概要
福島県出身の元航空自衛隊幹部自衛官。統合幕僚学校長、航空幕僚長(航空自衛隊での最高職位)を務める。しかし、賞を受賞した「真の近現代史観」論文の内容を問題視され、航空幕僚長を解任、航空自衛官退官に追い込まれた。そのため最終階級は空将(軍隊での大将)。
退官後は評論家として「田母神節」と呼ばれるユーモアあふれるトークで人気を集め、広島で核武装の必要性を公言し、福島第一原発事故の後は「福島の放射線は危なくない」とする発言で物議を醸している(このため、渡部昇一と同様に反原発派である小林よしのりとは後に対立することになった)。
2014年に、東京都知事選挙に立候補し落選。その後西村眞悟議員と共に、太陽の党の再立ち上げを行った。太陽の党は次世代の党に吸収される形で合併し、第47回衆議院議員総選挙に、次世代の党公認で東京都第12区にて出馬したがこれも落選した。
人物
自衛官らしからぬ気さくで腰の軽い、社交的な性格で、自衛隊の同期や上官からは「タモちゃん」の愛称で親しまれていた(本人談)。
落語を愛し、講演では必ずジョークを盛り込むことを信条としている(本人談)。身長が低く(公称162cm)、自分でもよくネタにしている(本人のエッセイより)。
保守系論者との交友関係が広く、政治家の西村眞悟、アパグループの元谷外志雄代表とは懇意の仲(本人談)。
思想
元幹部自衛官なだけあり、主に軍事面から国防や安全保障に関して語ることが多い。
自衛隊について
常に自衛隊の国軍化を推進する立場をとっており、経済的に豊かで、資源も豊富な先進国には、それを破壊・強奪されないように、それ相応の軍事力が必要であり、それが世界的に見れば『普通の国』『正常な国』であるとしている。
日本の自衛隊は、世界的に見ても優秀であり、防衛能力は非常に高いものの、憲法によって『専守防衛』を軍事戦略に掲げているため、攻撃能力は殆どと言っていいほど持っておらず、敵に有効な反撃が出来ないとしている。
そのため、それが逆に敵の侵略攻撃を誘発しかねず、反戦・平和のために掲げているはずの憲法が、逆に日本に戦争を招いてしまうとしている。典型的な軍人思想家である。
核武装について
戦争に未然に防ぐために、最も効果的と考えているのが『核兵器』の保有であり、日本の核武装を提唱している。
戦争を防ぐ抑止力となるその証拠として、東西冷戦時代にその主であったアメリカとソ連の対立による睨み合いでは、両国とも核武装していながら、核戦争どころか1度の武力衝突も起こっていないことを挙げている。
その上で、日本にとって最も適した核武装を、大日本帝国海軍の時代から受け継がれている潜水艦技術の高さから、イギリスが採用しているSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)であるとしている。
もしくは日本が自ら核を保有することなく、核による抑止力を得る方法として、NATO(北大西洋条約機構)で行われている『ニュークリア・シェアリング(Nuclear Sharing、核兵器の共有)』に加盟することを挙げており、日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国とされるドイツ・イタリアも加盟していることから、日本が加盟を進言すれば、相手は断れないとしている。
歴史認識
軍事関連のみならず、歴史問題にも非常に精通している。
戦後日本人の歴史観について
戦後の日本人の歴史観は、第二次世界大戦の終結後に行われた、『東京裁判(極東国際軍事裁判)』における、戦時以前の日本が行ってきたこと全てが悪であるとして、その元凶が日本軍であるという判決を鵜呑みにした、自虐史観に支配された状態であるとして、歴史問題は、日本人がその状態から脱出することが、最も重要であるとしている。
東京裁判が、公平・中立の原則を一切無視したデタラメなものであるとしており、いわゆるA級戦犯と呼ばれた日本軍幹部に課せられた罪は、当時のいかなる国際条約にも一切存在しておらず、原爆によって罪の無い民間人を大量に虐殺した、連合軍側の指揮官は誰一人として罪に問われていないことから、「裁判ではなく復讐劇である」と指摘している。
また、日本の明治時代以降の世界背景においては、当時は欧米列強諸国によってアジア・アフリカ諸国が植民地化され、現地人は白人によって劣等民族と蔑まれ奴隷化されていたとして、これら人種差別の不当性と撤廃を、国際会議で初めて訴えたのが日本であり、パリ講和会議での牧野伸顕大使による、人種的差別撤廃提案を挙げている。
それでいて、それに反発した列強諸国によって、日本は経済封鎖(ABCD包囲陣)を受けて連合国との開戦に追い込まれ、当時欧米の植民地状態であった東南アジア・南アジア諸国を欧米の支配から解放し、独立を支援したとしている。
GHQの占領政策について
また、戦後直後に行われた、GHQの『新聞報道取締方針』の発令による、占領軍への批判を一切禁止する『プレスコード』や、新聞に10回に渡り連載させ、単行本化して日本全国の学校に強制学習させた、満州事変から終戦までの出来事を「日本の悪行」とことさらに強調した記事である『太平洋戦争史』、20万人以上の公務員が一斉に解雇され、復職を禁止した『公職追放』など、WGIP(ウォーギルトインフォメーションプログラム)の詳細にも非常に詳しい。
その上で、公職追放によって出来た教育界や官公庁の空席に、ソビエト連邦やコミンテルンによって、共産主義思想を叩き込まれた左翼思想家入り込んでいったとしており、例として、東京裁判で戦犯のリストアップを担当し、日本共産党員5000人の釈放を進めていた、GHQ調査情報部のエドガートン・ハーバート・ノーマン調査分析課長は、後年にソ連のスパイであった疑いが濃厚となり、FBIによる査問が始まる直前に自殺したことを挙げている。
アメリカについて
こういった戦時以前や終戦後に行われた連合国の日本に対する工作に対し、その不当性を国際社会に対して積極的に訴えていくべきとする声もあるが、田母神はそれに対しては慎重・否定的な姿勢をとっている。
その理由について、色々と問題はあるにしても、日本と連合国はサンフランシスコ講和条約を結んでおり、当時の日本はどうしてもそうする必要があったとして、一旦講和条約を結んだからには、それまでの戦争状態は一切解決したものとして、あまり蒸し返すべきではないとしており、半世紀も前に終わっている戦争のことで、未だに日本を非難している後ろ向きな国のように、日本はなってはならないとしている。
その上で、自身が反米と思われることがあることについて、「親日なだけ」として否定しており、アメリカにも尊敬できる人物はいて、その1人に東京裁判で日本側の弁護人を行い、日本に対する不当判決や、原爆を投下して民間人を大量虐殺を行った自国を非難する主張をした、アメリカ陸軍のベン・ブルース・ブレイクニー少佐を挙げている。
「真の近現代史観」論文事件
航空幕僚長在任中に、アパグループ(友人の元谷外志雄代表の経営する企業)の主催する「真の近現代史観」懸賞論文に『日本は侵略国家であったのか』と題した論文を応募し第一回最優秀賞を獲得、防衛省内部で配布してまわったところその内容が問題となり、当時の防衛大臣であった浜田靖一に航空幕僚長を解任され、定年退職に追い込まれた。
論文の内容は自身のブログを始め、原作を務めた漫画作品『マンガ田母神流』などにも掲載されている。
都知事選出馬
猪瀬直樹辞任を受けて2014年2月に行われた東京都知事選挙に立候補した。当初期待した自民党の支援を得られず、元知事の石原慎太郎やタレントのデヴィ夫人、「田母神ガールズ」と呼ばれる若い女性をはじめとした多くのサポーターの支援を受けた。
選挙では防災を重点に訴え、ネット上の調査では驚異の80%以上の支持を記録。マスコミでも政党支援がない田母神が、政党支援を受けた舛添要一・宇都宮健児・細川護煕と並ぶ主要4候補の一人として取り上げられた。
選挙では4位に終わったが、マスコミの30万票という予想に反して、その倍以上の約61万票を獲得し、特に30-40代の比較的若い層への草の根右派の浸透を印象づける結果となった。なおこの選挙で田母神陣営は運動員に数百万円の現金をばらまいたとされ、田母神自身も2年後に逮捕される事態となった(後述の「選挙資金問題」の項も参照)。
twitterでの問題発言
2012年、1995年に発生した在日米軍隊員による女子に対する暴行事件について、夜中にうろついていた被害者側にも責任がある、と発言し、自身のアカウントが炎上。誤解していたようで、事件が発生したのは、夜中ではなく、朝の8時であり、襲われたのは小学生の女の子であった。誤った情報に基づく発言に、多くの批判が寄せられているが、田母神自身から、訂正や謝罪の言葉は出ていない。
この一件を機に、一部で田母神に失望したというユーザーもいると言われる一方、彼を批判する者があげ足を取ってわざと騒いでいるのではないかと擁護する声も少なくない。一方で、体罰やいじめ、セクハラ、パワハラで騒ぐことは「左翼思想」で、現場の指導者の指導力が無くなって「日本弱体化」に繋がるとの発言をしている。
国政出馬
2014年12月の衆議院選挙では次世代の党公認候補として出馬、公明党の大物太田昭宏の選挙区をあえて選び公明党への挑発的言動を繰り返した。しかし次世代の党が全体的に苦戦する結果となり、また田母神自身も妻との間の離婚訴訟報道などのスキャンダルが響いた上に選挙区自体も太田以外の強敵に勝つ事ができず、共産党候補にも敗北する得票数に終わり比例復活もならなかった。
選挙資金問題
2015年、田母神を後援してきたインターネット放送局「チャンネル桜」による「田母神事務所に1億円の使途不明金がある」という暴露を受け、2月19日、田母神は記者会見で少なくとも3000万円を会計責任者が私的流用していた事実を認めた。チャンネル桜側は「使途不明金はもっとある。武士の情けで言わなかったこともある」と、さらなる不正の存在をほのめかしており、田母神は指摘を一部否定し、論争となっている。
3月4日、事件に際して、会計責任者とその周辺の人達を含めて告訴する事を表明し、その理由として「現段階では会計責任者の単独犯行なのか共犯者がいるのかよく分からない」と述べており、会計責任者と事務局長には辞表を書いてもらったとしている。3月10日、会計責任者に対する業務上横領罪の告訴状を警視庁に送付したが、3月7日には東京地検が業務上横領容疑で田母神の資金管理団体の事務所を捜索している。
その後も水島と田母神は公の場でdisりあっており、泥沼の様相を呈している。
2016年4月、2014年の東京都知事選挙で運動員を買収したとして、公選法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。2017年に出された地裁の判決で懲役1年10月、執行猶予5年の有罪判決を受け田母神側は控訴そして上告をしたが覆らず公職選挙法違反が確定した。
2015年に起訴されていた横領罪では不起訴となった。
関連記事
関連書籍
単著
- 『自らの身は顧みず』(WAC)
- 『田母神塾 -これが誇りある日本の教科書だ-』(双葉社)
- 『座して平和は守れず -田母神式リアル国防論-』(幻冬舎)
- 『田母神大学校』(徳間書店)
- 『間接侵略に立ち向かえ』(宝島社)
- 『田母神国軍』(産経新聞出版)
- 『ほんとうは強い日本』(PHP新書)
- 『日本はもっとほめられていい』(廣済堂新書)
- 『なぜ朝日新聞はかくも安倍晋三を憎むのか』(飛鳥新社)
- 『大東亜戦争を知らない日本人へ』(ワニブックス)
- 『戦争の常識・非常識 -戦争をしたがる文民、したくない軍人-』(ビジネス社)
共著
- 『日本は「侵略国家」ではない!』(共著:渡部昇一 海竜社)
- 『国防論』(共著:川村純彦・松島悠佐・勝谷誠彦 アスコム)
- 『日本を守りたい日本人の反撃』(共著:一色正春 産経新聞出版)
- 『田母神戦争大学 -心配しなくても中国と戦争にはなりません-』(共著:石井義哲 産経新聞出版)
漫画
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