概要
『ねぎ姉さん』、『寿司虚空編』、『さいはて』で知られる漫画家小林銅蟲の初となる長期雑誌連載作品。
講談社の隔週刊雑誌「イブニング」にて、2016年13号から連載され、2019年14号で完結した。
単行本は全8巻。
漫画制作の現場を舞台に、漫画家とアシスタントたちのハイテンションかつシュールなやり取り、「異常な」量・調理法・おいしさの料理について描かれている。
帯や公式サイト等で「限りなくノンフィクションに近いフィクション漫画」とされ、登場人物は作者とその周辺人物がモデルとなっている。
また、作中登場する料理は作者によって試作・試食されたうえで執筆されており、各話の最後にはレシピが「概念図」という形で示されているほか、作者のブログでも一部料理のレシピや調理過程が掲載されている。
話数カウントは「〇の膳」。
TV番組『マツコの知らない世界』でマンガ飯特集にて一の膳のローストビーフポテトピューレ添えが紹介されたことにより、イブニング読者や小林作品のファン以外にも大きな反響を呼んだ。
特に三の膳の超級カツ丼は一切れがスマホ並みの厚さという衝撃から数々のメディアで話題となり、イブニングの15周年記念企画により実際に調理した模様が掲載された。
その後も登場する料理がたびたび話題となり、ファンによる再現なども多数行われている。
単行本の巻末には作者と交流のある漫画家による予告漫画が掲載されている。
あらすじ
この物語は人気漫画家・广大脳子とそのアシスタント青梅川おめがが、迫りくる締め切りを完全にぶっちして、ただひたすらに貪欲に、美味い飯を作り食らうお話です!(各巻裏表紙より)
登場人物
レギュラーメンバー
青梅川おめが(おうめがわ おめが)
オフィス广のチーフアシスタント。元々はインディーズで活動する漫画家であり、オフ会で知り合った广の元に無理やりおしかけ、アシスタント兼メシスタント(飯炊き)になった。モデルは作者自身と思われる。
广大脳子(まだれ だいのうこ)
新人漫画家。デビュー作が大ヒットし、多忙な日々を送っている。五十一の膳時点で、漫画業界に入って5年らしい。
仕事場は「オフィス广」と呼ばれており、個性の強いアシスタントや担当編集に振り回されつつも日々製作を続けている。
現在連載中の作品『遠距離彼女は赤方偏移する』は、三十七の膳で映画化が決定し、七十の膳で連載終了が決まった。
もともとは青梅川のファンで、オフ会で知り合った彼女に押しかけられる形でアシスタントとして雇うようになった。
モデルはイブニングで連載されていた「累-かさね-」の作者である松浦だるまと思われる。
ロングヘアにブラウスやニット、ロングスカートが基本のスタイル。柄や形のバリエーションが豊かで、ほぼ毎回違う服を着ている。
古いもの(土器など骨董品)が好きなようで、原稿が切羽詰まった際には土器を買ってきていた。また、青梅川が原稿に描く前の模写や落書きはファンとしてすべて引き出しの中に保管している。好物はうにで、うにについて取り上げられた七の膳では興奮のあまり鼻血を噴出したり一機増えたりしていた。
基本的には穏やかで人当たりの良い性格。普段は青梅川の奇行にツッコミを入れているが、本人も締切が近づくと奇行を起こしてしまうことがある。
一部で話題となった「ニャオス(進捗だめです)」の発言主でもある。
馬場ヲッカ(ばば をっか)
五の膳で初登場。广の漫画を刊行している出版社が開催した新人賞に史上最年少で入選した天才。ガルシアの紹介で广の元でアシスタントとして修行することになった。
童顔で小柄なため一見すると小学生くらいに見えるが、実際は初登場時23歳。飲酒の描写があるほか、自動車の運転免許を取得している。雨男で何かあるたびに雨に降られている。
オフィス广に向かう際のタクシーでは巧みな話術で怪談を苦手だという青梅川に聞かせ続け、ストーリーテラーとしては非常に才能がある人物。
どちらかといえばツッコミ役だが、他のキャラのボケに乗ることも多い。また、ゆずといい仲になってからは夫婦漫才的な描写が増えた。
絵はかなり下手。アシスタントとしての技術もまだまだで、ゆずと失踪した際もせいぜい枠線要員としてしか作画的に役立っていないことが明かされた。
七十五の膳で漫画文化のなかった国「デルデモイ」で漫画が紹介され招待される。しかし、こっそりついてきていたゆずにより、軍事トラブルに巻き込まれた。
ゆず
十一の膳で初登場。オフィス广で使われている(飼われている)ルンバ的なロボット掃除機。人工知能による対話モードを搭載している。
名付け親になつく機能があり、馬場によって名付けられたことでどんどん彼と親しくなっていき、現在は種族を超えた恋人のような関係となっている。
馬場からはたびたびカマキリやカタツムリなどを与えられており、学習機能と恋心もあって話が進む中で掃除機としての機能とはかけ離れた異常な姿を披露している。
丁寧な口調ながら辛辣な性格で、青梅川とは何かと張り合っている。また、精神体として後ろ姿が描かれた際には、女性的な外見をしていることがわかった。
馬場が好きなあまり嫉妬でおかしくなってしまうのを防ぐため、自ら初期化するパッチを設定したことがあるほか、仮想通貨の大暴落で馬場のもとに訪れ「海が見たい」と告げるなど、彼への思いはかなり強いようである。
アシスタントとしては馬場より役に立っている様子。
担当編集
ガルシア
初代担当者。广に原稿を執念深く催促したり、進捗管理のため圧力をかけたりしているが、基本的には年末を会社で過ごすほど仕事熱心で穏やかな人柄。大柄で強面。
ザ・ダイスケというプロレスラーのマスクをかぶった姿で登場することもあったが、本人的にはガルシアとは別人という設定である。
二十九の膳で旅に出たいという理由から广に退職を告げ、三十の膳で完全に退職した。二回目の年明けには年賀状を旅先から送っており、現地の住民の文化にすっかりなじんだ様子が描かれた。
凪無(なぎ む)
2代目担当者。ゴシックな服装をした女性で、どこかで見たことのある顔立ちをしている。ざっくばらんな言動が特徴。
臨時アシスタント・ゲスト
- 煮瀞(にとろ)
二十二の膳に登場。
最速の男を自称し、すべての動作が早い。自我があまりないと語っており、食事の際には思考が垂れ流しになっていた。
二十七の膳で广から「死にました」とその後について語られ、ギャグ描写とはいえ作中唯一の死者となった。
- 語留時兄妹(ごるじきょうだい)
二十七の膳に登場。
兄は体(ボディ)、妹は網(あみ)。兄は天井に頭が付くほど大柄で、ドアから入ることができなかったのでベランダからゆずを使って入った。妹はかなり小柄。また、兄は作画技術にスキルを全振りしたため言葉が通じず、妹が兄の肩に乗り、犬笛を使って暗号を送ることで作画指示を受けている。
三十三の膳の序盤で再登場したがオフィス广に入れず帰宅した。
- 普通人生(ふつう じんせい)・ピエロ
三十八の膳に登場。
普通は坊主頭に眼鏡をかけている。名前通り「普通」の人物で、青梅川とはそりがあわなかった。ピエロはピエロの恰好をしている。彼の発言が青梅川に料理や漫画、人とのコミュニケーションについて考えさせるきっかけとなった。
- 瀬戸(せと)・砧(きぬた)
四十二の膳に登場。
非常に優れた技術を持つ臨時アシスタントとして登場したが、実は超絶売れっ子漫画家「瀬戸ブルゾン」で、かつて青梅川に受けた屈辱を晴らすため闇討ちに来た。砧は瀬戸のアシスタント。
- ウ・パイロン
五十四の膳に登場。
飛び込み営業のアシスタントとしてオフィスにやってきた中年男性。実は国際的サギ師であったが、广のファンのため害はないらしい。五十六の膳で再登場したが連行されている。
- 玉置標本(たまおき ひょうほん)
五十九・六十の膳に登場。
実在のライター。野食(自生している植物や捕獲した動物を自分で調理して食べる活動)や自家製麺に関する記事を多数執筆している。作品内で唯一登場した実在の人物。
- 幽門垂ギャリバー先生
青梅川の師匠にあたる漫画家。二十三の膳にセリフなしで登場。
華やかな容姿の女性。生粋の博徒で、取材先の新潟で12万をスッたエピソードが語られた。
モデルはおそらくパチンコ・パチスロ漫画で知られる漫画家の宮塚タケシ。(作者がデビュー前アシスタントをしていた)
ちなみに幽門垂(ゆうもんすい)とは硬骨魚類に特有の消化器官で、胃と腸の間にある消化酵素を出す器官のこと。塩辛の材料になる。
- 超限堂の店主
六十六・七の膳に登場。商店街のはずれにある画材店「超限堂」の店主。気難しい頑固老人だが、ゆずと同じく感情と知能を持つロボット掃除機の妻と暮らしており、卓上掃除機の息子までいる。UFO好き。
この夫婦の存在により図らずとも馬場・ゆずの「関係性」が肯定されることとなった。
- バリウム
七十五・六・七の膳に登場。長いカールがかかった黒髪で目元が前髪で隠れている。バルバモイの役人で、馬場をクリエイター支援プログラムのために招待した。カタコトで話し、口調は厳格。
最終話となる八十の膳では、これまで登場したキャラクターが全員登場し、「遠距離彼女は赤方偏移する」の連載終了と「ばくりめし」の連載開始を祝うパーティが行われた。
関連タグ
松浦だるま …漫画「累-かさね-」の作者。連載中に小林がアシスタントをしていた。
めしのあとはやせましょう…次回作。