概要
財務省対戦車中隊とは、財務省が自衛隊の戦車運用に対する提言を公開した際、それに対して過剰反応したミリオタなどの一部ネット民の間で生み出されたネタである。
ネタが広まった経緯
発端となった財務省資料
発端は2022年4⽉20⽇に財務省が公開した防衛関係資料(PDF)。その資料ではウクライナ侵攻緒戦でウクライナ軍が『ジャベリン』などを使⽤し、ロシア軍の戦車や装甲車を多数破壊することに成功した事例を上げ、戦車よりジャベリン1発や1セットの調達価格の方が圧倒的に安いと比較、コストパフォーマンスを高める可能性があると言及した。
これについて一部のミリオタが「自衛隊に高価な戦車を配備するより安いジャベリンで十分だというのか!!」と曲解し、「そんな事言うならお前らがジャベリン担いで突っ込めや」と騒いだ結果、「財務省職員は有事にジャベリンを担いで部隊を編成する」というネタが生まれたわけである。もちろん現実にはそんな部隊存在しない。
真相
で、その真相はと言うと、資料には少なくとも「戦車を無くしてジャベリンで自衛官突っ込ませろ」などとは一切書かれておらず、戦車とジャベリンの比較が行われた項目の名称も『防衛装備の必要性に関する説明責任』となっており、比較した趣旨は「ジャベリンの方が安いが、自衛隊が高い戦車を買う理由を何もわからん国民に説明しろ」というものである。
つまりこのネタは藁人形論法以外の何物でもない。
なお当該PDFは30ページにもわたり、主に財政の面から日本の国防の課題を取り上げたものであるが、戦車に関する言及はそのうち0.5ページ未満である。
この他にもイージス・システム搭載艦、次期戦闘機、レールガン、更には防衛産業全体の問題についても広く取り上げているが、そちらについて反論を行った形跡は殆ど見られない(そもそも資料を読んでる人間は全体の極々一部であると考えられる)。
まさかの財務省への直接質問
このしばし後、浜田聡議員が国会にて上の財務省資料に関する質問書を送付(該当質問書)。その中には上記の財務省資料でのジャベリンと戦車の比較を挙げ、次の質問をしていた。
「ジャベリンと戦車を比較する記述は、いざとなれば、財務省職員自ら前線に赴き敵の戦車にジャベリンを打ち込むという決意の表れ若しくはジャベリンの使用訓練や前線に赴く義務の法制化に向けた立法府へのメッセージと解釈してよいか」
見ての通り、上記のネット上での冗談を財務省に直接ぶつけたのである。そんなこともあって上の資料、ひいては「財務省対戦車中隊」の冗談はさらに認知されるようになってしまった。ちなみに上記の浜田議員の質問に対する回答は、
「御指摘の資料は、御指摘のような決意等を念頭に置いて作成したものではない」
と、しごく当然のものとなっている(該当答弁書)。
そもそも多額の資金によって運営されている国会で便所の落書きレベルの詭弁を呈しているのもとんでもないことだが、「前線に出ないなら軍人に文句をつけるな」と言わんばかりの主張はシビリアンコントロールの原則に真っ向から反しており、軍国主義に直結するものである。その点について議員はどうお考えなのだろうか。
外部リンク
- 𝕏️での『"財務省対戦車中隊"』検索結果(非ログイン状態の場合閲覧不可)
- togetter