『一の食卓』とは樹なつみ原作の漫画作品である。単行本は1~6巻で第一部が完結している。
あらすじ
日本人にとっての「はじめて」が西洋から雪崩れ込む明治4年。東京・築地の外国人居留地にある「フェリパン舎」で働く少女、西塔明はひょんな流れから、謎の男=藤田五郎を紹介され、一緒に働くことになる。一見怖いが、明が作ったパンを、初めて残さず食べてくれた日本人…。だがその男こそ、かつて「壬生の狼」と恐れられた新選組・三番隊隊長=斎藤一、その人だった!!
巨匠・樹なつみが初めて挑む、時代劇&グルメコミック!!
(第一巻のあらすじより)
登場人物
西塔明
物語のヒロイン。15歳。フェリパン舎で西洋料理の修行をする少女。
フェリパン舎の支援者であった岩倉具視から斎藤一(藤田五郎)を店の使用人として使うよう紹介される。当初は斎藤の異様な佇まいに圧倒され、士分(侍)を下男として使うことに内心強い不安と拒絶を覚えたが、彼が自作のフランスパンを食べる際、日本人が嫌って捨てられてしまうのが常だった硬い皮を剥がずに綺麗に食べてくれたことに感銘を受け、徐々に好感を抱くようになる。
幕末の混乱の中で両親を失い死にかけたところを見知らぬ侍に救い出され、身寄りがなく泣いていたところをフランス人シェフ・フェリックスに拾われた。
気丈で明るく前向きな性格をしている。フェリに才能を認められ一番弟子として厨房を仕切るが、そのせいで周囲から嫉妬され年上男性の弟子達から「妾」と陰口を叩かれ辞められてしまったことがある。それ以降も若い女性料理人である彼女に対する偏見の眼や風当たりは強く、そのため自分が男だったならと思い悩むことも。身長149㎝。
斎藤一(藤田五郎)
元新選組三番隊組長。28歳。岩倉の紹介でフェリパン舎で働くことになった、武士然としたクールな佇まいの青年。武士の身分にこだわっておらず、刀を手放すことにも一切抵抗が無い。左利きのため普段は右腰に刀を差している。剣術の達人。
その正体は大久保利通の命令で外国人居留地の監視をするために遣わされた密偵。フェリパン舎が建つ居留地で起こる数々の事件を解決するため秘密裏に動く。当初はフランス料理に人生を捧げる明たちを理解できないと思っていたが、彼らと交流する中で料理にかける情熱と強い覚悟を目の当たりにし考えを改める。
男女問わず人に気に入られやすいが、普段は不愛想で無口、黒ずくめの服を着た上背のある威圧感たっぷりの外見をしており、第一印象は基本的にあまり良くない。うわばみ。身長178㎝。
フェリックス・マレ
フェリパン舎の主人。27歳。スイス系フランス人。明の師匠で彼女の才能を高く評価する。パリで修行しかつては築地ホテルにも勤めていた一流料理人。
外見は麗しい金髪の青年だが明曰く「変人」。自身の作るパンを世界一と称しフランスパンの良さが日本人に理解されないことを大変悔しく思っている。
岩倉卿が斎藤を紹介した際には明以上に強い拒否感を露わにするが、初めて見る刀を差した本物のサムライに機嫌を良くし彼の滞在を許可する。実は隠れサムライオタク。
原田左之助
元新選組十番隊組長。明朗闊達な青年。
幕末の戦争の中斎藤らとは離れ、彰義隊として上野戦争に参加し死んだと思われていたが何とか生還する。ある目的から斎藤を探し、卯吉と共に居留地を訪れる。大雑把で優しく気さくな人柄。刀を使えるが、本来の獲物は槍。身長174㎝。
佐助
銀座丸木屋の跡取り息子。明と共にフェリパン舎で料理修行をしている。正式な弟子ではないものの、その仕事熱心さからフェリには高く評価されている。最先端のパン屋を営む立場であるため髷は結っておらずいわゆる散切り頭。明とは友人同士で、女性料理人として難しい立場にいる彼女のことを気に掛けている。身長156㎝。
清水卯吉
元新選組隊士。斎藤の身の回りの世話をし、彼を先生と呼び慕っている。フランス料理を珍奇なものと考えていたが、後に斎藤の命令でフェリパン舎で働くことになる。
自身を味音痴と言いつつも料理が得意で仕事の飲み込みが早い。
永倉新八
元新選組二番隊組長。髭の生えた、いかにも上方武士といった風情の男性。妻の弟を探すため北海道から東京にやってきた。原田とは試衛館時代からの同胞。新選組でも一二を争うほどの剣豪。身長175㎝。
土方歳三
新選組副長。役者のような整った外見をした美青年。斎藤を懐刀として重用し、内部粛清やスパイのような役目を任せる。回想シーンでのみ登場。
沖田総司
新選組一番隊組長。天然理心流剣術の達人。斎藤とは初対面で大喧嘩しその後しばらくは彼を目の敵にしていたが…? 回想シーンでのみ登場。