築地魚河岸三代目
つきじうおがしさんだいめ
ビッグコミック(小学館)で2000年から2013年まで連載された漫画。
作画ははしもとみつお、原作は大石けんいち(第1巻)・鍋島雅治(第2巻~第21巻)・九和かずと(第21巻~最終巻)の3人。作品監修は実際に築地魚河岸三代目を経験した小川貢一であり、彼と声優の平野文の経験も活かされている。
妻の父の跡を継いで築地魚河岸の仲卸『魚辰』の三代目を務めることになった元リーマンの主人公「赤木旬太郎」が、築地で起きるトラブルや厄介事に巻き込まれながらも奮闘する。
基本的な構成としては、魚の知識はサッパリだが同じ魚の時期や産地の違いすら見分ける確かな舌を持つ旬太郎が、様々な魚や海産物を食べ比べ、客に最適な売り物を見つけ出すという物。
旬太郎自身は魚を売る側の職業だが、勉強のため元板前の「戸川英二」や漁師の息子「木村拓也」といった魚辰の先輩、市場の仲間が連れて行ってくれる店などから出された料理を旬太郎が食べるという形で、グルメ漫画として成り立っている。客が料理人の場合には客から料理を振る舞われる回もある。
魚辰
旬太郎達が働く築地の仲卸(中間流通業)。物語開始時点で創業80年を誇る老舗である。旬太郎が来るまでは主に鮮魚を扱っていたが、数々の出来事を経て高級鮮魚の販売や場外で鮮魚店(小売店)を営む様になる。旬太郎と英二以外の従業員は全員が独立(又は退職)志望であり、少し層の薄さが気になるところ。旬太郎が来てからというもの、売り物の魚を食べている姿がよく見られるようになった。
閉店後はよく居酒屋「ちあき」に集まっている。
赤木旬太郎
主人公。通称「三代目」。(他店の三代目も多く登場するが本編で三代目と呼ばれるのは概ね旬太郎のみ)
元銀行員。人事部所属で、社員100人のリストラを命じられ、99人のリストラ及びその全員の再就職先の斡旋を実施した後に最後の一人として自らをリストラする。その後、妻の実家の家業である仲卸「魚辰」に婿養子の三代目として就職する。当初は魚や仲卸の仕事の知識がほとんど無く、周囲からシロウトの三代目として冷ややかな目で見られていたが、天真爛漫な性格と旺盛な食欲、魚に対する好奇心、驚異的な味覚と味に関する記憶力で周囲からの信頼を勝ち取っていく。なお、経営手腕は確かなものらしく、作中世界(概ね現実世界に即していると思われる)が不景気と言われている中で、高級鮮魚や場外鮮魚店と経営を拡大しても魚辰の経営は順調に進み、社員もやりがいを持って働くことができている。中盤に過労で倒れた際は英二たち従業員が三代目に頼りすぎたとして反省するほど。
戸川英二
通称「英二」又は「英二さん」。魚辰従業員の筆頭格で豊富な知識と魚の目利きを始めとした確かな技量で魚辰を支えている。元は割烹「天海」の板前で、周囲からその才能を評価されていたが、料理にケチを付けてきた客に手を上げてしまったことで親方から魚辰に修行に出された過去を持つ。営業時間外では居酒屋「ちあき」の板場で存分にその腕前を発揮する。板前としての腕前にも磨きがかかっており、実際天海の親方にも後継を望まれているが、仲卸の仕事にこれ以上ない程のやりがいを感じており、また、三代目を支えて行きたいとのことから天海に戻る件については断った。
物語開始時点では独身であったが、序盤後半にて「ちあき」の女将の千秋と結婚する。
基本的には温厚な性格で口調も丁寧であるものの、三代目の仲卸として成長のためにあえて厳しく当たることもある。三代目の良き右腕として魚辰に欠かせない存在である。
平井雅
通称「雅さん」又は「雅」。良くも悪くも江戸っ子的な気質を持つ魚辰の中堅従業員。英二の不在時はその代行を任されるベテランであるが、いささか軽率な面や早合点が過ぎるきらいがあり、時としてトラブルの元となる。軽率な発言や行動の制裁としてよくエリに電卓でぶっ叩かれている。しかし魚の目利きは確かであり、特にサンマやサバといった大衆的な鮮魚(本人曰く「安くて旨い魚」)に強く、魚辰が場外鮮魚店を始めた際にその担当を任される。確かな腕を持っていたものの志半ばで死んだ仲卸を父親に持ち、本人も父親の遺志を継ぎ、いずれ独立をするつもりでいる。本編中盤でエリと結婚する。
木村拓哉
通称「拓哉」又は「拓哉くん」。「〜ッス」という口調とふくよかな体型が特徴の末端従業員。銀行員から仲卸に転職し、右も左も分からない三代目に基本的なことを教えながらもその型破りな行動に振り回されている。特に序盤は三代目と行動を共にすることが多く、故にその性格を従業員の中で一番理解していた。
御前崎のカツオ漁師の息子であり、魚辰には修行として働いている。温厚な性格であるが、時にシビアな面を覗かせる。
菊地エリ(後に平井エリ)
通称「エリ」。魚辰の会計担当として帳場を任されている。気の強い性格で、男衆から軽率な発言等があるとよく電卓でぶっ叩いている。
青木卓哉
中盤にて魚辰に来た青年。元は老舗乾物屋の仲卸「干青」の三代目だったが、店が潰れたために三代目会の紹介で魚辰で働きつつ干青の再興を目指している。かなりお調子者の性格で、魚辰のことも単なる踏み台としてしか見ていないフシがあったものの、働くうちに魚河岸の男として成長していく。
大旦那
本名不詳。魚辰の二代目にあたる老齢の人物。築地魚河岸の中でも魚辰の内外を問わず慕われており、「築地の生き字引」とさえ言われている。老境のため引退してはいるもののその存在感は未だ健在である。娘婿である旬太郎に光るものを見て三代目に抜擢しているが、その育成に関しては極力手を出さず、店の衆に任せている。