概要
アブラナ科ダイコン属の野菜の一種で、 一般的には根菜とされるが、葉も食用になる。
だいこん、ダイコンなどとも表記される。英語ではラディッシュだが、一般的にラディッシュというとハツカダイコンを指す。中国語では「ルオボー」といい、漢字では「蘿蔔」(繁体字)、「萝卜」(簡体字)と表記する(ちなみに胡蘿蔔というとにんじんを指す)。
葉は緑黄色野菜で、ビタミンA(β-カロテン)やビタミンC・カルシウム・食物繊維などを豊富に含む。発芽直後の胚軸と子葉(カイワレダイコン)も食材にされる。
原産地は地中海沿岸で、古代エジプト時代から栽培されてきた。
ダイコンの野生種
日本を含む東アジアに自生する海浜植物のハマダイコンはダイコンと同属別種。
牧野富太郎によるとハマダイコンに肥料を与えると普通の大根になるというが、実際に試してみると多少は根が肥大化するもののダイコンのように大きくなることはない。辛味がとても強く調理法を選ぶが、大根おろしや切り干し大根などとして食用にすることができる。
ハマダイコンは以前はダイコンが野生化したものと思われていたが、分子系統解析の結果からは栽培種のダイコンとは違う系統という結果が出ている。ハマダイコンはダイコンとは原産地も異なり、日本列島に元々定着していた在来種である可能性が高い。
欧米にはセイヨウノダイコンという別種の野生ダイコンの種類がある。
大根と日本文化
古くから日本で最も多く食されてきた野菜の一つで、江戸時代から昭和初期にかけてはたくあんに加工される需要が多かった。たくあんの生産量が減少した現在でもダイコンの消費量は日本が世界一らしい。
「大根」という名前は、根が大きいから「おおね」と呼ばれていたものに漢字を当て、それが音読みに転化したものである。古語はすずしろ(清白)で、現代では七草粥に使われる春の七草として知られる。
ちなみに大根を調理するときの切り方のひとつである「千六本(せんろっぽん)」は、もともと「細長い大根」を意味する「繊蘿蔔」が日本語に訛ったものだとされる。
大根にはジアスターゼなどの消化酵素が含まれており、食べても速やかに消化されて「あたりにくい」事から、当たり役に恵まれず芽が出ない役者をそう呼んだ、と言う説が有力。
一説によると武器にもなるらしい。
昔話
大根が白いわけ
昔々、ダイコンさんとニンジンさんとゴボウさんが一緒にお風呂屋さんに行きました。
ゴボウさんはちっとも体を洗わず浴槽の外で遊んでばかりだったので、真っ黒のままになってしまいました。
ニンジンさんは熱いお風呂に我慢して浸かっていたので、全身真っ赤になってしまいました。
ダイコンさんはよーく体を洗ったので真っ白になりました。
〔日本の昔話〕
大根が恩返ししてくれた話
昔々、ある貴族が「体に良い薬になる」と言って、毎日大根を2本焼いて食べていました。
ある日、その貴族の屋敷が夜討ちに遭いました。あわやと思われたその時、どこともなく二人の侍が現れて、夜討ちに来た武士たちをばっさばっさと斬り倒すではありませんか。
命を救われた貴族は、侍たちに「あなたがたはお見かけしないが何処からいらしたのか」と尋ねました。すると侍たちは「我々は、あなたがいつも『体に良い』と言って召し上がっているダイコンの精です。あなたがダイコンを大切なものとして下さっているので、その恩返しに助けに参ったのです。」と言い、どこへともなく消えてしまいました。
〔『徒然草』第六十八段より。なお著者の吉田兼好はこの話を採り上げたあとに「どんな事でも信じて貫けば必ず御利益がある」と記しているが、つまり信じていればいつかは二次元の嫁がモニターの向こうから出(ry〕
(上記に似た説話で、大根を観音菩薩の姿に削った物を食べたら、幽霊や妖怪がその者に近寄る事が出来なかった、と言う話もある)
エロ大根(?)が縁結びしてくれた話
昔々、ある侍が都から東国へ下ろうと旅をしていました。ところが、夜道を歩いていて、どうしても一発やりたくなって我慢できなくなってしまいました。仕方なく、道端の畑に植わっていた大根を引き抜いて、それに穴を彫りあけて済ませたものです。すっきりした侍は使用済みの大根を畑に捨てると、旅を続けました。
さて翌朝、畑の持ち主が家族を引き連れて大根の収穫にやってきました。その中に十八歳ばかりの娘がいて、ゆうべ侍が使用した大根を見つけました。
「あら面白い、この大根ったら穴が空いてる。」娘はその大根をしばらくもてあそんでから引き裂いて食べてしまいました。
ところがその数日後から、どうも娘の体調が思わしくないのです。しかもしばらく経つうちにだんだんお腹が大きくなってくるではありませんか。家族も「どこの男と通じたのか」と問いただしますが、当然娘には身に覚えがありません。せいぜい変な大根を食べたことくらいです。
月満ちて、娘は赤ん坊を生みました。そのころ、あの侍が東国から都へ上ろうと旅をしていて、娘の家の前を通りがかりました。
「ああ、東国に下ったときは、このあたりで我慢できなくなって、大根に穴を彫って済ませたもんだ。」
侍の独り言を聞きつけた娘の父親は、大急ぎで走り出てきました。
「もしかしてあなたは、私の娘の生んだ赤ん坊の父親かもしれません!」
赤ん坊と侍の顔を見比べてみると、なんと驚き、瓜二つではありませんか。
これで事の成り行きがはっきり分かり、一件落着。侍はその場で娘と結婚して、都へと上っていきましたとさ。
〔今昔物語集より〕
余談
- 「粉ワサビを本物っぽくする」方法の1つとして「大根の汁で溶く」というものが有る。これは、ワサビとダイコンが同じアブラナ科で、辛味成分も共通している為。
- スポーツ大会において東京農業大学の応援グッズとして使われている。
関連タグ
白 根 ニンジン ネギ ゴボウ カブ カイワレ/かいわれ大根 ハツカダイコン ラディッシュ
大根おろし おでん ふろふき大根 沢庵/たくあん いぶりがっこ 切り干し大根 大根あめ