概要
料理人の主人公がオリジナル料理を作っていくストーリーのジャンル。
料理を食べて味の解説をするパターンや日常系、料理の腕を競っていくバトルものまで色々なパターンがある。
基本、料理が出てきてナンボなので、いかに読者に美味しそうに見せ(魅せ)るかが作者の腕の見せ所のジャンルと言える。
作風の大別
ドラマ型
料理の存在を物語の軸とし、そこにドラマ性を持たせたもの。
「○○○を食べてみたい」「これこそ本当の○○○」など、料理そのものにスポットを当てている。
ドラマ性を高めるためか値段も食材も高級ないわゆる「グルメ料理」を扱うことも少なくない。
おもに社会人向けの男性青年誌を中心に執筆され、人情劇や料理に関連する雑学も絡めてゆったりと展開されるパターンが多い。
全体的にファンタジーのようなフィクション要素が少なく、人の心情をリアルに描いた作品が多いからかアニメ化よりも実写ドラマ化された作品のほうが多い傾向となっている。
代表作は「クッキングパパ」「深夜食堂」など。後に料理対決要素が濃くなったが「美味しんぼ」も元々は人情ドラマが主軸だった。
料理対決型
料理対決を軸としたバトルもの。
料理そのものよりも、「その料理をいかに美味しく創意工夫できるか」という“競い合い”が軸となるため、料理そのものに対するドラマ性は薄くなる。
その分、料理の美味しさを「リアクションの大きさ」で分かりやすく表現することもあり、特にその大家である『ミスター味っ子』が有名。
多くの作品は少年誌での掲載であり、テーマこそ料理だがド派手な演出と白熱する料理対決を主軸に努力と友情で勝利を目指す少年誌として王道的な展開の作品が多い。
基本的には「戦闘シーンが料理」であるだけで扱いとしてはほとんどバトル漫画そのものである。なんというか…物語の構造が。
流石に死人・怪我人が出ない点はバトル漫画とは違う…が、「中華一番!」だと料理対決で平気で死者もでるのであまり油断できない。ついでにこの漫画、料理漫画なのに戦闘力がインフレする。
なんだそれ。
他には普通のバトル漫画と比べると以下のような特徴がある。
- 舞台は大抵現代日本。
- あえて複雑な舞台設定を設ける意味合いもないため。わざわざファンタジー世界を構築しておきながら料理するだけ、という漫画もあまりない。ただし、「料理人の社会的立ち位置が現実よりも高い」「大規模な料理大会が頻繁に催される」などの設定が付加される場合もある。
- 「全くの素人の主人公が才能を見せつける」パターンはほとんどない。
- バトル漫画・スポーツ漫画だと定番の「お前……本当に素人か!?」的シチュエーションは料理漫画に限るとあまりない。流石に料理は「天性の勘」だとか「埋もれた才能」だけで、いきなりプロ以上の代物を作るのはまず不可能(基本的に料理は「経験」がものをいう行為である)なので、「家庭の事情で長年料理をしていた」「秘伝のノートを参考に修行をしていた」などの境遇の主人公が圧倒的多数を占める。
飯テロ系
食欲をそそるような食べ物などの画像で、読者の空腹感を刺激する表現をする作品。
とはいえ、ただ飲食物の画像を出しただけではインパクトに欠けるため、それらを登場人物が「ただひたすら美味しそうに食べる」ことで、読者を空腹へと誘う作品がほとんど。
この系統の鏑矢的作品である「孤独のグルメ」は一応料理漫画だが、「ただオッサンが飯食っているだけ」なので、ドラマ系でもバトル系でもない異色の作風。強いて言うなら「飯を食うところを読む漫画」であるが、ネット上を中心に根強い人気を博している。
他に「ワカコ酒」、「荒野のグルメ」、「給食のグルメ」等・・・。
食材への蘊蓄もバトル要素も無く、ひたすら「飯を食べる」部分に重点が置かれているため、ある意味「いかに美味しそうに見せるか」という手腕が最も問われるジャンルともいえる。
「孤独のグルメ」を皮切りに、近年はこの系統の作品が相次いでドラマ化されるなど台頭著しい系統ではあるが、前述の通り「飯を食べる」だけという非常に狭い部分に重点を置いているため、展開が似たり寄ったりになりがちな弊害も発生しており(現代日本を舞台にした作品は特に)、「『孤独のグルメ』の二番煎じ」と見做されてしまう作品も少なくない。
また、「飯を食べる」部分に重点が置かれている関係上、キャラクターの食べ方の描写に対しての批判が出ることもある(例:食べながらやたらとアヘ顔や変顔をする、クチャラー、子供のようにボタボタこぼす…など)。
グルメ解説系
料理や店舗についての解説や知識に重きを置いた作品。
主に実在する料理店や商品への知識や解説をメインとしており、そのため他の分類に比べるとドラマ性や誇張的な美味しさの表現は薄く、作品によっては食事しているシーンより解説しているシーンのほうが多いことも。
通常の料理漫画が調理や食事しているシーンを楽しむことがメインであれば、こちらは料理や商品への知識を得ることを楽しむ蘊蓄漫画であり、漫画版のグルメガイドブックとも言える。
しかし実在する店舗や商品をテーマとして扱うため間違った知識は許されず、作者のテーマへ対する知識の深さや取材力が試されるジャンルでもあるため作品数は他から見ると少なめで、その道の専門家が監修やアドバイザーとして協力していることも多い。
中には「スーパーマンのひとり飯」のように、店舗名を少し変えてフィクション性を持たせている作品も存在する。
異世界グルメ系
ドラゴンやスライム等、現実には存在しない生物や食材を調理し食べることをメインとした作品。
本来存在しない食材や料理を楽しむことができる、ある意味創作作品ならではのジャンル。
このジャンルの火付け役とも言える「ダンジョン飯」が最も有名だろう。広く見れば「トリコ」等もこのジャンルに入ると思われる。
ファンタジー系作品と相性が良く、後述の「異世界モノ」にもこの形式と似ている作品が多く存在する。
ただ当然ながらその調理法や味等は全て作者の想像で生み出さなければならず、読者にも内容が伝わりにくい。
そのため調理法や味を現実の食材に準えている作品も多く、登場するモンスターも熊・兎・猪等現実に存在する生物の延長線上のものが多い。なかには世界観だけファンタジーでやっていることは現実と殆ど変わらないなんてことも……
下手をすると中途半端に納得のいかない作品になりやすいので読者としても好みの分かれるジャンルと言える。
異世界モノ
内容は何らかの要因で異世界へとやってきた主人公が現代知識や特別な能力を駆使して元いた世界の料理を異世界の住人に振舞うパターンが多く、異世界人が現代料理に驚愕しながらもその美味しさに感動しながら食事をする様子を描くほのぼの飯テロ系漫画が大半を占める。
そのため転生先の異世界は現代社会よりも食文化が大幅に劣っているパターンが殆ど。
またファンタジーな世界観が主流のため、上記の「異世界グルメ系」と被る部分も多い。
他にも異世界では無く過去にタイムトリップするパターンも存在する。
こちらの代表作は「信長のシェフ」や「最後のレストラン」などが有名。
ちなみに「異世界食堂」や「最後のレストラン」は上記とは逆パターンで、こちらは異世界の住人または過去の人物の方から現代へ料理を食べに訪れる構成となっている。
スピンオフ系
アニメやラノベなどを原作とし、作品の外伝として展開しているシリーズ達。
「野原ひろし_昼メシの流儀」、「衛宮さんちの今日のごはん」などが有名。
内容としては主に原作キャラが料理をしていたり、ごはんを食べているだけのパターンが多く、原作内容とは離れキャラの日常生活を描いたほのぼの・コメディ系が主流。中には完全にIFの世界を描いたものも存在する。
そのため題材となる原作はバトル物やハードな内容のものなど日常描写が余り無いものが多く、原作では描かれていないキャラ達の一面や日常生活を見ることができ、そのギャップを楽しめるのも魅力の1つとなっている。
まあ中にはギャグ方面に力を入れたため、かなりシュールな作品も存在するのだが・・・
その他
上記のジャンルどれにも該当しない作品たち。
どれも料理や食事をテーマにしていたり、レストランなど食事に関わる場所を舞台にしてるのだが、作風や内容が普通の料理・グルメ漫画とは言いずらいものばかりである。
中には料理漫画じゃないのに料理の描写が凄くて料理漫画扱いされてる作品まで存在する。
「トリコ」はメインテーマこそ料理なのだが、流石にこれを料理漫画の範疇に含める人はまずいない。本作は「目的が飯を食うことのバトル漫画」である。
「神食の料理人」は料理をテーマとしているがメインはバトル要素であり、本作は「食材とバトルするアクション漫画」と言った方が正しく、「トリコ」同様料理漫画の範疇に含める人はまずいない。
「格闘料理伝説ビストロレシピ」はゲームが原作のコミカライズであり、「トリコ」などと同様に料理漫画の範疇に含める人はまずいない筈。
本作は「料理を触媒にモンスターを召喚して戦わせるバトル漫画」である。
「キラキラ☆プリキュアアラモード」と「デリシャスパーティ♡プリキュア」は人気アニメシリーズ「プリキュア」のコミカライズ。
共にスイーツや料理をテーマとしており、調理や食事シーンもしっかりと存在するが本作は「料理そのものを守るために戦うバトル作品」と言った方が正しく純粋な料理漫画やアニメとするのは難しい。
「ゴールデンカムイ」は明治時代の北海道を舞台に繰り広げられる(本当の意味での)サバイバルバトル漫画であるが、作中における料理の描写がやけに多い上に考察もしっかりしており、非常に珍しい「アイヌ料理漫画」としての側面もある…のだが、これまた上記のどれに含めるにも困るタイプとしか言いようが無い。
「DINER」は舞台がレストランで主人公はシェフとウェイトレス、出てくる料理も一級品で美味しそう…と、これだけならばまともな料理漫画のように思えるが、舞台は「殺し屋ばかりが通う
」レストランであり、シェフも腕利きの元殺し屋、客もロクデナシ揃いで料理を食った傍から惨たらしく死んでゆくこともままあるため、やっぱり上記のどれに含めるにも困るタイプに分類するのが妥当であろう。
「喰いタン」は正確には食をテーマにした推理漫画が正しい表現と思われる。
ただしミスター味っ子や将太の寿司と同じ作者ということもあり料理描写や蘊蓄が作品の主軸となっているため推理漫画でもあって料理漫画でもあるような曖昧な立ち位置な作品といえる。
「人魚姫のごめんねごはん」は一応料理を食べ、その美味しさを表現しているグルメ漫画なのだが、その内容は人魚姫が釣られて料理になった友人(魚)を供養しにいったらその美味しさに感動してついつい食べてしまうという共食いギャグ漫画である。
そのためこの作品も上記のどれに含めるにも困るタイプと言えるだろう。
「潮騒の魔女」は悩みを食べられるレストランを舞台とした一風変わった作品。
舞台がレストランであり料理も登場するが、メインとなるのは登場人物同士の会話と心情描写の為こちらも純粋な料理漫画とは言い難くやはり上記のどれに含めるにも困るタイプとなっている。
「天才料理少年_味の助」は料理対決型の要素が強いが、それ以上に料理を使ったアレな描写が多く、そちらのほうで話題になっている。そのため料理を使っていかにアレな表現ができるかを描いたタイプと言える。
「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」は異世界に自動販売機として転生してしまうという異色の異世界転生作品。
自動販売機だけあって販売している飲料や食品に異世界の住民が感動するグルメ作品的な表現が多めなのだが、食品以外も扱ううえ内容の本筋は自動販売機の商品で困っている人を助けるお助けマン的な内容となっているため純粋なグルメ漫画とは言いずらい作品となっている。
作品の例
記号
〇:アニメ化(予定も含む。)
△:ドラマ化(予定も含む。)因みに「中華一番!」は中国大陸でドラマ化。「深夜食堂」は韓国と中国でリメイク。「舞妓さんちのまかないさん」は2022年にNetflix(ネットフリックス)で全世界配信予定。
□:アニメ映画化(予定も含む。)
◇:実写映画化(予定も含む。)
▽:ドラマCD・ラジオドラマ化。
◎:小説・ノベライズ化。
☆:原作が小説のコミカライズ。
☒:原作がアニメのコミカライズ。
♧:原作がゲームのコミカライズ。
♤:原作がドラマのコミカライズ。
ドラマ型
クッキングパパ〇△
ゆるキャン△〇 ※キャンプ漫画だがキャンプ飯やご当地グルメ等の料理漫画の要素も強い。
深夜食堂△◇
きのう何食べた?△◇
おせん△
居酒屋ぼったくり☆△
山と食欲と私 ※料理だけでなく登山漫画としての側面も持つ。
カワセミさんの釣りごはん ※料理だけでなく釣り漫画としての側面も持つ。
侠飯☆△
貴族令嬢がジャンクフード食って「美味いですわ!」するだけの話
料理対決型
美味しんぼ〇△◇ ※本来はドラマ型だが「究極vs至高」でのバトルが多くなった。
中華一番!〇△
将太の寿司〇△
ミスター味っ子〇 ※オーバーリアクションによる採点の大家。
焼きたて!!ジャぱん〇 ※料理というよりリアクションがメイン。
※上記3作は「ビッグ錠」の作品。
飯テロ系
食の軍師△ ※料理では無く食べ方にスポットを置いた作品。
※上記5作は「久住昌之」原作の作品。
ワカコ酒〇△
将棋めし△
おいしい給食♤◇◎ ※料理では無く食べ方にスポットを置いた作品。
駅弁ひとり旅〇 ※駅弁だけでなく鉄道漫画としての側面も持つ。
グルメ解説系
空想・モンスター料理系
【パクパクですわ】追放されたお嬢様の『モンスターを食べるほど強くなる』スキルは、1食で1レベルアップする前代未聞の最強スキルでした。3日で人類最強になりましたわ~!☆
異世界モノ
異世界居酒屋「のぶ」☆〇△
異世界食堂☆〇
おかしな転生☆〇
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました☆
スキル『台所召喚』はすごい!~異世界でごはん作ってポイントためます~☆
社畜ダンジョンマスターの食堂経営~断じて史上最悪の魔王などでは無い!!~☆
捨てられ聖女の異世界ごはん旅 隠れスキルでキャンピングカーを召喚しました☆
勇者はひとり、ニッポンで~疲れる毎日忘れたい!のびのび過ごすぜ異世界休暇~☆
※上記の作品は「小説家になろう」発のコミカライズ作品。
※以下はタイムトリップモノの作品
スピンオフ系
アイドルマスターシンデレラガールズAfter20 (原作:アイドルマスターシンデレラガールズ)♧
衛宮さんちの今日のごはん (原作:Fate/staynight)♧〇
英霊食聞録 (原作:Fate/GrandOrder)♧
うまむすめし (原作:ウマ娘プリティーダービー)♧
野原ひろし_昼メシの流儀 (原作:クレヨンしんちゃん)
戦姫完食シンフォギア〜調めし〜 (原作:戦姫絶唱シンフォギア)
新米勇者のおしながき (原作:乃木若葉は勇者である)
マジカルパティシエ小咲ちゃん!! (原作:ニセコイ)◯
ガールズ&パンツァー 最終章 継続高校はらぺこ食事道 (原作:ガールズ&パンツァー)
はたらく魔王さまのメシ! (原作:はたらく魔王さま!)
とんがり帽子のキッチン (原作:とんがり帽子のアトリエ)
盾の勇者のおしながき (原作:盾の勇者の成り上がり)
転生したらスライムだった件 美食伝 ~ペコとリムルの料理手帖~ (原作:転生したらスライムだった件)
デスマーチからはじまる異世界幸腹曲 (原作:デスマーチからはじまる異世界狂想曲)
おかしな転生~リコリス・ダイアリー~ (原作:おかしな転生)
1日外出録ハンチョウ(原作:賭博黙示録カイジ)◯?
異世界居酒屋のぶ~エーファとまかないおやつ~ (原作:異世界居酒屋「のぶ」)
異世界居酒屋「げん」 (原作:異世界居酒屋「のぶ」)
スーパーマンのひとり飯 (原作:スーパーマン)
はらぺこ魔理沙のしあわせごはん (原作:東方Project)♧
その他
トリコ〇□
DINER◇▽
喰いタン△
ゴールデンカムイ〇◇ ※料理漫画では無いが料理描写が凄いと評判