれる。


冷やしタヌキの政(または賢) (演:鈴木敏夫

専門は冷やしタヌキ。登場時期は1970年、大阪万博が行われたころ。

立喰師を気取る半端者のチンピラであり、下手なクレームつけてタダ食いにありついていた。登場する作品によっては公安のスパイで粛清のためにそば屋「マッハ軒」で殺害されたり、更生してカタギの仕事に就いていたりする。


牛丼の牛五郎 (演:ヤットデタマン八奈見乗児/樋口真嗣

専門は牛丼。万博以降、外食産業が発展し始めた時期に外食産業において一番でもあった牛丼チェーン店予知野家に仲間と共に乗り込んでは、材料が底を突くまで牛丼を食い尽くす怪人物。注文外のつゆだくといった調理の不備を指摘し作り直させたものは支払い対象外であるが、一応食べた分の支払いは行っており、無銭飲食ではない。鼻輪を付け、サングラスをかけている。彼の為に予知野家は倒産へ追い込まれてしまった。また予知野家の大株主ライブモア商事と何らかの関係があったのではないかと言われているが真相は不明。

なおスニーカー本誌で彼が掲載(2002年)されたンヶ月後、牛丼屋が狂牛病問題で大変なことになった。


ハンバーガーの哲 (演:川井憲次

専門はハンバーガー。昼時のファストフード店に乗り込み、キッチンが破綻するまでハンバーガーを食い続ける。まずはハンバーガーを単品で100個注文し、その後は追加でダブルバーガー100個を注文する。その手法、伝承から牛丼の牛五郎との共通点を指摘されている。『立喰師列伝』の書籍版では「******」をターゲットにしていたが、アニメ化の際には「ロッテリア」を襲撃している。(なお笑顔で対応する店員は押井さんの娘)


フランクフルトの辰 (演:寺田克也

専門はフランクフルト。外部からの飲食物の持ち込みが禁じられている某夢の国(アニメ化の際には大人の事情で「グッズがガンダム」になっている)で、持ち込みのフランクフルトを食うことに異様に執着している。


中辛のサブ (演:河森正治

カレー喰いてえ

専門はカレー。昭和末期に出現。カレースタンドチェーンに現れては、濃い顔に浅黒い肌と白い詰襟、ターバン姿というインド人以上にインド人っぽい異様な容姿と物悲しそうな瞳で「チュカラ」と叫び続け店主に心理的プレッシャーを与えてタダ食いを成す。正真正銘、日本人であり本名は川森源三郎と言うらしい。現在判明している昭和最後の立喰師。


女立喰師編集

 『真・女立喰師列伝』というオムニバス形式の実写映画に登場したものを上げる(クレープのマミは『うる星やつら』におばさんの造形で出てきたけど)。

鼈甲飴の有里 (演:ひし美ゆり子

専門は鼈甲細工。自身の金魚の刺青を賭けた勝負を行っていたといわれている。カメラマンの坂崎一は引退したと伝わる彼女に取材を申し込むのだが…


バーボンのミキ (演:水野美紀

専門はバーボンアリゾナ州の酒場に幻のバーボンを探しに来たのだが、この地区を牛耳る署長のフランコと保安官のヒロに、禁じられている自動式拳銃を所持していたことをとがめられてしまう…


学食のマブ (演:安藤麻吹

専門は学食。かつて立喰師たちによって辛酸を舐めさせられた神山(「ハンバーガーの哲」と「牛丼の牛五郎」に対応し2回燃え尽きてしまった店員役の人が神山さんなので改めて設定し台詞なしで登場)が店長を務めるファミレスに、女立喰師となった大学時代の同級生マブがやってきたのだが…


氷苺の玖美 (演:藤田陽子)

専門は氷苺。唐黍畑の中から現れ、通りがかりの男たちを惑わせ食事にありつく妖しくも美しい女の正体とは…


クレープのマミ (演:小倉優子

専門はクレープ1985年原宿のクレープ屋にやってくるアイドルの卵。彼女の口から語られるアイドルが持つ本当の役割とは…(彼女は陰謀論をまくしたてる他、クレープ屋へ祝福を与えている演出がある)

なお「紅い眼鏡」でも月見の銀二の口からこの名が出てくる。


ケンタッキーの日菜子 (演:佐伯日菜子

専門はフライドチキン。AD2052。成層圏外から巨大降下猟兵「天人(テムジン)」を駆り、民俗どころか文明がことごとく崩壊した地上にぴっちりスーツで降り立つ大佐(カーネル 本人曰く「その名前で呼ぶな!」)。彼女はこの地で何を見るのだろうか…


登場作品編集

紅い眼鏡 犬狼伝説 立喰師列伝

ヤットデタマン 逆転イッパツマン うる星やつら 機動警察パトレイバー

御先祖様万々歳! 舞台鉄人28号

ケータイ捜査官7

サンサーラ・ナーガ

電脳コイル・メガ年越しそばあプロテクトギアかけそば一杯立ち喰のプロとはらたま店員


 なお押井が監督脚本を務めた『しあわせのかたち』CDドラマ第2弾『ふしあわせのかたち―水晶の滑鼠』において、貧乏な探偵が「このままでは立喰のプロにでもなるほかない」という台詞がある。


関連タグ編集

食い逃げ 詐欺 押井守

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