CV:高山みなみ
本編の主人公。通称「ミスター味っ子」。『味っ子』では年齢14歳。続編である『味っ子Ⅱ』では妻の八重が第一話冒頭で32歳と明言されているので、中学時代は一年先輩であった事から33歳と見られている。
(ちなみに息子の陽太は14歳なので、陽一19歳、八重18歳の時に生まれた子供という事になるので学生出産かつ出来ちゃった結婚の可能性が高い)
ミスター味っ子
関陽学院中学の2年生。第28回と第29回味皇料理会グランプリコンテスト(通称味皇GP)の優勝者。下町の包宰と呼ばれた父・味吉隆男の跡を継ぎ、日之出食堂の調理を切り盛りする天才少年料理人。味皇との出会いにより、日本の料理界を背負って立つほどの存在に成長していく。熱くなりやすい性格だが、料理に関しては、大人に臆することなく立ち向かう。
料理スタイルは工夫に工夫を重ねていくタイプで、素材など条件の不利をアイディアや技術・機転でカバーする事が多い。
とはいえ若干14歳の少年である事には変わりなく、作内にはゲームに夢中になったり自転車でパイロットになりきったりと年相応の幼い描写もあったりする。前述の熱くなりすぎる性格もこのため。アニメ版ではそれが強調されてクライマックス寸前で精神的に不安定になったり、周囲の状況に翻弄されて自らを見失ったりといった部分も大きくクローズアップされた。
また料理への情熱と負けず嫌いが行き過ぎて、のちバレンタインデーに後輩の吉野八重からもらったチョコレートにすら対抗心を燃やした事もある。(八重のチョコレート話は『味っ子Ⅱ』にて回想として語られている話だが、この話は公式上は実質において原作『味っ子』の追加挿話となっているため、こちらに付す)
ミスター味っ子Ⅱ
ミスター味っ子Ⅱになると、持ち前の喧嘩っ早い性格は消えて落ち着きが出るようになり、どこかトッポくてつかみどころのない天然な人物へと様変わりしている。他者のプライドをくすぐり、怒らせることで、自分の望みの展開へと巻き込む等、策士めいた扱いとなっている。
料理の腕の冴えは中学時代よりも凄みが増して「最低限の工夫」で「最大限の味を引き出す」というものとなっており、その「工夫」には「あえて何もしない」という境地まで含まれている。
中学時代より自らが腕を振るった日の出食堂を母と妻に任せ、自身は手紙一つを置いて世界中の料理を知るための放浪の旅に出ている。そのため妻にはかなり激怒されており、あまり信用されていない。また息子の味吉陽太には、どこか遠慮がちで他人行儀に接されてしまう(あるいは天然が災いして呆れ果てられてしまう)など親としては威厳がほとんど無い。
その事を一馬に指摘され「必要な時に導いてやれる場所にいてはどうか」と心配されたが、その際には自らも幼い頃に父がおらず幾度も「父がいてくれれば」と思う逆境にさらされながら、それでも最後には自らの力で立ち上がってきた経験を語り、陽太自身の成長を見届けたこともあって「息子を信頼しているから放っておける。陽太はもう大丈夫」と言い切った。
海外放浪の際に、様々な少年料理人を見出し、その才能の芽を伸ばすように働きかけている。(ただし、その事も「他人の子どもは気にかけるのに、自分の子どもはどうでもいいのか!」と妻に怒られ嫌味を言われる要因となった)
そして味皇GP編にて、ついに陽一放浪中に味皇が倒れたために理念を失い暴走を続けていた味皇料理会を正すため自ら『新味皇候補』の名乗りを上げてGPに参加する事になった。ただしGP自体は味皇様ご本人が完全復活したために結果が有耶無耶となり味皇への推挙はご破算となる。
実は最終回で海外放浪の旅は実父・味吉隆男を探すための旅であったことが明かされた。実は隆男の死亡は材料を調達するために海に出て遭難の果てに行方不明になった「みなし死亡」であり、自らが子を持つ父となった今、隆男が生きているならばどうしても孫の陽太の顔を見てもらいたい、孫を祖父に会わせてあげたいという子心、親心がさせたものであった。
その感動の再会はのちに陽一が築き上げてきた人脈により、大きく花開く事となった。
余談
『ミスター味っ子Ⅱ』連載当時、同じ「イブニング」誌に並行連載されていた同作者作品『喰いタン』には、下町の商店街で「日没食堂」という定食屋を切り盛りする、元・天才少年料理人の肩書を持つ「料理に関する工夫は天下一品」な、どっかで見たような髪型をしたメタボで丸鼻な店主である、用一(ヨーイチ)さんという公式が病気にもほどがあるセルフパロディなゲストキャラクターが登場。さらには日没食堂の従業員(用一の助手)として武満しげるなるキャラまで登場した。(『喰いタン』10巻、File.70。ちなみに、この回は開始から終了まで徹頭徹尾『味っ子』第一話のセルフパロディである)
ちなみに、この用一さんの料理だが、二度揚げの超極厚カツ丼にインスタントコーヒーでコクを出すカレー、と、セルフパロディゆえにどっかで聞いたような工夫が満載。当然、ソレが的確に出来るという以上、用一さんの腕は決して悪いものではない。それを証明するように日没食堂は常時満席で客たちも用一さんに敬意を持っている、という描写が取られている。
別作品なので別世界の出来事か、もしやこの用一さんは陽一のパラレルなのか……と思いきや、実は『喰いタン』と『味っ子Ⅱ』は相互に連結された世界観であることを示す演出が取られているので、用一さんと陽一は同じ世界に生きている、なんかデジャヴな別人という事になる。
なお『喰いタン』のメタ演出(作者による『味っ子Ⅱ』の自主宣伝)によって、用一さんの存在を知った陽一は、表情を引きつらせて息子(味吉陽太)に心配され、妻(味吉八重)からは「世間から見たら俺ってあんなん? とか思ってるでしょ!」と図星を指された。