byArkaras

異世界食堂

いせかいしょくどう

『異世界食堂』とは、小説投稿サイト「小説家になろう」を出典とする、犬塚惇平の「食ラノベ」シリーズ。主婦の友社・ヒーロー文庫にて2015年2月に書籍化された。

pixivで「異世界食堂」のイラストを見る

pixivで「異世界食堂」の小説を読む

pixivで「異世界食堂」のイラストを投稿する

pixivで「異世界食堂」の小説を投稿する

毎週土曜日、特別営業の日になると異世界に繋がる、マジックアイテムのドアベルが鳴る樫の扉。

食堂の名は『洋食のねこや』。

そして、「あちらの世界」ではこう呼ばれている──『異世界食堂』と。

概要

主婦の友社・ヒーロー文庫から刊行されている『食ラノベ』の一本。

初出は小説投稿サイト『小説家になろう』。作者は犬塚惇平。文庫版のイラストはエナミカツミ。

異世界で食堂を開く──ではなく、異世界からやって来る人々を迎え入れる食堂で、様々な客が店のメニューに舌鼓を打つという、短編集を思わせるシンプルな構成。

あくまでも『客と料理』に主眼が置かれ、異世界そのものの描写は少々控えめ。ただ、登場人物に関する描写は扉を発見した経緯やそれをくぐる際の状況等異世界側の人物についての物が多く、こちら側の登場人物に関しては店主も含めほとんど明らかにされていない。

初めて店を訪れた客の、料理に対する驚きや衝撃が描かれる一方、常連客の面々によるこだわりのメニューと食し方であったり、異世界での身分も立場も忘れて食という幸福に身を委ねる様が綴られたりと、いろんな味わい方の出来るであろう作品。

アニメ化おめでとうございます！byそうげつ

ヒーロー文庫が刊行する小説としては、『ナイツ&マジック』に続くメディアミックス作品である。

ヤングガンガンより、2016年11月からコミカライズも連載されていた。作画は九月タカアキ。巻数全4巻。

月刊少年エース2021年6月号より『異世界食堂～洋食のねこや～』が連載開始。作画はヤミザワ・モロザワ。

2021年8月現在、文庫版既刊6巻。小説家になろうサイト本編の更新は不定期。

登場人物

キャラについては、異世界食堂の登場人物一覧を参照。

用語

洋食のねこや

とあるオフィス街に建つビルの地下1階にある食堂。

平日は普通の飲食店だが、毎週土曜日に「他の世界」からの客へ料理を振る舞う特別営業を行なっている。

詳細は洋食のねこやを参照。

異世界

ねこやの扉が7日に1度、いくつも現れているという剣と魔法の世界。今のところ、東大陸と西大陸、南大陸の描写がある。70年ほど前まで、魔族と他の種族による争乱が続いていた。

文明のレベルはこちらに遠く及ばないものの、魔術が広く浸透しており、客から見ればねこやの科学文明は魔術の塊。

曜日の概念がないため、7日ごとに巡ってくる扉が現れる日を、常連客は「ドヨウの日」と呼び慣わしている。

ねこやで遭遇した味に衝撃を受けた一部の客による再現の努力が実を結びつつあり、異世界の食文化も少しずつ変化を起こしている。

「扉」

ねこやの出入り口。猫の絵が描かれている、よく手入れされた黒い樫の扉で、取っ手は真鍮製。

ドアベルが異世界で言う所の「エルフの遺産」にあたる古いマジックアイテムで、非常に複雑かつ高度な転移魔術を実現しているらしい。対になるマスターキーは店に保管されており、それを壊すと扉の魔法は消える模様。

人目につきにくい場所に現れることが多く、たまたま見つけたか、人から伝え聞くかしたごく一部の人々にしか知られていない。

一度開け閉めをすれば消えてしまい、次の週まで現れないため、常連客は自分だけが使える扉を確保していることが多い。種族単位で扉の情報を共有しているハーフリングの間では、頻繁に使用されている形跡のある扉には手を出さないのがマナー。

違う扉から入った客たちが同時に店を出たとしても、それぞれがきっちり元の場所に帰される。

また、店で食い逃げや暴力行為などの問題を起こした者には、すべての扉に永久に触れなくなるというペナルティが課される（店主の同意を得れば「ツケ」は有効）他、知性なき魔物といった害意に満ちている存在は初めから扉に干渉出来ない。

ただし、初めて扉を開けて来店した者にはそもそも飲食店に来たという意識が無く持ち合わせが無い事もあるという事情には店主側も配慮しており、初回は無料で料理をふるまう事も多い。受け取った代金もこちら側の世界では活用出来ない為、元々儲け度外視でやっている節がある。

魔術の効果は土曜日の真夜中まで続くため、稀に閉店後の扉を潜る者も現れる。その場合帰るだけであれば日曜以降でも扉は使えるが、万が一の結界により店の敷地外へ出る事はできない。

異世界の地理

東大陸

大昔に王国として統一された、欧風文化を持つ国々。

最も豊かといわれる王国や、公国（サマナーク公国）、帝国に、エルフが点在する森林などが登場する。

人種は白人系で、主食のパンやパスタに加えて、帝国で発見された「ダンシャクの実」も多く出回るようになった。

店主と異世界の客との会話が普通に出来ている事については特に説明は為されていないが（原作では、扉が開く時に鳴るドアベルがマジックアイテムで、瞬時に意思疎通の翻訳魔法をかけているという記述がある）、メニューは東大陸の文字で記されているらしく、客に読めるか確認する描写がある。

なお、特別営業で用いられる通常メニューは常連客であるアルトリウスが、店主の代替わり後に大量に加わったデザート類についてはヴィクトリアが、それぞれ実物を味わいつつ東大陸語で原本を書き起こしており、料理の説明も書き添えられている。

西大陸

平原と森からなる大地にいくつもの国が隣接する。

日本風の文化を持ち、お互いに仲が悪い山国と海国、中東を思わせる砂の国などが存在し、東大陸との交易も行なわれている。

人種はアジア系で、主食としては米飯のほうが広まっている。

南大陸

東・西大陸とは季節が逆で、互いに交流のない土地。

現れる扉の数も、北側に比べるとまだ少ない様子。

信仰の形態が北側とは大きく異なり、ドラゴン崇拝が根付いている。北側の大陸以上に魔族に対する敵意が強く、どの神の神官たちも魔族を見かけると「邪教徒」として問答無用で排除にかかる。そのため異世界食堂にはじめて訪れた神官たちがアレッタを見た瞬間に攻撃を加えようとして、周囲に止められる事も少なくない。

人種はネイティブアメリカン系で、トウモロコシとサツマイモが主食になっている。

六柱の神々

かつて異形の怪物『万色の混沌』を滅ぼした異世界の六柱の神々。その正体は巨大な神竜。戦いの後はそれぞれの領地を決め、互いに干渉しないようになった。また盟約でそれぞれの所有物を破壊する事も禁止している。人間が好きな白の神（光の神）以外は人との関わりを持たない。ちなみに「ねこや」は赤の女王の神気と僅かなクロの神気に満ちており、南大陸の各神々の神官からは「赤の神の聖地」と思われている(南大陸にある赤の神の抜け殻が祀られた最大聖地『聖殻神殿』が子ども騙しに感じる程強いらしい)。なお北（東・西）大陸と南大陸では信仰形態が大きく異なるものの、大陸は違えど力の気配で同じ神を信仰する神官だとすぐにわかるらしい。

北（東・西）大陸と南大陸では呼び名が違っており、神々同士は南大陸の呼び方で呼び合っている。

南大陸での呼び名	北大陸での呼び名
赤の神	火の神
青の神	海の神
緑の神	大地の神
金の神	空の神
白の神	光の神
黒の神	闇の女神

その他

上記三大大陸の文明レベルは、地球で言えば中世程度。識字率も高いとは言えず、アレッタを初めとして読み書きや計算を学んでいない者も少なくない。
治療に関しては、神官などが治癒の奇跡を行ったり、魔術師によるポーションなどで、瀕死の重傷でも即座に回復させる事が可能。こちらの世界でも有用で、ねこやに駆け込んできた傷を負った冒険者や、ねこやの店主の知り合いのバイクによる事故の負傷を、瞬く間に治癒し回復させた（特に後者に関しては、半身不随になるほどの負傷だった）。
「貧民殺し」という病気が存在する。肺病の一種で、治癒の魔法や奇跡でも治療する事が出来ず、ただ何もせずに数年間を静養し、自然治癒させる事しか治療法が無い。そのため、富裕層はともかく、貧しい者は財産を失い続けるのみで、経済的に困窮させてしまう厄介な病気として知られている（貧民殺しの名は、ここから由来する）。他者には滅多に感染しないものの、患者は忌避されがち。
本作のエルフは、総じて動物性の食材を口にしない。肉や魚はもちろん、卵や乳製品も口にできない（それらの食材から強い生臭さが感じられるため、身体が受け付けない。また、思想的に友である動物の命を奪い、その死体を口にする行為を忌避している事も理由の一つ）。ただしこの点を除けば、納豆のような臭いの強い食材でも口にしている。
人間とエルフとの間に生まれたハーフエルフは、この特徴は「ちょっと我慢すれば食べられないわけではない」程度に軽減されるが、それでもあまり好んでは食べない。ただし、隔世遺伝より（劇中では「取り替え子」と呼称）人間同士から生まれたハーフエルフは、この特徴は見られない。
本作のハーフリングは、子供のような小柄な体格で、足の裏に毛が生え、屋外でも靴を履かず、好奇心旺盛で賑やかな場所を好み、一か所に定住しないという種族的特徴を有する。成人したら家族と離れ放浪し、途中で知り合った異性と結婚し、夫婦で放浪。子供が出来て巣立ちしたら、死ぬまで夫婦で旅をする……という生き方をしている。種族間で各地の扉の場所を共有しており、トラブル防止のために最近使用された痕跡のある扉（常連が使っている扉）は使わない事を徹底している。
また、ハーフリングは非常に大食であり、人間の十食分を一人で食べる。あるエピソードで集団で来客した際、ねこやの定食の「パンまたはライスは食べ放題」を利用し、色々な味付けをして定食のパンとライスを食べまくり、その結果、店の賄いの分まで食べ尽くされたという事があった。一方で前にネズミというハーフリングが食い逃げを行い、店主に謝って許してはもらえたが扉から許される事はなく、自分で扉を開ける事ができなくなってしまった話が広まり、食い逃げだけは絶対にしないようになった。件のネズミは現地の住民を使って来店する事ができるものの、その現地民はほぼ確実にそれ以降常連になるため、ハーフリングが使える扉が減ってしまうデメリットがある。そのためハーフリングたちも同じく各地を旅して扉の場所を共有しているタツゴロウを除き、同族以外に扉の事を教えることはない。

食材の名の差異

異世界とこちらの世界の食材は、物は同じでも名が異なるのでここに解説。

※要検証および追加編集求む

異世界	こちらの世界
アザル	アップル⇒リンゴ
エルフ豆 ※1	大豆
おおとり草	ほうれん草
オオネ	大根
オラニエ	オニオン⇒タマネギ
カッファ	コーヒー
カリュート	キャロット⇒にんじん
ガレオ	ガーリック⇒ニンニク
カンザー	キャンサー
キューレ	きゅうり
クマーラ	クマラ（オセアニアでの呼び名）⇒さつまいも
クラーコ	イカ（子/小クラーケン）
シュライプ	シュリンプ⇒海老
タマナ（玉菜）	キャベツ
ダンシャクの実 ※2	ジャガイモ（男爵いも）
トガラン	唐辛子
ハック	ハッカ
マルメット※3	トマト
マローネ	マロン⇒栗
ミケーネ	ミカンのような柑橘類
騎士のソース※4	クリームソース

など

※1：三巻の『クリームシチュー』にて。調理方法から豆乳⇒大豆と推測。異世界では豆腐、豆乳、納豆、醤油、みそ等の加工は発達してない模様。これは同巻の『お汁粉』も同様。

※2：名の由来は、コロッケ（ヴィルヘイム）が店で小学生時代の現店主が授業で掘ったイモを譲り受けた際の発音『男爵』から。つまりこちらの世界産。

※3：実は太古の時代にエルフが異世界へと侵略した際に持ち帰ったものであり、じゃがいもと同じくこちらの世界産。そのためエルフの遺跡が近くにある、とある小さな山国にしかなかった。

※4：アルフェイド商会のトマスが「ねこや」で食べたクリームソースを再現したもの。当時は王子だった現国王が賞賛のあまり「騎士」の称号を贈呈した為、「騎士のソース」の名前がついた。

TVアニメ

第1期

初出も書籍版、漫画版の発行元も同じ『ナイツ&マジック』とほぼ同時期にアニメ化決定が報じられた。

こちらもやはり当初は放送時期が未定だったが、2017年4月に正式な放送時期が同年の夏であることが発表され、同時期に公式サイトがオープン。スタッフ情報とティザービジュアルも公開された。

テレビ東京、AT-XおよびBSジャパンにて2017年7～9月に放送された。全12話。

主題歌

OPテーマ『One In A Billion』

作詞：藤林聖子 / 作曲：渡辺未来 / 編曲：R・O・N / 歌：Wake Up, May'n!（WakeUp,Girls!×May'n）

EDテーマ『ちいさなひとつぶ』

作詞：西直紀 / 作曲：さかいゆう / 編曲：河野伸 / 歌：安野希世乃

各話リスト

話数	サブタイトル
第一話	menu 1 ビーフシチュー / menu 2 モーニング
第二話	menu 3 メンチカツ / menu 4 エビフライ
第三話	menu 5 ミートソース / menu 6 チョコレートパフェ
第四話	menu 7 オムライス / menu 8 豆腐ステーキ
第五話	menu 9 カツ丼 / menu 10 プリンアラモード
第六話	menu 11 サンドイッチ / menu 12 じゃがバター
第七話	menu 13 カレーライス / menu 14 チキンカレー
第八話	menu 15 ハンバーグ / menu 16 クッキーアソート
第九話	menu 17 シーフードフライ / menu 18 クリームソーダ
第十話	menu 19 クレープ / menu 20 納豆スパ
第十一話	menu 21　カルパッチョ / menu 22 カレーパン
第十二話	menu 23 とん汁 / menu 24 コロッケ

ナレーション

桑島法子（第四話・menu 7）

他に登場人物に関係する人物やねこやの店員が語り手になっている話もある。

シリウス（第三話・menu 5）

アーデルハイド（第三話・menu 6、第十二話・menu23)

店主（第五話・menu9　第九話・menu 17）

アルトリウス（第五話・menu 10）

アレッタ（第六話・menu 11、menu12）

公国貴族（第七話・menu 13）

クロ（第七話・menu 14、第十一話・menu22）

ロウケイ（第八話・menu 15）

ゴールド家の執事（第八話・menu 16）

ラナー、シャリーフ（第九話・menu 18）

アルフォンス（第十一話・menu 21）

など

制作スタッフ

原作	犬塚惇平
原作イラスト	エナミカツミ
監督・シリーズ構成	神保昌登
キャラクターデザイン	佐野隆雄・佐野恵一
制作	SILVER LINK.