概要
「週刊少年マガジン」(講談社)にて1986年40号から1989年4・5合併号まで連載された。単行本全19巻、文庫版全10巻。
作者は寺沢大介。
ストーリー
亡き父が残した日之出食堂を母と一緒に支える味吉陽一のもとに、日本料理界の重鎮村田源二郎(味皇)が訪れ、そこで陽一の作ったカツ丼に驚くことになる。味皇に招かれた陽一は、スパゲティ勝負がきっかけとなり、料理人達との美味しい味を求めた勝負に挑戦していくことになる。
登場人物
(ここではアニメ版のキャラクター達を紹介)
日之出食堂
味皇料理会
天才少年・少女料理人たち
味将軍グループ
クワイ・チャン・カモン(CV:たてかべ和也)
関陽学院中学
その他
ジョルジュ・ムスタキ/ジャン・ピエール・ド・ムスタキ(CV:増岡弘)
テレビアニメ
1987年10月8日から1989年9月28日までテレビ東京系列にて全99話が放送された。
系列外では多少放送時期はずれるものの岐阜放送、びわ湖放送、奈良テレビ(いずれも独立局)、青森テレビやテレビ山口(いずれもTBS系列局)とか長野放送(フジテレビ系列局)とか静岡第一テレビ(日本テレビ系列局)などでも放送されている。
アニメーション制作はサンライズ。
原作漫画との相違点
アニメは今川泰宏監督による荒唐無稽かつ派手で豪快な食べることの喜びを身体全体で表現する味皇達の過剰な演出が話題となった。
料理を食べた後に「うー・まー・いー・ぞぉぉぉぉっつ!!」の声と共に口から光線を出す、津波の中を泳ぐ、宇宙へ飛んで行く、巨大化して大阪城を破壊する、車椅子で病院の階段を駆け上るといった派手なリアクションは、アニメ作品を見た原作者の寺沢大介がこれに驚き感動したのか、原作の方のリアクションも後にアニメ寄りになってしまい、あわやギャグ漫画と化してしまいそうになった、という逸話もある。
実は企画者がお遊びで書いた企画書の方を提出してしまい、あのオーバーアクションの演出が生まれたとの都市伝説がある。
これらのオーバーリアクションは後に「マツコ&有吉の怒り新党」の「新・3大◯◯調査会」で取り上げられている(2012年5月23日放送)。
また、登場人物にアニメオリジナルキャラクターが大幅に増やされ、原作準拠のキャラクターでもビジュアルや台詞回しが大幅にアレンジされている。
作中では放送当時の時事流行ネタをはじめ、他のアニメ・時代劇・特撮や中の人ネタなどパロディが多数ちりばめられたリアクション以外もやりたい放題な演出が多く、そういう意味では後年同じテレビ局・製作会社で放送される「銀魂」のご先祖様とも言えよう。
主題歌
オープニングテーマ
「ルネッサンス情熱」
作詞:松本一起 作曲・歌:国安わたる 編曲:矢野立美
エンディングテーマ
「心のPhotograph」
作詞:松本一起 作曲・歌:国安わたる 編曲:矢野立美
関連イラスト
まさかの続編
ここで原作漫画の続編に関する説明をする。
『ミスター味っ子Ⅱ』
2005年に講談社『イブニング』誌より連載開始
父親となった味吉陽一とその息子・陽太が活躍する物語。
しかし一端、連載休止。並行していた『喰いタン』終了後には連載再開。なお、その『喰いタン』とは世界観が共通しており『喰いタン』の登場人物が『味っ子Ⅱ』で活躍したり『味っ子Ⅱ』の内容が『喰いタン』に反映されたり、という相互的な表現が成されている。
日ノ出食堂を息子達に任せ味吉陽一が世界を旅する中、味皇会の異変を察知する前半編。
ふとしたことで借金を抱えてしまった息子・陽太が奮闘する後半編がある。
『少女ファイト』のキャラクター・式島滋を連想させてくれるメガネ男といった新キャラ達や、『将太の寿司』の無頼漢・大年寺三郎太をはじめその他作品のキャラクター達がゲストで登場してくれた。
2013年に連載終了、単行本は全13巻である。
『ミスター味っ子幕末編』
2015年未明、某時代劇専門コミックより新連載開始。
ミスター味っ子・味吉陽一がなんと幕末にタイムスリップ!?
少年マガジン最終回にて、味皇との味ためし三番勝負に勝利した味吉陽一が勝海舟こと勝驎太郎に召喚される?しかも一度ならずたびたび呼び出される羽目に。(テルマエ・ロマエ形式であった。)
お約束の幕末の志士、サカモト。せこどんらの登場。
そして、ご先祖様までもが登場してくれた?!
最後に…
マンガと違い、アニメではどうしても映像で表現しなければならないため、料理のおいしさを伝えるために派手なリアクションが生まれた。
この荒唐無稽さを批判的に捉える向きもあるが、何より本作の長所は、味勝負が終わると、みんな仲良しになるところだろう。料理の作り手に感謝の心を忘れない…「食」の文字通り、「人」に「良」くするという展開は、他人の料理をけなしがちなグルメ作品(例:主人公が最大手)の中で読後感の爽やかさに繋がっている。
特に、破天荒な描写ばかりが取り上げられるアニメ版だが、最終エピソードは今川泰宏監督作品によく見られる「罪と罰」「断罪と贖罪」というテーマが描かれており、食材の質や技法の工夫よりも「相手においしい料理を食べさせてあげたい」と思う人の心が何より尊いものだと語る展開となっている。
また、今川泰宏は本作を作るに辺り吉本新喜劇を手本にしたと語っている。
余談
数々の荒唐無稽な料理を作り出すことで(ネタ的な意味でも)有名な本作だが、実は第一次タピオカブームより以前に、食材としてのタピオカを取り上げている。(河合潤二郎とのケーキ対決の際に陽一が自分のケーキのデコレーション、食感のアクセントをつける為に使用)
「甘く冷たくぷるぷるとした食感、見た目も真珠を転がしたような美しさ」という味皇様の説明に「食ってみたい」と思った読者も多かったのではないだろうか。
漫画版の「焦がしネギの風味」の回では、巻頭の作者お気に入りのラーメン店として後に有名になるラーメン二郎の三田本店が紹介されていた。