「劇画調」と呼ばれる、線が太く「濃い」絵柄は独特のものがある。絵柄は劇画の発祥当時の漫画と比較して「写実的」と言われることもあるが、現代の漫画の水準では写実的とは言いがたい、誇張された様式的なものも多い。
概要
1950年代に貸本を活躍舞台にしていた漫画家・辰巳ヨシヒロが自身の作品を「劇画」と名付けたのが最初と言われている。
現在でこそ漫画と劇画の境界は曖昧になっているが、かつての漫画の絵は大部分が線の少ないシンプルなもので、泥臭く大人っぽい劇画の絵柄に比べ、垢抜けたまたは子供っぽいものが多かった。またシリアスなストーリーであってもギャグ要素を盛り込むことは漫画に欠かせないものと考えられていたため、1960年代初めまでの少年漫画では、横山光輝など一部の作家を除き無理矢理にでもギャグを入れることが多かった。
貸本業界は1960年代に衰退し、多くの劇画作家が月刊誌・週刊誌に発表の場を移す。少年漫画は、劇画の進出で大きな影響を受け、1970年前後の漫画雑誌では劇画調の漫画が一世を風靡した。
1970年代も末になると劇画調は「軽さ」「明るさ」を求める時代の空気に合わなくなり、次第に古臭い画風とみなされるようになっていくが、さいとう・たかを、池上遼一などの劇画作家は今に至るまで当時の作風のまま活躍を続けている。
1980年代、「劇画調」の絵柄をもつ漫画家は原哲夫や北条司のようにギャグ性を強調する方向に向かう作家と、かわぐちかいじや谷口ジローのように荒唐無稽さを抑えリアル指向に向かう作家に分かれ、劇画の遺産は「漫画」の表現手法の一つとして拡散していった。
pixivでは、キャラクターが劇画風に描かれたイラストなどにこのタグが付けられる。
主な劇画作家
劇画の作風について
シリアスな題材をシリアスな画風で描く―これが劇画の定義であるが、キャラクター言論の提唱者であり、自身も劇画作品の脚本を多く手がけていることで有名な小池一夫氏は以下の言葉を残している。
「たとえシリアスな劇画でも、一見してギャグの範疇と思われそうな、現実離れした荒唐無稽な話を、リアルな画調とシリアスなストーリーで大真面目に描くからこそ、バランスが取れて読めるのだ。シリアスな絵にシリアスな話、シリアス一辺倒の展開だけでは人を惹き付ける事は出来ない」
笑いとは人の感情の原点であり、そして漫画の原点とも言うべき大切な要素であることがわかる。
と同時に、
シリアスとギャグが紙一重にあることを示唆する発言であるとも言えるだろう。