語意
モラルが低い・マナーの悪い右派に対して侮蔑的に用いられたり、他者に対するレッテル貼りとして使用される蔑称。「ネット」は文字通りインターネットの意味だが、実際のところはネットと無関係な文脈においても用いられている。
「ネトウヨ」「ネットウヨ」「熱湯浴( 誤変換より )」などと表記される。特に「ネトウヨ」は語呂が良く変換しやすいため広く定着していった。
元来がネットスラングであるがゆえに明確に定義されてはいないが、発信拠点となった2000年代2ちゃんねるを中心とした右派言説の特徴として、日本の旧来右派が一般に持つマッチョイズム(貧困層や弱者への冷淡さ)、自己責任論、タカ派、歴史修正主義、ヘイトへの傾倒の他、特定アジア関連以外への関心の薄さが目立つ。
基本的に自称するものではないのだが、高須克弥や瀬戸弘幸( 外部リンク )など「ネット右翼」を自称する者もいる。なお在特会は「俺たちは顔出しでデモ活動しているからネット右翼ではなく行動する保守だ」と名乗っている。
隣接する勢力
- スピリチュアル右翼(スピウヨ)…「GHQによって古き良き日本が破壊された」などと主張。戦前的農村への回帰、反ワクチンなどを主張し、反GHQ史観などの一部では共闘するものの一般に親米なネット右翼からは遠い。
- 親露派…ネット右翼はロシアや北方領土問題にはあまり関心がないと言われており、一時期は中国包囲網として親露派が目立ったが、ウクライナ侵攻からは反露派が多数となっている。
- Jアノン…アメリカのオルタナ右翼の系譜に属し、別個とされる事が多い。
- 統一教会…冷戦時代の反共運動と関係が深かったものの、韓国発の宗教団体でありネット右翼の大半とは敵対関係にある。
- 国家神道…思想的ルーツのひとつであるが一般にネット右翼間に宗教意識は乏しい。それどころか大半が日本書紀を読んだことも無いと思われる。
- 反米右翼・民族派…ネット右翼確立初期にはゴーマニズム宣言的な反米派も存在したが、現在はネット右翼の大半が親米派となり、また民族派も左派に接近して距離が遠くなった。
- 冷笑系…特定アジアを特に冷笑しているタイプがネット右翼に当てはまる。2ちゃんねるの過疎化とともにネット右翼が政治運動としては冷めてきたことから、中韓の欠陥製品特集動画のような形で冷笑系タイプが増加しつつある。
- ミリオタ…始めたばかりのミリオタが発症しやすいとされる。ある程度知識がつくと日本軍の無謀な状況などを知り徐々に離れるが、ネット右翼思想を維持して冷笑系化して「日本軍も冷笑するネット右翼」になることも多い。
- ネオナチ…ネット右翼はネオナチの主要ターゲットのイスラム教徒・ユダヤ人にほとんど関心がない。
- ニューライト…「イルベ民」のような韓国右派。植民地時代肯定論に対し好意的な態度を示すことはあるが、あまり交流は無い。
- 日本のキリスト教右派…数が多くないため影響力はあまりないが、日ユ同祖論が日本人弥生人由来説に反発する一部に影響を与えている。
歴史
ネット右翼思想のルーツは意外と古く江戸時代の国学まで遡れる。戦前日本で国家イデオロギーとなった国学だが、戦後50年にわたって表向き封印されていた。しかし、インターネット時代を迎えこれらが一気に吹き出すこととなった。2000年代のネット右翼の話題の中心となった嫌韓言説は2002年の日韓ワールドカップの開催を機に2000年代に台頭したといわれる。このことから、いわゆる「嫌韓厨」と同義として用いられることもしばしばある。
2005年ごろまでは彼らの活動はネット上にとどまっており、マスコミはあまり取り上げることはなかった。しかし2006年に「在日特権を許さない市民の会(在特会)」が結成され、同会をはじめ「街に出たネット右翼」と称される草の根市民団体の脅迫・ヘイトスピーチなどの事件が報道されるようになると、この言葉が普通にネットの外でも使われるようになっていった。
2010年代には「特定アジア」などネット周辺から生まれた俗語が産経新聞など既存のメディアで使われるようになり、嫌韓・嫌中を扇動する書籍が広く読まれるなど、ネット右翼的な言説が(ネットをあまり使わない)中高年の保守層にも浸透し、ノンポリ層の間にもヘイト感情が広まっていった。一方でアンチネトウヨに転じたネットユーザー(ネット左翼)が2ちゃんねる嫌儲板を拠点に、冷笑的なノリでネトウヨへのカウンターをするようになった。また、ネット右翼系ブログサイトのデマ・扇動による弁護士への懲戒処分申請(いわゆる余命騒動)へのカウンターとして、2018年になんJ板を拠点に差別動画通報騒動、いわゆる「ネトウヨ春のBAN祭り」が発生した。
2020年に巻き起こったコロナ禍に乗じて、ネット右翼の間で嫌中国・反ワクチンネタが多数流布され、「神真都Q(やまとQ)」と名乗る団体が各地で抗議デモやワクチン接種会場への妨害を展開。さらに2022年、ロシアのウクライナ侵攻と安倍晋三銃撃事件が発生した。こうした中、2020年代には従来支持を集めていた安倍・トランプに否定的な左旋回したネット右翼も登場、ロシア・Qアノン・コロナワクチン・統一教会・安倍晋三・ドナルド・トランプなどをめぐりネット右翼同士の対立と抗争が目立つようになっている。
問題点
ネット右翼、もしくはネット左翼と認定される、あるいは自称するものの中には「フェイクニュースのような事実を捏造・改竄・歪曲しデマを流布」「ヘイトクライムなどの犯罪行為を扇動」「根拠なく他者を敵味方に分類し、敵対すると見なした人物や団体を誹謗中傷」「2ちゃんねるなどの電子掲示板や、ピクシブ百科事典などのwikiといった、ネット上のコミュニティ荒らし」などの問題行動を繰り返す場合がある。
また、上記の行動をたしなめられると相手を「反日」「テロリスト」等のレッテル貼りを行ったり、「根拠の無い敵対陣営認定」( 例えば「工作員認定」「在日認定」 )を行うなど、いわゆる厨的な行動が非常に目立っている。実際、かつてはネット右翼から賞賛されていた在特会や田母神俊雄は、暴行事件や選挙違反が発覚した途端に「左翼のなりすまし」認定を受けた事がある。
ビジネス右翼
上記の余命騒動・差別動画通報騒動の中で、ネット右翼の台頭の背後には、アフィリエイト収入目当てに過激な差別扇動を繰り広げる「ビジネス右翼」(通称「ビジウヨ」)の暗躍があったことが知られてきている。フェイクニュースを発信するようになったのもこの頃からである。参考→右派系まとめサイトの管理人に「目的」を直撃してみた(外部リンク)
2021年10日6日には野党議員に対する(捏造を含めた)中傷を行い続けていたTwitterアカウント「Dappi」が発信者情報開示により自民党と取引のある企業であることが発覚。被害を受けていた立憲民主党議員の2名に提訴された。