🍛概要
インド発祥のスパイス料理。世界各地で派生料理を生み出し、日本においてはカレーライスが家庭料理として不動の地位を築いているほか、ドライカレー、カツカレー、スープカレー、カレーパン、カレーうどんなどの多彩なバリエーションを生み出している。
🍛世界への伝播
今日「カレー」と言われる料理のルーツがインドにあるのは確かだが(後述のタイカレーを除く)、「カレーの本場はインド」という認識は正確とは言えない。「インド料理としてのカレー」の本場であればインドを訪ねるべきだろうが、他国に伝播して発展した様々なカレーは、手に入る食材や調理文化によって現地仕様に改造されまくっているため、「日本の家庭料理と化したカレー」をインド人に見せても「何これ?」である。
言うなれば「日本のカレー」の本場は日本だし、「ベトナムカレー」の本場はベトナムだし、「インドのカレー」の本場はインドなのだ。
発祥とされるインドには元々「カレー」という概念は存在せず、香辛料を多用した様々なインド料理にそれぞれの名前が付いていた。世界史的には大航海時代の到来と東インド会社の設立を経た18世紀の中頃、インド東部は英国の植民地となっており、当時の総督が現地のスパイス料理を本国へ紹介する際に大雑把に「カレー」という括りを用いたのが、カレーのカレー化への第一歩と言えるかもしれない。語源についてはタミル語、カンナダ語で「食事・肉・おかず」を意味する言葉「カリ」に由来するとされる。
英米のカレー
英国人はインド料理を自分たちの味覚に合うようマイルドな風味に改造し、東インドの米食文化を取り入れて「カレー・アンド・ライス」と命名。慣れないスパイス調合で試行錯誤しつつ「 カレー粉 」を開発し、小麦粉とバターとともに炒めてルウを作るという独自の「カレー」文化を発展させていった。かの王立海軍でも「カレー風味のシチュー」として採用され、好んで食されていたらしい。
また、イギリス料理としての「カレー・アンド・ライス」の発達・普及やカレー粉の「発明」にはイギリス人の中でも植民地時代のインドに長く住んでいた(場合によっては何世代にも渡って)人々が大きな役割を果たしたとする説も有る。
第二次世界大戦後の英国ではインド系移民によるインド料理店がカレー・アンド・ライスにとってかわったため(参考リンク)、往年のカレー・アンド・ライスは廃れている。今日英国人に親しまれているカレー料理として「チキンティッカマサラ」というものがあるが、1960年代にインド料理店で生まれたもので、往年のカレー・アンド・ライスとはつながりがない。近年では、現地の日本食チェーン店経由で日本のカレー文化が逆輸出され、「チキンカツカレー」が定番メニューとして定着した。しかし、この結果「katsu」が日本式カレーを指す呼称となり、カツのないカレーライスまで「katsu curry」と呼ばれてしまっている。
なお、英国のカレー粉は19世紀半ばに北米にも持ち込まれており、一頃のアメリカ人にはかなりの人気を誇っていたようだが、アメリカ料理として定着することはなく、なぜか廃れてしまった。 現在では北米にも日本のカレーチェーン店が進出しているが、英国ほどには定着していない模様。
日本のカレー
一般には、英国流のカレーを独自のアレンジを施して取り入れた大日本帝国海軍が日本のカレー文化の祖として知られている。揺れる艦内でこぼれないようとろみを強めるなどの工夫が施された日本海軍式のカレーは、後の日本式カレーの基礎となった。
一方、大日本帝国陸軍の「ライスカレー」はとろみが少なくカレースープに近いものだった。日露戦争を機に軍隊食として採用されたカレーは、白米ばかりで栄養の偏っていた兵士の食事をみるみる改善したという。兵役を終えた者たちによってカレーの味は民間へ普及していくことになるが、兵員の数は陸軍の方が遥かに多かったため、戦前のカレーは陸軍流のとろみの少ないものが主流だったらしい。1923年(大正12年)、エスビー食品が日本初の国産カレー粉を発売。カレーライスは家庭でも作られる大衆的な洋食として親しまれ、カレーうどんやカレー南蛮(カレーそば)が蕎麦屋で出されるほどになった。
スパイスの輸入が減少していた第二次世界大戦中でも、軍のカレー食は細々と続いていたものの一般家庭からは姿を消し、再び息を吹き返すのは戦後になってからのこと。戦後のカレーはとろみの強い海軍風が主流となり、呼び方も海軍流の「カレーライス」に変わっていく。この理由はよく分からないが、とろみの強いカレーの方が米飯によく合うからだろうか? 戦後は高級イメージを狙ってデミグラスソースと牛肉の出汁を使った「欧風カレー」なるものが生み出されたが、日本のカレー専門店で独自に工夫されたもので、欧州由来ではない。
東アジアのカレー
香港やマカオは欧米の植民地となった歴史もあって輸入食品を扱った料理もあり、それ故カレー味の料理も存在する。
マカオには日本のおでんのように好きな具材をカレー味のスープで煮込んでカレー味のソースをかけて食べる料理があり、これを日本で「マカオ風カレーおでん」と紹介されたことがある。(この料理自体はおでんの影響を受けたわけではない)
台湾にも牛肉麵にカレー味のものが存在するほか、日本式のカレーが入ったりもしている。
(ちなみに日本で「台湾カレー」と呼ばれるものは台湾式ではなく、台湾ラーメンをアレンジした名古屋飯である)
東南アジアのカレー
東南アジアのカレー文化にはインドからの直接の影響と西洋からの影響、そしてタイカレー(後述)の影響が交錯している。
マレーシア・シンガポールでは南インドからの移民が多かったため、ラッサムなどの南インド系料理がマレー系や中華系の人々にも浸透している。過去にイギリス統治下だったのでカレー粉をよく使うのがインド料理との違いで、その中でもフィッシュヘッド・カレー(魚の頭を入れたカレー)がよく知られる。ラクサと呼ばれる麺料理にはインド風のカレーと中国由来の麺文化が融合「カレーラクサ」という種類がある。
ベトナムは東南アジアの中では例外的にインド文化の影響をほとんど受けていない国だが、西洋の影響を受けた独自の「ベトナムカレー」の文化があり、カリーボー(ビーフカレー)やカリーガー(チキンカレー)などの料理がある。カレー粉を使いつつ、タイカレーのようにレモングラスを加えココナッツミルクで煮込むなど、西洋とタイ両方の影響を感じさせる。
ミャンマー料理には「ヒン」という煮込み料理があり、この中のいくつかはカレー料理と言えるものがある。ミャンマー式のカレーはタイカレーにも影響を与えている。
🍛タイカレーについて
タイカレーはタイでゲーンと言う汁物料理のうち、スパイスやハーブの利いた、ココナッツミルク仕立ての料理をそのように称しているもので、世界各地の「カレー料理」と異なりインド料理と直接の関係はない。ただし、日本でイエローカレーと呼ばれるものの中にはインド料理の影響を受けたもの(ゲーンカリー)もある。詳細はタイカレーの記事を参照。
🍛カレーの色
カレーの色が基本的に黄から赤系統なのは香辛料の色によるものである。黄色はターメリック(ウコン)によるものが多く、日本のカレーライスには必ずと言っていいほどこれが入っている。 また、小麦粉や玉ねぎを炒るなどしても似たような色がつく。
当然スパイスや具材の調合次第では他色のカレーを作り出す事も可能。インドには青菜を使ったサグという緑色のカレーがある(日本では「ほうれん草のカレー」などとして知られる)。
🍛カレーを一晩寝かす場合の注意
「カレーは一晩寝かせた方が美味しい」とよく言われる通り、カレーを自作した場合、いきなり食べても調味料同士の主張が強くよくわからない味になってたり、主に肉などの具材に味が染み渡りきっていなかったりする場合が多く、これらの味を落ち着かせるために一晩寝かせる事を推奨される。
しかし料理に詳しい人ほどご存知だろうが、カレーには100度でも死滅しない強い耐熱性を持ち、常温で活発化する習性を持つウェルシュ菌が発生しやすく、カレーを常温で寝かせた場合増殖したウェルシュ菌によって食中毒にかかりやすくなるリスクを孕んでいる。
今のところカレーを食べられる状態でウェルシュ菌を全滅させる方法はなく、一度増殖したら対処不可能なので冷蔵や冷凍保存で未然にウェルシュ菌の発生を防ぐしか対策方法はない。
そのため、自作したカレーを寝かせる場合は完成後すぐに冷蔵庫や冷凍庫で保存するのがプロの料理家の間での基本である。
🍛カレー回
いわゆるグルメアニメのカレー対決はもちろんだが、普通のアニメにおいてもカレーを作るエピソードも多々ある、場合によってはキャンプなどでも作られる事も多い。
みんなで一緒に作り、同じ釜の飯を食う事により、仲直りしたり、絆を強くするイベントになっている。
しかしながら、中にはトラブルの原因になる事もしばしばある。
余談ながらグルメ漫画「美味しんぼ」のカレー回の冒頭もキャンプ場での仲間内の内輪揉めから始まったりする。
ちなみに、1話完結ストーリーが多数を占める同作においてカレー回は話数は連続9話(丸々1巻分)に及び、単独の料理をテーマにした話ではラーメン回と並び最多のページ数となっている。
異世界転移/異世界転生ものにおいて、いくつかの作品で主人公たちが異世界にあるものでカレーを再現しようと努力するという展開がみられる。
しかしスパイスとして代用されるものが魔法薬や錬金術の素材であったり、野菜や魔物肉すら非常に高価であったりしてトラブルのもとになることも多い。
🍛記念日
- カレーの日(全日本カレー工業協同組合)
1月22日。1982年(学校給食35周年)の同月同日に、全国学校栄養士協議会が、日本全国の学校給食の統一メニューとしてカレーを提供した事に因む。この日を意識しているカレー屋さんも少なくないらしい。
- 横浜カレー記念日(横濱カレーミュージアム)
6月2日。1859年の同月同日に横浜港が開港した事に因んで、同時であっただろうカレーの伝来を記念するもの。日米修好通商条約(締結は1858年)による横浜港開港記念日、長崎港開港記念日でもある。なお、制定した横濱カレーミュージアムは2007年に閉館。
……他多数。
🍛関連イラスト
🍛関連タグ
カレーは飲み物 海軍カレー カレーの日 カレー先輩 カレー臭 カリー
様々なカレー料理
カレーライス カレーパン カレーうどん カレーラーメン ドライカレー カツカレー ビーフカレー チキンカレー マーボーカレー シーフードカレー キーマカレー(挽肉カレー) ポークカレー マトンカレー
インドカレー タイカレー(イエローカレー グリーンカレー レッドカレー)
市販のカレー
レトルトカレー:ボンカレー ククレカレー カレーの王子さま スープカレー カレーメシ プリキュアカレー
架空のカレー
🍛ちなみに…
上記にもあるように、初代キレンジャーこと大岩大太がカレーを好物としていることから、戦隊イエローは皆カレー好きと誤解を受けるが、確かにカレーが好物なイエローはいるが、明確にカレーが好きと設定されているイエローは意外に少ない。実際に例をあげると大岩大太の後任としてやってきた2代目キレンジャー熊野大五郎はカレーが好物ではなく、あんみつやナポリタンが好物であったし、ダイナイエローに至っては無類のラーメン好きであり、イエローバスターは甘いものを摂取しないと充電切れを起こして動けなくなってしまう。結論でいうと黄色の戦士は例外こそあれど、食に縁のある戦士が多いというところだろうか。
では逆にスーパー戦隊ってカレー好きが少ない戦士が多いのかと聞かれればそうでもなく、イエローに限定しなければ、海賊戦隊ゴーカイジャーのキャプテン・マーベラス(カレーを食べようとすれば大体の確率で邪魔が入るが。)、宇宙戦隊キュウレンジャーのホウオウソルジャーこと鳳ツルギ、サソリオレンジことスティンガーなどが上げられる。興味深い事にこの二人が好んでいるカレーはカジキイエローことスパーダが作ったものである。どうやら今までの事例を見る限り、暖色の戦士がカレーを好む傾向にあるようだ。
ちなみに爆竜戦隊アバレンジャーはカレー専門店「恐竜や」が基地で、特捜戦隊デカレンジャーが活躍している時期には大企業に成長している。
🍛外部リンク
🍛関連人物・キャラクター
※記事テンプレートから逸脱しているが、項目数が膨大となるため、記事末尾に記載している
カレーにまつわる有名人
イチロー:一時期毎朝カレーを食べていた事が話題になった。
遠藤賢司:「カレーライス」という曲がある。
筋肉少女帯:「日本印度化計画」というカレーをこよなく愛する楽曲があり、テレ東の子供向け番組「ピラメキーノ」で知名度が広まった。
YOSHIKI(X JAPAN):「カレーが辛い事件」を起こした。2004年と2015年にこの事件をモチーフにした「YOSHIKIカレー キレ辛」が発売された。
佐藤利奈:逆にカレーが嫌いな事で有名。
前田剛:同上。
野田クリスタル:同上。本人曰く「香辛料が苦手。」
カレーマン:下記のカレクックをモチーフにした実在の覆面プロレスラー。
林家たい平:自身が秩父たい平カレーをプロデュースした。笑点でも木久蔵ラーメンと同様に「まずい」とネタになったことがあった。
黒沢薫(ゴスペラーズ):芸能界一のカレーマニアで芸能界「カレー部」名誉会長。「ぽんカレー」などの著書も刊行。
カレーにまつわる架空のキャラ
- カレーもしくはカレー料理がモチーフ
- カレーが好物なキャラクター
※カレー全般が好物な者を除き、派生種を好物とするキャラクターは含めない
他にもカレーが好物なキャラクターがいれば加筆お願いします。
その他
五十音順。
上杉らいは:中野五月をカレーで懐柔させることになったり、兄上杉風太郎の公物であるカレーうどんを作っていたりする。
かばんちゃん:じゃぱりとしょかんで失われていたカレーライスを復活させた。
ジョーカー(ペルソナ5):カレーが売りの喫茶店に住んでおり、プレイヤーの選択次第ではカレー作りの達人に。
天道あかね:隠し味として白ワインを使っていた‥のだが、実際に使用したのは酢であったため、味がとんでもないことになっている。
鳥坂先輩:具にこんにゃく、サトイモ、隠し味として缶詰のフルーツポンチを入れたため、「闇カレー」と名づけられたあげく味がとんでもないことになり、本人以外食べることはなかった。
鼻田香作:「カレー勝負編」に登場したカレー将軍と呼ばれる最強のライバルキャラクター。
ぴしゃーちゃ(サンサーラ・ナーガ):元ネタはインドの民間伝承における悪霊だが、資料不足によりカレー屋の親父の姿にされた。
マサル・ユウリ:ポケモンキャンプの主として頻繁にカレーを調理する。カレーが絡んだイラストもそこそこある。
ロボモグ:料理ロボットだがなんでもカレー味にしてしまい、他の味が作れない。
渡辺曜:劇中でパパ直伝の船乗りカレーを調理した。ライブイベントでもフードコーナーで実際にシーフードカレーとして販売されている。